Cクラス岩下幸広選手はじめアルテックレーシング勢が中村善浩氏に勝利を捧げる!

レポート ダートトライアル

2023年5月30日

2023年JAF九州ダートトライアル選手権の第7戦が、5月21日に広島県安芸高田市のテクニックステージタカタで開催された。スピードパーク恋の浦の閉鎖により、2023シーズンの九州地区戦はここまで2023年JAF中国ダートトライアル選手権との併催で開催。この一戦は当初8月に開催予定であったが、中国地区戦の第3戦の開催日に合わせてスケジュールを変更。3月に同じタカタで行われた第2戦に続き、九州地区戦の2戦目として開催された。

2023年JAF九州ダートトライアル選手権 第7戦
2023年全国JMRCオールスター選抜 第7戦
JMRC九州チャンピオンシリーズ第7戦
MSHサマートライアル2023

開催日:2023年5月21日
開催地:テクニックステージタカタ(広島県安芸高田市)
主催:MSH

 この競技会の約2週間前、九州地区をはじめ、モータースポーツの発展に尽力してきた、JMRC九州運営委員長の中村善浩氏が逝去された。ドライバーズブリーフィングで九州地区と中国地区のドライバー、関係者は黙祷を捧げて、競技に臨んだ。

JMRC九州運営委員長を務めた中村善浩氏を偲び、黙祷を捧げるドライバーや関係者のみなさん。中村氏は運営委員長のほか、加盟クラブ「モータースポーティングクラブラスカル(RASCAL)」の代表も務め、モータースポーツショップ「アルテックレーシング」を営むなど、モータースポーツの発展に貢献してきた。
コースは併催した2023年JAF中国ダートトライアル選手権 第3戦と同じレイアウト。前半はストレート中心、後半はコーナリング中心と、性格が変わる構成によって競われた。

Cクラス

 Cクラスで第1ヒートから、クラスで唯一1分50秒を切る1分48秒24のトップタイムをマークした岩下幸広選手。第2ヒートではさらに1分47秒76まで更新し、第2戦に続いて二連勝を飾った。

「今回は走りの内容など関係なく、何が何でも勝ちたかった」と、アルテックレーシングでモータースポーツ活動に勤しんできた岩下選手は今回の勝利を強く噛みしめた。

「朝のドライバーズブリーフィングで、審査委員長の永山(幸二)さんが黙祷を捧げると言ってくださった時は気持ちが引き締まりました。今思うと、絶対に勝つというプレッシャーを自分にかけていたのかな、とも思いますが、そういった中できっちりタイムアップを果たして勝てた事は、少し成長できたのではないかと思います」と思いを語った岩下選手。中村氏への嬉しい優勝報告となった。

RASCALに所属し、中村氏のためにも必勝の思いでこの一戦に臨んだCクラスの岩下幸広選手(DLアルテックKYBランサー)。2ヒートとも制して見事優勝を果たし、2022シーズン第8戦から続く連勝を3に伸ばした。
Cのディフェンディングチャンピオン、濱田隆行選手(DLクスコitzz浜自ランサー)は岩下選手に敵わなかったが、1分50秒の壁を破って2戦連続で2位を獲得。ランキング2番手につけて岩下選手を追う(左)。嶋村健児選手(MSHブレインDLインプレッサ)は2022シーズン第3戦以来となる3位を獲得し、ランキング3番手に上げた(右)。
Cの上位4選手。左から優勝した岩下選手、2位の濱田選手、3位の嶋村選手、4位の高田雄二選手(ガレージナッツMSHランサー)。

S2クラス

 S2クラスは第1ヒート、トップの岡本泰成選手と2番手の井上博保選手が共に1分49秒台の接戦で折り返すが、第2ヒートでは約0.3秒のタイムアップに留まった井上選手に対して、一気に3秒近く上げて1分46秒29で総合トップタイムをマークした岡本選手が優勝となった。

「イメージ通りの走りは出来たのですが、散水の量が想定以上でタイヤ選択はちょっとミスしたかなという感じです」と反省点も挙げた岡本選手は、開幕二連勝を達成。

 岡本選手もアルテックの若手ドライバーとして、数々の成績を収めており「近く善浩さんを送る会が予定されているので、それに向けた報告ができたので良かったと思います」と笑顔でコメントを残した。

アルテックで仕立てた三菱・ランサーエボリューションⅨを駆り、今季はJAF全日本ダートトライアル選手権のSA・SAX2クラスでトップ3にも入る活躍を見せている、S2クラスの岡本泰成選手(DLQUCC☆おかつねランサー)。第2ヒートではCやDクラスのドライバーたちを1秒以上上回るタイムを叩き出して優勝し、ランキングトップを走る。
昨季はS2で第4戦から三連勝を果たし、ランキング2位を獲得した井上博保選手(GR福岡itzz三和DLヤリス)。2位を獲得し、岡本選手と15ポイント差のランキング2番手に上げた(左)。3位はアルテック勢の一角、小山茂樹選手(DLアルテックランサー8)が獲得してランキング3番手につけた(右)。
S2の上位3選手。左から優勝の岡本選手、2位の井上選手、3位の小山選手。

Dクラス

 Dクラスは第1ヒートで1分47秒32を刻んだ江川博選手がトップで折り返すが、第2ヒートは僅か0.02秒のタイムアップに留まってしまう。このチャンスを活かしたかったラストゼッケンの五味直樹選手だが、0.03秒差まで迫るも及ばず。江川選手が逃げ切って、今季初優勝を遂げた。

