竜虎相搏つ重要な一戦で菊池貴博選手が念願のチャンピオンを確定

レポート カート

2024年11月7日

2024年の地方カート選手権 もてぎシリーズを締めくくる第6戦が、10月27日に栃木県茂木町のモビリティリゾートもてぎ北ショートコースで開催された。決勝では酒井龍太郎選手がポールから独走して今季3勝目を達成。2位でフィニッシュした菊池貴博選手がチャンピオンに確定した。

2024年JAF地方カート選手権 もてぎシリーズ(FS-125部門) 第6戦
(2024 もてぎカートレース もてぎシリーズ 第6戦内)

開催日:2024年10月27日
開催地:モビリティリゾートもてぎ北ショートコース(栃木県茂木町)
主催:ホンダモビリティランド株式会社

地方カート選手権 もてぎシリーズ FS-125/X30

 地方カート選手権 もてぎシリーズは、モビリティリゾートもてぎ北ショートコースで行われるローカルレース、もてぎカートレースシリーズのFS-125/X30クラスに選手権がかけられたもの。今回の第6戦は、その2024シリーズの最後を締めくくるレースだ。

 朝方の空模様は曇り。夏の暑さはようやく去り、快適なレース日和となった。参加台数は13台。上級カテゴリーのドライバーたちに人気の高いシリーズ戦とあって、エントリーリストには全日本ドライバーの名前も多数見受けられた。

 シリーズは6戦中5戦を終了して、第4~5戦を連勝した菊池選手が110点を挙げてポイントリーダーに立っている。それに続くのは表彰台3回とコンスタントに結果を残してきた松居寿來選手。2勝を獲得しながら第5戦の欠場でポイントを伸ばせなかった酒井選手がランキング3番手につけている。

 戴冠の権利を持っているのは今季の全日本OK部門にもフル参戦したふたり、菊池選手と酒井選手だ。菊池選手は2位以内に入れば酒井選手の順位に関わらずチャンピオン確定。一方、酒井選手の逆転タイトルには2位以上のフィニッシュが必須で、あとは菊池選手の結果次第となる。

 予選のスターティングリッドを決するタイムトライアルでは、酒井選手が38秒590のトップタイムをマーク。菊池選手が0.08秒差で2番手につけた。3番手は松居選手。第1戦以来の参加となった森谷永翔選手が4番手に続いている。

 10周の予選では、酒井選手が危なげなくトップをキープしたまま走り切って決勝のポールを手中に。対して菊池選手はスタートで松居選手の先行を許すと、そのビハインドを挽回できないまま10周を終えた。決勝グリッドの2番手は松居選手、3番手は菊池選手だ。

 迎えた決勝。昼過ぎまで空を覆っていた雲はほぼ去り、サーキット上空は綺麗に晴れ上がった。18周の戦いがスタートすると、各車は先を争って1コーナーになだれ込んでいく。酒井選手はここをうまく切り抜けて先頭のままレースを開始することに成功した。

 一方、2番手以降のマシンは揉み合いながら1コーナーを回り、4番グリッドから発進した森谷選手が2番手浮上に成功、松居選手は5番手に後退した。菊池選手は松居選手の前に出ることはできたものの、森谷選手に先行されて3番手のままだ。

 勝ってチャンピオンになりたい菊池選手は早く酒井選手のテールを捕らえるべく森谷選手にアタックを敢行、3周目の6コーナーで森谷選手のインを突くが、オーバースピード気味でラインを乱し逆転できない。それでも最終コーナー手前の複合コーナーでなんとか森谷選手を攻略して、菊池選手が2番手に上がった。この2番手争いを利して、酒井選手は1秒以上のアドバンテージを背後に築いた。

 なんとか酒井選手に追いつきたい菊池選手だったが、そのギャップは縮まるどころが周回ごとに広がり、後ろには森谷選手以下のマシンも追いすがってくる。7周目、酒井選手のリードは約2秒に拡大。その後ろには菊池選手、森谷選手、ひとつ順位を挽回した松居選手、木幡直生選手、本間詠吉選手、桑原航佑選手が一列に連なってセカンドグループを形成している。

 レースが中盤戦に入るとポジション争いは膠着状態となったが、酒井選手のリードは広がり続けていく。一方、ひとつ順位を落とせばタイトルを獲り逃してしまう菊池選手は、強いプレッシャーに耐えながら2番手を走り続けていた。

