最終決戦はタカタ! 残る6クラスのチャンピオンが確定

レポート ダートトライアル

2024年10月18日

2024年の全日本ダートトライアル選手権は、10月12~13日に広島県安芸高田市のテクニックステージタカタで開催された第8戦が最終戦となる。チャンピオン未確定6クラスの最終決戦の場となった。

2024年JAF全日本ダートトライアル選手権 第8戦「ダートトライアル in タカタ」
開催日:2024年10月12~13日
開催地:テクニックステージタカタ(広島県安芸高田市)
主催:CCN、TTS

 今季の全日本ダートトライアル選手権は、第6戦エビスでSA1クラスの河石潤選手(スズキ・スイフトスポーツ)が26年ぶりのチャンピオン確定。第7戦丸和でPN2クラスの佐藤卓也選手(スズキ・スイフトスポーツ)が自身初となるチャンピオンを、SC1クラスの山崎迅人選手(三菱・ミラージュ)が2年連続のチャンピオンを確定させた。同じく第7戦丸和でDクラスの田口勝彦選手(三菱・ランサーエボリューションX)が2年連続のチャンピオンを確定しているが、残るPNE1クラス、PN1クラス、PN3クラス、Nクラス、SA2クラス、SC2クラスの計6クラスは、この最終戦が決戦の場となる。

 舞台となるテクニックステージタカタには、全クラス合わせて160台がエントリー。コースは基本的にドライコンディションながらも、ヒート前とNクラス走行後に撒水が行われ、その直後を走るPNE1クラスやSA1クラスはハーフウェットコンディションになった。気温はこの時期としては高めの26度付近まで上昇したが、路面の乾きが遅い時間帯もあり、クラスや走行順によってタイヤ選択に頭を悩ませる選手が続出した。

今大会初の試みとして、大会をプロモーションするためにアンバサダーを任命して、SNS等でイベントの周知を行った。任命されたのは、Dクラスの田口勝彦選手とPN1クラスの城越明日香選手、D1GPドライバーの松川和也選手。
来季から開催予定のD1クラス(2輪駆動のD車両クラス)のプロモーションとして、競技前の会場で松川選手が華麗なデモ走行を披露した。車両はD1GPで活躍したAE86にダートタイヤを装着。将来的なD1GP車両のダートトライアル転用を示唆したこの車両には、全日本ダートトライアルドライバーも興味津々の様子だった。
コースには、ヒート前とNクラス走行後に水が撒かれたため、路面のコンディションが変化。ドライバーはタイヤ選択に頭を悩ませることとなった。
全日本選手権開催に向けて、ギャラリーコーナーや一昨年に新設されたコース最奥部の新コーナーなどコースの一部が改修された。コーナーのRやコースを分ける島の形状が変わったことでコース幅が広くなり、よりダイナミックな走行が可能となった。

PN1クラス

 4人のドライバーがチャンピオンを獲得する可能性があるPN1クラスは、その中のひとり工藤清美選手(ホンダ・フィット)が第1ヒートのトップを奪う。だが、第2ヒートは「出走直前までタイヤ選択に悩みました。ダートラ人生の中で一番迷ったと思います」という第1ヒート4番手の飯島千尋選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、「ウェットタイヤに賭けました」とハーフウェットのコースを攻め、ベストタイムを更新。第1ヒート2番手の太田智喜選手(マツダ・デミオ)が飯島選手から0.054秒差、優勝を勝ち獲れば逆転チャンピオンの可能性がある工藤選手が0.876秒差に迫るものの、飯島選手が逃げ切り逆転優勝。シリーズランキングでも、今回4位に終わった奈良勇希選手(スズキ・スイフトスポーツ)を逆転し、自身初となる全日本チャンピオン確定となった。

PN1クラス優勝は飯島千尋選手(SPG木輪舎☆DLスイフト神速)。
タイヤ選択に迷いながらも攻め手を緩めなかった飯島選手が勝利。
2位は太田智喜選手(DLMotysクスコS+デミオ)、3位は工藤清美選手(工藤ホンダDLワコーズフィット)。
PN1クラスの表彰台。左から4位の奈良勇希選手、2位の太田選手、1位の飯島選手、3位の工藤選手、5位の南優希選手、6位の水野喜文選手。
飯島選手が初の全日本チャンピオンを確定させた。地元の長野県から広島県のタカタに通い詰めて練習を重ねた結果のチャンピオン確定だったため、特に中国地区の選手たちからも称賛を浴びていた。

