九州ラリー第5戦、RH-3のマツダ・デミオ対決は後藤章文/山本祐介組が最後に大逆転!

レポート ラリー JAFWIM

2023年9月7日

2023年JAF九州ラリー選手権は、前戦から約二カ月半のインターバルを経た9月2~3日、佐賀県唐津市を拠点とする「グラベルマインドラリー2023 in唐津」が、第5戦として開催された。唐津市と言えば、毎シーズン春にJAF全日本ラリー選手権の一戦、「ツール・ド・九州in唐津」が開催されることで知られるが、このツール・ド・九州を主催するグラベルモータースポーツクラブ(GRAVEL)が、9月に再び唐津の地で地区戦の一戦を開催することも、すっかり恒例となっている。

2023年JAF九州ラリー選手権 第5戦
2023年JMRC九州ラリーチャンピオンシリーズ第5戦
グラベルマインドラリー2023 in唐津
TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge 2023 Cup in唐津

開催日: 2023年9月2~3日
開催場所: 佐賀県唐津市周辺
主催: GRAVEL

 SSについても全日本で設定されたステージを使用するケースが多く、今回のラリーもお馴染みの「UCHIURA」3.82kmが用意された。また数シーズン前の全日本で使用されたステージの一部を走る「SARI」3.06kmが新たに設定された。ただしこのステージは全日本で使われた際とは逆走の設定となったため、全日本経験者も含め、すべての参加者にとって初見のステージとなる。

 ラリーはまずセクション1で、SARI、UCHIURAの順で2回ずつ走行した後にサービスイン。セクション2は今回、HQやサービスが置かれた「ボートレースからつ」駐車場内に特設された400mのスーパーSS「BOATRACE」をこなした後に再び、SARI、UCHIURAの順にトライしてフィニッシュする計7SS、21.04kmで競われた。

 ラリー当日は早朝から太陽が照り付ける酷暑の一日となったが、2本の林道SSはともに樹木が道に覆いかぶさる箇所も多く、特にUCHIURAの前半は太陽の届かない鬱蒼とした区間が続き、苔なども生えたスリッピーな路面が待ち受けた。一方で日が差す部分は完全なドライ路面が保たれたため、メリハリのあるドライビングが求められた。

HQには2023年6月に逝去されたモータースポーツクラブグラベル(GRAVEL)代表、七田定明氏のメモリアルコーナーを設置。七田氏が愛用したヘルメットやレーシングシャツ、競技中の写真など、活躍を偲ぶことができる展示がされた。

2023年JAF九州ラリー選手権 第5戦

RH-1クラス

 RH-1クラスは前戦の第4戦でGRヤリスでの初優勝を飾った城戸新一郎/橋口由衣組がSS1 SARI1でベストタイムを奪取。続くSS2 UCHIURA1も制して順調な滑り出しを見せたが、このSS2では、鬼門と言われた前半区間で、優勝候補だった中村均/廣田淳士組、久保慶史郎/美野友紀組の2台がコースオフでリタイアし、波乱の序盤となる。

 城戸/橋口組は2番手の津野裕宣/岡崎辰雄組に7.2秒のリードを作ってラリーを折り返したが、セクション2最初のスーパーSSのSS5 BOATRACEでサイドブレーキが効かず、8番手タイムにとどまった。一方の津野/岡崎組は、SS5 とSS6 SARI3で城戸/橋口組を上回り、その差を2秒まで詰めて最終のSS7 UCHIURA3へ。このSSでは2台ともに前走のSS4から10秒以上もタイムを削り取る激走を見せ、津野/岡崎組がこの日初となるベストで締めたが、城戸/橋口組には0.4秒届かず。城戸/橋口組が前戦に続く勝利を手にした。

「ペースノートをしっかり作って、高速のコーナーでタイムを稼ぐ作戦どおりのラリーができました」と振り返った城戸選手。「以前にSS1のタイム差を引き摺って負けたことがあったので、全開で攻めたSS1でベストが獲れたのが今日は大きかったと思います」勝利の要因を語った。一方の津野選手は「今日の前半はとにかく城戸選手が速かった」と、ライバルのスピードに脱帽していた。

