天候不良によるワンデイイベントは波乱のレースに。GT500はDENSO KOBELCO SARD GR Supraが逆転優勝!
2024年10月24日
スーパーGTシリーズ第7戦は10月18~20日にオートポリスで開催され、19日は悪天候と視界不良によりすべての予定がキャンセルとなり、20日のワンデイイベントとなった。3時間のタイムレースはアクシデントなどでセーフティカー(SC)が4回も出される展開となり、GT500クラスはSCをタイミングよく使えたDENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一組)が逆転優勝。GT300クラスはライバルのペナルティもあり、VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)が逆転で今季2回目の優勝を遂げた。
2024 SUPER GT Round 7 AUTOPOLIS GT 3Hours RACE
開催日:2024年10月18~20日
開催地:オートポリス(大分県日田市))
主催:APC、株式会社GTアソシエイション、株式会社オートポリス
例年のオートポリスラウンドは、最終戦のひとつ前に組み込まれるためサクセスウェイトが半減となるが、今季は第5戦鈴鹿が12月に延期になったため、サクセスウェイトはフルのままで戦うことになった。また昨年は450kmレースとして開催されたが、今年は3時間レースでさらに長い距離を走ることとなり、タイヤの摩耗やピックアップ症状がどうレースに影響をもたらすかに興味が持たれた。
19日は朝からサーキット全体が雲の中に入り、視界不良のために公式練習はキャンセルとなり、午後の公式予選も各クラス45分のみでドライバーも1名の走行だけでOKとなった。しかしこの予選前に雷を伴った大雨となりキャンセル。予選は20日朝に行われることになった。
予選
20日朝もサーキットは深い霧に包まれたが、次第にそれも晴れて予定どおり8時から各クラス30分のみ(ドライバー1名)のセッションとなった。
最初に行われたGT300クラスは気温10度、路面温度13度でウェット路面というコンディションで、ウェットタイヤかスリックタイヤの選択も難しかった。なかなかタイヤが温まらない中、残り7分で1台の車両がクラッシュを喫し、赤旗が掲示されてセッションが中断。残り7分はアタック合戦となり、ポールポジションを獲得したのはUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン組)で、ムンタン選手もフェラーリも初のポール獲得となった。2番手はリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)、3番手はD’station Vantage GT3(藤井誠暢/チャーリー・ファグ組)、4番手はK-tunes RC F GT3(新田守男/高木真一組)とフロントローはヨコハマタイヤ、セカンドローはダンロップタイヤが占めた。
8時30分すぎから始まったGT500クラスの予選は、路面が乾いてきたがほとんどの車両がウェットタイヤでコースイン。一旦コースを確認した各車はピットイン、スリックタイヤに交換してアタックに入った。ここでトップタイムをマークしたのはリアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生/名取鉄平組)の名取選手だった。この後、名取選手のタイムを更新する車両はなく、名取選手はGT500クラス初ポールを獲得した。2番手はMOTUL AUTECH Z(千代勝正/ロニー・クインタレッリ組)でZ勢がフロントローを独占。3~6番手はENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺組)、Astemo CIVIC TYPE R-GT(塚越広大/太田格之進組)、Niterra MOTUL Z(高星明誠/三宅淳詞組)、ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(大津弘樹/佐藤蓮組)となった。
決勝
GT500クラス
決勝レースは当初の予定より20分遅れの13時20分にパレードラップが始まった。天候は薄曇りで雨の心配はなさそうだったが、北寄りの風が強く冷たい。気温17度、路面温度24度というコンディションで13時26分にスタートが切られると、ダッシュ良くENEOS X PRIME GR Supraの福住選手が2番手を奪った。しかしそこからタイムは上がらず、リアライズコーポレーション ADVAN Zの松田選手が2番手以下を引き離す形に。すると2周目のジェットコースターストレートを下った60RでMOTUL AUTECH Zの千代選手が福住選手から2番手を奪回。福住選手は6周目にもAstemo CIVIC TYPE R-GTの塚越選手にかわされて4番手に順位を落とすことになった。
