混迷を極めたタイトル争いが最終戦でついに決着! 各クラスでチャンピンが確定
2024年10月23日
国内カートレースの最高峰、全日本カート選手権 OK部門の2024シリーズを締めくくる第9戦/第10戦が10月12~13日、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット南コースで開催された。第9戦ではスポット参戦の鈴木斗輝哉選手が独走でポール・トゥ・ウィン、第10戦では武藤雅奈選手が3勝目を獲得。そして、この大会を3位と2位でまとめた酒井涼選手がシリーズチャンピオンに確定した。
2024年JAF全日本カート選手権 OK部門 第9戦/第10戦
2024年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第9戦/第10戦(ラウンドシリーズ1)
2024 AUTOBACS GPR KARTING SERIES
開催日:2024年10月12日~13日
開催地:鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)
主催:SMSC、GPR
GPR KARTING SERIESのOK部門にかけられた全日本カート選手権OK部門のタイトル争いは、いよいよ最終決戦を迎えた。鈴鹿大会には今季初参戦の4名のスポット参戦もあり、参加台数は今季最多タイの31台。スポット参戦組の中には佐々木大樹選手、朝日ターボ選手、鈴木選手といった名うてのカーターたちの名前が含まれている。
ポイントリーダーとしてこの大会に臨むのは、第4戦の瑞浪大会での優勝を含め3回の表彰台を獲得している16歳の酒井涼選手。それに酒井涼選手の兄で、18歳の酒井仁選手が僅差で続いている。酒井涼選手は今回の鈴鹿大会のレースを1位と3位以上で終えれば自力チャンピオン確定という状況だ。
そしてランキング3番手と4番手にはベテランのふたり、皆木駿輔選手と三村壮太郎選手がつけている。さらに酒井龍太郎選手、武藤選手、吉田馨選手、佐藤佑月樹選手、岡澤圭吾選手も戴冠の可能性を有しており、2024シリーズのタイトル争いは9名による混戦となっていた。
FIA MOTORSPORT GAMES 2024 壮行記者会見
決勝日を翌日に控えた10月12日、パドックに設けられたGPRホスピタリティテントで、FIA MOTORSPORT GAMES 2024のカートカテゴリーに日本代表として派遣されるふたりのドライバーの壮行記者会見が行われた。このMOTORSPORT GAMESは、世界中から集まった選手たちがさまざまな競技と車種のモータースポーツを競い合う2年に一度の大会。いわばモータースポーツのオリンピックだ。その3回目を迎える今年の大会は、10月23~27日にスペイン・バレンシアで開催される。
7月13~14日に鈴鹿南コースで行われた当シリーズのOK部門及びジュニア部門の第5戦/第6戦は、派遣ドライバーの選出レースとして行われ、ふたつのレースで最多の合計ポイントを獲得したOK部門の土橋皇太選手(17歳)とジュニア部門の澤田龍征選手(13歳)が、JAFのバックアップのもとTeam JAPANとしてメンバーに選出された。土橋選手が出場するカテゴリーはKARTING SPRINT SENIOR、澤田が出場するカテゴリーはKARTING SPRINT JUNIORだ。
このドライバー派遣プロジェクトではアネスト岩田株式会社がメインパートナーに、CVSTOS(ワールド通商株式会社)がスペシャルパートナーになり、各選手にエントリーフィー、マテリアルパッケージ、保護者とメカニック1名を含む航空券と宿泊費、レーシングスーツ、チームウェアなどのサポートが与えられる。
土橋選手と澤田選手は、大会で着用するレーシングスーツを身に纏って壮行会の会場に登場し、スペイン遠征に向けての意気込みや抱負を語った。完成したてのレーシングスーツは、日本国旗の白/赤をベースにパートナー企業2社のコーポレートカラーを配色し、選手たちの意欲を高められることを意識してデザインされたのだという。スペインでのレースに挑む両選手にエールを送りたい。
KARTING SPRINT SENIOR 土橋皇太選手
KARTING SPRINT JUNIOR 澤田龍征選手
全日本カート選手権OK部門 第9戦/第10戦
