宮城県利府町周辺で3回目の「利府ラリー」がJMRC東北ラリーシリーズの最終戦!

レポート ラリー JAFWIM

2023年11月16日

2023年JAF東日本ラリー選手権との併催も含めて、4戦で構成された2023シーズンのJMRC東北ラリーシリーズ。11月11~12日にシリーズを締めくくる第5戦として、宮城県利府町周辺を舞台に2021シーズンの初開催から3回目となる「利府ラリー2023」が開催された。

JMRC東北ラリーシリーズ第5戦
利府ラリー2023

開催日:2023年11月11~12日
開催場所:宮城県利府町周辺
主催:RT-GRAND PROJECT、CMSC仙台

 今季の東北ラリーシリーズはこれまでスノーとグラベル、ターマックのラリーが1戦ずつ開催されてきたが、今回の利府ラリーは2022シーズンまでと同様、グラベルとターマックの両路面を走るミックスサーフェスラリーとして設定された。

 ステージも昨季まで使われてきた「沢乙」、「森郷」の2本の林道SSを設定。沢乙がフルグラベルであるのに対して、森郷はグラベルとターマックのミックスステージ。中でも森郷は、昨季から開催されている「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge in利府」でも使用されていることもあって、すっかりお馴染みのステージとなっている。

 2セクション制となった今回のラリーは、まずスタート後に沢乙0.91kmにアタックした後に、森郷 1.31kmを2回連続して走ってサービスイン。午後のセクション2では沢乙、森郷の順に1本ずつを走り、フィニッシュという設定が用意された。天候は昼前から降雨の予報が出ていたが、最後まで雨が降り出すことはなく、ドライコンディションでのバトルが展開された。

 ラリーのヘッドクォーターはこれまで同様、利府町役場内に設定されたが、今季はサービスパークが同役場にほど近いショッピングモール、イオンモール新利府南館の駐車場に置かれた。同駐車場では、開会式のほかにセレモニアルスタートも行われ、早朝から駆けつけた地元のラリーファンの歓声を受けながらクルーたちはラリーに挑んだ。

ステージやヘッドクォーターは過去2回と変わりなかったが、サービスパークがショッピングモール、イオンモール新利府南館の駐車場に設定されたことで休日の買い物客もサービスの様子などを観ることができ、さらにセレモニアルスタートも同地で実施されたのが変化のひとつだ(左)。HQが置かれた利府町役場では、参加確認や書類検査なども行われた(右)。
セレモニアルスタートでは大会名誉会長を務めた熊谷大(くまがいゆたか)利府町長がスターターを務め、23台のクルーたちを送り出した。

B-1クラス

 B-1クラスは、逆転王者を狙う岩手の橋本奨選手がSS1沢乙1でベストタイムを奪取。橋本選手はコ・ドライバーが急遽、変更となり、昨季のこのラリーのB-1をドライバーとして制した、チームメイトの伊藤一也選手が初のコ・ドライバーを務めた。このSSでは橋本/伊藤一也組と同じく沢乙のグラベル路面に賭けてウェット用のラリータイヤを選択した、地元の菊池恒博/熊谷悠希組もトップから0.8秒差でフィニッシュ。ウェットタイヤ勢がまずは速さを見せる。

 しかし森郷に移ったSS2では、SS1で橋本/伊藤一也組と菊池/熊谷悠希組の間に割って入る2番手を獲得した関東から遠征のランキングトップ、渡辺謙太郎/伊藤克己組がベストをマーク。橋本/伊藤一也組はギヤ抜けが発生して3.7秒差がついたものの2番手を確保。菊池/熊谷悠希組はタイヤのトラブルで大きく引き離されてしまう。ドライタイヤをチョイスしていた渡辺/伊藤克己組は続くSS3もベストを獲るが、橋本/伊藤一也組も0.7秒差で食らいついてラリーを折り返した。

 サービス後、2度目の沢乙となったSS4では橋本/伊藤一也組が渡辺/伊藤克己組を2.3秒差で下すベストを獲得。その差を2.1秒まで盛り返して最終、森郷のSS5に挑み、ここでもこの日3度目のベストをマークするが、勝利には1.1秒届かず。息詰まる接戦を制した渡辺/伊藤克己組が今季3勝目をマークして、チャンピオンを確定させた。

