勝田貴元選手がWRC第2戦スウェーデンで総合優勝争いを展開して総合2位を獲得!

レポート ラリー

2025年2月26日

2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)は早くも第2戦を迎え、2月13~16日にスウェーデン北部の都市、ウーメオーを拠点に今季のWRC唯一となるフルスノーラリー、「ラリー・スウェーデン」が開催された。TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの一期生として活躍してきた日本人ドライバー、勝田貴元選手はTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のマニュファクチャラー登録ドライバーとして、コ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手と組んで3台目のGR YARIS Rally1で挑んだ。

2025年FIA世界ラリー選手権 第2戦
ラリー・スウェーデン

開催日:2025年2月13~16日
開催地:スウェーデン・ウーメオー周辺

2月13日・シェイクダウン、デイ1 / 14日・デイ2 / 15日・デイ3

 事前のテストでは「タイヤがピレリからハンコックに代わって、クルマもハイブリッドユニットがなくなって80kgも軽くなったことから、フィーリングが大きく変わりました。そのため、昨年と同じセッティングではしっくりこなくて、他のドライバーのテストデータをもとに詰めていったんですけど、それでもしっくりこなくて、いつも以上に不安要素が多かったんです」と勝田貴元選手は語る。

 その状況はラリーウィークに入っても同様で、「今年のスウェーデンは気温も低くてコンディションは非常に良かったんですけど、シェイクダウンでもクルマの挙動が安定してなくてなんかおかしいな、という感じでした。特にタイヤはフカフカの雪に乗った時に自分が予想していない挙動が出たりするので、そこが難しかったです」と、勝田貴元選手は13日のシェイクダウンで9番手タイムに低迷した。

 更に同日の夕方にウーメオーの市街地近郊で行われたSS1でも、「コンディションが良かっただけに、出走順が後方になると不利な状況でタイムが伸びませんでした」とのことで、勝田貴元選手は6番手タイムに留まった。しかし14日、ラリーが本格的に始まると勝田貴元選手は素晴らしいパフォーマンスを披露する。

「金曜日に本格的なステージが始まってからは、クルマが自分の思うような動きをしてくれたし、タイムも悪くありませんでした」と語るように、勝田選手はデイ2のオープニングステージ、SS2で2番手タイムをマークするとSS3とSS4で続けて3番手タイムをマーク。

 そして「アイスがベースになっているステージでは遅れることがありましたが、それは予想していたことで、午前中はなるべく離されないように食らいついて、午後で巻き返すというのが狙いでした。実際に午後になってからは後方スタートの方がすごく走りやすくなっていて、1本目ですごくいいプッシュができました」と振り返った勝田貴元選手は、セカンドループのSS5で今回のラリー初のベストタイムを叩き出し、一気に総合トップを奪った。

 勝田貴元選手はチームメイトのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組や、HYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM(ヒョンデ)のクルーたちと激しい総合トップ争いを展開。「コンマ数秒の僅差の争いだったので気が抜けなかったし、ミスもできないような流れでした」と、スリリングな展開となる中、勝田貴元選手はわずかに及ばず総合トップから陥落したが、それでも首位のエバンス/マーティン組に0.6秒差の総合2番手でデイ2を上がった。

 このようにデイ2で持ち前のスプリント能力を発揮し、総合トップ争いを演じていた勝田貴元選手だったが、「土曜日のコンディションは多少違っていてアンダーステアが強く、乗りづらい状況だったのでかなりタイムを落としました」とのことで、15日のデイ3で勝田貴元選手は苦戦の展開となった。事実、この日のオープニングとなるSS9こそ2番手タイムをマークしたが、その後はSS10で4番手タイム、SS11で5番手タイムに留まるなど、総合トップのエバンス/マーティン組との差は拡大した。

 更に「日曜日は重要な1日になることから昼のサービスで、新しいセッティングを試してみたんですけど、結果的にそれがいい方向にいきませんでした。それと午後の1本目はストールしてリバースギヤに入れるというミスをしました」と語るようにSS12は6番手タイム。とはいえSS14とSS15で2番手タイムをマークし、総合トップを争うライバルたちもミスを犯したことで勝田貴元選手はエバンス/マーティン組と3秒差の総合2番手でデイ3を終えた。

2025年FIA世界ラリー選手権に挑む日本人ラリードライバー、勝田貴元選手(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team)はコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とともに第2戦「ラリー・スウェーデン」に参戦。シェイクダウンとデイ1では不調だったが、デイ2から挽回して一時は総合トップに立つ活躍を見せ、総合2番手でデイ3をあがった。

2月16日・デイ4

「3秒差でエバンス選手が前にいましたが、3番手のヌービル選手(ヒョンデ)も3.3秒差に迫っていたので、ある程度はプッシュしていかないとライバルチームにも抜かれてしまいますからね。それにサンデーポイントとパワーステージのポイントもあるので、そこら辺を重視した走りをしていました」。

