関東ジムカーナ開幕戦は期待の新星、PN2八田晴道選手が地元勢を破る大金星!

レポート ジムカーナ

2025年3月3日

ジムカーナではJAF全日本選手権や他地区のJAF地方選手権に先駆けて、2025シーズンの火ぶたを切ったJAF関東ジムカーナ選手権。その開幕第1戦の舞台は関東地区屈指の高速コースジムカーナとなる、埼玉県に建つ本庄サーキット。比較的長い直線とヘアピンが連続するコースの中に無数の渡り区間が存在し、ジムカーナでも自由度が高いレイアウトをつくれることが特徴のコースだ。エントリーは久しぶりの100台超えとなる111台を集め、本庄が活気づいた。

2025年JAF関東ジムカーナ選手権 第1戦
JMRC関東オールスターシリーズ第1戦
JMRC全国オールスター選抜 第1戦

開催日:2025年2月16日
開催地:本庄サーキット(埼玉県本庄市)
主催:THE・MC

 第1戦のレイアウトは、主催した埼玉県のJAF加盟クラブ「ザ・マーキングチョーカーズ(THE・MC)」の堀内純代表がつくった。

 2023シーズンのPN2クラスなど、5度の全日本チャンピオン経験を持つ川北忠選手は、「本庄サーキットは基本的にストップ&ゴーのコースなんです。今日のコースもターンセクションはきっちり止めてしっかり回し込むのが大切ですね。特にスラロームの置き方がカントを利用して斜めに配置されているので、難しいと思います。最初と最後のターンセクションと、中央のスラロームが勝負所かもしれません」と、レイアウトを解説した。

 加えて「特にターンセクションはアプローチするための考え方が難しいですね。FR車でいうと、リアタイヤのトラクションを重視しないとダメだと思います。ただ回し込むようなターンでは勝てないと思います。前半のターンはタイヤが冷えた状態でトラクションを意識しなくてはいけなくて、後半セクションのターンはハイスピードでマシンが暴れる状態でターンに入ってくるので違った難しさがあると思いますね」と、難易度が高いことを語った。

今回の一戦を主催するTHE・MCの堀内純代表(下写真左)が中心となって組まれたレイアウト(上画像)は、JAF全日本ジムカーナ選手権PN3クラスに参戦する歴戦のスラローマー、川北忠選手(下写真右)も唸る難しい設定となった。
2025年JAF関東ジムカーナ選手権は第1戦から100台超を集める盛況で開幕した。

 そして今回の一戦には注目のドライバーと車両が参戦。ひとりはJAF北海道ジムカーナ選手権H-PN1クラスで常に王座争いを繰り広げてきた金内佑也選手が、今季から主戦場を関東PN3クラスに移してきた。更には2024年JMRC中部ジムカーナ東海シリーズPN2クラスで満点チャンピオンを決め、JAF中部ジムカーナ選手権でコース試走を務めると、中部地区戦のPN2クラス勢よりも速いタイムをマークした、八田晴道選手が遠征してきた。

 もうひとつ注目を集めたのはEモータースポーツ出身で“S耐”ことENEOSスーパー耐久シリーズEmpowered BRIDGESTONEのST-2クラスに参戦する野島俊哉選手が、S耐ではともに戦う山野哲也選手によるバックアップの下、BEV(バッテリーEV)のBMWミニSEで挑む。

 この挑戦について山野選手は「モータースポーツの中でも電気自動車が活躍できるカテゴリーが、ジムカーナだと思っています。電気自動車の性能を発揮しやすいことが証明できれば、入門カテゴリー参戦に位置付けられるドライバーが電気自動車でチャレンジしてくれるのではないかと思いました」と狙いを語った。

 加えて「新しい動力を使った電気自動車なら、AT免許でいいしサイドターンもいらない。必ずEVの時代がやってくるし、99%がAT車になっていることを考えると、早くこれにチャレンジすることが必要と思いました。あえてエンジン車との比較ができる地区戦を選んだのも、このチャレンジの意味のひとつだと思っています」と続けた。

