ジムカーナとオートテストの異種交流戦!? JMRC千葉ジムカーナ部会が提案するモータースポーツの新スタイル
2022年9月30日

モータースポーツの入門編として全国各地で開催されているオートテスト。日々の運転技術の向上にもつながると人気を博しているオートテストから、ライセンスを申請できる資格を得てもらい、ゆくゆくはジムカーナへのステップアップへとつなげてもらおうと、JMRC千葉ジムカーナ部会が全国に先駆けて新しい取り組みに挑戦した。
2022 JMRC千葉・東京ジムカーナシリーズ第6戦
(2022 JAFオートテストin成田内)
開催日:2022年9月11日
開催地:AEONモール成田 屋上駐車場(千葉県成田市)
主催:Narashino
英国発祥のオートテストは、運転の正確さで勝負する競技として知られている。通常の走行以外にバック走行があり、ラインまたぎやガレージと呼ばれる車庫入れもコースに組み込まれ、日々の運転の延長線上で楽しむことができる。そういった理由でオートテストは速度域が低く、AT車でも参戦でき、ヘルメットなどの装備品も必要ないことから、いま最も手軽に参加できるモータースポーツとして注目を集めている。
普段ジムカーナを主催しているオーガナイザーとしては、やはりこのオートテストをきっかけに競技ライセンスを取得してもらい、ジムカーナなどのスラローム競技にもステップアップしてもらいたいというのが本音。しかし、オートテストのエントラントには、まだまだジムカーナという競技は壁が高いようだ。
その壁を少しでも低くしたいという想いから、JMRC千葉ジムカーナ部会はイオンモール成田で開催されるオートテストをJMRC千葉・東京ジムカーナシリーズの一戦として組み込み、実際にジムカーナ選手たちはどんな走りをするのか直に見てもらう意味合いも含め、シリーズ第6戦として開催するという新しい試みを行った。

通常、40台ほどのエントラントが参戦するJMRC千葉・東京ジムカーナシリーズ。このオートテストでの交流戦には20台のエントラントが参戦した。有効ポイント制ということもあり、エントラントの中にはバックギヤに入れることでミッションへの負担を心配して棄権するドライバーもいたが、オートテスト出身のジムカーナドライバーにとってはビッグポイントを獲得できるチャンスと期待をかける選手も。
まず最初に一般のオートテスト参加者が競技を開始すると、慣れないジムカーナドライバーたちはその走りを注視。普段使われていないコンクリート舗装のスリッピーな路面に、車両が通るたびに舞い上がる砂埃。見ただけで『滑る』ということを連想させる。そのコースは30秒台前半から後半にかけての勝負になりそうなレイアウト。やはり勝負どころは、普段全く競技として行っていないバックギヤによる後進とラインまたぎの完全停止だろう。


先陣を切って出走していったのはNSクラスに参戦した大江光輝選手のミニカ。普段はNDロードスターで参戦している大江選手は、オートテストということで自家用車のミニカでのエントリーだ。しかし、このミニカがいきなり好タイムの38秒台をマークする。
このターゲットタイムに会場がざわめくと、すぐさまタイムを更新したのが2番手スタートの古賀亜希子選手だった。元々オートテストからジムカーナにステップアップした古賀選手。オートテストはお手のものといった様子で、一発目から大江選手を1秒以上も上回るトップタイムでターゲットタイムを更新。この2台に迫ったのはクラス最終ゼッケンの大江美由希選手で、3番手に飛び込んできた。
勝負の2本目はやはり大江光輝選手と古賀選手の一騎打ち状態。大江光輝選手が36秒台をマークして古賀選手のタイムを上回ると、すぐさま古賀選手が35秒台で大江光輝選手を抜き去る。1本目にミスコースの白井誠一選手が38秒台で追い上げるも3番手。元オートテストドライバーの面目躍如で古賀選手が見事な逆転勝利を演じた。
「オートテストすごく楽しいですよ! バックとかもあるので、普段の運転にも役立つと思いますし、アクセルもしっかり踏めるし、安全に運転技術の向上が図れるのでいいですね。私は今まで何度も出ていて、オートテスト上がりでジムカーナを始めた感じですね」
「今回のコースはスラロームとおむすびもあって基本に忠実なコース設定でした。ラインまたぎではなくシビアな停止区間がしっかりあるのでとても良いコースでしたね。オートテストは突き詰めていくと完全に別な競技になっていくと思います」
「何より、こういったAEONモールの駐車場で思いっきりアクセル踏めて楽しめるのはいいですよね。もちろん、ジムカーナはジムカーナで競技に奥深さがあるところが魅力です。これからはどっちにも参加して楽しみたいですね」とこれからの抱負も語ってくれた古賀選手。次戦は千葉・東京シリーズに参戦予定だという。