「雨に賭けてウェットを選択したんですが、ダメでしたね。SS2のロスを最後まで取り戻せなかった」と橋本選手は無念の表情。一方の渡辺選手は、「1本目の沢乙が思ったほどヌルヌルしてなかったことも助かりましたが、森郷のSS2でベストを獲れて、狙い通りに早めに首位に立てたことが今日は大きかった」と勝因を振り返った。

「ただ、路面に土がはき出されたその後の森郷でタイムアップできなかったのは、要修行ですね」と反省の弁も述べた渡辺選手だが、BC-1クラス二連覇が確定している東日本ラリーに続いて、今季はこのシリーズも制して二冠を確定させただけに、「何とかいい感じで今年を終えられそうです」と最後は笑顔を見せていた。

渡辺謙太郎/伊藤克己組(dirtroadランサー)はSS2でB-1クラスと総合のトップに立ち、SS3のベストタイムで築いたマージンを残る2つのSSでコントロールして優勝。2022シーズンはランキング2位で逃したJMRC東北ラリーシリーズのチャンピオンを確定させて、JAF東日本ラリー選手権BC-1クラスとの二冠が確定した。
最終戦となるこのラリーに逆転王者を賭けたドライバーの橋本奨選手(たばしねハザードGRB号)は、コ・ドライバーに伊藤一也選手を迎えて参戦。SS1でベストをマークして幸先良いスタートを切るが渡辺/伊藤克己組に逆転を喫して2位。ランキングでも2位となった(左)。SS1では4番手タイムをマークした熊坂敏彦/熊坂時男組(ヤマヤオート・スノコ・ランサー)はSS2で3番手に浮上すると、その順位を守ってフィニッシュ。今季シリーズ最上位を獲得するとともに、ランキング4位でシリーズを終えた(右)。
B-1では、左から優勝した渡辺/伊藤克己組、2位の橋本/伊藤一也組、3位の熊坂敏彦/熊坂時男組、4位の村里尚太郎/御纏喜美子組(メープルDXL・ADVANランサーエボ7)、5位の菊池恒博/熊谷悠希組(アヤベMOTUL遠藤板金インプレッサ)、6位の菅原康弘/平野正志組(マスターズ巴工業クロスロードランサー)が表彰された。各クラスでの表彰では、利府町の公式キャラクター「十符の里の妖精リーフちゃん」(左端)も祝ってくれた。

B-2クラス

 B-2クラスは、このラリー二連覇中の小館優貴選手がコ・ドライバーに伴英憲選手を迎えて、東北シリーズに今季初参戦。まずSS1でチームメイトの秋元星大/小山内駿太組に2.8秒差をつけるベストタイムをマーク。SS2でも秋元/小山内組に3.4秒差の連続ベストを獲得してリードを広げる。

 セクション2に入ると、秋元/小山内組と佐々木松紀/遠藤誠組の2番手争いがヒートアップ。SS4では佐々木/遠藤組が小舘/伴組に1秒差まで詰め寄るセカンドベストをマークするが、最終のSS5では小舘/伴組がこの2台を3秒以上も突き離すベストを奪って全5SSを完全制覇。小舘選手は利府ラリー無傷の三連覇を達成。また白熱した2位争いは、「最後のSS5は、何かあったらリカバリーできない路面だったので、敢えて抑えて走りました」という秋元/小山内組が、0.9秒差で佐々木/遠藤組を振り切った。

「過去2回の路面とはまた違った路面で今日は難しかった」と振り返った小舘選手は、「10月に出た北海道の地区戦の高速仕様のままで走ったので、テクニカルな今回の道ではフロントが入りずらいのは承知の上で、その分は走り方で対応するつもりでした。実際、後半の走りは悪くはなかったと思いますが、なぜかタイムを上げられなかった。このラリーで初めてウェットタイヤを選んだことが影響したのかどうかも含め、分析したい」と苦戦のラリーだったと明かした。そして、「ただ、このミラージュでのラリーは今回が最後だと思うので、優勝でひと区切りできたのは良かったと思います」とコメント。新車両を投入予定という2024シーズンも活躍が楽しみだ。