11周目にトップに追いついたMOTUL AUTECH Zの千代選手 は、12周目の第2ヘアピンでオーバーテイクしてトップに立つと、後続を引き離しにかかり、22周目には2番手に約21秒の差をつけ独走状態となった。しかし、23周目の日立Astemoコーナー(第1ヘアピン)でWedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組)がコースオフしてストップすると、フルコースイエロー(FCY)となり3分後にはSC導入。これで千代選手が築いた20秒以上のマージンは消えてしまった。
隊列を組み直して28周完了時点のリスタートでは、MOTUL AUTECH Zがここでもダッシュ良くトップを守る。リアライズコーポレーション ADVAN Z、Astemo CIVIC TYPE R-GT、10番手スタートから大きく順位を上げていたDENSO KOBELCO SARD GR Supraの3台が2番手争いを展開。スタートから1時間が経過した33周目にはトップのMOTUL AUTECH Zがピットインを済ませた。次の周にリアライズコーポレーション ADVAN Z、DENSO KOBELCO SARD GR Supraが、さらにその次の周にはAstemo CIVIC TYPE R-GTがピットインを済ませると、37周目にはMOTUL AUTECH Zの千代選手が再びトップに立った。
直後の100Rで7番手を争っていたENEOS X PRIME GR SupraとAstemo CIVIC TYPE R-GTが接触。Astemo CIVIC TYPE R-GTはコースアウトしてタイヤバリアにクラッシュ。これで2回目のSCランとなった。42周完了でリスタートするとMOTUL AUTECH Z、Niterra MOTUL Z、MARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)とトップ3をZが独占。これにポイントリーダーで9番手スタートのau TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太組)、DENSO KOBELCO SARD GR Supraが続いた。
52周目、セクター3の上りS字区間でDENSO KOBELCO SARD GR Supraの中山選手がau TOM’S GR Supraをかわして4番手に順位を上げた。レースが2時間を経過した60周で2番手に15秒近い差をつけていたMOTUL AUTECH ZとMARELLI IMPUL Zが2回目のピットイン。次の周にはNiterra MOTUL ZとDENSO KOBELCO SARD GR Supraもピットイン。すると3コーナーでModulo CIVIC TYPE R-GT(伊沢拓也/大草りき組)がクラッシュを喫し、この日3回目のSC導入となった。タイミングよくピットインしていたDENSO KOBELCO SARD GR Supraはドライバー交代をしなかったこともあり、Niterra MOTUL Zよりも先、しかも実質トップだったMOTUL AUTECH Zの前でコースに戻っていた。
67周完了でリスタートすると、DENSO KOBELCO SARD GR Supra、MOTUL AUTECH Z、STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任佑組)、Niterra MOTUL Zの順でトップ4を形成。やがてDENSO KOBELCO SARD GR Supraがリードを広げ、トップの座を安泰にしていった。終盤86周目の1コーナーでNiterra MOTUL ZがSTANLEY CIVIC TYPE R-GTをかわして表彰台圏内へ。すると第2ヘアピンでGT300車両がクラッシュ。すぐにFCYとなり4回目のSC導入に。さらに残り9分という時点のファイナルコーナースタンド前で、リアライズコーポレーション ADVAN Zが駆動系トラブルでストップ。レースはSC先導のまま92周でチェッカーとなった。
DENSO KOBELCO SARD GR Supraは3回目のSCで逆転し、2020年第5戦富士以来4年ぶりの優勝を飾った。2位はレースのほとんどを支配したがSC導入のたびにマージンを失ったMOTUL AUTECH Z、3位はNiterra MOTUL Zだった。ポイントリーダーはau TOM’S GR Supraで変わりはないが、2番手以下との得点差が詰まるかたちとなった。
GT300クラス
GT300クラスはポールシッターのUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARIがやや遅れる間にリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rのオリベイラ選手が前に出るも、D’station Vantage GT3の藤井選手がオープニングラップで先頭に立った。そして5周でGreen Brave GR Supra GT(吉田広樹/野中誠太組)とマッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号(塩津佑介/藤波清斗組)が早々に1回目のピットインを済ませた。また9周目にはmuta Racing GR86 GT(堤優威/平良響組)もピットインを済ませた。
