全日本カート選手権開幕! FS-125部門は昨年から同部門負けなしの酒井龍太郎選手が2連勝を飾る
2025年4月28日

2025年の全日本カート選手権シリーズが千葉県市原市の新東京サーキットで開幕。午前中から降り続いた雨の中、FS-125部門ではディフェンディングチャンピオンの酒井龍太郎選手が会心の2連勝を飾った。
2025年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 第1戦/第2戦
2025年JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第1戦/第2戦(ラウンドシリーズ2)
開催日:2025年4月12日~13日
開催地:新東京サーキット(千葉県市原市)
主催:NTC
全日本カート選手権のFS-125部門とFP-3部門は、2部門同時開催で全国のサーキットを転戦するチャンピオンシップだ。FS-125部門は125cc水冷リードバルブ吸気エンジンとセミハイグリップタイヤを使用する上級カテゴリーで、FP-3部門は100cc空冷ピストンバルブ吸気エンジンと耐久性重視のタイヤを使用する比較的手軽なカテゴリーとなっている。
その2025シリーズには、前年度からふたつの大きな変更があった。ひとつは大会数が3大会(全6戦)から5大会(全10戦)へと拡大したこと。第3戦/第4戦には2年ぶりに全日本の開催地となる神戸スポーツサーキット(兵庫県神戸市)が加わり、第7戦/第8戦は初めて全日本のホストサーキットとなるスピードパーク新潟(新潟県胎内市)で開催される。
また、ポイントシステムが全レース数の50%有効から75%有効へと変更(成立したレースが6回に満たない場合は全得点を合算)された。10戦すべてが成立した場合、より高い得点を得た8戦の合計ポイントで最終ランキングが決することとなる。
そんな2025シリーズが、いよいよ4月12~13日に開幕を迎えた。昨年に引き続いて第1戦/第2戦の舞台となったのは新東京サーキット。1076mの全長の中にホームストレート/バックストレッチと、2か所の長い全開区間を持つ一方、コースの前半にも後半にも複数のオーバーテイクポイントがあり、混戦が多発することで知られるサーキットだ。
決勝日の朝を迎えたサーキットの上空は曇り。ただし、天気予報は午前中からの降雨を告げている。その予報どおり、タイムトライアルの終わり頃に細かい雨が舞い始め、それは間もなくしっかりとした降りに変わった。予選ヒートからは、すべてウェットコンディションのレースだ。

全日本カート選手権 FS-125部門 第1戦/第2戦

FS-125部門には21名がエントリー。そのうち2名が負傷などでエントリーを取り消し、レースは19台で行われることになった。
ドライコンディションのタイムトライアルで最速タイムをマークしたのは、昨年のFP-3部門シリーズランキング4位、今回が同部門デビュー戦の片岡陽選手だ。しかし、片岡選手は走路妨害のペナルティでベストタイムを抹消されて4番手に。代わって本間詠吉選手の41秒692がトップタイムとなった。0.026秒差の2番手は昨年の同部門チャンピオン、酒井龍太郎選手。3番手にはジュニア選手権を卒業して全日本初レースに臨む女性ドライバー、小島聖来選手がつけた。
ウェットコンディションに変わった第1戦の予選では、開始前に思わぬハプニングが発生。酒井選手がゲートクローズドの後に再入場を行ったとして最後尾のグリッドに下げられたのだ。ポールを欠いて始まった14周のレースでは、本間選手がスタート直後に4番手へポジションを下げ、代わって小島選手が先頭に。そこに迫ってきたのが5番グリッドから躍進の12歳、元田心絆選手だ。
昨年、ジュニア選手権ラウンドシリーズ2ジュニア部門と地方選手権・鈴鹿選手権シリーズの二冠を獲得して鳴り物入りで全日本に上がってきた元田選手は、3周目に小島選手をパスすると、そのままトップを独走していった。一方、その後方では酒井選手が猛追を展開。1周で10台以上を抜き去ると、3周目には3番手へ、7周目には2番手へとポジションを上げてきた。とはいえ、それまでに元田選手は大きなアドバンテージを築いており、酒井選手がそこに追いつくことは叶わなかった。
しかし、真っ先にゴールした元田選手はフロントフェアリングのペナルティで5秒加算の裁定を受け、第1戦決勝のポールは酒井のものとなった。元田選手はペナルティを受けながらも2番手を確保。小島選手も3秒加算のペナルティを受けながら3番手をキープした。4~6番手に続いたのは片岡選手、本間選手、高木彪乃介選手だ。
第1戦の決勝は20周。スタート前に雨はほぼ止んだが、コースは全面ウェットコンディションのまま。酒井選手と元田選手のフロントロー2台はポジションをキープして発進、コンマ5秒ほどの間隔を保ってタンデム走行を繰り広げながら、他を圧倒するペースで3番手以下を大きく引き離していった。その後方では全日本初レースの関口瞬選手が7番グリッドからのスタートで4番手に上がり、さらに小島選手をかわして3番手に浮上してきた。
レース中盤、トップ争いが動く。8周目の3コーナーで元田選手が酒井選手を攻略してトップに浮上したのだ。デビューウィンに意欲を燃やす元田選手は、やや勢いを強めた雨の中でラップリーダーの座を守り続けていく。2番手に下がった酒井選手も元田選手の0.5秒ほど後方の位置をキープし、ライバルを射程圏内に捕らえて離さない。
そして14周目、再びレース展開に動きがあった。酒井選手が3コーナーで元田選手のインを突いてトップを奪還、背後に食い下がってくる元田選手をラスト2周で1秒後方へと一気に突き離した。この部門2年連続チャンピオン獲得に向けて、酒井選手が好発進の優勝。これで2024年の開幕戦から同部門で5戦連続のポール・トゥ・ウィンだ。
元田選手はデビューウィンこそならなかったが、大きな存在感を示しての2位フィニッシュ。関口選手が単独走行で3位ゴールを果たした。4位には小熊孝誠選手が9ポジションアップで、5位には森谷永翔選手が7ポジションアップで入賞。小島選手は片岡選手との接戦を制して6位でデビュー戦を終えた。




