北海道ラリー最終戦、RA-1関根正人選手と和氣嵩暁選手の師弟対決は和氣選手が制す!

レポート ラリー JAFWIM

2023年10月13日

2023年JAF北海道ラリー選手権の最終戦となる第6戦、「とかち2023」は10月7~8日の2日間、陸別町をホームタウンとして開催された。また、JMRC北海道TEINラリーシリーズのジュニアクラスの第6戦と、2季目を迎えた2023年XCRスプリントカップ北海道の第6戦も同時開催となり、北海道地区戦同様に最終戦として行われた。

2023年JAF北海道ラリー選手権 第6戦
2023年JMRC北海道TEINラリーシリーズ 第6戦
2023年XCRスプリントカップ北海道 第6戦
とかち2023

開催日:2023年10月7~8日
開催場所:北海道陸別町
主催:R.T.C

 ラリーの勝負所であるSSは2本のステージが設定された。「Yayoi」9.31kmはここ数年、毎シーズンのように設定されている、ラリーとかちの名物ステージ。前半は北海道らしい高速区間が続くが、途中から一転、タイトなコーナーが連続するオールグラベルのステージだ。

 もう一方のステージは「Rikubetsu Long」4.64kmで、JAF全日本ラリー選手権の「RALLY HOKKAIDO」では毎シーズン使用され、このラリーでも欠かせないお馴染みのステージ。名称に“Long”が加わる場合は、スタート後しばらくはターマック区間を走った後に、名物のウォータースプラッシュが待ち受けるグラベル区間に挑むかたちとなる。ラリー当日は好天が保たれたが、両ステージとも前日まで降った雨が残り、特に森の中を走るRikubetsu Longはグリップが微妙な路面も待ち受けた。

 今回のラリーはYayoi、Rikubetsu Longの順に2度のサービスを挟んで3回ずつ走る計6SSで41.85km、総走行距離は109.86kmのルートで競われた。なお今回のラリーに併催されたJMRC北海道ラリーのジュニアについてはSS4までの設定とし、計27.9kmのステージで勝敗を競った。

スノー2戦、グラベルとターマックのミックスサーフェス1戦、グラベル3戦で構成された2023年JAF北海道ラリー選手権は、グラベルの第6戦「とかち2023」が最終戦を務めた(左)。主催したラリーチーム.カンサー(R.T.C)は参加者たちに、十勝名産のジャガイモをお土産に数量無制限で提供して盛況を博した。帰宅後数日の参加者たちの食卓に、ジャガイモを使った料理が並んだことは想像に難くない(右)。

2023年JAF北海道ラリー選手権 第6戦

RA-1クラス

 RA-1クラスはSS1 Yayoi1で和氣嵩暁/高橋芙悠組の三菱・ランサーエボリューションIXが、藤澤和弘/岩淵亜子組のスバル・インプレッサWRX STIを3.5秒差で下すベストタイムをマーク。和氣/高橋組はSS2 Rikubetsu Long1でもベストを獲るが、体調不良を押してランエボVIを駆る関根正人選手と、コ・ドライバーの松川萌子選手のクルーが同秒ベストで食らいつき、独走を許さない。

 関根/松川組はSS3 Yayoi2では和氣/高橋組を2.1秒差で下す連続ベストをマークするが、2度目のRikubetsu LongとなるSS4では和氣/高橋組が関根/松川組を1.1秒差で下して、両クルーによるベストの応酬となる。セクション3に入っても、最初のSS5 Yayoi3では和氣/高橋組が0.2秒差で関根/松川組に競り勝ち、緊迫したバトルが続いたが、最終のSS6 Rikubetsu Long3では関根/松川組の車両が不調をきたしてタイムダウン。和氣/高橋組が最後は11.1秒差に広げて激戦を制した。

「Yayoiは10年振りに走りましたが、SS1では自分でも驚くほど、いいタイムが出せました。やはり今回もクルマの良さに助けられた一戦でしたね」と振り返った和氣選手は、学生時代を過ごした北海道でラリーを始めたが、今年は職場のある関西から北海道に通ってシリーズを追った。「グラベルラリーでは勝てなかった関根さんと最後まで勝負できて、優勝できたのが何より嬉しいです」と、師匠とのホットバトルを振り返っていた。

2023シーズンはここまで関根正人/松川萌子組(Gセキネン・DL・WMランサー6)との対戦は1勝2敗だったRA-1クラスの和氣嵩暁/高橋芙悠組(DUNLOP・IRS・Gセキネンランサー)は最終戦を制して2勝2敗のタイに。勝利で有終の美を飾り、チャンピオンを確定させたシリーズを終えた。
前戦の第5戦を制したGRヤリスから、三菱・ランサーエボリューションVIに乗り換えてRA-1に参戦した関根/松川組は和氣/高橋組と優勝争いを繰り広げて2位。ランキングでも2位が確定した(左)。第5戦に続き参戦した大藤潤一/秋山美紗子組(GセキネンIRS・itzz・MOTULランサー)は前戦よりひとつ順位を上げて3位を獲得した(右)。
RA-1のトップ4クルー。左から2位の関根/松川組、優勝した和氣/高橋組、3位の大藤/秋山組、4位の俣野実/伊勢谷巧組(AKTインプレッサ)。