上位争いは6周目にK-tunes RC F GT3の高木選手がリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rを捕らえて2番手へ。さらに11周目の第2ヘアピンでトップに立った。またポイントリーダーで予選7番手のLEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗/黒澤治樹組)が10周目に3番手へ順位を上げた。しかし16周目の第2ヘアピンでapr LC500h GT(小高一斗/中村仁/根本悠生組)の小高選手が蒲生選手をかわすと、D’station Vantage GT3との3台で2番手争いを展開。19周目には小高選手が2番手へ順位を上げた。
21周目にGT500車両がストップしたことでFCYからSC導入へ。これで1回目のピットインを済ませていた車両が有利な展開になった。26周完了でリスタートするとD’station Vantage GT3がピットイン。レースが1時間を経過した30周目にはLEON PYRAMID AMG、33周目にトップのK-tunes RC F GT3、2番手のapr LC500h GTがピットインすると、ここで早めにピット作業を済ませていたmuta Racing GR86 GTがトップに立つことに。2番手はまだ最初のピットインを済ませていないMETALIVE S Lamborghini GT3(松浦孝亮/坂口夏月組)、3番手はマッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号に。
35周目にGT500クラス車両のクラッシュにより2回目のSC導入となり、40周完了でリスタートするとMETALIVE S Lamborghini GT3がピットイン。次の周にマッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号とapr LC500h GTが激しい2番手争いを演じたが、マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号は43周で2回目のピットイン。その後、ドライブシャフトが折れてリタイアとなってしまった。
トップのmuta Racing GR86 GTは2番手に15秒近い差をつけ、48周で2回目のピットインをして堤選手に交代した。これでSUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)がトップに。2番手のVENTENY Lamborghini GT3は55周で2回目のピットインを済ませた。
57周目、実質的なトップを走るmuta Racing GR86 GTに対してドライブスルーのペナルティが宣告された。2回目のSC後のリスタート時、GT500車両の最後尾との差を広げすぎていたためだった。
58周目に3回目のSC導入となり、62周でリスタートすると上位陣が一斉に2回目のピットイン。muta Racing GR86 GTも次の周にペナルティ消化のためにピットインし、そのまま4番手でコースへ復帰した。
この時点でトップはVENTENY Lamborghini GT3で、2番手はUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI、3番手はHOPPY Schatz GR Supra GT(菅波冬悟/松井孝允/佐藤公哉組)、4番手がmuta Racing GR86 GT。muta Racing GR86 GTの堤選手は72周目に3番手、75周目のセクター3で2番手を奪ったが、トップとは20秒以上の差があった。終盤の81周目、第2ヘアピンでSUBARU BRZ R&D SPORTが激しくクラッシュ。これでFCYから4回目のSC導入へ。レースはそのまま88周でチェッカーとなり、VENTENY Lamborghini GT3が第2戦富士以来となる今季2勝目を挙げ、タイトル争いに名乗りを上げた。2位はmuta Racing GR86 GT、3位はK-tunes RC F GT3だった。
この結果、ポイントリーダーは6位だったLEON PYRAMID AMGの蒲生/藤原組で変わりはないが、はmuta Racing GR86 GTの堤/平良組とのポイント差は5に縮まることとなった。
次の第8戦もてぎは、300kmレースとして11月1~3日に開催予定。サクセスウェイトは半減となる。また最終戦として開催される第5戦鈴鹿(12月6~8日)も、300kmレースとして開催されることが発表された。
フォト/遠藤樹弥、吉見幸夫、株式会社GTアソシエイション レポート/皆越和也、JAFスポーツ編集部