山口貴利/山田真記子組、中四国ラリー第3戦のFG-2クラス二連勝で王手をかける!

レポート ラリー JAFWIM

2023年9月25日

2023年JAF中四国ラリー選手権は9月16日に、シリーズ第3戦そして最終戦前の一戦となる、「MACラリーin久万高原」が愛媛県で開催された。ラリーの拠点は、約一カ月前に2023年JAF全日本ジムカーナ選手権の第6戦が開催された、久万高原町のハイランドパークみかわに置かれた。同地は、今年5月にも2023年JAF全日本ラリー選手権の第4戦、「久万高原ラリー」の拠点にもなったが、同ラリーをチーム.エトワール(ETOILE)、ドライバーズクラブルーキー(D.C.R)とともに主催した松山オートクラブ(MAC)が、毎年秋に単独主催するラリーだ。

2023年JAF中四国ラリー選手権 第3戦
2023年JMRC中国・四国ラリーシリーズ第3戦
MACラリーin久万高原

開催日:2023年9月16日
開催場所:愛媛県久万高原町周辺
主催:MAC

 久万高原ラリーは近年、ターマックラリーとしての開催が定着しているが、かつては全日本の中でもタフなグラベルラリーとしても知られた時代を持つ。一方、MACラリーはグラベルラリーの伝統を守り、全日本でも使われたグラベルステージを使用するのが恒例となっており、今回のラリーも久万高原ラリーの名物ステージとして知られた「大谷支線」5.9kmと「イワタケ」7.1kmの2本が用意された。

 大谷支線は、標高1,000mを超す高地に置かれたステージ。途中のジャンクションからは下り勾配が延々と続く。一方、イワタケは大谷支線からさらに標高の高い地点からスタートし、途中から大谷支線に合流するかたちになる。2022シーズンは舗装区間からスタートするミックスのステージだったが、2023シーズンは舗装区間はリエゾンとして、オールグラベルのステージとした。

 ラリーはまずセクション1で大谷支線を2回走ってサービスイン。午後のセクション2はイワタケを2回下ってフィニッシュする計4本、26kmのSSで競われた。

2023年JAF中四国ラリー選手権 第3戦「MACラリーin久万高原」では、HQとサービス、ラリーのスタートとフィニッシュはすべて「ハイランドパークみかわ」が担った。JAF全日本ラリー選手権の一戦「久万高原ラリー」やJAF全日本ジムカーナ選手権でも使われるこの施設。元々はスキー場だったが、現在はアジサイの名所としても知られている。

FG-1クラス

 FG-1クラスは前戦、第2戦の「四国のてっぺんラリー2023 in嶺北」を制した長江修平/中岡和好組が、SS1で2番手のマクリン大地/大橋正典組に5.9秒差をつけるベストタイムを奪って好発進。「前半区間がなかなかグリップしてくれなかったのでダメかなと思ったけど、それでもベストが獲れたので、皆、苦労したんだな、と。今日はあまり無理しないペースで走った方がいいかもしれない、と思い直した」という長江/中岡組は、続くSS2でもマクリン/大橋組を5.3秒差に従えて連続ベストをマークする。

 長江/中岡組は、セクション2のイワタケでも連続ベストをマークして、ライバルたちを最後まで寄せ付けず完勝。「午後は、ちょっとでもワダチを外したら飛んでいくような路面もあったので、とにかく最後まで気が抜けないラリーでした、それだけに全部のSSが獲れたことは嬉しい」と長江選手。このクラスのシリーズ2勝目一番乗りを果たした。

 マクリン/大橋組はSS3でパンクを喫したのが響いて3位でフィニッシュ。第1戦の「つるぎ山アルペンラリー2023」を制した堀川竜二/池田茂組が2位を獲得したが、昨季のこのラリーでは長江/中岡組と最後まで互角のスピードを見せただけに、「イワタケは大好きな道なので勝負をセクション2まで持ち込みたかったけど、SS1が遅すぎました」と、悔いが残るラリーとなった。

