第2ヒート勝負の中部ダートラ第5戦、S2クラスは松原実選手が勝利し王座争いをリード!

レポート ダートトライアル

2023年7月7日

全8戦のシリーズも後半戦に突入した2023年JAF中部ダートトライアル選手権。第5戦となる今回は7月2日、2023年JMRC中部ダートトライアル北陸シリーズ第4戦とともに石川県の輪島市門前モータースポーツ公園で開催された。6月17~18日には2023年JAF全日本ダートトライアル選手権の第5戦も開催された門前は、中部地区戦では開幕戦の舞台になったコースで、今季2回目の開催となった。

2023年JAF中部ダートトライアル選手権 第5戦
2023年JMRC中部ダートトライアル選手権 第5戦
2023年JMRC全国オールスター選抜 第5戦
2023年JMRC中部ダートトライアル北陸シリーズ第4戦
TOMBOダートトライアル’23

開催日:2023年7月2日
開催地:輪島市門前モータースポーツ公園(石川県輪島市)
主催:TOMBO、ABC

 前日は西日本を中心に日本海側でも豪雨に見舞われ、甚大な被害を被った地域もあったが幸い門前及びその周辺に被害は無く、予定どおり第5戦が開催された。朝方は小雨が降る中での慣熟歩行となったが競技が始まる頃には雨は止み、第1ヒートは濃霧が発生する時間帯があったものの、天気は持ちこたえ、曇り空の中での競技となった。

 コースは、この大会の2週間前に開催された全日本と同じレイアウトを採用。高速からテクニカルまで、門前を果敢に攻める設定で、第2ヒートは全クラスタイムアップの白熱した攻防戦が繰り広げられた。

6月17~18日に同じ輪島市門前モータースポーツ公園で開催された、2023年JAF全日本ダートトライアル選手権の第5戦と同じレイアウトを採用。気温や路面などの状況は異なるものの、全日本を目指す地区戦ドライバーたちには全日本ドライバーたちとタイムが比較できる、絶好の腕試しの一戦となった。

S2クラス

 第4戦終了時点で、松原実選手と鈴木信地郎選手が同ポイントでランキングトップに並ぶS2クラス。チャンピオン争いで重要な一戦となるが、その第1ヒートをトップで折り返したのは松原選手。1分42秒台のタイムで2番手の前田利幸選手に約2.3秒の差をつけ、順調な滑り出しを見せる。一方の鈴木選手は松原選手から約3.5秒遅れの4番手とやや出遅れて第1ヒートを終えた。

 最終クラスのS2になる頃には路面の砂利もかなり捌け、各選手タイムを大幅に更新してきた第2ヒート。クラス中盤ゼッケンの三枝大記選手が第1ヒートから7秒以上ものタイムアップを果たしてトップタイムを塗り替えると、続く蓮池量之選手は約11秒ものタイムアップで1分41秒台に突入して三枝選手を逆転と、トップが入れ替わっていく。

 そこから一気に1分38秒972までタイムを詰めたのが鈴木選手。このタイムが更新されずにラストゼッケン松原選手の出走となるが、中間タイムは鈴木選手に送れること0.237秒。きわどい争いとなったが、後半区間で追い上げた松原選手のゴールタイムは鈴木選手を0.21秒上回り、逆転で優勝を決めた。

「いつもの門前は、第2ヒートでここまでタイムアップする事はないので、第1ヒートのタイムで決めることが出来るかな、と思っていたのですが、Nクラスの時点で僕よりも速いタイムが出ていたので、これは第2ヒート勝負だなと。得意の前半区間で遅れをとってしまったということは、ちょっと抑え過ぎたのかな。心のブレーキがかかってたのかもしれませんね(笑)」と僅差で勝利を収めた松原選手。今季3勝目を上げて単独首位に立ち、王座防衛に挑む。