PN3クラス

 第1ヒートは、第7戦丸和で今季初優勝を獲得した浦上真選手(トヨタ・GR86)がベストタイムを奪ったPN3クラスは、第2ヒートで「路面コンディションにタイヤがベストマッチしました」という徳山優斗選手(トヨタ・86)が、ベストタイムを一気に2.816秒塗り替えて優勝。一方、チャンピオン争いの渦中にいるパッション崎山選手(トヨタ・86)は、徳山選手に0.879秒届かず2位。前走車のアクシデントで再出走になった小関高幸選手(スバル・BRZ)が、「コースの後半まで走り切っていたので、タイヤ的にも再出走はきつかった」と言いながらも、3位に食い込んでくる。

 クラス最終走者の竹本幸広選手が6位以下であればパッション崎山選手が逆転チャンピオンの可能性もあったが、徳山選手とは逆に「タイヤがまったく路面に合っていなかった」という竹本選手は、かろうじて5位でフィニッシュ。ランキングポイントではパッション崎山選手が竹本選手に1ポイント届かず、竹本選手が2年連続3回目の全日本チャンピオン確定となった。

PN3クラス優勝は徳山優斗選手(ADVANオクヤマFTGR86)。
徳山選手は、第2ヒートでたたき出したライバルらを置き去りにするベストタイムで優勝した。
2位はパッション崎山選手(DL☆ラブカ☆ライズGR86)、3位は小関高幸選手(RJ2024DLKITBRZ)。
PN3クラスの表彰台。左から4位の浦上真選手、2位のパッション崎山選手、1位の徳山選手、3位の小関選手、5位の竹本幸広選手、6位の和泉泰至選手。
竹本選手が2年連続となる3度目のチャンピオンを確定させた。確定の報が竹本選手の耳に届いたのは、パルクフェルメを出て自分のパドックに戻ってから。その直前までチャンピオンを逃していたと思っていたため、喜びもひとしおの様子だった。

Nクラス

 PN1クラスと同様に、4人のドライバーがチャンピオン確定の可能性を持つNクラスは、その中のひとり、宝田ケンシロー選手(トヨタ・GRヤリス)が、第1ヒートのトップを奪う。第2ヒートは、第1ヒート3番手の三枝光博選手(トヨタ・GRヤリス)がベストタイムを更新してくる中、第1ヒート4番手の細木智矢選手(三菱・ランサーエボリューションX)が「予想以上に路面が滑って、抑え切れなかった」と言いながらもベストタイムをさらに更新。

 チャンピオンの可能性がある三浦陸選手(三菱・ランサーエボリューションIX)は、細木選手のタイムに0.997秒届かず、この時点でチャンピオン争いの権利が消滅。第1ヒートトップの宝田選手はタイムダウンに終わり、この時点でチャンピオンの可能性を失った。チャンピオン争いは細木選手と第1ヒート2番手の岸山信之選手(トヨタ・GRヤリス)のふたりに絞られ、「前半のミスが大きかった」という岸山選手が後半セクションで細木選手のタイムを追いかけたものの、0.215秒届かず2位でフィニッシュ。第2ヒートの逆転劇で、細木選手がNクラスにクラス替えをして1年目で、通算4年連続6回目となる全日本チャンピオン確定となった。

Nクラス優勝は細木智矢選手(MJTDLSWKレイルランサー)。
追いすがるライバルらを振り切ってのタイムで細木選手が優勝。
2位は岸山信之選手(BRIDE☆DL☆GRFヤリス)、3位は三枝光博選手(DL・EB-ARK・GRヤリス)。
Nクラスの表彰台。左から4位の三浦陸選手、2位の岸山選手、1位の細木選手、3位の三枝選手、5位の宝田ケンシロー選手、6位の矢本裕之選手。
細木智矢選手が4年連続となる6度目のチャンピオンを確定させた。細木選手はランサーに乗り換えた初年度でのチャンピオン確定となった。

SA2クラス

 昨季のチャンピオン、浜孝佳選手(三菱・ランサーエボリューションIX)と、20代ドライバーの岡本泰成選手(三菱・ランサーエボリューションIX)がタイトルを争うSA2クラスは、浜選手が第1ヒートのトップを奪い、2年連続チャンピオンに王手をかける。だが、第2ヒートは岡本選手が「奥のフルターンで少し失敗した以外は、自分の中では精一杯走ることができました」とベストタイムを更新。一方、昨季まではベテラン勢を追いかける展開でチャンピオンを奪い、今季は若手の岡本選手に追われる展開となった浜選手は、「岡本選手は自分の中でも負けたくないと意識している選手なので、第2ヒートはどうしても気持ち的に抑え切れず、突っ込みすぎるコーナーが多かったと思います」と、わずかにタイムダウン。第2ヒートで浜選手を1秒以上引き離した岡本選手が今季3勝目を挙げ、自身初となる全日本チャンピオンが確定した。2位に浜選手、3位には開幕戦コスモスで全日本初優勝を飾った藤本隆選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が入賞し、SA2クラスはランサー勢が表彰台を独占した。

