ついに角田裕毅選手がレッドブル・レーシングへ移籍! 大観衆を集めた母国凱旋・鈴鹿サーキットでの日本グランプリは、予選Q1で速さを見せるも、決勝では12位に終わる
2025年4月14日

3日間で26万6000人もの観客を集めた2025年FIAフォーミュラ1世界選手権第3戦「Lenovo日本グランプリレース」。大会直前には角田裕毅選手のOracle Red Bull Racing加入が発表され、満開の桜が咲き誇る鈴鹿サーキットは、2009年以降最高の盛り上がりを見せた。


母国凱旋を前に、角田裕毅選手が急転直下のレッドブル・レーシング移籍
Visa Cash App Racing Bulls F1 Teamに所属して2025シーズンをスタートさせた角田裕毅選手。開幕戦オーストラリアGPと第2戦中国GPの予選では、Q3進出を果たす活躍を見せたものの決勝レースでは不運もあって、ポイント獲得につながっていなかった。
しかし、角田選手のポテンシャルが評価され、第3戦を前にOracle Red Bull Racingへの移籍が決定。その報はモータースポーツ専門メディア以外でも取り上げられ、高い注目を集めて、母国グランプリである鈴鹿サーキットでの凱旋に臨むことになった。
晴天に恵まれた4月3日(木)。この日は、各ドライバーがプレスカンファレンスや囲み取材に応じてくれるメディアデーだ。レッドブルのウェアに身を包んだ角田選手は、さっそくFIA公式プレスカンファレンスに出席。多くのジャーナリストが角田選手を中心に質問を浴びせ、多数のフォトグラファーも参加して、彼にレンズを向けていた。
角田選手の電撃移籍は世界中から注目を集めていたが、もちろん我々日本のメディアやファンも待ち望んでいた悲願が実現したことになる。日本人ドライバーが、ついに優勝を狙えるトップチームへ加入したということで、期待が高まりすぎているところがあったが、当の本人は「レッドブル・レーシングで最初のレース、そしてホームグランプリということで、これまでで最高の状況だと思いますし、興奮しています」と語る一方で、「(レッドブルに加入したからといって)特にスペシャルな感情はないです。レーシングブルズで鈴鹿を迎える時と同じような気持ちです」と冷静な一面も見せた。




金曜午前のプラクティス1では、角田選手が僅差の6番手タイムを計測
いよいよ公式セッションが始まる4日(金)。午前中にプラクティス1、午後にプラクティス2が行われる。特にプラクティス1は角田選手が新体制で初走行する機会であり、かつ、今年の1月にはBWT Alpine F1 Teamのリザーブドライバーに就任した平川亮選手によるFP1出走も発表されていたこともあり、金曜は朝から鈴鹿サーキット周辺が大混雑することとなり、この日は6万人もの来場者数が記録された。
そんな中、レッドブルは日本グランプリ限定カラーリングとして、ホンダF1の初優勝車両であるHonda RA272をオマージュした日の丸基調のデザインを施した。さらに角田選手も歌舞伎をイメージした専用ヘルメットカラーリングを装着して走行に臨んだ。
11時30分からのプラクティス1では、角田選手は1分29秒172の6番手タイムを記録してみせた。前任者だったリアム・ローソン選手が今季序盤の2戦で苦戦していたこともあり、角田選手の走り出しを気にする声もあったが、それらを払拭する、チームメイトのマックス・フェルスタッペン選手が計測した1分29秒065からコンマ差という走りを披露した。
ここから走行距離を稼いでセットアップを煮詰めていきたいところだったが、15時からのプラクティス2は、セッション中に4度も赤旗中断に見舞われる展開となり、角田選手はまともに走行メニューをこなすことができず、金曜のセッションを終えることになる。
プラクティス2は1分30秒625という18番手タイムで終えた角田選手だが「試してみたセットアップの方向性は悪くなかったと思いますが、課題は低速コーナーかなと思います」と、方向性が見えている様子ではあった。実は、鈴鹿の大会前に英国のファクトリーでシミュレーターテストを行っており、角田選手の提案が多く盛り込まれたセットアップでプラクティスをスタートしたものの、そこでの成果が芳しくなかったようだ。
金曜を終えた角田選手は「リアが少しナーバスかなと感じますけど、全体的にそこまで悪くないかなと。まだ色々試している段階なので、まとめていきたいなと思います」と、プラクティス3、そして予選が行われる土曜に向けてコメントしていた。