2021シーズンからS2クラスを二連覇中の松原実選手(DLプロテック男義ランサー)は第2ヒートでライバルたちが大きくタイムアップする中で、自身も4秒近くタイムアップ。第1戦と第4戦に続く2023シーズン3勝目を挙げて、三連覇に向けて一歩前進した。
ここ門前での全日本第5戦でSA2クラス8位入賞を果たしたS2の鈴木信地郎選手(オセロット・ダンロップランサー)。第1ヒートの4番手から第2ヒートで一時トップタイムを奪うも、松原選手に逆転を喫して2位。ランキング2番手につけた(左)。3位に入った蓮池量之選手(CMSCランサー)は11秒近くもタイムを上げて、第1ヒート12番手からジャンプアップした(右)。
S2の上位5選手。左から2位の鈴木選手、優勝した松原選手、3位の蓮池選手、4位の三枝大記選手(TOP1・M2BRIGランサー)、5位の前田利幸選手(オートリンクス ランサー)。

PN1・S1500クラス

 9台で争われたPN1・S1500クラスは、ランキング3番手につける岸貴洋選手が第1ヒートをトップで折り返す。しかし、第2ヒートはクラスファーストゼッケンからトップタイムが塗り替えられ、完全な仕切り直しとなった。

 そこで1分47秒78の好タイムを刻んだのが、第1ヒートで3番手につけていた樋口哲也選手。続く深谷文彦選手は、第3戦、第4戦と連勝中で波に乗っているが、中間タイムでは樋口選手を0.218秒上回るも、ゴールタイムは1分48秒029にとどまり2番手タイム。そして再逆転を狙う岸選手は、中間タイムで樋口選手から遅れること0.309秒、後半区間では僅かに追い上げるものの、前半の遅れを取り戻す事が出来ず0.283秒差で3番手タイムとなり、樋口選手がトップタイムを守りきり優勝となった。

「第1ヒートでトップとのタイム差が僅かだったので、第2ヒートはもっと攻めればイケるかもしれないと思いアクセルを踏みました。路面は第1ヒートよりもかなり良くなっていましたが、タイムが出せるラインは限られていたので、そこを外さないよう意識しながら走りました」という、クラス唯一のトヨタ・ヤリスで奮闘する樋口選手が中部地区戦初優勝を飾った。

第4戦ではPN1・S1500クラスの8位に終わっていた樋口哲也選手(ベルテックスDLTガレヤリス)。第5戦では第1ヒートから3番手タイムと好調さを見せると、第2ヒートではクラスでただ一人、1分47秒台に突入。第1戦での2位以来となる表彰台で、中部地区戦初めての最上段に上がった。
PN1・S1500で三連勝を狙った深谷文彦選手(AMフカミ狐様デミオ)だったが、第1ヒートは5番手。第2ヒートで7秒近く巻き返すも樋口選手には0.249秒及ばず、2位に終わった(左)。2021シーズンのチャンピオン、岸貴洋選手(ベルテックス黒スイフト@Tガレ)は第1ヒートトップで2022シーズン第3戦以来となる勝利の期待が高まったが、深谷選手と僅か0.034秒差の3位となった(右)。
PN1・S1500の上位3選手。左から2位の深谷選手、優勝した樋口選手、3位の岸選手。

S1クラス

 この一戦最多の20台で争われたS1クラス。第1ヒートで唯一1分49秒台と、2番手につけたランキングトップの石川純也選手を約1.4秒上回るトップタイムを刻んだのは、ここ門前での全日本第5戦のSC1クラスを制し、今季の中部地区戦ではランキング2番手につけている森大士選手。

 しかし第2ヒート、クラスも後半にさしかかる頃には上位タイムは1分46秒台まで更新されていくが、ここで一気にハードルを上げたのが1分44秒997をマークした加地真志選手。このタイムを追うべくスタートした後半ゼッケンだが、チームメイトの石川選手は1分46秒122、松原功治選手は1分47秒657で更新ならず。

 森選手も果敢に挑むが1分45秒908に終わり、トップに返り咲く事が出来ず。ラストゼッケン横内由充選手はドライブシャフト破損によりリタイアとなってしまい、加地選手がシードゼッケン勢の追撃をかわして逃げ切った。

「毎戦、チームのみんなで情報を共有して、第1ヒートで失敗した所だけでなく、上手くいったところも話し合って更に精度を上げるようにしているので、第2ヒートのタイムに反映されたと思います。ベストタイム更新を聞いた時は、タイムが抜かれないよう祈ってました(笑)」と、笑顔で語った加地選手。嬉しい中部地区戦初優勝となった。

