野村勇斗選手が優勝でタイトル確定、インディペンデントクラス初代王者はDRAGON選手

レポート レース

2024年12月18日

本来は鈴鹿サーキットで9月に開催されるはずだったFIA-F4地方選手権の第4大会が、台風接近の影響によってスーパーGTともども延期となり、12月6~8日に改めて開催された。2024年に新たにJAF地方選手権のタイトルがかかったインディペンデントクラスを含め、泣いても笑ってもタイトルがここで確定する。両クラスともにチームメイト同士の一騎討ちとあって、割り切った真剣勝負が繰り広げられた。

2024年FIA-F4地方選手権 第7戦/第8戦
(2024 SUPER GT Round 5内)

開催日:2024年12月6~8日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:KSCC、SMSC、ホンダモビリティランド株式会社

 FIA-F4地方選手権が12月に開催されたことは10年の歴史において一度もなく、果たして冷たい路面にタイヤはしっかり発動するのか、その一方で冷たい空気がエンジンを回すことによって好タイムが期待できそうでもあり……。いずれにせよ、未知の要素を多く含む戦いとなった。

 夏場のレースならば、1周が長い鈴鹿は概ね計測2周目からアタック開始となるが、金曜日の専有走行の様子では早くて3周、大半のドライバーは4周目からコースを攻め立てていた。土曜日の早朝に行われた予選は、専有走行時よりさらに温度が下がっていたものの、同じように対応していたようだ。

 まずはチャンピオンクラス。計測3周目にいきなり2分7秒台に入れ、トップに立ったのが新原光太郎選手だった。だが、その次の周に新原選手のタイムを上回り、計測5周目には2分6秒台にまで縮めてきたのが、ランキング2番手の洞地遼大選手だ。

 洞地選手は2018年に角田裕毅選手が記したレコードタイムを更新。2戦ともにポールポジション(PP)を奪ったのだ。そしてポイントリーダーの野村勇斗選手が2番手に割って入り、第7戦決勝レースでポジションを入れ替えれば、第8戦を待たずしてチャンピオンが確定する可能性もあった。

「昨日からポールが獲れるだろうなと思っていたので、予定どおり獲れて良かったです。(路面温度が)低かったので、ウォームアップはちょっと多めにやりました。アタックする時にはタイヤも温まっていて、コンディションも良くて、タイムがすごく出ましたね。タイトルというよりは優勝目指しています」と語るのは洞地選手。

 金曜日最初の専有走行でクラッシュを喫して2回目のセッションが走れず、3回目のセッションに間に合った野村選手は、「メカニックが完璧にクルマを直してくれたので、問題なく走れました。ひとまずホッとしているのもありますが、(ポールが獲れなかったことが)やっぱり悔しいので、レースで巻き返したいと思います」と力強く語っていた。

 一方、インディペンデントクラスのチャンピオン候補はDRAGON選手と今田信宏選手。しかしながら、このふたりを抑えて、第7戦のフロントローを分け合ったのが鳥羽豊選手とKEN ALEX選手だった。

「最後にベストタイムを出した周は130Rで失敗して、シケインで失敗して、デグ2でも失敗しているので、上手くまとめられたら(2分)8秒に入れられたかなって感覚があります。自分でも『えっ、俺、集中してんじゃん』ってぐらい集中していました」と語る鳥羽選手がクラスPPで、レコードタイムも更新。

 第8戦のクラスPPのKEN ALEX選手は「全員この時期の鈴鹿を走ったことはないと思うので、ウォームアップがけっこう大変でした。ちょっと怖かったですね。クルマ自体めちゃくちゃ良かったのでフルプッシュしました。クラスの中ではまだ若手の42歳なので、チャンスはあるかなと。伸び代はあると思っています」と語っていた。

チャンピオンクラス第7戦と第8戦のポールポジションは洞地遼大選手(HFDP with B-Max Racing)が獲得。
インディペンデントクラスのポールポジションは第7戦は鳥羽豊選手(HELM MOTORSPORTS F4)、第8戦はKEN ALEX選手(BUZZ RACING)が獲得。

