開幕目前!全日本カート選手権EV部門 2025シリーズのチーム体制が決定

レポート カート

2025年5月12日

全日本カート選手権 EV部門の2025シリーズ概要およびチーム体制の発表会が5月1日、東京都江東区のシティサーキット東京ベイにおいて、各チームの首脳陣列席の下で開催。同時に、事前に行われたオーディションの参加者から全6チームそれぞれ2名の所属ドライバーを選抜する“ドラフト会議”も行われ、2025シリーズに参戦する12名のドライバーが決定した。

2025年「全日本カート選手権EV部門」大会概要およびチーム体制発表会
開催日:2025年5月1日
開催地:シティサーキット東京ベイ(東京都江東区)
主催:株式会社トムス

 この発表会の会場となったシティサーキット東京ベイ(CCTB)は、全日本カート選手権 EV部門2025シリーズのすべてのレースが行われるサーキットだ。東京の人気観光地であるお台場に位置し、ゆりかもめ・青海駅が目の前とアクセスも抜群。排気ガスや騒音の問題がないバッテリー・電気モーター駆動のカートのワンメイクレースだからこそ可能になった、従来のモータースポーツにはない優れたロケーションだ。

 2025年の同シリーズは2024年から引き続き、四輪レースのトップチームや企業がオーナーとなった6つのチームが各2名のドライバーを擁して参戦する”チーム制”で行われる。発表会にはシリーズをオーガナイズする株式会社トムス代表取締役社長の谷本勲氏はもとより、各チームからも主要スタッフたちが列席し、会場は華やかな雰囲気に包まれた。

2024年に熱戦が繰り広げられた全日本カート選手権 EV部門。今シーズンもシティサーキット東京ベイを舞台に4大会8戦で選手権が争われる。
チーム体制発表会には昨年から継続参戦するチームを含め、四輪で名だたる新たなチームまで、6チームが勢ぞろいした。

 発表会の冒頭に壇上に立った谷本氏の口からは、2025シリーズの大きな変更点が語られた。ひとつはシリーズに参加するすべてのドライバーをオーディションで選定すること。2024シリーズでは四輪レースで活躍するプロドライバーなどを各チームひとりずつ事前指名してレースに起用することが可能で、そのプロドライバーたちが各レースと年間ランキングの上位を占拠する結果となったのだが、2025シリーズはプロを目指す現役カートドライバーたちのみでレースが繰り広げられることとなる。

 ふたつめは、シリーズチャンピオンの賞典として、翌2026年度のFIA-F4選手権への参戦権利が進呈されるようになったこと。このサポート内容にはエントリー費、合同テスト費、車両使用料、ガレージメンテナンス費、サーキットメンテナンス費、消耗品が含まれる予定だという。なお各大会の優勝者には、昨年に引き続きTOM'Sフォーミュラカレッジ初級コース(3回目からは中級コース)の参加権が授与される。

 さらに今季の参戦チーム紹介でも、2025シリーズの大きなトピックスが明らかになった。2024シリーズから継続参戦するREALIZE KONDO EV Kart Racing Team、T2 × HIGHSPEED Étoile Racing、KNC EV Kart Racing Team、TOM'S EV Kart Racing Teamに加えて、新たにITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPULとPONOS NAKAJIMA RACING EV Kart Teamの参加が公表されたのだ。それとともに、2025シリーズの大会会長に鈴木亜久里氏が就任することも発表された。

大会の概要について株式会社トムスの谷本勲代表取締役社長から説明。EVカートがもたらすメリットや、選手権が目指すことなどが語られた。

 EVサプライヤー兼共同オーガナイザーとして全日本カート選手権 EV部門に携わるトムスは、1月下旬にプレスリリースを配信し、今シーズンの暫定日程発表と参戦ドライバー募集オーディションの開催を告知した。昨年同様に一次選考で書類審査、二次選考で実技審査を実施し、最終的にチーム体制発表会内のドラフト会議で参戦ドライバーを決定するというものだ。

 一次選考を通過したドライバーたちは2月22日と23日、そして追加募集として4月19日と23日にそれぞれ二次選考に臨み、3~4名のグループに分かれてEVカートのポジション調整、約15分間の走行、10分程度の面談を行った。ラップタイムはもちろん、当日担当するメカニックとのコミュニケーションも審査の対象となり、戸惑いながらも真剣に取り組んでいた。

 2月22日はAグループの澤田真之佑選手が序盤から中盤にかけて25秒台を叩き出して他選手にプレッシャーをかける。岡澤圭吾選手は淡々と26秒台でまとめた安定した走りを披露し、終盤でなんとか26秒切りを果たしていた。一方、BグループはEVカートに苦戦していたのか、タイムは26~27秒台と伸び悩む様子が見受けられたが、宮崎琉選手のみ突出して25秒台をマーク。続く2番手は中西凛音選手で、途中でクラッシュによるリタイアを喫したものの、26.219秒で宮崎選手に追いすがる。