秋の深まる10月半ばを迎え、朝晩は空気がキンと冷えているのだが、昼前あたりになると夏を思わせるような強くまぶしい日差しがサーキットに降り注ぐ。決勝日の空は快晴、雲ひとつない絶好のレース日和だ。第9戦のスターティンググリッドを決めるタイムトライアル形式の予選は、全車をふたつのグループに分けて行われた。
Aグループでは、昨年のGPRシリーズのOK部門で圧倒的な強さを発揮してチャンピオンに輝いた鈴木選手がトップタイムをマーク。Bグループでは中野駿太選手が最速となった。この各グループの上位4名ずつは、続いて行われるスーパーポールに進出、単独走行での2周タイムアタックに望んだ。最終出走の鈴木選手はここでも相変わらずの速さを見せつけ、先に走った7台のタイムを更新して第9戦のポールシッターとなった。2番手は酒井涼選手。それに続いたのは酒井龍太郎選手と佐藤選手だ。
第9戦は18周。そのスタート直後の2コーナー先で多重アクシデントが発生し、タイトル争いの渦中にいた皆木選手と三村選手がこれに巻き込まれてしまった。好発進で2番手に上がったのは酒井龍太郎選手。それを酒井涼選手がオープニングラップのうちに抜き返す。背後で移り変わる状況を尻目に、ポールの鈴木選手は1周目で0.7秒ほどのリードを得ることに成功した。酒井龍太郎選手は2周目からペースが落ち、ずるずる順位を下げると6周目の終わりにピットロードへ入ってレースを終えた。
レースが残り3分の1に入ると、鈴木選手と酒井涼選手の間隔が開き始める。一方、酒井涼選手には序盤で5番グリッドから3番手に浮上した武藤選手が接近。武藤選手は残り4周で酒井涼選手のテールを捕らえると、翌周にオーバーテイクを決めて2番手に上がった。
1秒強のリードで最終ラップに入った鈴木選手は、ピンチとは無縁のまま18周を走り切ってチェッカーへ。四輪レースにステップアップしてFIA-F4が主戦場となった今でもまったく衰えないカートドライブの腕前を見せつけて、完勝を飾った。
2位フィニッシュの武藤選手は、前大会の2連勝に続く3戦連続の表彰台獲得。酒井涼選手は3位でゴールしてポイントリーダーの座を堅守した。4・5位は佐藤選手と酒井仁選手だ。この結果、タイトル争いに生き残ったのは酒井涼選手と酒井仁選手のみ。2024シリーズ最終レースのチャンピオン争奪戦は兄弟対決となった。酒井涼選手は、次の第10戦で4位以内に入れば自力チャンピオン確定だ。
第9戦のベストラップ順で決まった第10戦のグリッドは、武藤選手がポール、酒井涼選手が2番グリッドに並ぶこととなった。2列目は佐々木選手と佐藤選手。それに鈴木選手と酒井仁選手が続いた。ところが第10戦の開始間際、思わぬ事態が起こる。整備や調整を終えたマシンをパドック・コースエリアに運び込む締め切り(ゲートクローズド)の時間に鈴木選手のマシンが間に合わず、鈴木選手が出走できなくなってしまったのだ。
有力な優勝候補がつくはずだった5番グリッドを空けたまま、22周の第10戦は始まった。グリッド上位3席のマシンはポジションキープでスタート。酒井仁選手が2ポジションアップで4番手に上がってきた。その後方では佐藤選手、吉田選手、菊池貴博選手、朝日選手がホットなバトルを展開。これでトップ4と5番手以下の間には大きな間隔が開いた。
上位4台は0.5秒前後の等間隔でラップを重ねていったが、レースが折り返し点を迎えると、4番手の酒井仁選手が集団から後れを取り始める。一方、3番手の佐々木選手は2番手の酒井涼選手に接近。逆にトップ武藤選手と酒井涼選手のギャップは0.6秒強に広がった。
緊迫のチェイス合戦を続けてきた先頭集団の戦いは、ここで終結。ポールからトップを譲ることなく走り抜いた武藤選手は、最終ラップの最終コーナーを立ち上がると力強くガッツポーズを掲げて勝利のチェッカーをくぐった。15歳のルーキーが、シリーズ最多勝の3勝目を獲得だ。
酒井涼選手は佐々木選手の追撃を振り切って2位でフィニッシュ。マシンを選ばぬ速さで知られるベテランの佐々木選手は、初乗りのCRGでもさすがの腕前を披露して、1年ぶりのGPR参戦で3位表彰台をゲットしてみせた。酒井仁選手は先頭集団からは離されたものの、4位の位置を守ってゴールした。この結果、酒井涼選手がチャンピオンに確定して2024シリーズは幕を閉じた。
ジュニアカート選手権ジュニア部門 第9戦/第10戦(ラウンドシリーズ1)
