GT500はau TOM'S GR Supraが3勝目、GT300はVENTENY Lamborghini GT3が4勝目で戴冠確定
2024年12月17日
12月6~8日に鈴鹿サーキットで300kmレースとして開催されたスーパーGT 第5戦はいよいよ最終戦を迎えた。GT500クラスはau TOM'S GR Supra(坪井翔/山下健太組)が予選でポールポジションを獲得した時点でタイトルを確定させ、決勝でも今季3勝目を挙げた。GT300クラスはシリーズランキング2番手のVENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)が3連勝で今季4勝目を挙げ、JLOCはGT参戦30年目にして初のタイトルを獲得。
2024 SUPER GT Round 5
開催日:2024年12月6~8日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:KSCC、SMSC、ホンダモビリティランド株式会社
8月31日~9月1日に開催予定だったスーパーGT第5戦は、台風10号の影響で12月に延期となった。レースが12月に開催されるのは今季30年目を迎えるGTレースのシリーズ戦では初のことで、ノンタイトルだが全日本GT選手権時代のGTオールスター戦であるGT LIVE USA-JGTC 2004 All Star California Speedwayがあるのみだ。
この時期の冷えた気温と路面温度でのレースがどのような展開になるのかは、やってみないと分からない状況だった。また最終戦ということでほとんどの車両はノーウェイトとなり、車両そのものが本来持つ性能でのガチンコ勝負となる。
予選
公式予選はGT500クラスが先に実施されることになった。ドライバータイトル争いに残ったのは74点のau TOM'S GR Supra、56点のSTANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任佑組)、52点のKeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹組)、51点のDeloitte TOM'S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組)の4台。予選でau TOM'S GR Supraがポールポジションを獲得すれば3点加算となり、STANLEY CIVIC TYPE R-GTの予選順位次第でタイトルが確定する。
注目のQ1は気温14度、路面温度24度ながら冷たい西風が吹き、体感温度は10度近い寒さの13時50分にスタートした。冷えた路面を考慮し、通常より5分長い15分で予選が行われる。ここで1分43秒670というトップタイムをマークしたのはリアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生/名取鉄平組)の名取選手で、Deloitte TOM'S GR Supraの笹原選手、au TOM'S GR Supraの山下選手が続く。トップ5台がコースレコードを記録するQ1となった。
14時48分に始まったQ2では、ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺組)の福住選手が1分43秒143という新たなコースレコードをマーク。しかしau TOM'S GR Supraの坪井選手のタイムは3番手ながら山下選手との合算でトップとなり、これでau TOM'S GR Supraのタイトルが確定することとなった。
Q2ではトップ10台がコースレコードを記録。合算タイムによる2番手はAstemo CIVIC TYPE R-GT(塚越広大/太田格之進組)、3番手はENEOS X PRIME GR Supraだったが、他車への妨害走行のために5グリッド降格(8番手スタート)に。これにより3番グリッドはリアライズコーポレーションADVAN Zとなった。
以下、STANLEY CIVIC TYPE R-GT、ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(大津弘樹/佐藤蓮組)、WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組)、Niterra MOTUL Z(高星明誠/三宅淳詞組)の順となった。「チャンピオンらしくポール・トゥ・ウィンを飾れるように頑張りたい」とポールの坪井選手は意気込んだ。
GT300クラスでドライバータイトル獲得の権利を持つのは84点のLEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗組)、73点のVENTENY Lamborghini GT3、そして64点のmuta Racing GR86 GT(堤優威/平良響組)の3台。まずQ1で全車がコースイン。こちらも通常より長い25分間で争われる。
開始7分でいきなりSUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)の井口選手が1分55秒547のトップタイムをマーク。しばらくこれを更新する車両はなかったが、残り6分を切ってVENTENY Lamborghini GT3の小暮選手が1分55秒132でトップに立った。
その直後にはMETALIVE S Lamborghini GT3(松浦孝亮/坂口夏月組)の松浦選手が2番手に食い込み、これでランボルギーニが1-2。セクター1で全体ベストをマークしていたmuta Racing GR86 GTの平良選手は、デグナー1個目で縁石に乗って2個目でスピン。しかし翌周に4番手のタイムをマークしている。
Q1の上位14台で争われた15分間のQ2グループ1は、開始7分でSUBARU BRZ R&D SPORTの山内選手がトップに立ったが、その4分後にVENTENY Lamborghini GT3の元嶋選手がトップに。さらにその1分後にはリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)のオリベイラ選手が1分55秒092でトップに立った。
タイム合算の結果、VENTENY Lamborghini GT3が今季2回目のポールポジションを獲得。2番手はSUBARU BRZ R&D SPORT、3番手はmuta Racing GR86 GT、4番手はapr LC500h GT(小高一斗/中村仁/根本悠生組)、5番手は日産メカニックチャレンジ GT-R、6番手はMETALIVE S Lamborghini GT3。ポイントリーダーのLEON PYRAMID AMGは10番手にとどまったが、決勝では2位以上でライバルの結果に関係なくタイトル獲得となる。
決勝
GT500クラス
