JAF新種目「ドリフトテスト」幸田サーキットYRP桐山大会は難易度高めの“左巻き”! 第2回の優勝車両は、何と前輪駆動のアルトワークス!?
2024年11月11日

話題のJAF新種競技「ドリフトテスト」の第2回大会が、愛知県の幸田サーキットYRP桐山で開催された。JMRC中部およびJAF愛知支部の全面協力で実現した今大会には、あらゆる駆動方式の車両を持ち込んだ17名の参加者が、いわゆる“ドリフト駐車”に挑んだ。
JAFドリフトテストin幸田
開催日:2024年11月4日(祝)
開催地:幸田サーキットYRP桐山(愛知県幸田町)
オーガナイザー:ZEST




2023年12月に行われた名阪スポーツランドDコースでのパイロットイベント開催を経て、2024年1月から施行されたJAF公認競技の新種目「ドリフトテスト」。6月にはドライビングパレット那須で記念すべき第1回競技会が行われ、このたび第2回大会が開催された。
JAFオートテスト・ドリフト振興活性化分科会により開発されたこの新種目は、JAFが公示した「ドリフトテスト オーガナイザーガイドライン」によれば、「ドリフトテストは、これまでモータースポーツに馴染みの無い方々を主な対象として、普段使用している自家用車を使用し、最低限の安全装備でタイヤが滑る感覚を体験し、ドリフトの認知度向上、ひいてはモータースポーツに興味をもってもらうことを目的とした競技(コンテスト)」であることを目的とした、JAFの新たなモータースポーツカテゴリーとなっている。
実際の競技形態としては、各地のドリフト練習会で行われるような、いわゆる“ドリフト駐車”の優劣をコンテスト形式で競うもので、スタートから複数のコーナーを経て、最後に設定されたガレージに車体を滑らせながら入庫する走行となる。現実的には、ドリフト走行というよりはテールスライドに近いものがあり、パーキングブレーキを使ったターン状態の走行も許容しているため、必ずしも後輪が駆動する車両でなくとも参加できる。


那須大会に続く第2回大会は、11月4日、JMRC中部およびJAF愛知支部とJMRC中部の協力により、愛知県幸田町にあるJAF公認スピード競技コース「幸田サーキットYRP桐山」にて開催された。オーガナイザーは、JAF公認競技会でおなじみのJAF加盟クラブ「チームゼスト(ZEST)」で、増田好洋代表が競技長とコース委員長を務めた。
競技会の格式はJAF公認クローズド競技で、参加車両はハイルーフ車を除くナンバー付きで、ハンドブレーキが標準で装着されている車両とされた。那須大会と同様にクラス区分は設定されず、あらゆる駆動方式の車両が混在する中で順位を決める大会となった。
ドリフトテストは「オートテストのドリフト版」と言われているが、オートテストに比べてより大きな挙動を出す走行となるため、「JAFスピード競技開催規定 細則:ドリフトテスト開催要項」ではグローブの着用と長袖・長ズボンの服装は義務とし、耳が隠れるヘルメットの着用を推奨している。それを受けて、今大会では特別規則書において、長袖・長ズボン・グローブに加え、スニーカーとヘルメットの着用を義務としていた。
競技会のタイムスケジュールは、午後一杯を使う形で、お昼12時のゲートオープンから、慣熟歩行、参加受付・車検、開会式・ブリーフィングを経て、練習走行が行われた。その後は、練習の成果が審査員により評価されるコンテスト形式の競技走行が2回行われ、表彰式では上位6名に賞典が与えられた。これは那須大会と同様の流れとなっていた。
今大会では、那須大会に続いて「ドリフトテスト公式アナウンサー」を自称するD1グランプリでおなじみの鈴木学氏が実況MCを務めた。審査員はウエインズトヨタ神奈川×俺だっ!レーシングの山中真生選手と、チーム監督でありD1グランプリでは山中選手のスポッターでもある手塚強氏が担当し、練習走行では参加者の講師も務めてくれた。
開会式ではJAF愛知支部の松本和也氏や、今大会では審査委員長を務めたJAFスピード競技ダート部会の部会長でもある嶽下宗男氏、JAFオートテスト・ドリフト振興活性化分科会の小西俊嗣座長らによる趣旨説明や挨拶があり、続いて、競技長であるZEST増田氏によるブリーフィングが行われた。また、現地には同分科会のメンバーである時田雅義氏も訪れて、競技運営の補佐役や講師を担当した。ブリーフィングの後は、ドリフト車両による手塚氏のデモ走行が行われ、それを見学した参加者は練習走行の準備に取り掛かった。