「前戦でクルマが決まってくれたので、今日も微妙な路面でもクルマを信用して思い切っていけました」と語ったドライバーの城戸新一郎選手と橋口由衣選手のクルー(クスコはなみずきGRヤリスμ)は、接戦となったRH-1クラスの優勝争いに競り勝ち、ランキングトップに迫った。
「まだ去年の良かった時期ほど自分が乗れてないのが敗因ですね」と、今回のラリーを振り返ったRH1ディフェンディングチャンピオンのドライバー、津野裕宣選手と岡崎辰雄選手のクルー(YH WM宮尾石油SPMランサー)は前戦の3位からひとつ上の2位を獲得(左)。開幕二連勝を果たして王座争いを牽引する松尾薫/平原慎太郎組(proμYHレプソルインプレッサ)は優勝争いに加われなかったものの3位に入り、ランキングトップを守った(右)。
RH-1のトップ6クルー。左から二連勝を挙げた城戸/橋口組、2位の津野/岡崎組、3位の松尾/平原組、4位の廣川慎一/森下志朗組(アズリード・トライムGRヤリス)、5位の神田和徳/後藤義則組(城島高原ファイベックスランサー)、6位の小川剛/藤田めぐみ組(OTS BRIDE ANインプレッサ)。

RH-2クラス

 RH-2クラスは、GR86を駆る鶴田健二/門田実来組がSS1で、「レッキで掴んだイメージ通りの走りができました」と、今季4戦3勝と好調の林大河/有川大輔組のNC型マツダ・ロードスターを3.5秒差で下してベストを奪う。林/有川組はSS2で挽回を期すが、コース上に止まっていたリタイア車両をかわそうとしてコースオフ。痛恨のリタイアとなってしまう。

 最大のライバルが消えた鶴田/門田組は後続に12秒近いマージンを築いてセクション1を上がると、スーパーSSのSS4でもジムカーナ経験者の本領を発揮して華麗なパイロン捌きを見せてベストを奪取。セクション2の3本のSSもすべて制して、大差で今季2勝目をさらった。

 GR86のデビュー戦となった前戦は、SSのフライングフィニッシュ後に高速でスピンするなど、2位となったものの散々なラリーとなったが、「2戦目ということでかなりクルマにも慣れてきました。UCHIURAは何年か前に走ったことがあったので、その時を思い出してリズムを作れて走れました」とラリーを振り返った鶴田選手。残り2戦でのチャンピオン確定にも意欲を見せていた。

GR86投入2戦目にして優勝を手にし、ランキングトップに立ったRH-2クラスの鶴田健二/門田実来組(カローラ福岡☆カロロの86)。鶴田選手が「やっぱり400ccの差は大きくて余裕を感じますね」と語る車両の慣熟を進めて、王座確定に邁進したいところだ。
2023年JAF全日本ラリー選手権のJN-4クラスに参戦する黒原康仁/松葉謙介組(itzzYHリズミックスANスイフト)がスポット参戦、5SSで2番手タイムをマークする流石の走りで2位に入った(左)。3位を獲得した枝光展義/枝光祐子組(YHSPMNRMBRZ/TER)は2023シーズン初のトップ3フィニッシュを果たした(右)。
RH-2の上位6クルー。左から優勝した鶴田/門田組、2位の黒原/松葉組、3位の枝光組、4位の筒井克彦/古川智崇組(TEAM221スイフト)、5位の前田耕造/工藤雅子組(C&C86ラリー号)、6位の小松元司/藤岡恵子組(ピュアズCL:86:|)。

