モータースポーツツーリズムを地で行く北海道オートテスト第7戦は十勝が舞台!
2023年9月12日

ヘルメットやグローブを必要とせず日々乗っているクルマを使って、最も気軽に始められる大人のモータースポーツ、それが英国生まれのオートテストだ。日本に本格的に導入され数年が経ち、各地でシリーズ戦が続々と開催されるようになっているうちのひとつが、「JMRC北海道トヨタカローラ札幌GRガレージ札幌厚別通オートテストシリーズ」。広大な北海道の各地を転戦しながら、全8戦で争われているこのシリーズも7戦目を迎えた。
2023年JMRC北海道トヨタカローラ札幌GRガレージ札幌厚別通オートテストシリーズ第7戦
オートテストin TOKACHI(仮)
開催日:2023年9月3日
開催地:十勝スピードウェイ ジムカーナコース(北海道更別村)
主催:TOSC
第7戦の開催地は十勝インターナショナルスピードウェイのジムカーナコース。シリーズに参加しているドライバーの中には、モータースポーツと旅行を一緒に楽しむドライバーが多くいる。 直前にJAF北海道ジムカーナ選手権の第6戦が開催されたこの日も、午前中は風光明媚な十勝エリアを観光し、午後はこのオートテストで非日常を楽しんで帰る、というドライバーが多くいたようだ。
このシリーズは他地区同様、走行タイムとペナルティをポイントに変換して競うが、1st.Tryと2nd.Tryのポイントを合計して順位をつける。そのため、1本たりとも気を抜いた走りができないシビアな戦いになっている。よりペナルティの重みが強いので、ライン越えやパイロンタッチなどへのプレッシャーは大きなものとなるのだ。


第7戦はショートサーキットでの開催ということで、限られたコース幅を目一杯使ったレイアウトが設定された。スタートから8の字、バックでのラインまたぎからのクランク、そして前進でのラインまたぎに続いて車庫入れという、テクニカルレイアウトでドライビングスキルが試される設定で競われた。


EX(エキスパート)クラス
EXクラスは、モータースポーツライセンスを所持しているドライバーが対象のクラスで、第7戦では最多の9選手によって競われた。既にチャンピオンを確定させている大貝進一選手は欠場とあって各ドライバー、ひとつでもランキングを上げるために、今回の一戦での勝利を渇望しているに違いない。
そんな中、1stでトップのポイントをマークしたのは、GRヤリスでこのシリーズに夫婦でダブルエントリーしている、丸田敦士選手。ほとんどの選手が苦戦しているインフィールドの定常円をきれいに回しこみ、2番手の桜庭遥希選手に約0.3ポイントの差をつけて折り返す。
しかし、2ndで強烈なインパクトを放ったのはEP82型トヨタ・スターレットを駆る桜庭選手だった。軽い車体を活かして軽快にパイロンをクリアしていく姿は、まるでBMCミニが疾走する様子そのままのテクニカルワークで、見事トップのポイントを更新。1stとの合計でも丸田敦士選手を下回るポイントを叩き出し見事、2023シーズン初優勝を飾った。2位にはやはり2ndで好走を見せた高橋龍生選手が入り、1stでトップだった丸田敦士選手は3位に終わった。



WM(ウーマン)クラス
女性ドライバー限定のWMクラスも、すでに丸田よし乃選手が開幕6連勝を果たして、チャンピオンを確定させている。そんな丸田よし乃選手は1stから6ポイント以上の差をつけて、2番手以下を寄せつけない走りで折り返す。
更に2ndでもポイントを削り取り、合計で10ポイント以上のマージンを持って優勝を決めた。「1本目は会心の走りでした! でも2本目は自分の悪い癖が出てしまってダメでしたね」と、圧勝しても走りの反省は忘れなかった。