 そして「常に販売している車両でジムカーナに参戦することを決めている自分としては、マシンの世代交代をしっかりとしていくことも、スポンサーを集めることも大切だと思っています。このミニSEがひとつの礎になればと思っています」とコメント。新しい試みに多くのスラローマーからの注目が集まった。

2022・23シーズンにJAF北海道ジムカーナ選手権H-PN1クラスをアバルト124スパイダーを駆って連覇している、金内佑也選手(シンシアDLクスコWM124)がPN3クラスに参戦、初戦は10位でポイントを獲った。
PN/AE2クラスには、Eモータースポーツ出身でS耐ST-2クラスに“ジムカーナキング”山野哲也選手(左)とともに参戦するレーシングドライバー、野島俊哉選手(JiN MINI SE、右)がBEVのBMWミニSEで参戦。地区戦デビューは5位に入った。

 ドライバーズブリーフィングでは、かつてスラローマーとして活躍しながら栃木県でショップ「エグゼスポーツ」を営み、数多の全日本ドライバーを送り出した故・中島聡氏に対して黙祷が捧げられた。

 今季も各クラスでベテランも若手もしのぎを削ることになるであろう関東地区戦。現役全日本ドライバーも、かつて全日本を主戦場にしていたスラローマーも数多く参戦するシリーズだけに、目が離せない。開幕戦で王座への好スタートを切るのは誰か?熱戦が幕を開けた。

ドライバーズブリーフィングでは故・中島聡氏に黙祷。笑顔も飛び交った開幕戦だが、一瞬の静寂に包まれた。

PN/AE1クラス

 PN/AE1クラスはEPB、いわゆる電気式駐車ブレーキを搭載し、シリーズ規定に合致するタイヤを履いたP・PN・AE車両で競われる。

 関東でも降雪が心配された競技会当日。新潟では記録的な大雪に見舞われていたにも関わらず、豪雪地から参戦してきた古田孝一選手と、その息子・直生選手が活躍した。1stトライからクラスでただひとり、1分10秒台のトップタイムをマークしたのは父・孝一選手。1分15秒台と水を開けられたが、2番手の清水弘之選手が追う展開だ。

 2ndトライに入り、タイムアップが期待されるも風が吹き始めたことで路面温度が上がらず、コンディションは変わらなかった。直生選手がベストタイムを3秒以上詰めるも、孝一選手には届かず。孝一選手は1stのタイムで逃げ切り優勝が決まったが、トップタイムを更に0.72秒詰めて完全勝利を果たした。

「今日はテクニカル勝負でしたね。昨日はカートで息子に負けているので、負けなくて良かったです。今も下降線をたどっている僕と、上昇曲線の息子ではいつひっくり返されてもおかしくないですからね」と孝一選手は語った。

 更に「今年は関東選手権のチャンピオン、そして全日本での表彰台を目標に頑張ります」と目標も明かした。一方、直生選手は「コースにも慣れておらず、スピード感にも慣れてませんでした」と悔しさを隠さなかった。

PN/AE1クラスはアルピーヌA110Sを駆る古田孝一選手(R-SPEC柿崎A110SDL)が制した。
PN/AE1は参戦した3選手が表彰された。左から2位の古田直生選手(RSPC柿崎A110SDL直生)、優勝した孝一選手、3位の清水弘之選手(DL☆MTSサンテックA110S)。

PN/AE2クラス

 オートマチックやCVTなど自動変速機搭載の2WDで、PN/AE1と同じく規定に合致するP・PN・AE車両が対象のPN/AE2クラス。注目のミニSEを駆る野島選手はこのクラスに参戦した。

「まずスタートして感じるのは圧倒的なトルク感です。アクセルに足をのせた瞬間に最大トルクが発生してくれるのは凄いです。アクセルの反応がとにかくリニアですが、どうしても重量が動きに顔を見せるところが散見します。ただ、まだこのクルマはサスペンションもノーマルなので、もっとポテンシャルは上がると思います」と、野島選手はミニSEを語った。

