3シーズン目を迎えて盛り上がりを見せたXCRスプリントカップ北海道が表彰式を開催!
2024年10月29日

1月のスノーラリーで開幕して広大な北海道の大地を舞台に全6戦の熱戦が繰り広げられた、三季目を迎えたXCRスプリントカップ北海道。10月13日に最終戦を終えて、2024シーズン表彰式が帯広市内にて開催された。
2024年XCRスプリントカップ北海道
シリーズ表彰式
開催日:2024年10月13日
開催地:ホテルグランテラス帯広(北海道帯広市)
主催:XCRスプリントカップ北海道事務局
XCRスプリントカップ北海道(XCR)の表彰式は過去2シーズン、最終戦が行われた当日夜に開催されてきたが、今季もそのかたちを踏襲。陸別町を拠点に開催された第6戦「とかち2024」を終えたクルーや関係者たちが帯広市内へ移動し、式に臨んだ。
今季は1月28日に開催された2024年JAF北海道ラリー選手権 第1戦と併催の「第38回EZO ENDLESS RALLY」で開幕し、2月には第2戦「北海道ブリザードラリー」が同じく地区戦と併催で行われ、スノーラウンド2戦を消化。
約4カ月半のインターバルを経て、2024年JAF全日本ラリー選手権 第6戦と併催した第3戦「2024 ARKラリーカムイ」からグラベルラウンドに突入した。9月には第4戦「RALLY HOKKAIDO」で全日本と、第5戦「RALLY EAST-IBURI 2024」で地区戦と併催し、地区戦の最終戦も担った第6戦「とかち2024」でシリーズの幕を閉じた。
今季は特にXC-2クラスが賑わいを見せ、第3戦では竹岡圭/山田政樹組が三菱・トライトンをデビューさせた他、マツダCX-5も寺川和紘/石川美代子組のドライブによってシリーズ初参戦を果たした。続く第4戦ではこの2台に加え、2023シーズンのRALLY HOKKAIDOウィナーである川畑真人/中谷篤組がトライトンでスポット参戦。今季最多となる9台のエントラントがバトルを展開した。
またXC-3クラスも、第3戦でスズキ・ジムニー/ジムニーシエラ勢が急増。第4戦では参加7台中6台がジムニー勢となり、その一台である奈良裕/花田圭一組が、このクラスで常勝を誇ってきたドライバー、トヨタ・ライズを駆る塙郁夫選手とコ・ドライバーの佐竹尚子選手を破るという快挙を成し遂げた。全日本と併催されるラリーでは過去2季も台数増加の動きはあったが、今季は過去最高の盛り上がりを見せた。



表彰はまずXC-1クラスから始まり、第4戦から3戦続けてトップフィニッシュを果たした惣田政樹/猿川仁組にカップが手渡された。惣田/猿川組の今季はスノーラウンドをパス。グラベルラウンドが始まった第3戦から参戦したが、その初戦では車両トラブルでリタイア。しかし、第4戦からは完走を続けてポイントを重ねての戴冠となった。

続いて行われたXC-2クラスでは、ランキング3位までのドライバーとコ・ドライバーが表彰を受けた。このクラスは、三菱・エクリプスクロスPHEVを操る浅井明幸/笠井開生組がスノーラウンドで二連勝と好スタートを切ったが、第3戦から参戦を開始した、トヨタ・ハイラックスをドライブする番場彬/梅本まどか組が全日本と併催の2戦で連勝。浅井/笠井組と勝ち星で並んだ番場選手は、第5戦では高橋芙悠選手と、最終戦では加勢直毅選手をコ・ドライバーに迎えてともに優勝を果たし、4連勝でシリーズを終えた。
この結果、ドライバー部門では番場選手が浅井選手を2ポイント差で上回り、チャンピオン防衛に成功。浅井選手に続く3位は、番場選手が2024シーズンまで駆ったハイラックスを継いだ羽根田琴選手が受賞した。またコ・ドライバー部門では笠井選手が二季連続でチャンピオンを獲得。2戦2勝の梅本選手が2位、加勢選手が3位に入った。


XC-3クラスは、今季はスノーラウンドの2戦目となる第2戦から参戦を開始した塙郁夫/佐竹尚子組が2季連続のチャンピオンを獲得した。ドライバー部門の2位には、第3戦からスズキ・ジムニーを駆って参戦した二輪トライアルとの“二刀流”小玉絵里加選手が入賞。3位には第3戦と第4戦に参戦したジムニー勢の一角、塙雄大選手が入った。
コ・ドライバー部門では、小玉選手のサイドシートに座り、最終戦では小玉選手の代役として出場したHA RU選手ともクルーを組んだ槻島もも選手が、二季連続となる2位を獲得した。そして、3位は塙雄大選手のコ・ドライバーを務めた笹田真弓選手が受賞した。


3クラス制を敷いて二季目となる今季は、昨季は不成立に終わったXC-1も成立して全クラスでチャンピオンが生まれるなど、更なる盛り上がりを見せたXCRスプリントカップ北海道。
式の最後でオーガナイザーを代表して挨拶した槙田龍史氏は、アジアの代表的なクロスカントリーラリーとして知られるアジアクロスカントリーラリーとの連携に向けた動きを開始したことを表明するなど、XCRがスケールアップする可能性も見えてきた一年となった。