午後に入ってやや勢いを増した雨の中、第2戦の予選が始まった。今度は18周のヒートだ。酒井選手はスタート直後の1コーナーで大外刈りのトップ浮上を狙ったが、エスケープゾーンに飛び出して大きく後退。先頭の位置を守った本間選手を、勢いに乗る元田選手が5周目に抜き去り、そのまま独走に持ち込んで第2戦決勝のポールを手に入れた。
酒井選手はハイペースでポジションを取り戻して2番手でゴール。本間選手が3番手に。それに続いてコントロールラインを越えたシン・ペダン選手はフロントフェアリングのペナルティを受けて6番手に下がり、関口選手が4番手に、片岡選手が5番手に繰り上がった。
第2戦の決勝は22周。雨粒が風に舞う中、この日最後のヒートが始まった。すると、先陣争いの中で3コーナーにチャンスを見つけた酒井選手が、元田選手をかわしてトップに躍り出る。それを逃がすまいと、元田選手も真後ろに続いていった。
酒井選手と元田選手のペースは、このヒートでも群を抜いていた。トップ争いの後方では、本間選手がスタート直後に姿勢を乱して最後尾近くまで後退、本田宙選手が調子を上げて7番グリッドから3番手に浮上、3番手争いを繰り広げていたペダン選手が6周目にスピン、とドラマが相次いだのだが、酒井選手と元田選手はそんなことを意に介する様子もなく3番手以下との差を広げて、ふたりきりの優勝争いに没頭していった。
逃げる酒井選手、追う元田選手。2台はともに全力を振り絞り、緊迫感をまき散らしながら周回を重ねる。ここでわずかにペースが勝ったのは酒井選手の方だった。元田選手との間隔はじわりじわりと、だが毎周確実に開いていく。手綱を緩めることなく走り続ける酒井選手のリードは7周目には1秒に達し、最後には4秒を超えた。
勝者は今度も酒井選手だった。連続ポール・トゥ・ウィンの記録こそ途切れたものの、これで同部門のデビュー戦から無敗の6連勝だ。元田選手は2戦連続の2位でフィニッシュ。全日本デビューの本田選手は3番手のまま走り切って表彰台をゲット。4番手でゴールした関口選手はフロントフェアリングと走路妨害のペナルティで6位に下がり、代わって11番グリッドから快走の服部颯空選手が4位に、木幡直生選手が5位に入賞した。