RH-3クラス

 ともにマツダ・デミオを駆る後藤章文/山本祐介組と河本拓哉/柴田咲希組の2クルーが毎戦、激しいバトルを演じているRH-3クラスは、今回のラリーでも最終SSまで優勝争いがもつれた。先行したのは後藤/山本組で5秒のマージンを河本/柴田組につけてセクション1を折り返すが、スーパーSSでミスを喫して大きくタイムロス。逆に河本/柴田組に5.9秒のリードを許して、残る2本の林道SSに向かった。

 後藤/山本組はSS6では1.7秒、河本/柴田組に競り勝つが、最終SSを前にしての差は4.2秒と厳しい状況に。「SS6で思ったほど詰められなかったので、(逆転は)難しいかなと思いましたが、SS7のUCHIURAは午後になって路面が乾く所もあるだろうから“もう行くしかない”と」攻め切った後藤/山本組は河本/柴田組に6.8秒差をつけるスーパーベストをマーク。土壇場で逆転を果たして今季3勝目をゲットした。

「UCHIURAも元々苦手ではないし、SARIも思ったよりうまく走れました」と振り返った後藤選手。「“最後まであきらめてはいけない”ということを教え子達に示せてよかった。彼らも本当に頑張ってくれました」と、サービスを務めた大分高校自動車工学専攻科の学生達を労っていた。

「タイトルを考えると絶対リタイアはできない、というプレッシャーがSS5のミスに繋がったと思います」と、セクション2早々に背水の陣に立たされたRH-3クラスの後藤章文/山本祐介組(タクミμKOMレーシングデミオ)だったが、残る2SSを連取する不屈の走りを見せて逆転で今季3勝目。チャンピオン確定にも王手をかけた。
今季の全日本第4戦「久万高原ラリー」のJN-5クラスで全日本初優勝を挙げたドライバーの河本拓哉選手と、コ・ドライバーの柴田咲希選手のクルー(TWR DLクスコWMデミオ)は今回のラリーでもRH-3で接戦を繰り広げるも、2戦連続の2位となった(左)。第1戦の2位以降、堅実な走りで常に上位に入る豊田智孝選手(上戸次石油豊智学館ヴィッツ)は、コ・ドライバーに岩本耀大選手を迎えて3位を獲得、ランキング2番手を守った(右)。
RH-3の上位5クルー。左から優勝した後藤/山本組、2位の河本/柴田組、3位の豊田/岩本組、4位の藤本大典/穴井謙志郎組(トクオワークス カヤバデミオ)、5位の北垣恵一/永渕直大組(TWRヴィッツ)。

RH-4クラス

 RH-4クラスもRH-3同様、トップ2台が互いにベストタイムを奪い合う接戦が展開された。セクション1は岩本昂大/岸本香太郎組のNCP91型トヨタ・ヴィッツが0.5秒差で馬場潤一郎/篠原徹組のトヨタ・ヤリスを従えて折り返すが、SS5で馬場/篠原組がベストを獲って、岩本/岸本組と同秒タイに持ち込む。

 しかしセクション1のSARIで2本ともベストを奪った岩本/岸本組は3ループ目のSS6でも馬場/篠原組を0.8秒差で下して再び首位を取り返す。だが最終のSS7 では、「2回走ってタイムをまだ詰められる余地があると分かっていたので、その点を修正できればいけると思っていた」という馬場/篠原組が2.2秒、岩本/岸本組を振り切るベストをマーク。1.4秒差という大逆転劇で優勝をさらった。

「SS7は会心の走りでしたが、自分としてはSS6で苦手なSARIの前半区間を最小限のロスで走れたことが勝利に繋がったと思います。」と語った馬場選手は、2018シーズンに三菱・ミラージュアスティでラリーデビューを飾った27歳。この勝利が記念すべきラリー初優勝となった。コ・ドライバーを務めた2022シーズンのJAF九州ダートトライアル選手権PN1+クラスチャンピオンの篠原選手も、「かなり成長してきました」と馬場選手の走りを称えていた。