全てのSSでクラスベストと2WD勢のベストを叩き出した小舘優貴/伴英憲組(BMK sportミラージュRally4)がB-2クラスを完全制圧。ドライバーの小舘選手は今季シリーズ初参戦で初優勝、コ・ドライバーの伴選手は第1戦以来の勝利を挙げてチャンピオンを確定させた。
優勝した小舘選手と同じく今季シリーズ初参戦だった秋元星大/小山内駿太組(BMKスポーツシビック)はSS1・2で二連続セカンドベストをマークすると、佐々木松紀/遠藤誠組(ふうりんミラージュ)を僅差で抑えきって2位を獲得した(左)。王座争いが最終戦までもつれた佐々木/遠藤組は各SSで秋元/小山内組と1.5秒差以内の激戦を繰り広げて0.9秒差の3位でフィニッシュ。佐々木選手がチャンピオンを、遠藤選手がランキング2位を確定させた(右)。
B-2で表彰された5クルー。左から優勝した小舘/伴組、2位の秋元/小山内組、3位の佐々木/遠藤組、4位の成田正彦/畠山修組(こめやのレビン)、5位の武田修/齋藤利章組(ヤマヤ・スノコ・ミラージュ)。

B-3クラス

 B-3クラスはランキングトップのドライバー、いりえもん選手とコ・ドライバーの長曽航太選手が残念ながら不参戦だったため、ランキング2番手につける岩手から参戦の石倉英昭/山口清組が駆るスバル・ヴィヴィオと、地元宮城勢の橋本寿/大野千明組が操るトヨタ・スターレットの対決となった。

 石倉組は4WDの強みを活かして沢乙のSS1でまずベストを奪うと、森郷でのSS2、SS3も連取してセクション1からリードを広げることに成功。セクション2でも2本のSSをともにベストで上がる走りを見せて今季初優勝を飾った。

「シリーズポイントでタイトルを獲得できる条件が自分より厳しかったコ・ドラの山口選手と一緒にタイトルを獲りたかったので、今日は絶対完走を心掛けて走りました」と語った石倉選手は、小舘選手同様、利府ラリー三連覇を達成。そして山口選手とともにチャンピオンも確定させた。

軽自動車だが4WDのスバル・ヴィヴィオと、トヨタ・スターレットの一騎討ちとなったB-3クラス。排気量で劣るヴィヴィオだが、石倉英昭(下写真左)/山口清(下写真右)組が4WDの利点を活かした巧みなドライビングでラリーを終始リードし、今季初優勝を挙げるとともにチャンピオンを確定させた。

B-4クラス

 B-4クラスは、トヨタ・ヴィッツのCVT車両を駆る室田仁/鎌田雅樹組が、SS1で2WD勢のなかでも3番手に入る好タイムをマークしてベストを奪取。その後もベストを連取して、ライバルの西村章/藤田美登里組のスズキ・アルトワークスを終始、寄せつけず快勝した。

 今季は4戦すべてで優勝と、無敵の強さを見せた室田選手はコ・ドライバーの鎌田選手とともにチャンピオンが確定。「このラリーは第1回から出ていますが、今年は道も変な掘れ方もなく、過去3年間で最高のコンディションでした。ウェットタイヤだったので森郷ではダメでしたが、沢乙ではいいタイムが出せたのも良かった」と有終の美を飾ったラリーを振り返った。

関東地区からの遠征組の一角でもある室田仁(下写真左)/鎌田雅樹(下写真右)組(DUGちのねSPルート6 BRIG Vitz)がB-4クラスで今季シリーズ全勝を達成。東日本ラリーはもちろん、JAF北海道ラリー選手権にも参戦するなど、トヨタ・ヴィッツのCVT車両を駆り、ラリーを求めて各地で参戦を続けているクルーだ。
3回目となる今回の新たな施策のひとつとして、サービスが置かれたイオンモール新利府南館にあるイオンホールにて表彰式が開催された。もちろんノンアルコールながら立食のかたちをとり、参戦したクルーたちはラリーの労をねぎらいあいながら式に臨んだ。

フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