ST(スタンダード)クラス
シリーズポイントが付与されない、STクラスはモータースポーツライセンスを所持していないドライバーが参加できる。
テクニカルコースに見事、ハマったのはAT車両のスバル・ヴィヴィオを駆る守屋和輝選手だった。1stでは西村みやか選手が生タイムでは勝っていたものの、ダブルパイロンタッチに泣き10ポイント加算となってしまう。
そして、勝負の2ndでは先に出走した守屋選手が、1stでの西村選手の生タイムを上回る好タイムを記録するが、まさかのダブルパイロンタッチ。そして、西村選手はまたも痛恨のペナルティ…。5ポイントを加算されて、悔しい2位に終わった。
「1本目が遅かったんで、2本目はビビらずに走ることを心掛けました。結果、パイロンを巻いてしまいましたが、攻めれたことは良かったですね」と、守屋選手は辛くも手に入れた勝利に喜びを露わにした。

CL(チャレンジ)クラス
CLクラスはSTに参加する前の入門クラスとして設定され、誰もが参戦できるオートテストを体現しているクラスとなっている。
トップのポイントを記録したのは、ZC32S型スズキ・スイフトスポーツを操る吉井俊宏選手だ。1stで2番手以下を4ポイント以上引き離し、2stでは着実にポイントを削り差を広げて優勝を決めた。「1本目はちょっと攻め切れなかったんですが、2本目は1本目の反省を活かして走れたのが良かったですね!」と2本の走りを振り返った。


シリーズ8戦中7戦を終え、JMRC北海道ジムカーナ部会の石川和男部会長は「今日は札幌から遠い、ということもあって、ちょっと参加台数が少なくて残念だったんですが、コース設定も1分切るくらいのちょうど良いコースがつくれて良かったです。ショートサーキットらしくストレートを思いっきり走れたんじゃないかと思います。チャレンジクラスでは初めて参加してくれたドライバーもいたので、これからもしっかり続けていきたいですね」と、まとめてくれた。

参加者インタビュー

車両のオーナーはWMに参加した荒選手(左)。以前はサーキットで走っていた経験もある荒選手はモータースポーツに復帰しようと、オートテストを始めたそうだ。第7戦は隣町に暮らし、CLに挑む向山選手(右)とダブルエントリーで参加した。「元々、共通の友人がいて、何人かの友人に声をかけていたら向山選手が一緒にエントリーするようになりました」と、荒選手が向山選手とともにオートテストに挑むきっかけを語ってくれた。さらに「病気でしばらくモータースポーツから遠のいていたのですが、復帰しようとはじめたオートテストが気にいっています。午前中は観光をして、午後はオートテストに参加しているんですよ」と、続けてくれた。また、向山選手は「今回、初めて荒選手のクルマを借りたんですが、普段はパワステのついていないダイハツ・リーザに乗っていることもあって、文明のチカラがついているクルマに乗ると衝撃的ですね(笑)。オートテスト、楽しいです!」と、笑顔で語ってくれた。

「最初は3年前からジムカーナを始めたんです」と、語るEXで競う吉崎翔太選手(スターレット)は、2024年JMRC北海道SPARCOアウティスタジムカーナシリーズ ミドル部門のR-1クラスにも参戦している。「知り合いからの勧めで教えられて、参加するようになりました」と、オートテストにも参加するようになった経緯を語る。さらに「北海道の場合はジムカーナの後に、だいたいオートテストが開催されるので、続けて走れるのも魅力です。装備品も必要ないですし、4点式のシートベルトもいらないオートテストは着飾らない魅力がありますよね。これからもジムカーナとオートテストの両方に参戦していきたいですね」と、魅力も話してくれた。

EXの丸田敦士選手とWMの丸田よし乃選手は夫婦でWエントリーして、シリーズを追っている。「GRヤリスを購入して、本格的にオートテストに参戦するようになりました。最初に始めたのは5年前で、ちょこちょこ出ていたんですが、去年からシリーズを追い始めたんです。オートテストの魅力は、やっぱり気軽に参加できることですね。待ってる時はエアコンをかけて快適ですから」と、ご主人の敦士選手。一方、ご夫人のよし乃選手は「スピード域が低いのに、マシンを振り回せるのがいいです。バックもあるので、前に走らせるだけじゃないのもいいですよね」と、それぞれオートテストの魅力を語る。また、敦士選手は会社の同僚を誘うこともあるそうだ。最後に、夫婦仲良く共通の趣味で楽しめるのも魅力、と教えてくれた。
フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部