SA2クラス優勝は岡本泰成選手(DLアルテックおかつねランサー)。
第2ヒートで渾身の走りを披露した若手の岡本選手が逆転V。
2位は浜孝佳選手(XPL・ADVANランサー)、3位は藤本隆選手(YHワークS+APYランサー)。
SA2クラスの表彰台。左から4位の北村和浩選手、2位の浜選手、1位の岡本選手、3位の藤本選手、5位の荒井信介選手、6位のマイケルティー選手。
岡本選手が初の全日本チャンピオンを確定させた。20代の若手が台頭する最近の全日本ダートラにおいて、その傾向を象徴するようなチャンピオン確定となった。

SC2クラス

 チャンピオン候補が亀田幸弘選手(スバル・インプレッサ)と目黒亮選手(トヨタ・GRヤリス)に絞られたSC2クラス。目黒選手は優勝に加え亀田選手が3位以下であれば逆転チャンピオンの可能性があり、逆に亀田選手は目黒選手が優勝しても2位に入賞すればチャンピオンを確定できるという有利な状況だ。

 だが、これまで亀田選手はテクニックステージを10年近く走行しているが、過去の最上位は4位と相性が悪いコースのひとつだ。どちらが主導権を握るのかが注目される中、第1ヒートは目黒選手が3番手、亀田選手は5番手につける。注目の第2ヒートは、第1ヒートのトップを奪った地元の伏兵、古屋慶己選手(三菱・ランサーエボリューションIX)がベストタイムをさらに更新してくる。一方、逆転チャンピオンを狙う目黒選手は、中間ベストを刻むものの後半のタイムが伸びず、この時点で古屋選手に0.071秒差の2番手。亀田選手の全日本初チャンピオンが決まった。

 スタート前にこのことを知った亀田選手は、「いろいろなプレッシャーから解放され、気持ちが楽になりました」と全開で攻め、ベストタイムを更新。2位に食い込んだ上村智也選手(三菱・ランサーエボリューションX)、3位の吉村修選手(三菱・ランサーエボリューションX)、結果的に4位となった古屋選手、5位の目黒選手のトップ5台が0.685秒の中にひしめき合うという大接戦を制した亀田選手が、自身初となる全日本チャンピオン確定を、優勝で決めた。

SC2クラス優勝は亀田幸弘選手(YH栗原オート企画インプレッサ)。
相性が悪いと思われていたタカタで優勝を果たした亀田選手。
2位は上村智也選手(ナナハitzzYHランサー)、3位は吉村修選手(FORTECナビクDLランサー)。
SC2クラスの表彰台。左から4位の古屋慶己選手、2位の上村選手、1位の亀田選手、3位の吉村選手、5位の目黒亮選手、6位の坂田一也選手。
亀田選手が初の全日本チャンピオンを確定させた。チャンピオン確定が分かっていた第2ヒートではプレッシャーから解放されて快走。ベストタイムを更新しての勝利となった。

PNE1クラス

 PNE1クラスは、逆転チャンピオンを狙う葛西キャサリン伸彦選手(スズキ・スイフトスポーツ)が両ヒートでベストタイムをマークして優勝。有効得点と有効得点内で高得点を獲得した回数もシリーズランキングトップの小山健一選手と同点に並んだが、規定によりすべての得点の中で高得点を獲得した回数が多い、今回2位に入賞した小山選手が2018年以来2回目の全日本チャンピオンを確定させることとなった。

PNE1クラス優勝は葛西キャサリン伸彦選手(YHGC ATSスイフトRSK)。
葛西キャサリン伸彦選手が両ヒートとも2位以下に1秒以上の差をつけ勝利。
2位は小山健一選手(ADLベリティ―MSスイフト)、3位はハンター大谷ヒロシ選手(DLカジオカWMスイフトS+)。
PNE1クラスの表彰台。左から4位のジャスミン ふみ選手、2位の小山選手、1位の葛西キャサリン伸彦選手、3位のハンター大谷ヒロシ選手、5位の山部恭裕選手。
小山選手が2018年SA1クラス以来となる2度目のチャンピオンを確定させた。

PNE2クラス

 クラスは不成立ながらも、クラスが新設されて以来、初めてのエントリーがあったPNE2クラス。SC2クラスで活躍していた杉尾泰之選手が、トヨタ・GRヤリスのGR-DAT仕様車で出場。ATの4WDクラスに新たな可能性を示した。