8日も予選日同様に寒い陽気だったが、雲が多くより寒さを感じる天候となった。気温13度、路面温度21度というコンディションの12時50分にパレードラップがスタートした。フォーメーションラップを2周に増やしたことで51周に短縮されたレースは大きな混乱もなくバトル開始。しかし3番手スタートのリアライズコーポレーション ADVAN Zの名取選手は、タイヤが発熱せず1周で最後尾まで一気に順位を落としてしまった。
au TOM'S GR Supraの坪井選手はじわじわと後続を引き離し、快調にトップを走行。10周目、Astemo CIVIC TYPE R-GTの塚越選手がGT300車両と接触してGT300車両はデグナーカーブでクラッシュ。これでフルコースイエロー(FCY)となり、塚越選手は順位を5番手に落とす。5分ほどでFCYは解除となり、STANLEY CIVIC TYPE R-GT、ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16、Niterra MOTUL Zの3台による2番手争いが激しくなった。
17周で2番手のSTANLEY CIVIC TYPE R-GTがピットインをすると、次の周に上位陣が一気にピットインし、GT300クラスと合わせてピットロードは大混乱。STANLEY CIVIC TYPE R-GTとARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16は、ピット作業でタイムロスを喫して順位を下げることに。
20周で全車がピットインを済ませると、au TOM'S GR Supraがトップを守り、Niterra MOTUL Z、Astemo CIVIC TYPE R-GT、STANLEY CIVIC TYPE R-GT、最後尾スタートのMARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)、今回限りでスーパーGTでの活動を終了すると表明したロニー・クインタレッリ選手が駆るMOTUL AUTECH Z(千代勝正/クインタレッリ組)、そしてARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16という順になった。
そしてここからau TOM'S GR Supraの山下選手、Niterra MOTUL Zの三宅選手とトップ2台の接近戦が始まった。29周目の1コーナーで三宅選手がアウト側からオーバーテイクを仕掛けて一瞬前に出るも、2コーナーで膨らんでトップ奪取はできない。31周目にGT300車両がスロー走行からストップしたことで2回目のFCYとなり、バトルは一旦ストップ。約5分後にFCY解除となった瞬間、デグナー2個目でコーナリング中だった三宅選手は痛恨のスピンを喫して6番手まで順位を落とすことになった。
次はAstemo CIVIC TYPE R-GTの太田選手が山下選手に0.973秒まで詰める。そして3番手のSTANLEY CIVIC TYPE R-GTの山本選手にはMARELLI IMPUL Zの平峰選手が迫り、平峰選手は42周目のAstemoシケインで山本選手をパスして表彰台圏内へ順位を上げる。
51周のレースは山下選手が太田選手に約1.5秒差をつけてトップチェッカー。au TOM'S GR Supraがチャンピオンにふさわしい今季3勝目を遂げた。3位は最後尾から12ポジションアップのMARELLI IMPUL Zで、43年続いたマレリ(旧カルソニックカンセイ)との最後のレースを表彰台獲得で飾った。
GT300クラス
クラスポールのVENTENY Lamborghini GT3は元嶋選手がスタートを担当し、2番手争いはSUBARU BRZ R&D SPORTの井口選手、muta Racing GR86 GTの平良選手、apr LC500h GTの中村選手が連なり、5番手以下を引き離していった。
GT500のグループがGT300に追いついてオーバーテイクを始めた9周目に、5番手走行中のMETALIVE S Lamborghini GT3がGT500車両と接触し、デグナーでクラッシュ。これでFCYが導入されたが、約5分で解除となった。14周を過ぎるとVENTENY Lamborghini GT3が2番手を引き離しにかかり、SUBARU BRZ R&D SPORTとmuta Racing GR86 GTが2番手争い、apr LC500h GTとUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン組)が4番手争いを展開。
15周で8番手走行中のLEON PYRAMID AMGがピットインをし、タイヤ無交換でコースに戻る。16周目のS字でmuta Racing GR86 GTが2番手に順位を上げると、後続の車両の多くがピットインを済ませた。18周でトップのVENTENY Lamborghini GT3がピットインし、こちらはリアタイヤ2本の交換で時間を短縮。
これでmuta Racing GR86 GTが暫定トップに立つこととなった。19周で2番手のSUBARU BRZ R&D SPORTがピットインすると、apr LC500h GTが2番手、VENTENY Lamborghini GT3が3番手、そしてLEON PYRAMID AMGが4番手へ順位を上げていく。
25周でmuta Racing GR86 GTがピットインし、タイヤ無交換で堤選手がトップを守ってコースへ。34周目の1コーナーでVENTENY Lamborghini GT3の小暮選手がapr LC500h GTをかわして2番手へ順位を上げ、muta Racing GR86 GTの堤選手に迫った。
優勝して他チームのリザルト次第ではタイトル獲得の可能性があったmuta Racing GR86 GTだったが、39周目のストレートで小暮選手に並ばれ、1コーナーでついにVENTENY Lamborghini GT3がトップを奪回。これでLEON PYRAMID AMGが3位以下でゴールとなれば逆転タイトル獲得となる。
39周終了時、2番手のmuta Racing GR86 GTと4番手のLEON PYRAMID AMGの差は10.3秒もあり、残り8周ほどで追い抜くのは厳しい距離。終盤、LEON PYRAMID AMGの篠原選手は3番手のapr LC500h GTに迫るも抜くことはできず、VENTENY Lamborghini GT3が47周でトップチェッカーを受けて今季4勝目。逆転でタイトルを確定した。
チームのJLOCは1994年の初参戦から30年目にして悲願のタイトル獲得だ。小暮選手は大嶋和也選手に続いて2人目のGT500/GT300の両クラス制覇で、元嶋選手はこれが初タイトルとなった。muta Racing GR86 GTは2位でシリーズ3位、apr LC500h GTが3位表彰台を得た。
フォト/石原康、遠藤樹弥、吉見幸夫 レポート/皆越和也、JAFスポーツ編集部