全日本カート選手権 FP-3部門 第1戦/第2戦

15台が出走したFP-3部門では、ドライコンディションのタイムトライアルで、14歳のルーキー國岡光貴選手が2番手にコンマ2秒以上の差をつけるトップタイムをマークした。國岡選手のスピードは、ウェットレースに変わった第1戦の予選でも衰えを見せず、トップのまま14周を走り抜いて第1戦決勝のポールを獲得した。2番手は残り3周の逆転で橋口輝明選手のものに。3番手は伊東諒真選手。FS-125部門とダブルエントリーの関口瞬選手が9台抜きの4番手でゴールした。
20周の第1戦決勝では、スタートに向かうローリングの最中に関口選手が緊急ピットイン。インテークサイレンサーの脱落で、そのまま無念のDNSとなった。4番グリッドを空けて始まったレースは、またも國岡選手が速さを見せつける展開に。スタートこそ伊東諒真選手の先行を許した國岡選手だったが、オープニングラップのうちにトップの座を奪還。そして、序盤の接近戦をミスなくこなすと、中盤戦を迎える辺りでリードを1秒以上に広げて以降のラップを独走、堂々のデビューウィンを果たした。
1年前のジュニア選手権デビューで第2戦を制している伊東諒真選手は、前半戦の橋口選手との接戦に競り勝ち、ゲンのいい新東京での全日本初レースを2位でフィニッシュ。橋口選手も単独走行でチェッカーを受け、表彰台には全日本ルーキーの3名が並ぶこととなった。




午後に入って反撃のノロシを上げたのが関口選手だった。初めての全日本参戦で、ここまでうまく噛み合わない展開が続いていた関口選手だったが、第2戦の予選では13番グリッドからぐいぐいと順位を上げ、残り3周でトップに立って第2戦決勝のポールを手に入れた。僅差の2番手ゴールは橋口選手。スタートから先頭を走り続けてきた國岡選手は、ゴール間近の陥落で3番手となった。
22周の第2戦決勝は、超スローペースのローリングから始まった。先頭の座をキープしたまま発進することに成功した関口選手は、真後ろに橋口選手と國岡選手に張りつかれながら、トップを譲ることなく周回を重ねていく。すると、中盤戦を迎えたところでまず國岡選手が先頭集団から脱落。続いて橋口選手も後れを取っていった。後半戦は関口選手の独走劇。最後にはリードを約5秒にまで広げ、関口選手が優勝のチェッカーをくぐった。
実はこの日の関口選手は、FP-3部門とFS-125部門で異なるメーカーのシャシーを使用していた。エンジンもタイヤもシャシーも性能や特性が異なるマシンを短時間で乗り換え、それでも勝利をつかみ取ってみせた関口選手。第3戦以降は全日本の参戦予定がない、というのは実に残念な話だ。
國岡選手はラスト3周で前を行く橋口選手とのギャップを詰め、最終コーナーを一丸で立ち上がると、フィニッシュラインの間際で前に出て2位をゲット。橋口選手は0.029秒差で2位を取り損ねたものの、3位入賞で2戦連続の表彰台登壇を果たした。




ジュニアカート選手権 ジュニア部門 第1戦/第2戦(ラウンドシリーズ2)

同時開催のジュニア選手権ラウンドシリーズ2。ジュニアカデット部門は不成立となり、この日はジュニア部門の第1戦/第2戦が10台の出走で行われた。
そのレースは、タイムトタイアルでトップタイムを叩き出した織田大和選手が2連勝を飾る結末となった。ただし、織田選手にピンチがなかったわけではない。予選ではオープニングラップで中野貴介選手に先頭の座を奪われ、第2戦の決勝ではスタートで高橋芽選手と新橋武選手の先行を許していた。
だが、予選では織田選手がトップに戻ったところで中野選手がコースアウト、第2戦決勝では先頭争いをリードしていた新橋選手を抜き返した直後に新橋選手がコースアウトと敵失もあって、織田選手は危機を脱してきた。速さと安定性を兼ね備えた走りで、同部門3年目の初優勝と2勝目をつかみ取った織田選手。今回はスポット参戦とのことだが、「僕は次も出たい」という言葉に期待したい。
第1戦決勝の2位は、高橋選手とバトルを繰り広げながら順位を上げてきた中井星那選手。それに続いてゴールした高橋選手が走路妨害のペナルティを受け、3位は本田羽選手のものとなった。第2戦決勝では、本田選手がホットなバトルを繰り広げて2位を獲得。昨年までジュニアカデット部門で活躍していた島津舞央選手が、8番グリッドからの5ポジションアップ、ジュニア部門最初の大会で3位入賞を果たした。








PHOTO/JAPANKART、今村壮希[Souki IMAMURA]、長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
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