唯一、孤軍奮闘となってしまったNT-ATクラスは、BMW Z4を駆る西上伸二選手が出場。1本目はミスコースを喫してしまったが、2本目はペナルティこそあれどしっかり走りをまとめ、無事完走を果たして賞典を手にした。


毎戦、浅間台で激戦が繰り広げられているPN1クラス。車格的にも一般オートテスト参加者と近しいことから、クラスは違えど意識したタイム争いをすると思われた。1本目にトップタイムをマークしたのは“M'sG田中織物ロードスター”の星野綾佑選手。最終ゼッケンのベテラン深沢希選手は生タイムではぶっちぎりのトップタイムをマークするも、スタート時のスキール音が音量規制に引っかかり、パイロンタッチも重なって下位へ沈んでしまう。
2本目で維持を見せたのは深沢選手で、スタートを慎重に決めてしっかりとタイムを残し、36秒台で逆転優勝を果たした。だが、このタイムはオートテストLクラスの5番手相当のタイム。
優勝を果たした深沢選手はコメントで「バックが本当に難しいですね。普段使うスピードじゃないのでめちゃくちゃ難しかったです。バックミラーを見ながら慎重にいってやっとこのタイムでした。LSDが入っていることもあって、踏めばアンダーなのも厳しいですね」
「スイフトはファミリーカーならではのバックのしやすさ、それと僕の腕が良かったところですね(笑)。でも、今日ここで優勝したジムカーナドライバーの中でうれしい人は少ないんじゃないかと思います。一般参加のオートテストの皆さんにボロ負けしてますから…。修行してもう1回オートテストにリベンジしたいですね」と悔しさをあらわにした。


WRXとヤリスの戦いとなったPN5クラスは、畠山翔選手と横倉清治選手の一騎打ち。ともに車幅の大きなマシンでこのテクニカルなコースレイアウトは非常に厳しい状態のようだ。どちらもLSDが小回りを阻害し、ハンドル操作に苦しんでいる様子。
それでもペナルティなく正確な運転で1本目トップタイムをマークしたのはWRXを駆る畠山選手。2本目には7秒近いタイムアップで、横倉選手を突き放しての優勝を遂げた。その畠山選手は「2本目、慣熟歩行から意識してバックの速度を上げるようにしたら勝てました。ジムカーナとは速度域が違うので、完全に別の競技と思った方がいいですね」とオートテストの感想を語った。


NTF2クラスは2台のエントリー。シリーズはここまで野口武功選手と桐生剛久選手がそれぞれ優勝を積み重ねている状態だ。しかし今回はそのふたりが欠場したため、ここでビッグポイントが獲得できるチャンス。このオートテストでは丸山塁選手と石橋甫選手の一騎打ちとなった。
1本目からリードしたのは、第4戦で3位入賞を果たした石橋選手だった。ペナルティを受けながらも44秒台をマークする。一方の丸山選手は2ペナルティの厳しい展開で、2本目で逆転を狙うが、またもやペナルティを受けてしまい46秒台でフィニッシュ。
これによって1本目のタイムで石橋選手が今季初優勝を飾った。その石橋選手は「いやぁ~、オートテストの参加者の方々のタイムは異次元ですね……。コースは短くてジムカーナっぽいところもあったんですが、やっぱり前に進むだけの方がいいです。千葉・東京ジムカーナシリーズはノーサイドターンのコースもあるので、こちらにも来てもらえたらうれしいですね」と交流戦を期待するコメント。


4台のエントリーを集めたNTR2クラスでトップタイムをマークしたのは、オートテスト経験者である“ワクワク★スカイライン”を駆る嶋田秀憲選手だった。1本目、大柄なマシンにも関わらず唯一ペナルティを受けずにゴールして39秒台をマークすると、2本目もバックセクションで飛躍的にタイムを更新して35秒台を記録。2位の國吉祐司選手に1秒近い差をつけての優勝となった。
「今回、オートテストと併催するという新たな試みということで、千葉・東京ジムカーナシリーズに初めて参戦してみました。1本目は置きにいった感じで、2本目は皆さんタイムを上げてきたので、ちょっと振り回して走ってみました。勝負のポイントはやっぱりバックでしたね。ほかの方にパイロンタッチがあったから逃げ切れた感じです」と嶋田選手。


このオートテストとジムカーナの交流戦を受け、JMRC千葉ジムカーナ部会・副部会長の大原史行氏は「ほとんどのジムカーナ選手がオートテスト初参加でしたが、参加してくれた選手はオートテストという競技を理解し、楽しめたと話してくれました。正直、この交流戦は半分成功かなと思っています」
「普段ジムカーナに参戦している半分のエントラントが参加してくれ、ジムカーナを走っている選手のテクニカルセクションの走りを一般参加者に見てもらえたのはとても良かったと思います。次はジムカーナ会場でオートテストを組み込んだジムカーナを開催してみたいですね」と総評した。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部
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