FG-1クラスの長江修平/中岡和好組(インディゴパワーDL・BRIG・ランサー)はセクション1の2つのSSを連取し、「ちょっとだけ変えてきたバネが、特に道幅の狭い所でいい動きをしてくれた」と言うセクション2の2SSも全てトップタイムをマーク、王座争いを一歩リードする二連勝を果たした。
FG-1で今季2勝目を狙った堀川竜二/池田茂組(BRIGち~むみかんナイトグリーランサー)は「大谷支線」ステージのセクション1で3番手と出遅れ、「イワタケ」ステージは2本とも2番手タイムと持ち直して2位を獲得(左)。ディフェンディングチャンピオンのマクリン大地/大橋正典組(大阪冷研TOFインディゴPマクリンGRB)はSS3で手痛い7番手タイムもあり、3位に終わった(右)。
FG-1のトップ6クルー。左から4位の渡部洋三/井関美貴組(DL♪SPM☆ブリッグ∀みかんランサーX)、2位の堀川/池田組、優勝した長江/中岡組、3位のマクリン/大橋組、5位の西隆司/丸山晃助組(RスポーツWESTランサー)、6位の坂本寧/境健一組(ESエナペタルBRIGみかんランサー)。

FG-2クラス

 FG-2クラスは第1戦の勝者で昨季のこのラリーも制した二野下幸夫/梶山剛組の三菱・ミラージュがSS1でベストタイムを奪取。続くSS2では同じくミラージュを駆る高田修/箕作裕子組がSS1から10秒近くもタイムアップを果たしてベストをマーク。二野下/梶山組を1.4秒逆転し、首位でサービスに戻ってくる。

 しかし、セクション2に入ると高田/箕作組はSS3で側溝にタイヤを落としてしまい、タイムロス。このSSで高田/箕作組に4.4秒差のベストであがった前戦優勝の山口貴利/山田真記子組のダイハツ・ブーンX4が、2台のミラージュをごぼう抜きして一気に首位を奪取した。最終のSS4では山口/山田組も途中から足回りにトラブルを抱えての走行となるが、高田/箕作組もアクシデントの影響でペースダウンを強いられて逆転は果たせず。昨季は車両トラブルで首位から後退した山口/山田組が1年越しのリベンジを達成した。

 てっぺんラリーから二連勝を飾った山口選手は、「イワタケの前半区間に上りがあるので、そこでX4の強みを生かせれば逆転できるのでは、と思ってました。いい感じで今日も走れました」と連勝を喜んだ。一方、手負いの車両で最終SSを走った高田/箕作組は、0.4秒という僅差で二野下/梶山組を抑えて2位でフィニッシュ。「今日は本当に路面が難しくて、リアが止まらず大変でした」と苦戦のラリーを振り返った。

 MACラリー二連覇を逃した二野下選手は、「ボディを補強してきたんで、今回も獲れると思ったんですけど、もうちょっとこのボディで走り込みたいですね」と次戦でのリペンジを誓っていた。

FG-2クラスの山口貴利/山田真記子組(WinmaXインディゴpNUTECブーン)は、「てっぺんラリーの前に足回りが決まってくれた」と山口選手が語るダイハツ・ブーンX4とともにSS3で逆転して今季2勝目を獲得。最終の第4戦で、8位以内に入ればチャンピオン確定となる王手をかけた。
FG-2の高田修/箕作裕子組(RスポーツKYBミラージュ)はセクション1を首位で折り返すも、SS3でのミスから山口/山田組が逆転。「パンクせずに走り切れて良かった」と言う厳しいラリーながら2位を獲得した(左)。「SS1でベストが獲れたとは言え、今日は路面の変化に戸惑って最後まで乗れなかった」と、こちらも苦しいラリーだった様子の二野下幸夫/梶山剛組(RスポーツYHミラージュ)が3位を獲得、ランキング2番手に上げた(右)。
FG-2の上位4クルー。左から4位の矢野伸彦/大崎弘二組(NY-G S15シルビア)、2位の高田/箕作組、優勝した山口/山田組、3位の二野下/梶山組。

FG-3クラス

 FG-3クラスはこのクラスの絶対王者で、全日本にもスポット参戦する松原久/和田善明組のマツダ・デミオが後続に大差のベストを奪取し、順調なスタートを切る。しかしSS2では約2年ぶりの復帰戦となった白形利文/白石認組デミオがベストを獲り、さらに第1戦で松原/和田組に肉迫するスピードを見せた辻井利宏/東駿吾組のトヨタ・ヤリスも0.5秒、松原/和田組を凌いでラリーを折り返した。