全日本ウィナーも参戦する最激戦クラスとなり、ディフェンディングチャンピオンが最下位に沈む波乱も起きたS1クラス。第1ヒートで5番手につけた加地真志選手(M2セラメタ スイフト)が7秒以上タイムアップして中部地区戦初優勝。情報共有して精度を上げているという、チームメイトの片田龍靖選手(M2スイフトスポーツ3号)と石川純也選手(M2factoryスイフト弐号)も3位と4位に入り、所属するENAモータースポーツクラブ(ENA.C)勢が活躍した。
2週間前、同じコースで全日本初優勝を挙げた森大士選手(DL和ブリNUTECシビック)がその勢いで第1ヒートでS1のトップタイムをマーク、第2ヒートもタイムを上げるも加地選手には及ばず、2位にとどまった(左)。今季は第2戦での4位が最上位だった片田選手。加地選手はじめENA.Cのチームメイトとの情報共有が実ったか、3位で表彰台の一角を占めた(右)。
S1の上位6選手。左から2位の森選手、優勝した加地選手、3位の片田選手、4位の石川選手、5位の谷弘昭選手(ナオキンTJスイフト)、6位の広上徹選手(クアトロドゥエYHインテグラ)。

Nクラス

 第1ヒートは濃霧の中での走行となったNクラス。その中で1分47秒台をマークしてトップで第1ヒートを折り返したのが、三上勝義選手。しかし霧が晴れ、路面コンディションも良くなった第2ヒートでは、前半ゼッケンの高橋正選手が1分44秒台をマークしトップが入れ替わる。

 その後は2番手以降の順位は入れ替わるものの、トップタイムは更新されないまま競技が進行していくが、後半のシードゼッケンの走行になると、先ずは山内友和選手が1分41秒台を刻みトップに立つ。続く三上選手は1分43秒台に終わり再逆転ならずとなったが、勝負を決めたのがラス前ゼッケン角皆昭久選手。1分39秒362を叩き出しトップに躍り出ると、ラストゼッケン三輪智広選手もこのタイムには及ばず1分43秒台で3番手。角皆選手が第2ヒートでの逆転で優勝を決めた。

「第2ヒートは天候が回復すると予測していたので、第1ヒートは無理せず走りました。1分40秒は切れると思ってましたので、それなりのタイムが出たって感じですかね。今シーズン、門前は先々週の全日本の時が初走行で、他の選手よりも練習量は少ないのですが、たまたま運良く勝てたと思ってます」と、走りを振り返った角皆選手は今季2勝目。

 Nのランキングは、3番手だった山内選手がこの一戦はスキップした村松俊和選手を抜いて、トップを奪取。4番手につけていた角皆選手は山内選手と同ポイントで2番手に並んだ。

同じコースでの全日本第5戦はNクラスの9位だった、三菱・ランサーエボリューションXを駆る角皆昭久選手(AionDLランサー)。この一戦では霧中の第1ヒートは温存し、第2ヒートで10秒近くタイムアップを果たすクレバーな走りで第4戦に続くNクラス二連勝、全日本ドライバーの強さを見せた。
1分41秒237をマークした第2ヒートでは一時トップに立った、NでランエボIXをドライブする山内友和選手(DLシロキヤ ランサー)。角皆選手に逆転を喫するも、第2戦以来の2位を獲得(左)。第1ヒートを2番手で折り返した、ランエボVIIIの三輪智広選手(樋口鍼灸モティーズ寺勝ランサー)は今季3度目の3位に入った(右)。
Nの上位5選手。左から2位の山内選手、優勝した角皆選手、3位の三輪選手、4位の三上勝義選手(エスコートインプレッサ)、5位の高橋正選手(YH油屋さんちのランサーX)。

RWDクラス

 RWDクラスはランキングトップで、ディフェンディングチャンピオンの寺田伸選手が第1ヒートからトップタイムをマーク。タイムアップ合戦となった第2ヒートでは、1分50秒台で推移していたトップ争いを一気に刻む1分48秒665を叩き出し、貫禄の優勝を決めた。