 そんな野島選手はクラス3番目にスタートし、1stでトップタイムを更新。ただ、クラス後半に並ぶ面子はベテラン揃い。中村誠司選手が1分11秒台に入れて大きくトップタイムを上げる。しかし、1stをトップで折り返したのは、ダブルエントリーの利を活かした篠崎祥選手だった。中村選手を0.08秒の僅差でトップタイムを塗り替えた。

 そして運命の2nd。誰もが篠崎選手のトップタイムを抜けないまま、中村選手がスタートして意地のアタックを見せた!冷静沈着にパイロンをクリアしていき、ターンセクションもきっちりとリアタイヤにトラクションをのせて、篠崎選手を0.261秒上回るタイムでフィニッシュした。

 しかし、篠崎選手は中村選手が絞り出したタイムを更に0.4秒更新する1分10秒624を叩き出して決着、開幕戦を制した。「今日はクルマの調子も含め、チームのメンバーに支えてもらったおかげで不安なく走れたことが勝因ですね」と、篠崎選手はチームを称えた。

 更に「1本目はサイドブレーキが間に合わなかったんですが、2本目はきちんとターンインの時にタイヤもロックしてくれて、回し込めたのが良かったです。一番奥のコーナーへの進入を、しっかりボトムスピードを上げて入っていくことができたのも良かったかもしれません。今年はこのクラスで、関東近県で戦いたいと思います」と走りを振り返り、今季の参戦予定を続けた。一方、2位に終わった中村選手は、「若さが足りなかったな(笑)。もっと無理して走らないとダメだった」と反省しきりだった。

GR86をドライブする篠崎祥選手(STPαYHymsGR86AT)がPN/AE2で優勝した。
中村誠司選手(ADVANリジットBRZ6AT)はZD8型スバルBRZを操りPN/AE2の2位を獲得(左)。アバルト124スパイダーの林幸照選手(STPリジット黄眼鏡蛇124)が3位に入った(右)。
PN/AE2は左から2位の中村選手、優勝した篠崎選手と3位の林選手、トップ3選手が表彰を受けた。

PN1クラス

 PN1クラスは前輪駆動で排気量1500cc未満、更にFIA/JAF公認発行年またはJAF登録年とタイヤが規定に合致しているPN車両が競う。昨季は4WDのGRヤリスを駆って全日本PN4クラスを主戦場に戦っていた、片山誠司選手が2WDのトヨタ・ヤリスに乗り換えて参戦してきた。

 その片山選手に加え、日産・ノートeパワーニスモSで参戦を続ける田尾光規選手、昨季ランキング2位の野口弘毅選手、そして昨季は1勝を挙げるに留まった深沢希選手による、四つ巴の勝負となった。

 1stで先手をとったのは片山選手。直前に走った田尾選手のタイムをすぐさま2秒近く更新。続く深沢選手も野口選手もこのタイムからは大きく遅れをとってしまう。

 路面コンディションが良くならないまま始まった2ndだったが、田尾選手がベストを1秒以上更新したが片山選手には届かず。自らのトップタイム更新を狙った片山選手は大きなミスを犯してしまい、タイムダウン。しかし、深沢選手と野口選手はベスト更新も大きく伸ばすことができず、片山選手が逃げ切った。

 開幕戦を勝利で飾った片山選手は、「前走の奥さん(片山志濃選手)にタイヤを温めてもらって無事勝てました。特にショートカットの見切りが冴えていたと思います。いき過ぎなくらいのスピードで入っていけたのも良かったです。きれいなターンよりも、しっかりとアクセルを踏めるターンを心掛けたのも良かったですね。今年は地区戦をメインにできるだけ出るようにしていきたいと思います」と、第2戦以降に向けて気合十分の様子だった。