2022シーズンもこのラリーに参戦し、2位を獲得したRH-4クラスの馬場潤一郎選手(J&S CUSCOヤリス)。今回はコ・ドライバーにダートトライアラーの篠原徹選手を迎えて参戦した。接戦の優勝争いを繰り広げる中でも「SS2でリタイアされた方々の車両を見て、危ない所は抑えなければいけない、と再認識できたことも大きかった。あそこで誰もリタイアしていなかったら、自分が真っ先にコースアウトしたと思います(笑)」と学びながら、ラリー初勝利を挙げた。
RH-4の優勝争いを繰り広げた馬場/篠原組と同じく、今季地区戦初参戦となった岩本昴大/岸本香太郎組(ガレージ27R.I&Kヴィッツ)はセクション1を制するが、2位に終わった(左)。今季はここまで2勝を挙げている山下公章/鹿田裕太組(カローラ福岡☆Y&S☆ヤリス)は、3位フィニッシュで山下選手がチャンピオンに王手をかけた(右)。
RH-4の上位3クルー。左から優勝した馬場/篠原組、2位の岩本/岸本組、3位の山下/鹿田組。

RH-5クラス

 RH-5クラスはランキングトップの白𡈽辰美/糸永敦組のスズキ・スイフトスポーツがSS1から三連続ベストで上がって好調をキープ。SS4では三菱FTOを駆る秋竹誠之/秋竹純組にベストを譲るも、SS5では秋竹組を2.0秒差で下して独走態勢に入ったかと思われたが、SS5で車両トラブルが発生してリタイアとなってしまう。

 代わって首位に躍り出た秋竹組が慎重にフィニッシュまでFTOを運んで優勝を達成。今季は2戦続けてリタイアというラリーが続いていた秋竹選手は、「やっと走り切れました(笑)」と、安堵の表情を見せた。

RH-5クラスはSS6で首位に立った秋竹誠之/秋竹純組(J&S太陽・M☆FTO)がそのままフィニッシュ。今季はここまで参戦した2戦ともリタイアを喫していた鬱憤を晴らす勝利を挙げた。
RH-5で完走を果たした2クルー。左から優勝した秋竹組、2位の若杉達哉/齊藤龍組(SWKアルトHA36S)。

RH-6クラス

 RH-6クラスは開幕4連勝と無敵の速さを見せている納富瑠衣/出雲正朗組のホンダCR-Zが今回のラリーも、「中古のタイヤをもたせることを意識し過ぎて、運転のリズムが崩れてしまった」と言いながらも、SS1から首位をキープ。「最後でようやく本来の走りを取り戻せました」というSS7では他を圧するスーパーベストで締めて、開幕5連勝を達成した。

 2戦を残してチャンピオンを確定した納富選手は現役の大学生。「来年も学生なので相変わらずお金はないですが(笑)、タイヤやデフをグレードアップして、速さを上げていきたいですね」と、早くも連覇に向けて意慾を見せていた。

昨季の最終第7戦にRH-6クラスに参戦し、デビューウィンを飾ってから続く連勝を6に伸ばした納富瑠衣/出雲正朗組(DXL・OUAC・CR-Z)。圧倒的な速さを見せて早々にチャンピオンを確定し、「学生の内にチャンピオンを獲るという目標を叶えることができて嬉しいです」と納富選手は目標達成を喜んだ。
電気自動車の日産・リーフを駆って第3戦からRH-6に参戦する常慶明秀選手(日産・リーフ)。今回のラリーはコ・ドライバーに徳永琢磨選手を迎えて、3戦連続の2位を獲得した(左)。3本のSSで2番手タイムをマークした、長江修平/三宅律子組(リズミックス・ヴィッツ)が3位を獲得した(右)。
RH-3の上位3クルー。左から開幕5連勝でチャンピオンを確定させた納富/出雲組、2位の常慶/徳永組、3位の長江/三宅組は表彰式に出席できなかったため、代理が立った。

TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge 2023 Cup in唐津

 TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge 2023(TGRラリーチャレンジ)は、第7戦が九州ラリー第5戦と併催のカップ戦として開催された。今季の同シリーズは全11戦が組まれているが、カップ戦として開催されるのはJAF北海道ラリー選手権の第3戦と併催した第4戦と今回のラリーのみで、他の9戦はすべて単独戦として開催される。グラベルマインドラリーは過去にも併催した実績があるため、その走り応えのあるターマックステージの評判を伝え聞いた33台が全国から集まった。

 今回のラリーは5本のSSを設定。地区戦のSS3から合流するかたちになり、スーパーSSのBOATRACEを挟んで、SARI、UCHIURAを計2本ずつ走行するアイテナリーが組まれた。レッキの回数が地区戦の2回に対して、TGRラリーチャレンジは通常のかたちの1回に制限されたため、ペースノートの精度なども重要になってくるラリーとなった。

E-4クラス

 E-4クラスは昨季のドライバーチャンピオンで、今季はランキング3番手につけているAki HATANO選手と山本磨美選手のクルーのGR86が、SS1 でまず大差のトップタイムをマーク。順調なスタートを切ったに見えたが、SS2 でスピンを喫して大きくタイムロスしてしまい、AE101型トヨタ・カローラレビンを駆る原田善夫/原田枝利子組に首位を明け渡す。

 しかしHATANO組はスーパーSSのSS3でTGRラリーチャレンジの総合ベストを獲って、すかさず首位を奪還。後半2本のSSも大差のベストで上がってトップをキープし、今季は九州の地でE-4クラス初優勝を飾ることになった。

一週間前には2023年XCRスプリントカップ北海道の第5戦でトヨタ・ランドクルーザープラドを駆って2位を獲得したドライバーのAki HATANO選手(HAL GR86-ORC)が山本磨美選手とGR86を操り、E-4クラスで優勝。車種を選ばない速さを見せた。
E-4のベストを獲ったSS2をはじめ、常にクラストップ3タイムをマークし続けた原田善夫/原田枝利子組(ADVANTAGE☆YHレビン)が今季最上位の2位を獲得(左)。モータースポーツでは見かけることが少ない、トヨタC-HRで参戦した羽柴公貴/大嶋尚が3位に入った(右)。
E-4の上位3クルー。左から今季シリーズ初優勝のHATANO/山本組、2位の原田組、3位の羽柴/大嶋組。

E-2クラス

 E-2クラスは初代(ZN6型)トヨタ86を対象とするクラス。今季2度のトップ3フィニッシュを果たしている、中部・愛知から参戦の石川紗織/鈴木重隆組がSS1からベストを連取し、石川選手が得意とするジムカーナテイストのSS3でもTGRラリーチャレンジで総合3番手のタイムをマーク。最後までライバルに隙を与えず、4本のSSを制してフィニッシュ。

 TGRラリーチャレンジ全クラスを通じての総合ベストをマークして、今季シリーズ初優勝を達成した石川選手は、「WOMEN’S RALLYを除けば総合優勝は初めてなので、この1勝は格別です。唐津で開催のこのラリーは以前から是非出たいと思っていましたが、実際に走ってみると普段のラリチャレとはまた違った趣のあるコースで、最後まで楽しく走れました」と会心の一戦を振り返った。

昨季のJMRC中部ラリーチャンピオンシリーズDE-2クラスチャンピオンで、今季はJAF中部・近畿ラリー選手権のDE-2クラスでランキング2番手につける女性ドライバーの石川沙織選手(DL RAYS ZEAL大仏86)と、鈴木重隆選手が操るトヨタ86がE-2クラスで躍動。SS2ではTGRラリーチャレンジの総合ベストも奪う速さも見せて優勝。石川選手はランキングでトップと同点の2番手に上げた。
今季シリーズ初参戦となったE-2の境一輝/中沢樹里組(C&A Racing 86)はベストを獲ったSS5以外の4SSで2番手タイムをマークして、2位を獲得(左)。4本のSSで3番手タイムを並べた有馬輝芳/大木厚組(FASCシロキヤ和弘工業所86)が3位に入った(右)。
E-2の上位2クルー。左から優勝した石川/鈴木組、2位の境/中沢組。