「今回のコースは(2週間前の)全日本でも走ってるしね。その時と路面状況は違うけど、それなりに攻略は出来たと思う。シリーズ前半は若手に負ける事が多かったので、おじさんも頑張らないとね(笑)」と寺田選手。このクラスの王座防衛に向けて、大きな2勝目を挙げた。

RWDクラスでは三連覇に挑むベテランの寺田伸選手(TガレDLセラメタVTX86)が両ヒートとも制して今季2勝目を挙げた。ここまで5位だった第3戦以外は表彰台に上がり、ランキングトップを守っている。
RWDの櫻井貴章選手(ブリッドDL・ATS・86)は第1ヒート8番手から8秒以上タイムアップして2位を獲得。10位に入った第4戦から2戦連続でポイントを稼いだ(左)。トヨタ86が大勢を占めるRWDで、トヨタ・アルテッツァを駆って孤軍奮闘している杉田聡選手(塩岡スピードYHアルテッサ)。3位で第4戦に続く連勝はならなかったが、2戦連続で表彰台に上がった(右)。
RWDの上位5選手。左から2位の櫻井選手、優勝した寺田選手、3位の杉田選手、4位の前田蔵人選手(WMクスコVX☆DLuse86)、5位の山﨑裕汰選手(TガレクスコWmDLVTX86)。

2Pクラス

 2P(ペダル)クラスは、両ヒートともに村瀬秋男選手がトップタイムで優勝。今季3勝目を挙げて、依然ランキングトップを保持している。

「これまで電子デバイスで解らなかった事が多かったので、練習で色々試した結果、整備モードがフィーリングが良く、今回もそれで走りました。ただ、ABSが解除されてしまうので、ブレーキがシビアになって、リアが唐突に出てしまう事があるのですが、その挙動を上手く使う事によってコーナーで向きを変える事ができましたね」と、村瀬選手は語ってくれた。

2Pクラスを制した村瀬秋男選手(DL・ワコーズ・フィットHV)は第4戦の2位で連勝は2で止まってしまったが、この一戦で表彰台の頂点に復帰。電子制御が多いAT車両のホンダ・フィットハイブリッドを試行錯誤しながら乗りこなし、ランキングトップを走っている。

JMRC中部ダートトライアル北陸シリーズ、クローズドクラス

 併催した北陸シリーズ第4戦のクラス1は、第1ヒートからトップタイムをマークした山本吉男選手が優勝し、クラス3では両ヒートでトップタイムの水本正裕選手が今季3勝目を挙げた。クラス4は、第2ヒートで逆転した長坂和人選手が今季初優勝を飾った。

 そしてクローズドクラスに参戦した中村允哉選手は、無事完走を果たした。

 中部地区戦、北陸シリーズともに残すは3戦となり、シリーズが佳境に入ってきた中部地区のダートトライアル。中部地区戦は8月6日に第3戦も開催された、愛知県の池の平ワンダーランドで第6戦が、北陸シリーズは同じ門前で第5戦が7月23日に開催される。

2023年JMRC中部ダートトライアル北陸シリーズ第4戦、クラス1の山本吉男選手(敦賀のおじさんデミオ)は第1ヒートで2番手以下を大きく突き放すトップタイムをマークすると、第2ヒートではさらに5秒近くタイムアップして今季初優勝を果たした。
クラス1の上位2選手。左から2位の田中真哉選手(アクティブオートインプレッサ)、優勝した山本選手。
2ヒートともトップタイムを叩き出して北陸シリーズのクラス3を制した水本正裕選手(ミラージュ)は連勝を果たして今季3勝目を挙げて、ランキングトップを守った。
第1ヒートでは北陸シリーズのクラス4最下位に沈んだ長坂和人選手(THL中村板金インプレッサ)だったが、第2ヒートで18秒近くものタイムアップでトップタイムをマークして今季初優勝を果たし、ランキングトップに立った。
クラス4の上位2選手。左から2位の山崎恒選手(SKランサー)、優勝した長坂選手。
クローズドクラスには中村允哉選手(赤86)が参戦、8秒以上タイムアップした第2ヒートでベストタイムをマークした。

フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部

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