PN1クラスの優勝は、トヨタ・ヤリスを駆る片山誠司選手(AZURYHS+ヤリス)。
田尾光規選手(DLプロμノートe-POWER)は日産・ノートeパワーニスモSを操り、PN1の2位に入った(左)。3位は鮮やかな色のヤリスをドライブする深沢希選手(縫麺TEIN★HALLヤリス)が獲得した(右)。
PN1も上位3選手、左から2位の田尾選手と優勝した片山選手、3位の深沢選手が表彰された。

PN2クラス

 JAF/FIA公認発行年あるいはJAF登録年と装着タイヤが規定に合致する、1500cc未満で後輪駆動のPN車両で競うのが、PN2クラス。二連覇中の橋本惠太選手はひき続きマツダ・ロードスターを駆るが、タイヤメーカーを変更しての参戦だ。

 開幕戦を混沌とさせたのは、中部地区からやってきたふたりの刺客だった。全日本の経験を持つ山崎哲也選手と、八田選手がダブルエントリー。前走の山崎選手がいきなり1分8秒台でターゲットタイムを記録し、地元勢のベテラン、梅澤高志選手が約0.2秒塗り替える。八田選手は1分7秒台前半に叩き込んだがパイロンペナルティを犯し、津野友佑選手が1分8秒069のトップタイムで折り返す。

 八田選手の走りに会場がざわついた雰囲気で迎えた2nd。山崎選手が1分7秒台に突入すると、ターゲットタイムの更新合戦が勃発する。梅澤選手は1分7秒台に入れるが山崎選手には届かなかったものの、津野選手がヌルリとパイロンをかいくぐる絶妙な走りでトップを奪取した。

 更にこのタイムを超えてきたのは八田選手だった。しかも、1分6秒台に突入する圧倒的な速さを見せつけた。地元勢の意地を見せたい後半ゼッケン組だが、八田選手のタイムは非常に高い壁となり、ラスト3に入ってもトップタイムには届かない。藤井裕斗選手も1分7秒台を記録するが3番手。ラストゼッケンの橋本選手はコースを掴みきれず6位に留まった。

 この結果、関東地区戦初参戦の八田選手が地区戦初優勝を果たした。「ダブル(エントリー)した山崎さんのおかげで勝てました。1本目は(パイロンに)触っている感覚はありませんでした。終わってみれば1本目の方がまとまっていたんですが、2本目は意地でタイムを上げれましたね。スラロームと序盤の渡り区間でタイムを稼げたのが良かったです」と走りを振り返った八田選手。続けて「今年は転勤で関東に来たので、まずはJAFカップを目指して頑張りたいと思います」と抱負も語った。

マツダ・ロードスターのワンメイクとなったPN2クラスは、八田晴道選手(DLスエマツダμロードスター)が優勝した。
PN2の2位に入ったのは津野友佑選手(BSコサリックワンロードスター、左)。3位には藤井裕斗選手(BSコサWMEBRロードスター)が入賞した(右)。
PN2は上位5選手が表彰された。左から2位の津野選手、優勝した八田選手、3位の藤井選手、4位の山崎哲也選手(ITO陶マツダ ロードスター)、5位の梅澤高志選手(大磯油工房soYHロードスター)。

PN3クラス

 PN2と同じJAF/FIA公認発行年およびJAF登録年とタイヤが規定に合致する、1500cc以上で2WDのPN車両が対象で、シリーズ屈指のハイレベルを誇るPN3には20もの猛者が集った。昨季は最終第10戦まで王座争いを演じたディフェンディングチャンピオンの岡野博史選手と、大坪伸貴選手の争いに誰が加わるかに注目が集まる。

 ZD8型スバルBRZを駆る2選手、開幕戦はどちらが制するのかも話題となった。1stは岡野選手が先手をとるかたちに。2番手には岡野選手と同じ1分6秒台を記録した中村光範選手が0.21秒差で続く一方、大坪選手は岡野選手から1秒以上後れをとってしまう。