PNE2クラス新設以来初となる参戦を敢行した杉尾泰之選手(フォルテックオクヤマ小松ヤリス)。

PN2クラス

 PN2クラスは、第7戦でタイトルを確定させた佐藤卓也選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、両ヒートを制する走りで第5戦切谷内から通算4連勝を獲得。今シーズンを最高の形で締めくくった。2位には、第1ヒート10番手から第2ヒートはトップに0.078秒まで迫った昨年のチャンピオン、中島孝恭選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞。3位には、2021年&2022年チャンピオンの谷尚樹選手が、昨年の開幕戦以来となる表彰台を獲得した。

PN2クラス優勝は佐藤卓也選手(DLΩKYBオクヤマ・スイフト)。
前戦で全日本チャンピオンを確定させた佐藤選手が勝利して有終の美を飾った。
2位は中島孝恭選手(DLルブロスTEIN☆スイフト)、3位は谷尚樹選手(猫♂YH♀ガレクロ☆スイフト)。
PN2クラスの表彰台。左から4位の山田将崇選手、2位の中島選手、1位の佐藤選手、3位の谷選手、5位の濱口雅昭選手、6位の川島秀樹選手。

SA1クラス

 SA1クラスは、すでにチャンピオンを確定させている河石潤選手(スズキ・スイフトスポーツ)がクラス8位に低迷する中、第1ヒート5番手の内藤修一選手(スズキ・スイフトスポーツ)が第2ヒートで逆転優勝。「地元(北海道)のスナガワ以外で初めての優勝です」という今季2勝目を果たした。2位には、第1ヒート6番手から追い上げた地元期待の若手、北野壱歩選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞。3位には、第1ヒートでトップを奪った横内由充選手(トヨタ・MR2)が入った。

SA1クラス優勝は内藤修一選手(DL☆XP☆SCENEスイフト)。
第2ヒートのタイムで逆転勝利し、今季2勝目を挙げた内藤選手。
2位は北野壱歩選手(スノコTAPS505スイフト藤)、3位は横内由充選手(e 'Tune☆YH久與MR2)。
SA1クラスの表彰台。左から4位の福山重義選手、2位の北野選手、1位の内藤選手、3位の横内選手、5位の渡邉知成選手、6位の志村雅紀選手。

SC1クラス

 SC1クラスは、第7戦丸和で2年連続4回目のタイトル獲得を決めた山崎迅人選手(三菱・ミラージュ)が、第2ヒートの逆転で今季3勝目を獲得。2位には、「第2ヒートは攻めきることができました。ベストを尽くせたと思います」という山下貴史選手(三菱・FTO)が入賞。3位には、「第1ヒートはトップでも第2ヒートで逆転されるという、いつもの展開です。自分なりには一生懸命走ったのですが、なんとかしたいですね」と嘆く深田賢一選手(ホンダ・シビック)が入賞した。

SC1クラス優勝は山崎迅人選手(YHマックスゲンシンミラージュ)。
前戦でチャンピオンを確定させた山崎選手が勝利し、今季3連勝となった。
2位は山下貴史選手(YHセラメタμnagi FTO)、3位は深田賢一選手(BFAベリティYHセラシビック)。
SC1クラスの表彰台。左から4位の鶴岡義広選手、2位の山下選手、1位の山崎選手、3位の深田選手、5位の坂井秀年選手、6位の松田宏毅選手。

Dクラス

 第7戦丸和で2年連続5回目のチャンピオンを確定させている田口勝彦選手(三菱・ランサーエボリューションX)が、公開練習で転倒という波乱の展開となったDクラス。田口選手の車両はメカニックの懸命な修復により決勝を走ることができたが、転倒した際に大型のリアウイングとフロントのカナードを失ったことも影響し、4位に終わる。「中間地点までにひとつ失敗したけど、後半はうまく攻めることができた」という鎌田卓麻選手(スバル・BRZ)が優勝。中間地点まではベストタイムを刻みながらも、「後半で2か所失敗した」という炭山裕矢選手(三菱・ミラージュ)が、0.155秒差で2位、「ゴール手前のバンクを攻めすぎて、駆け上がってしまった」という谷田川敏幸選手(スバル・BRZ)が2位の炭山選手から0.136秒差の3位、4位の田口選手が3位の谷田川選手から0.098秒差と、Dクラスは最終戦も目が離せない戦いが繰り広げられた。

Dクラス優勝は鎌田卓麻選手(WMオクヤマDL栗原企画BRZ)。
接戦が展開される中、第1ヒート13番手からの逆転で鎌田選手が優勝した。
2位は炭山裕矢選手(ZEALbyTSDLミラージュ)、3位は谷田川敏幸選手(トラストADVANクスコBRZ)。
Dクラスの表彰台。左から4位の田口勝彦選手、2位の炭山選手、1位の鎌田選手、3位の谷田川選手、5位の亀山晃選手、6位の須藤正人選手。

フォト/CINQ、大野洋介 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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