 そう語る勝田貴元選手は16日のデイ4でも素晴らしい走りを披露した。特に「1本目はすごく流れも良くてクリーンにまとめることができました」と語るようにこの日のオープニングステージ、SS16でベストタイムをマークし、エバンス/マーティン組に4.5秒差をつけて総合トップを奪い返した。

 まさにWRC初優勝に向けて着実に進みつつある勝田貴元選手だったが、「2本目は後続にギャップがあったこともあったし、路面が荒れていることを予想していました。今回のターゲットはクリーンにクルマを持ち帰ることだったのでリスクを負うことができない状況でしたが、自分の中で消極的になってしまいました」と振り返ったように、続くSS17で4番手タイムに留まり、このSSでベストを獲ったエバンス/マーティン組に総合トップを奪われてしまった。

 続くパワーステージ、最終SS18で勝田貴元選手は2番手タイムを記録したが、エバンス/マーティン組がベストをマーク。その結果、エバンス/マーティン組が今季初優勝を達成して勝田貴元選手はキャリアベストタイとなる総合2位を獲得。スーパーサンデーとパワーステージも2クルーが1-2を決め、TGR-WRTは最大ポイントを獲得した。

 WRC初優勝まであと一歩に迫っていただけに、勝田貴元選手は「SS17で消極的になった自分とは対照的にエバンス選手はすごくいい走りをしていました。今回のターニングポイントはSS17で、そこで勝負を決められたような気がします。正直な気持ちを言えば悔しいですし、勝てるポテンシャルはあったと思います」と悔しさを滲ませた。

 その一方で、ヨーロッパでのラリーでは過去最高のリザルトとなるだけに、「パワーステージもスーパーサンデーも2番手で、リスクマネジメントしながらいいプッシュができたと思います。昨年は勝てそうなスピードを発揮したうえで、結果に繋がられない部分が多かったんですけど、今年は自分を抑制することが求められているので、最大限のポイントを持ち帰ることができたことは、チームとしてはすごく良いラリーだったと思います」と達成感を口にした。

「昨年と比べるとリスクの取り方については次元の違うところにきています。培ってきた技量で、リスク量が多くなってもコントロールできるようにマネジメントしています。特にハイスピードラリーでは1つのコーナーで3km/hだけボトムスピードが低いだけで、長いストレートに入ると1秒も離されてしまうシビアな部分があるので、そういった意味では今回のスウェーデンではいいプッシュをしながらリスクをマネジメントできたと思いますし、すごくいい経験だったので強くなれと思います」と、勝田貴元選手は手応えも語った。

 更に「力強いパフォーマンスを続けていけば、チームとしても信頼してくれて“プッシュしてきていいよ”という状況になると思うので、今後もこんな走りを続けいけば(WRC初優勝の)チャンスが来ると思います」と、前を向いた。

 気になる第3戦「サファリ・ラリー・ケニア」についても「ケニアはすごく相性がいいし、クルマも強いので不安要素がない中で挑めると思います。ケニアはSS距離が400km弱まで伸ばされているし新しいSSが増えているので、クルマにとっても厳しいラリーになると思いますが、その分、チャンスが増えてくると思いますので、しっかりと準備をして戦いたいと思います」と、勝田貴元選手は展望を語った。サファリは3月20~23日に開催、このラリーでも勝田貴元選手の動向に注目したい。

勝田貴元選手は最終日デイ4最初のSS16でベストタイムを奪い、総合トップを再び奪ってWRC初優勝に手をかけたかに見えた。しかし、続くSS17での4番手が痛手となり、パワーステージの最終SS18は2番手も勝利は得られず。WRCでの最高位で三度目になる総合2位を獲得した。
スウェーデンは勝田貴元選手のチームメイト、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が今季初勝利を挙げた。デイ2から続いたチームメイトバトルを制し、スーパーサンデーとパワーステージもトップでフィニッシュするフルマークの大活躍。ドライバー/コ・ドライバーランキングトップに立つとともに、TGR-WRCのマニュファクチャラーズランキングトップ堅持に大きく貢献した。
TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム2期生のドライバー、小暮ひかる選手と山本雄紀選手がGR YARIS Rally2を駆ってWRC2クラスに参戦。小暮/トピ・ルフティネン組がクラス17位、写真の山本/ジェームス・フルトン組がクラス9位でフィニッシュした。
TGR WRCチャレンジプログラム3期生からは後藤正太郎選手と松下拓未選手、2人のドライバーがWRC3クラスにルノー・クリオRally3で参戦。後藤/ユッシ・リンドベリ組はクラス4番手につけて迎えたデイ4で車両トラブルによりリタイアしてしまったが、写真の松下/ペッカ・ケランダー組がその順位を継ぎ、クラス4位でフィニッシュ。コ・ドライバーの前川富弥選手はレッキに参加して、貴重な経験を積んだ。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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