C-3クラス

 初代86を駆る初・中級者対象のC-3クラスは、松原周勢/横山慎太郎組と布田健悟/釜澤亮組がSS1からコンマ秒差のバトルをSS3まで展開したが、SS4で松原/横山組が布田/釜澤組を2.3秒差で下すベストをマーク。布田/釜澤組は最終のSS5で0.5秒詰め寄ったが、松原/横山組が2.3秒差で逃げ切った。

 第2戦に続く今季2勝目を挙げた松原選手はこの夏、全日本ドライバーの奴田原文雄選手が主宰するラリースクールに参加。「ラリーの基本を見直すことができたので、今回のような難しい路面があったラリーでも対応できました」と、日本を代表するトップラリーストに感謝しきりだった。

第3戦以来のエントリーとなったC-3クラスのドライバー、松原周勢選手(デンソーDAC86YRP)は横山慎太郎選手と組んでラリー中盤まで接戦の優勝争いを展開。SS4で築いたマージンを活かして勝利を掴んだ。
C-3の布田健悟/釜澤亮組(アイシン86ATS YH)は好バトルを繰り広げた松原/横山組に敗れて2位になるも、ランキングトップは守った(左)。今季はここまで、シリーズ全戦でエントリーを続けるドライバーのKIZUNA選手は、中部・近畿ラリーDE-6クラス二連覇を確定させたばかりのドライバー、洪銘蔚選手をコ・ドライバーに迎えて3位を獲得した(右)。
C-3の上位2クルー。左から優勝を果たした松原/横山組と2位の布田/釜澤組。

E-3クラス

 E-3クラスは、今季もすでに3勝をあげているディフェンディングチャンピオンのドライバー、細谷裕一選手と新井祐一選手のクルーが、関東・栃木から参戦。「このラリーは何年か前にリタイアに追い込まれているので、今回は最後まで緊張感をキープして走りました」と5連続ベストをマークして4勝目を獲得し、“絶対王者”としての走りを見せつけた。

E-3クラスはJAF東日本ラリー選手権のBC-3クラス二連覇中の細谷裕一選手(メープルYHDXL毒苺ヴィッツ)が新井祐一選手をコ・ドライバーに迎え、全てのSSを制して完勝。細谷選手は連覇継続に向けてランキングトップをひた走る。
E-3のドライバーランキング2番手につける天野浩明選手と、コ・ドライバーランキングトップの羽琉選手のクルー(YH★イエローハット★YARIS)は2位を獲得し、それぞれのランキング順位を守った(左)。大島康嗣/石川慎一郎組(TeamPTスポーツHEVアクア)は4SSで3番手タイムを並べて3位に入った(右)。
E-3の上位2クルー。左から優勝した細谷/新井組、2位の天野/羽琉組。

E-1クラス

 E-1クラスはNCP91型ヴィッツを駆る桒村浩之/住友哲郎組とNCP131型ヴィッツを操るBURA/KAZU組、今季ともにこれまで全6戦に参戦している新旧ヴィッツ対決に。SS1はBURA/KAZU組が1.3秒、桒村/住友組を上回って首位スタートを切るが、SS2では桒村/住友組が3.8秒差でBURA/KAZU組を下して逆転。

 2ループ目では順調に1ループ目よりタイムアップを果たした桒村/住友組に対して、BURA/KAZU組はタイムを詰めることができず、さらにリードを許す展開となり、桒村/住友組がそのまま逃げ切りに成功。今季4勝目を挙げてランキングトップの座を守った。

今回のラリーは一騎討ちの様相となったE-1クラスでは、ランキングトップの桒村浩之/住友哲郎組(デルタWmYHBRIDESASヴィッツ)がSS2でのベスト奪取を皮切りに、残る3SSでもベストをマークしてBURA/KAZU組(KRT YHコロシアムinn蓼科)を下して優勝、王座争いでのリードも広げた。