コースレイアウトは幸田サーキットの順走前半部を占用する贅沢なもので、パドックはホームストレートに設定されていた。スタート地点は3コーナーの手前に設置。審査区間は3コーナーから始まるため、まず左コーナーをテールスライドで駆け抜け、直後のシケインを構成する島を再びテールスライドで左回りで1周し、バックストレートにある広場に置かれたガレージセクションに、左巻きの180度ターンで入庫するという設定となった。
このレイアウトは「左回りだけではエントラントが退屈してしまうだろう」というオーガナイザーの意向から、当初はシケインの島回りが右回りに設定されていたが、これまでの大会では、ガレージに入庫する旋回と同じ回転方向を持つ練習セクションを直前に配置していたことから急遽レイアウトを変更し、左旋回が連続するコース設定となった。
練習走行では、鈴木氏や講師陣による「できる人はもっと上達し、できない人にも、何かできるようになるきっかけを掴んでもらおう」という趣旨のもと、参加者に対するマンツーマンに近いレクチャーが行われた。これは「これまでモータースポーツに馴染みのない方々を主な対象とし、まずは非日常的なタイヤが滑る状態を体験してもらい、車を操る難しさ、楽しさを感じてもらう」というドリフトテストの目的を、安全かつ安心感をもって臨めることに寄与する、ドリフトテストにおける“名物”とも言える取り組みだ。
ドリフトテストでは、テールスライドに持ち込みやすくするとともに、車両への過度な負担を軽減するために散水が行われているが、今大会でも散水車を導入して練習走行から徹底した散水が行われた。そして、練習走行を終えた参加者は再び行われたブリーフィングに臨んだ。ここでは鈴木氏や山中選手、手塚氏が、ホワイトボードに描いたコース図を用いて審査区間や走らせ方のポイントを説明。その後にいよいよコンテストが始まる。




今大会の競技走行となるコンテストでは、山中選手と手塚氏が審査員を務め、それぞれ最大10点の「ドリフトポイント」を与える主観審査を担当した。そして、コース走行中の反則スタートやパイロン移動・転倒、停止枠内ライン通過/不通過の判定はコースマーシャルが行うが、今大会のオーガナイザーであるZESTは、1輪当たり20点が与えられるタイヤ入庫本数の判定もコースマーシャルが担当。2名のコースマーシャルが走行を目視して、合計4本のグリーンフラッグを揚げる行為で入庫本数を可視化する方式を導入した。
那須大会では暫定的に時田氏が判定して口頭と手振りで各審査員に伝達していたが、今回、コースマーシャルによる旗掲示が試みられたことで、審査員への情報伝達が円滑になった。そして、充実したホスピタリティ設備を持つ幸田サーキット観覧席の観客からも成功・失敗が視認しやすくなったため、会場内の一体感が増す取り組みとなっていた。
今大会の17名が持ち込んだ車両は、前輪駆動車が4台、四輪駆動が1台、後輪駆動車が12台と、その多くが後輪駆動車であった。コンテスト1本目は14時40分にスタートしたものの、最初に出走した前輪駆動・四輪駆動勢は、ガレージ入庫で車体を90度以上回し込む操作に苦戦していた。その中で、前輪駆動のアルトワークスを駆る片瀬均選手が、テールスライドは不発だったが、ガレージへの4輪入庫を果たして高得点を刻んだ。
続く後輪駆動勢の出走では、ZC6 BRZの古賀亜希子選手や上園健選手、S14シルビアの清水優希選手、GR86の中島健太郎選手、エリーゼの村山敏朗選手、ZC6 BRZの加藤司選手らが、テールスライドによるガレージ入庫アプローチを成功させたものの、車体の回し込みが不足したり多すぎたり、飛距離が足りなかったことで4輪入庫とはならなかった。
続くコンテスト2本目は、GR86の山田真一選手やBRZの上園選手が前半でドリフトポイントを稼いだもののガレージ入庫では加点を得られず。暫定3番手のBRZ古賀選手はガレージ入庫で車体をきれいに回し込んでドリフトポイント最高得点をゲットしたが、リアで2本のパイロンを倒して大量減点を食らってしまう。シルビアの清水選手もガレージ入庫をドリフト走行でアプローチしたものの、飛距離が足りず3輪入庫にとどまった。
結局、2本目は1本目の自己得点を上回れる選手が少なく、片瀬選手の暫定得点を上回る選手も現れなかった。その片瀬選手は、前半では見事なテールスライドを決め、ガレージ入庫でも鋭いスライドで車体を180度回し込んだが、飛距離が足りず、ガレージのゲート手前でピッタリ止まるという走行となってしまう。これはドリフトポイントこそ1本目を上回る評価を得られたが、ガレージでの加点はもちろん0点。だが、これがあまりにキレイな“失敗”だったため、実況MCの鈴木氏をはじめ、会場内が大いに湧くこととなった。