第7戦

 フォーメーションラップが2周行われたことで、低い路面温度に対してタイヤにはしっかり熱が入り、心配されたオープニングラップの混乱は回避できた。しかし、PPの洞地選手がスタートに出遅れてしまい、野村選手がトップに立った。

 4番手から「スタートではタイヤの温まりとかいろいろ考えてやった結果、うまくいったのでうれしかったですね」と鋭いダッシュを決めていた佐野雄城選手にも洞地選手は先行を許してしまった。このとき4番手は新原選手で、この4名が1周目を終えた段階で早くも後続を離す。

 しばし様子見という状態の中で、4周目の130Rでコースアウトした車両が発生。6周目から2周にわたってセーフティカー(SC)が出されるも、リスタート後のヘアピンでも2台が接触。再びSCが導入されてしまう。そのままチェッカーフラッグが振られる可能性もあったが、なんとかラスト1周のバトルが許された。しかし上位のポジションは変わらず、野村選手が7勝目、5連勝を飾って10代目チャンピオンに確定した。

「過去で一番決まったと思えるスタートができました。鈴鹿って抜きづらいコースなので、スタートで前に出ることができて本当に良かったです。ロングランのペースは練習からみんな同じぐらいだったので、楽なレースにはならず、耐えたレースでした。本当にひと安心というか、最高にうれしいですね!」と野村選手。

 大逆転とはならず3位に甘んじた洞地選手は「リアタイヤが貼りついてストール気味になっちゃったって感じでした。これがレースなので仕方がないです」と、がっくり肩を落としていた。

第7戦チャンピオンクラス優勝は野村勇斗選手(HFDP with B-Max Racing)。
オーバーテイクが難しい鈴鹿だからこそ、スタートが重要と考えた野村選手。集中力を発揮して勝利した。
2位は佐野雄城選手(TGR-DC RS F4)、3位は洞地選手(HFDP with B-Max Racing)。
第7戦チャンピオンクラス表彰の各選手。
野村選手がチャンピオンクラスのチャンピオンを確定させた。

 インディペンデントクラスでは、スタートを決めた鳥羽選手が一度もトップを譲らなかった。DRAGON選手のコースアウトでポイント差を一気に縮めたい今田選手に急接近されるも、今田選手は2回目のリスタートまでチャンピオンクラスの2台を後続に引き連れ、壁にできていたのが大きい。

「SCに2回入られて、最後はチャンピオンクラスに邪魔されて、その後に今田さんが目を三角にして追いかけて来たけど、鈴鹿は抜きどころが少ないから」と鳥羽選手。最後はコンマ1秒差にまで迫られるも、辛くも振り切りに成功。さらに「久々の優勝だから、泣きそうになっちゃいましたよ。ただただ純粋にうれしいです」とつけ加えた。

「明日は僕が3番スタートで、DRAGON選手が4番スタート。そのままだと0.5ポイント差でDRAGON選手の勝ちなので、僕が1個でもオーバーテイクするか、DRAGON選手が1個落ちれば逆転できます。最後、鳥羽選手が2回目のSCの後、若い子に譲ったから、こっちも抜けるかもと。肉薄しましたけど、ちょっとの差で足りなかったですね」と、今田選手は決意を新たにしていた。なお、3位は赤松昌一朗選手で初の表彰台に。

第7戦インディペンデントクラス優勝は鳥羽選手(HELM MOTORSPORTS F4)。
チャンピオンクラスのオーバーテイクも成功させ、鳥羽選手が久々のポール、そして優勝を遂げた。
2位は今田信宏選手(JMS RACING with B-MAX)、3位は赤松昌一朗選手(SHOEI-GIGS Ride with ES)。
第7戦インディペンデントクラス表彰の各選手。

第8戦

 第8戦決勝レースもフォーメーションラップが2周行われ、やはりオープニングラップの混乱は生じなかった。「今度こそ」そんな言葉が最も相応しかったのは洞地選手だ。スタートを決め、野村選手を従えたままホールショット成功。