 残り2周、松居選手が森谷選手を攻略して3番手に浮上。この攻防で菊池選手と3番手以下の間隔がやや開いた。戦いはこれで決着。酒井選手は右拳を握って勝利のチェッカーをくぐった。逆転王座こそならなかったものの、今季3勝目で最多勝利だ。

 菊池選手は無事に2位でレースを終え、2024シリーズのチャンピオンを確定させた。3位フィニッシュの松居選手は今季4度目の表彰台登壇。森谷選手は表彰台こそ逃したがチャンピオン争いに影響を及ぼす活躍を演じ、自己最上位を3つ更新する4位となった。

FS-125/X30優勝は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)。
シリーズ参戦2年目の酒井選手は「昨年は鈴木斗輝哉選手がいたこともあって1回も勝てずにいたんですけど、今年はとにかく勝ってチャンピオンを獲りたいという思いでした」と胸の内を明かした。「チャンピオンを獲ることはできなかったんですけど、自分が最大限できることだった優勝が遂げられたので、まずは良かったと思います」
2位は菊池貴博選手(K.SPEED WIN)、3位は松居寿來選手(K.SPEED WIN)。
FS-125/X30表彰の各選手。
菊池選手がFS-125/X30のチャンピオンを確定させた。「精神的にだいぶキツいレースでしたね。2番手争いの中で止まってしまったら元も子もないので、確実に行けるところで勝負するように気をつけていました。ゴールしたときはホッとした一方で、勝って決めたかったって悔しさもありました」

 この大会では地方選手権の他に、もてぎカートレースシリーズとして7クラスのレースが行われた。東日本屈指の人気ローカルレースシリーズとあって、参加総数は地方選手権を含めて169台に到達。パドックには隙間なくチームテントが立ち並び、大賑わいの一日となった。決勝は7クラスすべて15周だ。

ROTAX MAX CHALLENGE MAX Lights(Senior Lights/Masters Lights)

 Senior LightsとMasters Lightsの2クラスから成るMAX Lightsは、エントリー1台のSenior Lightsが不成立となり、その1台の室井飛鳥選手は賞典外でMasters Lightsのレースに混走することとなった。14台による決勝では、2番グリッドの室井選手がポールから逃げを打った佐々木伸一選手に追いつき、残り2周で逆転して真っ先にゴール。Masters Lightsのウィナーは佐々木選手となった。2位は長谷川琢磨選手。GEN選手が8ポジションアップの大躍進で3位に入賞した。

MAX Lights(Masters Lights)優勝は佐々木伸一選手(パワーワークス)。
今シーズンは初戦と第5戦を制し、ここまで生方潤一選手と優勝回数を分け合っていた佐々木選手。今回の最終戦を勝利してシリーズを有終の美で締めた。
2位は長谷川琢磨選手(Racing Square GEN)、3位はGEN選手(RacingSquare GEN)。
MAX Lights(Masters Lights)表彰の各選手。1位の佐々木選手は欠席(代理)。

SLカートミーティング YAMAHA SS

 大量45台が出走したYAMAHA SSでは、4グループの総当たりで予選が行われることに。各者3ヒート、全6ヒートの予選を経て決勝のポールについたのは松尾柊磨選手。2番グリッドは地方選手権とダブルエントリーの酒井龍太郎選手だ。その決勝は大集団によるホットなトップ争いとなり、酒井選手の追撃を振り切った松尾選手が優勝を飾った。最終ラップの最終コーナーで勝負を仕掛けた酒井選手は逆転を果たせず、その隙を突いた山本祐輝選手が2位、小野大地選手が3位の座を手に入れた。

YAMAHA SS優勝は松尾柊磨選手(brioly racing)。
「正直、自分のペースがあまりなくてヤバいなと思っていたんですけど、最後まで抑え切れて良かったです」と松尾選手。来月にもてぎでSL全国大会があるので、その予行演習も兼ねていたそうだ。
2位は山本祐輝選手(チームTKC)、3位は小野大地選手(チームTKC)。
YAMAHA SSの表彰式。左から2位の山本選手、1位の松尾選手、3位の小野選手、タイムトライアルでファステストラップを記録して茂木町賞が贈られた酒井選手。

SLカートミーティング YAMAHA スーパーSS

 25台が参加したYAMAHAスーパーSSは、レジェンド級の腕利きたちがずらりと顔をそろえる注目の一戦となった。その決勝では、高田亮選手がスタートでひとつ順位を上げ、2周目にトップを奪って快勝。ポールの遠藤晴久選手が2位に、2番グリッドの真貝俊幸選手が3位に入賞した。