同時開催のジュニア選手権・ランドシリーズ1も、この大会が2024シリーズ最後の戦いだ。ジュニア部門には15台が参加。ポイントリーダーの前田蒼介選手は、どちらかのレースで1位を獲ればチャンピオンを確定できる状況だ。同じく今季2勝の横山輝翔選手が僅差でそれに続いている。澤田龍征選手と坂野太絃選手も、少なくない戴冠の可能性を持ってここに参戦。中西凜音選手、関口瞬選手、楠本心真選手もタイトル獲得の権利を有しており、チャンピオン争いは7名による戦いとなった。
第9戦は中西選手、澤田選手、坂野選手が激しいバトルを展開。レースが終盤に入ると、そこに5番手以降のマシンも接近して、上位8台がズラリと一列に連なった。この実力伯仲の戦いを制したのは澤田選手。最終ラップの逆転で2位は中西選手の手中に入り、坂野選手は3位となった。一方、予選で10番手に留まった前田選手は、6番手まで順位を上げてゴールし、前2台のペナルティによって4位の結果に。これでチャンピオン候補は前田選手と澤田選手の2名に絞られた。
第10戦のグリッドは、ポールが森谷永翔選手、2番手が前田選手。澤田選手は関口選手に続く4番グリッドだ。レースは1周目から森谷選手が抜け出し、それを5番グリッドから浮上の横山選手らが追う展開に。森谷選手は一時0.7秒ほどあったリードを終盤に削り取られたものの、先頭の座を守り切って初優勝を遂げた。2位は横山選手で、澤田選手は3位でフィニッシュ。前田選手は序盤に順位を下げて6位でこのレースを終えた。
全10戦を終了した結果、前田選手と澤田選手はどちらも有効シリーズポイントが112点の同点となり、優勝回数もともに2回。ただ、2位の回数で前田選手2回、澤田選手1回と差がつき、2024シリーズのチャンピオンは前田選手に確定した。
ジュニアカート選手権ジュニアカデット部門 第9戦/第10戦(ラウンドシリーズ1)
ジュニアカデット部門には大量27台が出場した。この部門では藤原迪永選手が3勝を挙げてポイントレースをリード。各々2勝の林樹生選手と新橋武選手がそれに続いて、この3名でチャンピオンの座が競われることとなった。
ふたつのレースで1位と2位以上になることが逆転タイトルへの絶対条件だった新橋選手は、予選でトップタイムをマークすると、第9戦でも大集団のトップ争いを勝ち抜いて3勝目を獲得した。2位は今村昴星選手、3位は飯田一仁選手。林選手は5位、藤原選手は10位でこのレースを終えた。
第10戦では、5番グリッドからスタートした女性ドライバー島津舞央選手が先頭に躍り出ると、一気に独走状態へ持ち込みそのままフィニッシュ。昨年のコースシリーズ(琵琶湖・石野・神戸シリーズ)チャンピオンの島津選手が、全国シリーズでもついに勝利を果たした。
新橋選手は一時8番手に沈むが、見事な挽回で2位を獲得。林選手は1周目の多重クラッシュに巻き込まれて0周リタイアに、藤原選手は6位でレースを終えた。この結果、藤原選手と新橋選手は有効得点がともに117点で同点首位となり、有効得点にカウントされる5つのレースの順位もまったく同じに。この場合は最終戦の結果の優劣でランキングが決まるため、新橋選手のチャンピオン確定でシリーズが決着した。
Rok CUP JAPAN RokSHIFTER 第9戦/第10戦
GPR KARTING SERIESの一部門として行われたShifterには、12名のミッションカートユーザーたちが参加した。その第9戦では、丸山陽平選手が2番グリッドからのスタートでトップを奪い、以降のラップを独走して優勝を飾った。ポールの伊藤慎之典選手は2位。松下信治選手が3位入賞で今季のGPRチャンピオン獲得を決めた。そして第10戦のポールとなった丸山選手は、ここでもじわじわとリードを広げて2連勝。松下選手が2位、スタートでのポジションアップに成功した鈴木悠太選手が3位に入賞した。
各クラスのドライバー表彰が終わると、GPR独自のチーム表彰となった。これは全ての部門において、チームに所属するドライバーの決勝ヒートにおける最大得点獲得者1名の得点がチーム得点として付与され、その得点合計によりシリーズ順位が決定するものだ。
OK部門は伊藤聖七選手、佐藤佑月樹選手、武藤選手、春日龍之介選手を擁するYAMAHA MOTOR Formula Blueに、ジュニア部門は澤田選手、横山選手を擁するPONOS HIROTEX RACINGに、ジュニアカデット部門は藤原迪永選手を擁するSD-STYLEに、Shifterは松下選手を擁するTony Kart R.T.J.にトロフィーと賞典が贈られた。
フォト/JAPANKART、長谷川拓司 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部