コンテスト2本の走行を終えて、1本目に片瀬選手が得た89点が今大会のベストスコアとなり、第2回大会のウイナーに輝いた。続く2位はS2000で挑んだ萩原賢選手(82点)、3位はBRZの川合千裕選手(76点)、4位はBRZの古賀亜希子選手(75点)、5位はシルビアの清水優希選手(71点)、6位は86の山田真一選手(56点)が表彰対象となった。表彰式では上位3名に金・銀・銅のJAFメダル、全員にそれぞれ副賞が授与された。
今大会では、まだまだ発展途上の新種目ということで、今後検討すべき課題もみられた。
まずは、いわゆる“左巻き”のコース設定。利き腕が右手のドライバーが、右ハンドル車で、左側のパーキングブレーキを引きながら、左にステアリングを大きく切り込む操作は、一定の練度が必要なアクションだ。今大会のガレージ入庫のアプローチはやや下り勾配だったものの、ほぼ180度ターンが要求されたこともあり、難易度が高かったと思われる。
そして、コンテストで与えられるポイントについて。「スピード競技開催規定 細則:ドリフトテスト開催要項」では、ガレージ入庫したタイヤ本数は「1本20点」が基準とされている。それをそのまま採用すると、仮にドリフト走行できなかった場合でも、4輪入庫さえできれば80点が得られてしまう。特に、全長が短い軽自動車や旧世代の車両の場合は、ガレージ短辺内にパイロン移動なしで全長が収まってしまうこともあるため、参加車両の全長を厳密に勘案したガレージサイズの見直しといった改善も必要になってくる。
しかし、このポイントテーブルに関しては、次回以降の大会において、タイヤ本数に対してドリフトポイントの配点を相対的に高めるといった対応も検討されているという。
開催初年度であるドリフトテストは、旧来のスピード競技にはない主観審査を含む競技形式を持つこともあり、実際の運営にあたっては、まだまだ検討の余地を含んでいると言えるだろう。取材者としては、参加者だけでなく、観客も運営者も、現場にいるすべての人が笑顔になれるような、これまでとは一線を画す新たな可能性を秘めていると感じている。今後の議論で競技性や運営方法がより整備され、定着してゆくことに期待したい。








JAFドリフトテスト in 幸田・参加者VOICE
■古賀亜希子選手[ZC6 BRZ]

■片瀬均選手[HA36Sアルトワークス]

■清水優希選手[S14シルビア]

PHOTO/小竹充[Mitsuru KOTAKE]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
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