 しかし、2ndに入り続々と1分6秒台を記録するスラローマーが現れる。1stではパイロンペナルティに沈んだ由田兼三選手が、岡野選手に0.053秒差まで詰め寄るが届かない。やはり、このクラスは岡野選手と大坪選手の一騎討ちとなった。

 まずはラスト前ゼッケンの大坪選手がスタート。1stでタイヤが温まらずにアンダーステアが強く顔を出してしまったことを修正し、しっかり熱を入れてスタートを切った大坪選手。絶妙なパイロンワークで進んでいく。しっかりと回し込み、フロントノーズをストレートに向けて一気に加速。お手本のようなドライビングで岡野選手のターゲットタイムを見事0.234秒上回る1分6秒38をマークした。

 逆転された最終ゼッケンの岡野選手は、大坪選手とはひと味違うターンセクションへのアプローチを見せた。パイロンとの距離は変わらないが、大坪選手よりも明らかに早いアクセルオンで、この差が勝敗を決めた。岡野選手は大坪選手が更新したトップタイムを更に0.145秒突き破り、開幕戦の勝利を手にした。

 岡野選手は「1本目は路面が食わないだろうな、と走り始めて、ロスらないようにロスらないように走りました。上手く誤魔化しはできたんですが、少しターンセクションで失敗していました。2本目はそこをしっかり取り返せるように走りました」と開幕戦の走りを振り返った。

 そして、本庄については「このサーキットは路面温度が上がってもグリップがあまり上がらないんですよね。実際に5℃くらい上がっても、このくらいのタイムが限界でした。とにかくペナルティに気をつけました。今年もチャンピオン獲得に向けてチャレンジしていきたいです」と語り、今季の抱負も明かした。ベテランふたりのバトルに加わってくるスラローマーの登場にも期待したい。

ZD8型BRZを駆るスラローマーたちがトップ6を占めたPN3は、岡野博史選手(ADVANリジットBRZ)が優勝した。
PN3の2位は大坪伸貴選手(DLマンパイ・PON屋BRZ犬)が獲得(左)。3位には由田兼三選手(DLXPLコサ犬BRZ ST)が入賞した(右)。
PN3は左から、2位の大坪選手、優勝した岡野選手、3位の由田選手、4位の中村光範選手(MP六輪舎BRZコサXPLDL)、5位の岩田ユウジ選手(青点・T2・BRZ・DL)、6位の青木康治選手(MPアクティブS+DL昴BRZ)が表彰された。

PN4クラス

 PN4クラスはPN2と3と同じJAF/FIA公認発行年およびJAF登録年とタイヤの規定でかつ、PN1~3に該当しないPN車両が対象となる。このクラスには昨季終盤から一昨季の王者、大脇理選手が帰ってきた。そして今季は大橋政哉選手がアルピーヌ・A110からGRヤリスに乗り換えてPN/AE1から、そしてPN2で戦っていたTAKENOKO選手も転向してくるなど、層が厚くなった。

 更に注目を集めたのは「抽選で当たっちゃったんで(笑)」と、異色のGRカローラで参戦してきた佐藤林選手。新車両のスペックにも期待がかかったが、今回の一戦では7位となった。

 1stが始まるとやはり、大脇選手は他を圧倒するタイムを記録した。多くの選手が1分6~8秒台に留まる中、頭ひとつ抜けて2番手の金子博選手を約0.7秒置き去りにする、1分5秒台に突入したのだ。

 そして2ndに入ってもこの情勢は変わらない。ただ、大脇選手のタイムに限りなく迫ったのは大橋選手だった。1stでのパイロンタッチからリカバリーながら、約0.3秒差まで詰め寄る。そして、大脇選手は更に自らのターゲットタイムを約0.2秒押し上げて最終ゼッケンを待つことに。金子選手はベストを約0.03秒上げるだけに留まり3位に終わり、大脇選手が優勝した。