「第2ヒートはミスもあり想定していたタイムアップは出来ませんでしたが、全般的には良い手応えでした。僅差でしたが勝てて良かったです。何より同じチームで3人優勝できたのが嬉しいですね」と江川選手はチームメイトとともに挙げた勝利を喜んだ。

 S2は岡本選手、Cは岩下選手、そしてDの江川選手と、アルテック勢が中村氏の弔い合戦で3クラスを制覇した。

アルテックで造られた、トヨタ・カローラスポーツのD車両を駆る、全日本Dクラス常連の江川博選手(DLアルテックGR福岡カローラ)が2ヒートとも制して優勝。第2戦を制している橋本和信選手を3ポイント差でかわして、ランキングトップに立った。
Dの五味直樹選手(MSHブレインズDLランサー)は第2ヒートで1分47秒台に突入するが、さらにタイムアップを果たした江川選手に0.03秒及ばず、2位を獲得(左)。モータースポーツハシモト(MSH)を営むランエボマイスター、橋本選手(MSHブレインズDLランサー)が3位を獲得。自らステアリングを握り、競技会を盛りあげる現役トップドライバーでもある(右)。
Dの上位3選手。左から優勝した江川選手、2位の五味選手、3位の橋本選手。

PN1+クラス

 PN1+クラスは第2戦の覇者、水野喜文選手が第1ヒートをトップで折り返し、さらに第2ヒートでは5秒以上のタイムアップを果たして優勝となった。

「翌週の全日本のために北海道にクルマを送ってしまったので借りたクルマで参戦です。今回も中国地区の選手にタイムは負けてしまいましたが、借り物なので丁寧に走ったのが良い結果に繋がったと思います」と振り返った水野選手は、開幕二連勝を果たした。

借りたクルマ、と言いながらも第1ヒートからトップタイムをマークしたPN1+クラスの水野喜文選手(ワンズターンSPMスイフト)。第2ヒートでは2分1秒15までタイムを上げて優勝、2021シーズンチャンピオンの速さを見せた。
ZC32S型スズキ・スイフトスポーツが多勢を占めたPN1+で、藤口裕介選手(J&S Moty’sヤリス)はトヨタ・ヤリスで孤軍奮闘し、2位を獲得(左)。第1ヒートは4番手だった平安龍司選手(OT☆YH☆SPMスイフト)が第2ヒートで5秒近くタイムを上げて3位を獲得。2戦連続でトップ3に入った(右)。
PN1+の上位3選手。左から優勝した水野選手、2位の藤口選手、3位の平安選手。

S1クラス

 S1クラスは、第1ヒートからクラスで唯一2分を切る、1分58秒台をマークした濱口雅昭選手が、第2ヒートでは1分56秒72までタイムを詰め、危なげなく開幕二連勝を達成。

 しかし、「ちょっと抑え過ぎたのかな。中国地区のタイムを聞いたら、もう少しイケるんじゃないかと思いました」と、タイム的には納得してない様子だった。

第1ヒートから2番手以下に2秒以上の差をつけるトップタイムをマークした濱口雅昭選手(DLタクミWMワークスイフト)。第2ヒートではさらに約2秒タイムアップ、大差をつけて今季2勝目を挙げた。
S1の2位は2ヒートとも2番手タイムをマークした藤崎清選手(YHワンズターンSPMスイフト)が獲得(左)。3位には第2ヒートで4秒近くタイムアップを果たした、荒牧健太選手(MAO神世DLタクミスイフト)が入った(右)。
青いZC33S型スズキ・スイフトスポーツが占めた、S1の上位3選手。左から優勝した濱口選手、2位の藤崎選手、3位の荒牧選手。

AT1クラス

 AT1クラスはホンダ・フィットの田口和久選手が連勝で今季2勝目を挙げた。

「ブルーバードに勝てて良かった。制御系とも仲良くなってきたので、ヒトとクルマが融合してきた感じですね(笑)。タイム的にもPNクラスに近いタイムが出てきたので、良い方向に向かってます」と、田口選手は手応えを感じているようだ。

AT1クラスを制した田口和久選手(MSHブレインズDLフィット)は第1ヒートでPN1+のトップタイム、2分6秒台を超える2分5秒63をマーク。第2ヒートでは2分3秒86まで伸ばしたものの、PN1+の優勝タイムを超えることはできなかったが、CVT・AT車両の可能性を垣間見せた。
AT1に参戦した3選手。左から優勝した田口選手、2位の山北研二選手(SHIMADADLブルーバード)、3位の大谷美紀夫選手(イエローVits CVT)。

RWDクラス

 RWDクラスは第2ヒート、橋本英樹選手が第1ヒートトップの良本海選手のタイムを2.58秒上回りトップに立つも、良本選手はさらに2秒以上タイムを更新し、再逆転を果たした。

「第2ヒートは、思っていたよりも(散水の)水が残っていたので、所々グリップが低い箇所がありましたが、走りの方は90%の出来だと思います」と、上出来の走りを見せた良本選手が昨季の第7戦から4連勝を達成した。

RWDクラスの良本海選手(ワンズターンSPM86)は第2ヒートでクラス唯一となる2分の壁を突破して優勝。2021シーズンチャンピオンの実力を見せつけて、ランキングトップを守った。
RWDに参戦した3選手。左から優勝の良本選手、2位の橋本英樹選手(DLミヨシDXL S2000)、3位の堀田浩司選手(ワンズターンSPM86)。

フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部

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