土曜日は、予選Q1で7番手タイムを叩き出した角田選手がQ2に進出!
土曜は晴天に恵まれ、11時からプラクティス3が行われた。しかし、金曜に続いて、走行車両が放つ火花由来とされるコースサイドの芝生が燃えるアクシデントが起こり、2度の赤旗中断があった。
セットアップ面で新たな発見があったという角田選手は、トップから約コンマ8秒差となる1分28秒785の9番手タイムを記録。プラクティス3で今大会唯一の1分27秒台に入れてきたMcLaren Formula 1 Team勢とは差がある状態だが、角田選手はQ3進出も見えそうな雰囲気で、すべてのプラクティスセッションを終えた。
15時には予選がスタート。Q1、Q2、Q3という三段階の予選セッションを経て、決勝のスターティンググリッドが決定される。予選では、周囲の予想どおり角田選手は力強い走りを披露した。Q1の角田選手はチームメイトのフェルスタッペン選手にコンマ034秒差に迫る1分27秒967を計測してQ1を7番手で通過した。
しかし、Q2になってからはタイムが伸び悩み始め、1回目のアタックでは1分28秒154とQ1より遅いタイムとなった。途中に芝生火災による赤旗中断を挟み、残り約8分30秒のところでQ2が再開された。角田選手は新しいソフトタイヤでタイム更新を狙ったが、結果は1分28秒000の15番手に終わり、Q3への進出は果たせなかった。
「たくさんのファンの皆さんがいらっしゃっているなかで、Q3に行けなかったのは残念です。Q2の最後はウォームアップがちゃんと出来なかったのが一番の要因だったかなと思います」と悔しそうな表情を見せた角田選手。しかし、前日の課題だったセットアップについては前進できたようで「昨日からセットアップはかなり改善できたと感じていますが、僕が思っていたクルマが速くなる作りと、実際にラップタイムにつながるセットアップが全然違いました。それを予選の前に見つけられたんですが、Q1は良かったですけど、最終的に合わせられなかったのが残念です」と語った。
一方でQ3でトップタイムを計測したのはフェルスタッペン選手。好調マクラーレンのランド・ノリス選手が計測した1分26秒995をわずかに上回る1分26秒983を叩き出し、今大会の予選セッション最速タイムかつ鈴鹿サーキットのコースレコードを更新して、4年連続のポールポジションを獲得した。そして、予選後に、他車を妨害した裁定を受けたカルロス・サインツ選手(Atlassian Williams Racing)が3グリッド降格となり、角田選手は一つ上がって14番グリッドからのスタートが決まった。





日曜の決勝はシビアなレース展開に。角田選手は順位を2つ上げる善戦
11万5000人もの観衆が詰めかけた日曜の決勝日。角田選手はGPスクエアで行われたファンゾーンでのトークショーに朝から出演したほか、決勝前には恒例のドライバーズパレードに参加するなど、慌ただしい1日を過ごした。そして、大勢のファンが固唾をのむ中、53周の決勝レースが14時にスタートする。
決勝日の路面状況は、夜半から午前中にかけて降った雨の影響もあり、一部に水溜りが残っている状況だった。それでもコースのほとんどが乾いていたこともあり、各車ともドライタイヤを装着。なかでも角田選手はミディアムタイヤを選んでレースに臨んだ。
スタートでは、14番グリッドの角田選手が13番グリッドのローソン選手(Visa Cash App Racing Bulls F1 Team)と激しいポジション争いを展開。2コーナーではサイド・バイ・サイドとなったが、角田選手は自身のラインが濡れていることもあり、無理な追い越しをしなかった。しかし、コース後半にかけてアグレッシブな走りで突破口を開き、スプーンカーブでオーバーテイクに成功した。
その後はピエール・ガスリー選手(BWT Alpine F1 Team)の背後についてポジションアップのチャンスをうかがったが、抜きにくい鈴鹿では並びかける機会は得られなかった。
20周を過ぎて上位陣がピットストップを済ませていく中、角田選手も23周目にタイヤ交換を行い、ハードタイヤを履いて第2スティントに突入した。雨上がりの決勝となった今回は、周回が進むごとに路面コンディションが回復していく状況もあり、タイヤのデグラデーションが思った以上に少なく、ほとんどのマシンが1ストップ作戦を選んだ。
このピットストップで、ガスリー選手を逆転して12番手に上がった角田選手は、11番手を走るフェルナンド・アロンソ選手(Aston Martin Aramco F1 Team)の背後につけた。しかし、その後も追い抜くまでには至らず。角田選手の順位は最後まで変わらなかった。
角田選手は、Oracle Red Bull Racingでの緒戦を12番手でチェッカーを受けた。
「年に一度のホームグランプリでポイントを狙っていただけに悔しいです」とコメントした角田選手。しかし、その表情は週末の中で一番充実しているようだった。
「このクルマで初めてレース距離を走った中で、いろんなことが学べましたし、毎周、違うことが起きて、クルマの理解はかなり深まったと思います。与えられた時間の中では悪くない内容だったと思います。今日はものすごい数のお客さんがいてくれたので、だからこそ、皆さんの目の前で良い走りをしてトップ10を狙いたかった。それだけに、悔しい気持ちで終わってしまったんですけど、毎周お客さんを見てすごくエネルギーをもらいました。次こそはもっといい状態で来て、トップ10だけでなく、もっと上を目指せるようにしたいです」と、角田選手は決意を新たにしていた。
このまま間髪入れずに第4戦バーレーンGP、第5戦サウジアラビアGPと続いていくが、日本グランプリでの経験を踏まえた角田選手は「課題は予選」と明言している。
「特に(タイヤの)ウォームアップですね。そこでのコンスタント性が重要なので、あとは学んでいる最中というか、まだまだ1戦しか終わっていないです。チームメイトは(レッドブルのクルマに)9年も乗っていて、それが大きな違いだと思います。今学んで成長していることは良い方向だと思うので、焦らず徐々に続けていきたいです」と語った。









PHOTO/吉見幸夫[Yukio YOSHIMI] REPORT/吉田知弘[Tomohiro YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
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