「1本目のタイムはまぁまぁだったんですが、細かいミスが多かったんです。パイロンにつけませんでした。大会前にセットアップを変えてきたのが裏目に出てしまった感じでしたね。2本目は修正し、路面温度が上がっている分サスペンションの硬さを上げるなどした分、少しタイムは上がりました。ミスしたところを修正できたのも良かったです。路温は高いのにヌルヌルしていた感じでした」と勝利を振り返った大脇選手。

 続けて「今年はシーズンフル参戦を予定しています。チャンピオンを目指すとともに、JAFカップが関東であるので、そこでも勝ちたいですね」と、大脇選手は今季の目標も語った。PN4は間違いなく、再降臨を果たした元王者を中心に展開していくことが予想されそうだ。

GRヤリス使いが集ったPN4クラスは大脇理選手(ADVANリジットGRヤリス)が優勝した。
PN4の2位に入ったのは大橋政哉選手(DL☆G-LFW☆GRヤリス、左)。金子博選手(ワニさんヤリスDjacDL)が3位を獲得した(右)。
PN4はトップ3が表彰を受けた。左から2位の大橋選手と優勝した大脇選手、3位の金子選手。

PN5クラス

 シリーズ規定で指定されたTW280以上のタイヤを装着した、2000cc以下で2WDのPN車両によってPN5クラスは競われる。二連覇中の大江光輝選手をはじめ、昨季のランキング上位勢が軒並み不参戦の開幕戦となった。

 群雄割拠が予想されたPN5の1stは、内田佳延選手がひとり1分10秒台を記録して頭ひとつ抜け出す展開となる。上位進出が期待されていた大槻隆夫選手はまさかのパイロンペナルティで下位に沈んでしまった。

 迎えた2ndでいきなり好タイムを叩き出したのは、二渡龍輝選手。しかし、内田選手に約0.3秒差まで迫るも届かない。内田選手もブレーキングでミスを多発し自らの持つターゲットタイムを塗り替えることができなかった。ラストゼッケンの大槻選手による大逆転に期待がかかったが、再びパイロンの魔の手にかかる。「どこを触ったか分からない!」と嘆いた大槻選手は、ペナルティに泣かされる開幕戦となった。

 そして、内田選手が地区戦初優勝を手にして好スタートを切った。「1本目はかなり合わせられたんで良かったです。ただ、2本目は最後のS字でブレーキが効きすぎてしまって……。前半はすごく良かっただけに残念です。でも、初優勝はとても嬉しいですね。今年は地区戦にも出つつ、チャンピオン戦も出れたらいいなと思っています。チャンピオンというのはおこがましいので、出ていく中でまた勝てたら嬉しいです」と謙虚な内田選手の次戦以降にも期待がかかる。

PN5クラスの優勝は、ロードスターを駆る内田佳延選手(ガレージ天龍ロードスター)。
二渡龍輝選手(TRC★ガレージ天龍BRZ)はZC6型BRZを操りPN5の2位入賞を果たした(左)。ロードスターをドライブする舟橋悟選手(アティックμ天竜ロードスター犬)は3位入賞を果たした(右)。
PN5も上位3選手、左から2位の二渡選手と優勝した内田選手、3位の舟橋選手が表彰された。

PN6クラス

 昨季は最終第10戦で同ポイント、同優勝回数という劇的なチャンピオン争いが繰り広げられたPN6クラスは、PN5と同様のタイヤ規定で、2000ccを超える2WDのPN車両で競われる。ディフェンディングチャンピオンの坂井友洋選手を脅かす存在は、昨季2勝を挙げている坂本玄人選手と目された。

 しかし、1stでトップタイムをマークしたのは、坂井選手でも坂本選手でもなく沼上洋司選手だった。2番手で追う神戸悠希選手とともに3番手以下を大きく突き放す1分8秒台で折り返す。

 勝負の2ndでも沼上選手のタイムは更新されないまま後半ゼッケンへと進んでいく。沼上選手も自身によるターゲットタイム更新を目指してスタートを切るが、まさかのパイロンペナルティ。それさえなければ驚異の1分7秒台を記録するも、1stのタイムで後続を待つことになった。