 翌23日は昨年のドライバーオーディションを経験した選手が多く集まった。そのうちのひとり、髙田陽大選手はAグループで25.701秒を記録。それに触発されたかのように中井悠斗選手がチェッカー直前で25.881秒で2番手タイム。Bグループもやはりオーディション経験者である髙口大将選手と高瀬巧選手が序盤から好タイムを連発する。だがその均衡を破ったのは野沢勇翔選手で、他の追随を許さない25.076秒という驚異的なタイムを叩き出していた。

 4月19日はA/B/Cの3グループ制。全日本/ジュニアカート選手権でも活躍するドライバーたちのタイム争いに注目が集まった。Aグループは石川晴太選手が26秒切りに一歩届かず26.060秒の結果となった中、豊島里空斗選手のマシンにトラブルが発生して開始直後に走行中断。Bグループで仕切り直しとなり、豊島選手は25秒台を確保している。Cグループは昨年のEV部門参戦のドライバーである三村壮太郎選手が25.386秒と実力を発揮した。

 ここまで3日のオーディションは晴天のドライコンディションだったが、唯一、雨天のオーディションとなったのが4月23日。単純に換算はできないものの、ドライから約3~4秒落ちといったところだろうか。30秒台のタイムが目立つ中、早速29秒台に入れてきたのはAグループの大和田夢翔選手だ。Bグループは徳岡大凱選手が29.098、菅原ここあ選手が29.470秒と速さを見せる。さらに雨脚が強まったのはCグループだが、それでも3名のドライバーが28秒台へと突入。寺島知毅選手が24周目でこの日最速の28.545秒をマークすると、渡辺カレラ選手と中井陽斗選手も負けじと25周目に28.7秒台を叩き出して応戦する結果となった。

一次選考の書類審査を通過した応募者たちは、2月22日と23日、4月19日と23日にそれぞれ行われた二次選考のドライバーオーディションに臨んだ。

 発表会に続いて行われたのが、プロ野球に倣ったドラフト会議。2024年に初めて実施されて大きな話題を呼んだ各チームのドライバー指名合戦だ。2月に一次募集が、4月に二次募集が行われたドライバーオーディションには合わせて48名の応募があり、その中から書類審査を経て合計34名が実走行と面談による審査へと進出。この34名の中から、各チームが2名ずつを指名して全12名のドライバーが決定する。この模様はネットで映像がリアルタイム配信され、オーディション参加者たちは自宅などから運命の瞬間を見守っていた。

 そのドラフト会議では重複指名が相次いだ。まず第1巡の指名発表では、ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPULとPONOS NAKAJIMA RACING EV Kart Teamが、ともに14歳の徳岡選手を指名。抽選の結果、PONOS NAKAJIMA RACING EV Kart Teamが徳岡選手を獲得した。抽選に外れたITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPULが替わって指名したのは、34歳の三村選手だった。

 単独指名となったのは4チームで、REALIZE KONDO EV Kart Racing Teamが野澤選手、T2 × HIGHSPEED Étoile Racingが寺島選手、KNC EV Kart Racing Teamが中西選手、TOM'S EV Kart Racing Teamが白石麗選手を希望選手として挙げた。

 さらに第2巡の指名発表ではT2 × HIGHSPEED Étoile Racing、ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL、PONOS NAKAJIMA RACING EV Kart Teamの3チームが中井悠斗選手を指名。またKNC EV Kart Racing Team、TOM'S EV Kart Racing Teamの2チームが大和田選手を指名。コース上での戦いの前にホットなドライバー争奪戦が勃発することとなった。

 結果、中井悠斗選手はITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL、大和田選手はTOM'S EV Kart Racing Teamが交渉権を獲得。REALIZE KONDO EV Kart Racing Teamが中井陽斗選手、T2 × HIGHSPEED Étoile Racingが豊島選手、KNC EV Kart Racing Teamが菅原選手、PONOS NAKAJIMA RACING EV Kart Teamが岡澤選手を希望選手としてドラフト会議は終了した。

第1巡選択希望選手

REALIZE KONDO EV Kart Racing Teamは野澤勇翔選手を単独指名。
T2 × HIGHSPEED Étoile Racingは寺島知毅選手を単独指名。
KNC EV Kart Racing Teamは中西凛音選手を単独指名。
TOM'S EV Kart Racing Teamは白石麗選手を単独指名。
ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPULとPONOS NAKAJIMA RACING EV Kart Teamが徳岡大凱選手を重複指名した。
抽選の結果、徳岡選手との交渉権を獲得したのはPONOS NAKAJIMA RACING EV Kart Teamの渡邊一郎チーム代表代理。
ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPULは改めて三村壮太郎選手を指名。

