一般社団法人 日本カート協会が設立発表、山本尚貴氏がチェアマンに就任

ニュース カート

2025年6月27日

カート競技の普及および振興、そして次世代育成を目的とし、新たな業界基盤を構築するために設立された一般社団法人 日本カート協会。その代表理事に就任したレーシングドライバーの山本尚貴氏が、報道関係者向けに設立発表の記者会見を開いた。

 各種モータースポーツで活躍する選手の起源を辿ると、カート出身者が意外と多いことから、カート競技はモータースポーツの入口という重要な役割を担っていると言える。だが、そのカート競技市場(競技人口)は、年々減少しているのが現状だ。最盛期の1995年をピークに、カートライセンスの発給数は下降傾向に。参戦コストの高騰化や接触機会の減少など、さまざまな要因が挙げられる。

 裾野の減少に起因して、モータースポーツ全体も普及や育成面といった機能を十分に発揮させることが難しくなってきており、他スポーツと比べて歪んだ競技ピラミッドが構築されつつある。これらの諸問題に切り込むべく、“カートを通じて、健全なモータースポーツ文化を未来に継承する”ことをビジョンとして掲げて設立されたのが、一般社団法人 日本カート協会(Japan Karting Association=JKA)だ。

 このJKAが6月24日、東京都江東区にあるシティサーキット東京ベイで設立発表の記者会見を行った。全国カートコース運営団体である日本カートランド協会、全国SLカート運営団体であるSLカートスポーツ機構、全日本カート選手権運営団体であるGPRシリーズの社員が参画し、またJAFモータースポーツ未来委員会を始め、一般企業や国内モータースポーツ所轄団体など、各種支援や事業連携といった協賛から成る協会となっている。

 代表理事(チェアマン)を務めるのは、国内トップカテゴリーで活躍するレーシングドライバーの山本尚貴氏。理事としてTOM'Sカートクラブ代表でありJAFカート部会部会長の谷本勲氏、SLカートスポーツ機構代表理事の夏苅隆裕氏、GPR代表の松浦佑亮氏、日本カートランド協会会長の茂田和也氏らが就任。各団体の代表が理事として名を連ねるALLカート業界で組織されているのが特徴だ。

6月24日にシティサーキット東京ベイでメディア向けに行われたJKAの設立発表。山本尚貴チェアマンと谷本勲理事が記者会見に対応。
左から茂田和也理事、夏苅隆裕理事、山本チェアマン、谷本理事、松浦佑亮理事。カート業界で団体代表を務めるメンバーで組織されている。

 協会設立の経緯の中で、モータースポーツ全体を理解し、メーカーの垣根を越えて推進できる力を持つ適任者として選任された山本チェアマンは「半年前に話をいただき、カート業界にかける思いや熱意を感じ、自分としても貢献したいと思いました」と挨拶。自身の人間形成の過程であるカートが大事なものであると説き、「新しいフェースに来たと感じ、この重責を引き受けました」と語った。

 まず活動を始動するにあたり、JKAが担う4つの役割が発表された。1.公共性を持つ非営利型法人としての運営、2.「オール・カート業界」による連携基盤の構築、3.「オール・モータースポーツ」による人材育成支援、4.公的機関との連携によるスポーツとしての社会的認知獲得。ガバナンス、普及、育成の3つがモータースポーツ文化を未来へ継承するために必要な機能だと説明。

 そして協会として果たすべき使命、目指す未来の姿を表明し、発掘、育成、挑戦、普及、信頼、連携というキーワードで重視する価値基準を提示。その中で“発掘と支援”について触れ、2025年度有望選手発掘夏合宿を実施することを発表した。これは8月18~20日に静岡県小山町のオートパラダイス御殿場で開催されるもので、当該年8~ 12 歳 のカートレース経験者ならびにJAFカートライセンスやSLメンバーズ所持者を対象としたものだ。

 将来的な成長可能性、メンタル面での安定性、指導に対する姿勢、コミュニケーション・協調性、基礎的な学習習慣や生活態度について注目する選考基準とし、2026年JAFジュニアカート選手権への参戦奨学金(最大500万円)を支援する内容となっている。そのほかにも選手育成プログラムを検討中とのこと。また夏合宿だけに留まらず、各地で開催されるカート大会でのスカウティング活動も強化していくと明かした。

 これから才能ある選手の活動支援を積極的に行っていくというJKA。まずはスポーツとしての社会的認知を獲得できるよう目指し、並行して業界関係者にも信頼してもらえるように協会を築きあげていくそうだ。そして選手には技術的な側面や人間性を磨いてもらいたいと発信。ゆくゆくはトップカテゴリーチームがドラフト会議的に、有望選手を引っ張っていくシステムができることを理想とした。今後のJKAの動きに期待したい。

6月14~15日にモビリティリゾートもてぎ北ショートコースで開催された全日本カート選手権(GPR)を視察する山本チェアマン。

PHOTO/長谷川拓司[Takuji HASEGAWA] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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