C-4クラス

 C-4クラスは今季4度目の参戦となったNaosan/Ryusen組がトップでセクション1を折り返したが、後半に入ると地元・九州は福岡の松尾圭介/深江知佳組が反撃を開始。SS4でNaosan /Ryusen組を5.5秒差で下して首位に立つと、SS5もベストで上がってリードをさらに拡大。トータル6秒差で逃げ切った。

 松尾選手はコ・ドライバーとしてこのラリーに参戦経験があるが、ドライバーとしては初出場。「難しそうな道だな、という印象がありましたが、ドライバーとして走ると、さらに難しい道でした(笑)」と振り返った。深江選手もこのラリーの経験者だが、「今度はドライバーとして優勝したいです」と意欲を見せた。

地元・九州勢の一角としてC-4クラスに参戦した松尾圭介選手(カローラ福岡☆本部ヤリス☆)は、初めて組んだコ・ドライバーの深江知佳選手とのコンビネーションがラリー後半で合ったことが繋がった、と言うとおりSS4とSS5を連取して勝利を挙げた。

C-2クラス

 C-2クラスは親子で参戦した三好明宏/三好陽人組がSS1からベストを連取してリードを広げる展開に。コ・ドライバーを務めた息子・陽人選手は今回がラリー初参戦だったが、「最初は何を言っているか、よく分からなかったけど(笑)、後半はリーディングのタイミングもうまく合ってきた」(父・明宏選手)と、最終のSS5では大きくベースアップ。終わってみれば、5本のSSを完全制覇し、ドライバーの父・明宏選手は第1戦以来のトップ3フィニッシュを、優勝という最高のかたちで手に入れた。

第1戦以来の参戦となったC-2クラスの三好明宏選手(住友ゴムDUNLOPヴィッツ)はラリーデビューとなる息子の三好陽人選手をコ・ドライバーに据えて参戦。SS1から10秒以上の差をつけてトップタイムをマークすると、徐々にかみ合ってきた息子・陽人選手とのコンビネーションも相まって大差をつけて優勝し、陽人選手にデビューウィンもプレゼントした。

C-1クラス、OPEN-Eクラス

 C-1クラスは前戦、宮城県利府町での第6戦で今季初優勝をさらった門馬孝之選手が、コ・ドライバーの望月裕司選手と組んで東京から参戦。前半は今季すでに2勝をあげている西木孝浩/中村貴也組に7.4秒のリードを許すが、SS4から反撃を開始。5.4秒差に詰めて臨んだ最終のSS5でも西木/中村組を5.6秒差で再び下して、0.2秒という超僅差で逆転に成功。

 自身は連勝を飾った門馬選手は、「なかなか勝てそうで勝てないラリーが続いていたコ・ドラの望月選手に、ようやく優勝を持ってこれたので嬉しいです。はるばる東京から来た甲斐がありました」と大激戦のラリーを振り返った。

 なおOPEN-EクラスはレクサスUX300eで果敢な走りを見せた内村容基也/鞍成礼司組が、トヨタ・ハイエースの河野健司/浦雅史組を最後まで抑え切ってトップでフィニッシュした。

今季は北海道での第4戦以外は全て参戦を続けているC-1クラスの門真孝之選手(コンペアクア)は、今回のラリーで望月裕司選手が第5戦以来のコ・ドライバーに復帰。SS3までは3連続2番手タイムに甘んじるも、2ループ目のSS4とSS5を制して逆転優勝。門間選手はランキングでもトップに立った。
レクサスUX300eとトヨタ・ハイエース、競技車両としては珍しい2台によるトップ争いとなったOPEN-Eクラスは、UX300eを駆る内村容基也/鞍成礼司組(トヨタ九州SECCレクサスUX300e)が制した。

フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部

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