 その後方では新原選手が森山冬星選手を抜いて3番手に上がっていた。「第7戦ではスーパーGTの車両が走って路面が変わってしまい、それにうまく合わせられませんでした。クルマのセッティングは変えられるので、諦めずにうまく合わせられたらと思います」と第7戦の後に語っていたが、さっそく効果が出た格好だ。

 2周目のS字でスピンアウトした車両があってSCが導入されるが、先導は1周のみ。リスタートを完璧に決めた新原選手は「野村選手のストレートがあんまり伸びていなかったので」と、1コーナーで2番手に浮上。その直後にも3台が絡むアクシデントが発生し、2回目のSC導入となる。

 残り3周でバトルは再開。しかしトップの洞地選手は、新原選手や野村選手を寄せつけなかったどころか、最後は2秒差の圧勝に。「最後に悪かったところが全部改善できて、ブッちぎれて良かったです」と語っていたのだが……。

 暫定結果の改訂版が出されて洞地選手が失格、最低重量違反だった。これで新原選手が繰り上がって初優勝。 「ずっとこれを目指していて、オーナーさんに優勝してと言われていて、最後の最後に達成できて良かったです、もうこれ以上チャンスがなかったので。シリーズランキング3位より全然うれしいです!」と大喜びの様子だった。

 繰り上がって2位の野村選手は「昨日よりリラックスして走れました。チームタイトルも獲れたし、最大の目標のチャンピオンが獲れましたが……、最後は勝ちたかったですね」と正直な胸の内を語っていた。3位は森山選手が獲得。

第8戦チャンピオンクラス優勝は新原光太郎選手(YBS Verve 影山 MCS4)。
今シーズンあと一歩届かないレースがあった中、新原選手がようやく初勝利をつかんだ。
2位は野村選手(HFDP with B-Max Racing)、3位は森山冬星選手(HELM MOTORSPORTS F4)。
第8戦チャンピオンクラスの表彰式。左から暫定2位の新原選手が優勝、暫定1位の洞地選手は失格、暫定3位の野村選手が2位。森山選手が3位に繰り上がった。

 インディペンデントクラスは、PPのKEN ALEX選手がエンジンストールで最後尾まで後退する不運により、鳥羽選手が労せずしてトップに。今田選手とDRAGON選手も2番手、3番手に浮上するも、このままでは立場は入れ替わらない。そのふたりを鳥羽選手はチャンピオンクラスを挟まず、スタートからの1周だけで1秒3も引き離したが、二度のSCランで差を詰められてしまう。

 しかし「最後のSC明けは少しだけ駆け引きやらせてもらって、130Rの手前でつくった貯金が効いてくれました。2連勝ですよ、久々に戻って来ました!」と語る鳥羽選手が逃げ切ってシーズン3勝目を挙げ、DRAGON選手は3位でゴール。その結果、今季から選手権のかかったインディペンデントクラスの初代チャンピオンを獲得した。

「最強のライバルがチームメイトなので、今田さんに勝つ=優勝やチャンピオンと同等の順位だと自分は思っています。チームメイトが速いがゆえに気の抜けない1年を過ごせたのは、楽しくもあり苦しくもありました。すごくいい環境でレースできたと思います」とDRAGON選手。

 今田選手も「シーズンを通してDRAGON選手とは常に1位、2位を争う間柄で、ずっとバチバチやり合ってきました。その中で接触は一度もなく、自分自身も精いっぱい本当に全力を出し尽くせたので、まったく悔いはありません」と語ったあたり、紛れもない本音だったはずだ。

第8戦インディペンデントクラス優勝は鳥羽選手(HELM MOTORSPORTS F4)。
鳥羽選手が鈴鹿2連戦で連勝。鈴鹿での勝利は格別だとコメントしている。
2位は今田選手(JMS RACING with B-MAX)、3位はDRAGON選手(B-MAX TEAM DRAGON)。
第8戦インディペンデントクラス表彰の各選手。
DRAGON選手がインディペンデントクラスのチャンピオンを確定させた。

フォト/石原康、遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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