第2巡選択希望選手

REALIZE KONDO EV Kart Racing Teamは中井陽斗選手を単独指名。
T2 × HIGHSPEED Étoile Racing、ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL、PONOS NAKAJIMA RACING EV Kart Teamが中井悠斗選手を重複指名した。
抽選の結果、中井悠斗選手との交渉権を獲得したのはITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPULの大木一輝チーム代表代理。
KNC EV Kart Racing TeamとTOM'S EV Kart Racing Teamが大和田夢翔選手を重複指名した。
抽選の結果、大和田選手との交渉権を獲得したのはTOM'S EV Kart Racing Teamの舘信秀チーム代表。
T2 × HIGHSPEED Etoile Racingは改めて豊島里空斗選手を指名。
PONOS NAKAJIMA RACING EV Kart Teamは改めて岡澤圭吾選手を指名。
KNC EV Kart Racing Teamは改めて菅原ここあ選手を指名。

 レース本番の盛り上がりを予感させるような熱気に満ちたひと時となった、2年目のドラフト会議。締めくくりの挨拶で壇上に立ったREALIZE KONDO EV Kart Racing Teamの近藤正彦監督からは、将来的なストリートレースの実現に対する期待も語られた。

 先述のとおり実走行・面接審査を終えたドライバーたちは基本的にネット配信でドラフト会議の模様を見守るのだが、居ても立ってもいられず、はるばる関西からドラフト会議の会場へとやって来たのが14歳の中西凛音選手だ。その甲斐あってか、中西選手は一巡目で無事にKNC EV Kart Racing Teamから指名を受け、笑顔で帰宅の途につくことができた。

 こうして2025シリーズのドライバーに選出されたのは、14歳が4名、15歳が2名、16歳が2名、17歳が2名、19歳が1名というフレッシュな面々に、カート界のレジェンドたる34歳を加えた12名だ。そのうち同選手権の参戦経験があるのは、三村選手と中井陽斗選手の2名のみ。シリーズは今季から1大会2レース制が導入され、4大会・全8戦で行われる。開幕戦は5月25日。多くの新機軸が盛り込まれた戦いに、今から大いに期待が高まる。

会場を訪れた中西選手。「こういう場に顔を出すことは大事だと思ったし、お父さんが行こうって言ってくれたので」と、第1巡でKNC EV Kart Racing Teamから指名を受けてはにかんでいた。
シティサーキット東京ベイで働く野澤選手。ドラフト会議に出席していたREALIZE KONDO EV Kart Racing Teamの近藤正彦監督とガッチリ握手を交わす。

株式会社トムス 代表取締役社長 谷本勲氏

「正直、ホッとしています」とは、発表会を終えた谷本氏の素直な感想だった。「今年は事前に準備できる時間があったんですけれど、プロのドライバーの扱いをどうするかとか、賞典をどうするかといった調整でいろいろ時間を費やしてしまって……。ここまでバタバタしましたが、結果として望んでいる形にほぼ近い状況に持ってこられたので、まずは良かったかなと思っています」と総評。

 今シーズン、チーム選抜選手のノミネートが廃止になったことについて、「昨年は初めてチーム制をやってみて、表彰台はほぼ国内のトップドライバーたちが占めてしまうという状況になってしまいました。その理由を探るために選手たちには一戦ごとにヒアリングをさせてもらったんです。みんな口をそろえて言ったのが、四輪の挙動にすごく近いということでした」

「エンジンカートでは体を使ってカートを動かすけれど、フォーミュラカーではそういう動かし方はできません。EVカートも車重が重い分、体の移動だけではカートを動かすことが無理で、うまく荷重をかけてマシンの挙動を制御しないと、思ったところに曲がらないしグリップもしないようです」

「それが口づてで代役として参戦するドライバーにも『四輪に近い乗り方をすると速く走れる』ということが伝わって、みんなスポット参戦でもそれなりのタイムが出せるということが判明しました。もともとレース運びが上手いっていうところもありますが、さまざまなことが証明された年だったと考えています」

「プロドライバーを出場させる意味合いというものが、大会を賑わすための創出という面では有意義なんですが、ステップアップのカテゴリーにするという面ではどうしても外れてしまいます。そこで今シーズンは思い切って全員トップを目指す子たちにチャンスを与えようと考えたので、こういう形にしました」と語る。

「出場している子たちにこの後どういうステップを目指しているのか聞くと、ほぼ全員が『トップフォーミュラを目指したい』、『そのためにはまず四輪の登竜門としてFIA-F4で目立った活躍をしたい』、という目指しているものが分かったので、できればそれに一番近づける形の賞典にしてあげたいと思いました」

PHOTO/宇留野潤[Jun URUNO]、大野洋介[Yousuke OHNO]、長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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