 セクション2では三つ巴の展開も予想されたが、松原/和田組がここでスパート。ベストを連発して追いすがる辻井/東組を突き離し、トータル12.6秒差で振り切って開幕三連勝を飾った。後半、ペースが落ちた白形/白石組は辻井/東組から15秒差でフィニッシュし、3位となった。

 時間がなかったため、一週間前に行われた全日本の一戦、RALLY HOKKAIDOの仕様のまま走ったという松原選手は、「やっぱりRALLY HOKKAIDOの仕様では、きつかった(笑)。道の形状が違い過ぎたというよりは、路面の方だと思う。今日は特にセクション1が、こんなに滑ったかというくらい、難しい路面でしたから」と、結果以上に苦戦したラリーだったと明かした。

FG-3クラスはセクション1での三つ巴から一転、「後半の2本はペース上げました」と言う松原久/和田善明組(インディゴパワー☆BRIG☆DL☆デミオ)が2位以下を10秒以上突き放して、2021シーズンから続く連勝を8に伸ばした。そして松原選手は五連覇、和田選手は三連覇を確定させた。
FG-3の2位は3本のSSで2番手タイムをマークした、辻井利宏/東駿吾組(Z.A.C.S YARIS)が獲得してランキング2番手をキープ(左)。久しぶりのラリーとなった白形利文/白石認組(マツダデミオ)はSS2で2番手タイム、他の3つのSSでは3番手タイムをマークして3位と、衰えていないところを見せた(右)。
FG-3の上位6クルー。左から4位の片岡大士/相原貴浩組(ネッツトヨタ愛媛一六レーシングヴィッツ)、2位の辻井/東組、優勝した松原/和田組、3位の白形/白石組、5位の芳谷巧/三井崇裕組(ヴィッツ)、6位の片山浩三/阿部孝子組(Rスポーツ・デミオ)。

FG-4クラス、FGFAクラス

 FG-4クラスは前戦、車両トラブルでノーポイントに終わった松岡竜也/縄田幸裕組のトヨタ・アクアが、「足回りを変えたことで安定感が増した」という走りでSS1からベストタイムを連発。終わってみれば4本のSSすべてでライバルたちを圧倒するタイムで走り切って、第1戦以来の今季2勝目を挙げた。

「2ペダルの優位性と、アクアの軽さを活かした走りが、ある程度はできたと思います」と振り返った松岡選手だったが、FG-3勢のタイムに迫れなかったことは不満だった様子。「駆動系がノーマルなので仕方がない部分はあるけど、次はもっと(FG-3勢を)追いかけたいですね」と、意慾を見せていた。

中四国ラリーに今季も全戦が併催される2023年JMRC中国・四国ラリーシリーズには、初級者対象のフレッシュマンクラスが3クラス用意されており、今回のラリーではFGFAクラスに1台が参戦。堀川選手が代表を務めるクラブ「モータースポーツサークルサンライズ(MSCS)」からエントリーし、全日本ナビゲーター(現コ・ドライバー)チャンピオンを2回獲得している宮部弘陽選手を招いた山田忠司選手のトヨタ・ヴィッツが、完走を果たした。

FG-4クラスは松岡竜也/縄田幸裕組(一六RACING★アクア)はSS1から圧倒的なタイム差でトップタイムをマークすると2位に3分以上の差をつけて、第1戦以来の勝利を獲得。ランキングでも2番手に上げた。
松岡/縄田組と同じく、前戦はリタイアを喫したFG-4の加藤克也選手(パピモータース・KYB・DL・ヤリス)は第1戦以来となる大谷美紀夫選手をコ・ドライバーに迎えて2位フィニッシュ(左)。前戦でラリー初優勝を挙げた佐藤由香選手とコ・ドライバーの大西直彦選手のクル―(DCR♡ヴィッツ)は3位で3戦連続の完走を果たし、ランキングトップを守った(右)。
FG-4に参戦した3クルー。左から2位の加藤/大谷組、優勝した松岡/縄田組、3位の佐藤/大西組。
2023年JMRC中国・四国ラリーシリーズのFGFAクラスに参戦した山田忠司/宮部弘陽組(MSCS DXLヴィッツ)が4本のSSを着実に走り抜け、完走を果たした。

フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部

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