YAMAHA スーパーSS優勝は高田亮選手(AKIGASE KART CLUB)。
今年は苦しいレースが多かったという高田選手。「やっと、ちゃんとしたレースができたって感じです。トップに立ってからは自分のペースを維持しながら走っていました」
2位は遠藤晴久選手(チームエッフェガーラ)、3位は真貝俊幸選手(TEAM AKASAKA)。
YAMAHA スーパーSSの表彰式。左から2位の遠藤選手、1位の高田選手、3位の真貝選手、タイムトライアルでファステストラップを記録して茂木町賞が贈られた月岡雅隆選手。

ROTAX MAX CHALLENGE Senior MAX

 出走14台のSenior MAXでは、5週間前に全日本FP-3チャンピオンを確定させた寺島知毅選手が、7番グリッドからぐいぐいとポジションを上げて残り3周でトップに立ち、最後の激しいバトルにも打ち勝って優勝。全日本OK部門でも活躍を演じた佐藤佑月樹選手が2位に入り、先頭で最終ラップを迎えた菊地晃功選手が3位となった。

Senior MAX優勝は寺島知毅選手(GOLD MOTORSPORTS)。
寺島選手はMAXで初の勝利。「スタート後の数周で意外と自分のペースが良かったので、勝つための走り方に切り替えてどんどん攻めていきました。ゴールしたときはとてもうれしかったです」
2位は佐藤佑月樹選手(RT WORLD)、3位は菊地晃功選手(HARUNA RF with PLAYFUL)。
Senior MAX表彰の各選手。

ROTAX MAX CHALLENGE MAX Masters

 MAX Mastersには19台が参加。ポールの箭内優樹選手が渡邉賢人選手の追走を振り切り、歓喜のガッツポーズで勝利を飾った。トップから0.14秒差の2位となった渡邉選手は、グリッドから1ポジションアップのフィニッシュ。長戸和也選手がセカンドグループの頭を走り続けて3位となった。

MAX Masters優勝は箭内優樹選手(GOLD.M.S&ランドクリエイト)。
「一番疲れる展開だったんですが、最後の2~3周で後ろが少し空いたときがあったんで、そこで気持ちをリセットできて、後は歯を食いしばって走りました」と箭内選手のコメント。
2位は渡邉賢人選手(SuperRacingJunkie!)、3位は長戸和也選手(Macs Racing)。
MAX Masters表彰の各選手。

ROTAX MAX CHALLENGE Junior MAX

 11台の戦いとなったJunior MAXでは、大和田夢翔選手がタイムトライアル、予選、決勝とトップを譲らず走り切って優勝。スタートでひとつポジションを上げた楠本心真選手が2位に入賞し、日野風奏選手が楠本選手にあと一歩と迫って3位でフィニッシュした。

Junior MAX優勝は大和田夢翔選手(DragoCORSE RMC Racing Team)。
「ゴールしたときはめっちゃうれしかったです」と、100点満点のレースと評した大和田選手。「予選も決勝も一歩も譲らないって気持ちを強く持って、それを生かせることができました」
2位は楠本心真選手(ERS with SACCESS)、3位は日野風奏選手(KP-BUZZ)。
Junior MAX表彰の各選手。

SLカートミーティング YAMAHA カデットオープン

 もてぎカートレースの最年少クラス、YAMAHAカデットオープンは出走26台の賑わいとなった。その決勝では、スタートがそろわずローリングが赤旗提示で中断され、ポールの選手がグリッド最後尾に降格されてスタートがやり直されることに。これで急きょポールに繰り上がった飯田一仁選手は、僅差で追ってくる後続からのプレッシャーに耐え抜いて優勝。一度はトップを奪った佐藤駆選手が2位でフィニッシュ。中井星那選手が予選6番手からの挽回で3位を獲得した。

YAMAHA カデットオープン優勝は飯田一仁選手(TAKAGI PLANNING)。
飯田選手は「優勝できてうれしいです。決勝は落ち着いてレースすることができました。勝てたのはメカニックの方が速いクルマをつくってくれたおかげです」と語った。
2位は佐藤駆選手(ガレージC)、3位は中井星那選手(FORZAレーシングカートサービス)。
YAMAHA カデットオープン表彰の各選手。

フォト/今村壮希、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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