 ラス前スタートの坂本選手は大きくタイムを上げるが約0.16秒届かずこの時点で2番手。そして注目が集まる中、坂井選手が発進。1stで大きくタイムを落としてしまったスラローム区間は自分を律してブレーキングを決め、グンっとタイムを伸ばし1分8秒074をマークし0.308秒逆転に成功。二連覇に向けて幸先の良いスタートを切った。

 優勝した坂井選手は「昨年はなんとなくだったんで、今年はいいスタートが切れて良かったです。去年は最終戦までもつれてしまったので、今年は早々にチャンピオンを決められるように頑張りたいです」と抱負を語った。

ZD8型BRZを駆りPN6クラスに参戦する、坂井友洋選手(天龍TOAリベラキャビンBRZ)が逆転優勝を果たした。
PN6は沼上洋司選手〔G天龍BPSスバルBRZ(青)〕が2位を獲得(左)、3位には坂本玄人選手(RIGID ALPHA BRZ)が入賞し(右)、ZD8型BRZを操るスラローマーがトップ3を占めた。
PN6は左から、2位の沼上選手、優勝した坂井選手、3位の坂本選手が表彰された。

PN7クラス

 PN5、6クラスと同じ規定に合致したタイヤを履く4WDのPN車両が集うPN7クラスは、JMRC関東ジムカーナ チャンピオンシリーズに参戦するスラローマーも駆けつけて成立となった。

 車両のセットアップとドライビングの実力ともに定評がある、山口栄一選手が1stから2番手以下を大きく突き放して優勝を決めた。「1本目が良かったですね。2本目は欲張っていろいろやり過ぎたのが裏目に出てしまいました。次以降は自分がメインで参戦しているPN4で出場しようと思っています」とコメントを残した。

GRヤリスのワンメイクとなったPN7クラスは、山口栄一選手(南街エムエムヤリス)が優勝した。
PN7は参戦した3選手が表彰された。左から2位の吉田秀史選手(生涯最後の内燃機関?GRヤリス)と優勝した山口選手、3位の矢尾板忠選手(タイセー防災・ザクロスヤリス)。

B・SC1クラス

 排気量問わず前輪駆動のB・SC車両が対象で、ベテランたちがしのぎを削るB・SC1クラスには、多くの全日本経験者が集う。

 1stで2番手以下を1秒近く突き放したのは、全日本での優勝経験を持つ澤平直樹選手。この流れは2ndになっても変わらない。澤平選手は再び1分5秒台をマークして自身のトップタイムを約0.3秒更新するがパイロンペナルティ。1stのタイムで結果を待つことになった。

 しかし、圧倒的なトップタイムに迫るスラローマーはおらず、最終ゼッケンの近藤岳士選手も1分6秒台が目一杯。「ウデが足りませんでした。普段走っているサーキットなので、ライン上にクラッシュパッドを置かれたことでリズムが大きく崩れてしまいました。(1分)5秒台はいけていたと思いますが、(澤平選手を)抜けたかと言われればわかりません」と近藤選手は悔やんだ。

 全日本ドライバー対決を制した澤平選手は、「思ったよりも1本目は調子が良くなくて、路面を読み切れなかったです。最初の2カ所のサイドターンで食っていたので、その後のグリップの低さにやられました。2本目はそこら辺を修正したんですが、最後の最後でパイロンを回しきれず当たっちゃいました。練習が足りないですね(笑)」と勝利するも反省を述べた。

 今季については「全戦出場はできませんが有効ポイントを獲れる範囲で参戦してタイトル争いに絡みたいです。またJAFカップはぜひ獲りたいですね」と、澤平選手は語った。得意なハイスピードコースが続く序盤戦で、ポイントを荒稼ぎしたいところだ。