2024年XCRスプリントカップ北海道チャンピオンインタビュー

惣田選手は、クロスカントリーラリーの世界では第一人者として知られるドライバーで、XCRにも創設時から積極的に参戦している。「今年は、参加した初戦からクルマが壊れてしまったりしたので、やっぱりラリーは完走するのが大事であり、その意味でも、とても難しさも感じた一年でした。僕は、競技やってる人じゃなくて普通の人に、『旧いクルマでも楽しめるんだよ』ということを伝えたくて今年も出たんですけど、やっぱり旧いクルマなりの経年変化とかもあって、なかなかうまくいかなかった、というのが正直なところです。でもこうしたカテゴリーでも競技人口が増えて欲しいですがかといって、いきなり競技は敷居の高さを感じる人もいると思うので、そうした人達が親しみやすいような企画も考えながらこのシリーズに導いていけたら、と思っています」。

猿川選手はジムカーナに参戦する“スラローマー”として、地元・北海道では広く知られたドライバーだ。「ラリーのコ・ドライバーもやってきましたが、昨年から惣田さんのコ・ドライバーを務めるようになって、気がつくとすっかり、こっちのタイプのラリーのコ・ドラを務める方が多くなりましたね(笑)。旧いクルマですけど、ランドクルーザーは走破性が良いので荒れた道でもガンガン行けるというのは、コ・ドライバーとして乗っていても楽しいです。ペースノートもつくり方が大きく変わるわけではないのですが、そうした道に合わせて修正していく作業も楽しいので、また声がかかれば参加したいと思っています」。

僅差の戦いとなったXC-2のドライバーチャンピオン争いは4戦4勝と無敵の強さを見せた番場選手が、シリーズが創設された2022シーズンから見事にV3を達成した。「今年の車両は、参加を始めた第3戦の直前にシェイクダウンを兼ねたテストを行ったんですけど、そこで有意義なデータが得られたことを第3戦で実感できたので、その後は安心してシリーズを追うことができました。クルマ(のセッティング)はRALLY HOKKAIDOでほぼ決まってくれたので、その後の2戦はほぼ変更なしで走れました。最初のテストからチームの皆で色んなデータを出し合ってクルマをつくれたのが大きかったし、去年までの車両と比べても、凄く全体のバランスが取れたクルマになったと思います。今年は色々な意味でチャレンジングな年で、4戦を3人のコ・ドライバーと戦ったというのもそのひとつでしたが、梅本選手の情報の吸収力の高さと、一瞬で行動に移せる対応力には驚かされましたし、一方で自分が経験で得てきたことも伝えられたと思います。RALLY HOKKAIDOでは子どもたちの前でクルマを展示できたりして、このシリーズの盛り上がりを実感できましたが、その最前線にいれたというのが何より嬉しい一年でしたね」。

番場選手のトヨタ・ハイラックスをあと一歩のところまで追い詰めた浅井/笠井組の三菱・エクリプスクロスPHEVだったが、笠井選手は今季もコ・ドライバーチャンピオンを獲得した。「今年は第3戦のリタイアがなければ二人で獲れた可能性もあったので残念ですけど、何よりドライバーが頑張って走ってくれたお陰のチャンピオンなので、浅井選手には感謝したいと思います。自分は2年目ということで、特に路面などの情報については去年の経験をフィードバックしてドライバーに走ってもらえたかなとは思いますが、今年から新たに参加したライバルの方々のインカーなどを見ると、まだまだ車両も含めて改善できる余地があると痛感した一年でもありました。来年はちょっと隠居させてもらう予定ですが(笑)、チームが参加することになれば、これまでの経験を活かしてチャンピオンを狙いにいってほしいと思っています」。

ダカールラリー、バハ1000、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムなど名だたる海外のモータースポーツイベントに100戦以上参戦してきた塙選手は、昨季からXCRに参戦を始めた。「“そろそろ引退かな”とも思ったんだけど、その時に“そういえば国内のスプリントラリーだけはやってなかったな”って気づいたのが、きっかけになりました(笑)。でも、距離が長いから難しいとか、短いから簡単だということは決してなくて、どんな競技でもちゃんとやれば難しいし、面白いんだということをこのシリーズに出て改めて気づかされましたね。自分にとっては、またひとつ面白いカテゴリーを見つけられたという感じです。今年は何よりRALLY HOKKAIDOでジムニーのショップ関係者や、そこで走るドライバー達が出てくれたことが嬉しかった。でも彼らは皆、『日本にこんな大きなイベントがあったのを知らなかった』とも言ってたので、やっぱりこういう動きを徐々にでも広げていくことが大事ですよね。そもそもこのクラスがジムニーの一辺倒になってはつまらないから、自分は敢えてライズを選んだので、逆にジムニーの強者達には、俺を倒しに来いって、挑発したい(笑)。そうしたドライバーが増えることで、このクラスが盛り上がってくれれば一番ですね」。
フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部