B・SC1クラスの優勝は、スズキ・スイフトスポーツを駆る澤平直樹選手(EFボレロBBRスイフト)が獲得した。
B・SC1は近藤岳士選手(YH・Moty’s渦CR-X)がホンダCR-Xを操り2位(左)、ホンダ・インテグラタイプRをドライブする齋藤寿選手(YHローリング・インテグラ)が3位(右)に入賞した。
B・SC1は4位までのスラローマーたちが表彰された。左から2位の近藤選手、優勝した澤平選手、3位の齋藤寿選手、4位の中島裕選手(WAKO’S植村インテグラ)。

B・SC2クラス

 排気量問わず後輪駆動のB・SC車両が競うB・SC2クラスにもチャンピオンシリーズ勢が加勢して、4台による少数精鋭の争いとなった。主役は関東の後輪駆動勢を代表するスラローマーのひとり、ベテランの山本秀夫選手だろう。ホンダS2000を駆使してマツダRX-7勢を凌駕する、圧倒的なタイムを1stからマークする。2ndでも自身によるターゲットタイムを更新、見事な走りでパーフェクトウィンを果たした。

「コースがS2000に非常に合っていたと思います。タイムに響くだろうS字とかがFD(3S型RX-7)よりも分があったと思います。つくり手の性格が伝わってくるコースだったので、僕には合っていましたね。今シーズンはチャンピオン戦をメインに、違ったコースを走れるココとかもてぎ南、新潟あたりは出てJAFカップを目指したいです」と、勝因と今季の目標を語った。

B・SC2クラスはホンダS2000を駆る山本秀夫選手(YHコサFWGXPLS2000)が優勝した。
B・SC2は左から、2位の坂庭正浩選手(DLオベリスクRX-7)と優勝した山本選手、3位の坂庭康太選手(オベリスクRX-7)が表彰台に上がった。

Dクラス

 スーパーライトウェイト(SLW)のケータハム・スーパー7からフォーミュラカー、そして改造車まで多彩な車両による異種格闘技戦となるDクラス。ミニサーキットの本庄ではやはり軽量なSLWとフォーミュラカーに分があった。

 しかし、その中をターンの旋回速度で見事にひっくり返したのは、全日本のB・SC1クラスに挑んでいるホンダCR-Xを駆った神里義嗣選手だった。スーパー7を操る斎藤達也選手の追撃を約0.2秒差で振り切り、見事な勝利を飾った。

「1本目はミスがいくつかあったので、2本目はそこを修正したらタイムが上がりました。今年も全日本を追いかけるのですが、実戦の方が練習になるので地区戦に参戦して、いい結果を得られて良かったです。全日本でもチャンピオン狙いたいですね」と、3月に開幕する全日本に向けて良い一戦になったようだ。

Dクラスでは全日本のB・SC1クラスでも操るCR-Xを持ち込んだ、神里義嗣選手(DLMotys渦RACCR-X)が優勝した。
斎藤達也選手(コサ犬ケントSスーパー7UPS)はケータハム・スーパー7を操りDの2位に入った(左)。フォーミュラカーのMS02をドライブする関谷光弘選手(DL丸久MTM飯田店MS02)が3位を獲得した(右)。
Dの表彰台には左から、2位の斎藤達也選手と優勝した神里選手、3位の関谷選手が登壇した。

 開幕戦を終えて、JMRC関東ジムカーナ部会の後藤和弘部会長は「なによりも天気が良かったのが一番ですが、昨年の開幕戦に比べてエントリー数が1.5倍になっていることに驚きました。PN/AE2が成立して台数が増えているのもあるんですが、(シリーズを)盛況に進められたらいいなと思っています。JAFカップが関東で開催されることもあり、参加台数が増えた可能性もあるかもしれませんね。これをこの後にも続けていきたいです。ミニサーキットという関東では少ないレイアウトは、選手としてもこのコースを活かした走りを楽しんでもらえたのではないかと思っています」と、特に参戦台数の増加に頬をほころばせていた。関東地区戦は今季も各クラスでレベルが高い激戦を展開していくことになりそうだ。

JMRC関東ジムカーナ部会の後藤和弘部会長が、熱戦が繰り広げられた開幕戦を総括した。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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