RA-2クラス

 RA-2クラスは小舘優貴/小山内駿太組が、SS1で室田彰仁/川村朋有組を7.2秒差で下すベストを奪取。約一カ月前のRALLY HOKKAIDOでも走ったRikubetsu LongのSS2でも室田/川村組を9秒差で下してリードを広げる。小舘/小山内組はその後も後続に大差をつけるベストタイムを連発して、終わってみれば全SSベストで上がって優勝を飾るとともに、このラリー3連覇を果たした。室田/川村組は最後まで2位をキープしたが、第4戦からの3連勝は果たせなかった。

 RALLY HOKKAIDOではドライブシャフトのトラブルのためにリタイアとなった小舘選手は、「何度か危ない目に遭いましたが、リタイアせずに走り切れて良かったです。Yayoiも去年よりタイムを上げられたし、苦手だったRikubetsu Longの舗装区間でも今年はクルマをしっかり動かせるようになったと思います」と今回の走りを振り返った。

「RALLY HOKKAIDOの忘れ物を拾いに来ました(笑)」と言う東北地区からRA-2クラスに参戦した小舘優貴選手(BMKsportミラージュRALLY4)は、コ・ドライバーの小山内駿太選手とともに全てのSSを制して完勝。「来年は地元の東北の仲間も連れてきて皆で楽しみたいですね」と2024シーズンもこのラリーへの参戦を続ける様子だ。
RA-2の室田彰仁/川村朋有組(CSI・WAKO’S・ミラージュ)は5本のSSで2番手タイムをマークして2位。ランキング2位も確定させた(左)。今回のラリーを前にチャンピオンを確定させた近藤太樹/中村真一組(Gセキネン・ミラージュ)は3位を獲得した(右)。
RA-2の上位2クルー。左から2位の室田/川村組、優勝した小舘/小山内組。

RA-3クラス

 RA-3クラスは、「いつも序盤がダメなので、今日は最初から気合を入れました」という三苫和義/春日美知子組のホンダ・フィットがSS1でベストを獲るが、藤田幸弘/藤田彩子組のマツダ・デミオが1.2秒差で続き、さらに原口真/中谷篤組のトヨタ・ヴィッツも藤田組に0.4秒差の3位につけるなど、三つ巴を予感させるオーダーで始まった。

 しかし、SS2で原口/中谷組がコースオフでリタイア。三苫/春日組は藤田組に1.7秒差をつけてあがるが、SS3では藤田組が猛スパートを見せて6.6秒、三苫/春日組を突き離して一気に逆転に成功する。するとSS4では、三苫/春日組がベストを奪い0.1秒、藤田組を凌いで首位を再奪還。トップ2のバトルはセクション3に持ち込まれたが、SS5、SS6ともに三苫/春日組がベストを獲って逃げ切った。

「RALLY HOKKAIDOの途中でセッティングを変えたら速くなったので、今日はそのセットをさらに煮詰めたセットが当たりましたね」と三苫選手。「RikubetsuはRALLY HOKKAIDOの時とは全然、クルマの動きが違ったので運転の仕方を変えたんですが、3本目は慣れて路面を舐めていくような、いい走りができたと思います」と勝因を語った。一方の藤田幸弘選手は、「今日はタイムがばらついて、特にRikubatsuでタイムが上がらなかったのが敗因ですね」と今季2勝目は果たせなかった。

RA-3クラスは2023年JAF全日本ラリー選手権 第7戦「RALLY HOKKAIDO」のJN-5クラスで4位入賞した、九州から遠征の三苫和義/春日美知子組(ISMFフィット3)が優勝。藤田幸弘/藤田彩子組(MスポーツBRIG YHデミオ)との接戦を制した。
前戦に続き優勝争いを繰り広げたRA-3の藤田組だったが、「最後はクルマから異音がし出したので、ペースを落とさざるをえませんでした」と、2戦連続の2位。それでも王座を守り、二連覇が確定した(左)。SS3で2番手タイム、SS5とSS6は連続3番手タイムをマークした三木晴夫/河村幸子組(栄町オート札幌ニューテックDLデミオ)は今季最上位の3位でシリーズを締めた(右)。
RA-3の上位3クルー。左から2位でチャンピオンを確定させた藤田組、優勝した三苫/春日組、3位の三木/河村組。

RA-4クラス、オープンクラス

 RA-4クラスは、今季2勝を挙げているドライバーの乙供邦彦選手が今回は主催に回ったため、室田仁/鎌田雅樹組が操るヴィッツのCVT車両1台のみの参戦となったが、完走を果たしてシリーズ最終戦を締めた。

 なおオープンクラスではFIA世界ラリー選手権(WRC)グループNクラスで優勝の経験を持つベテランの小西重幸選手が、全日本でも活躍するコ・ドライバーの竹下紀子選手とともに参戦。4年振りの実戦でトップフィニッシュを果たした。

関東地区からの遠征で3戦連続RA-4クラスに参戦した室田仁/鎌田雅樹組(BRIGちのねDUCルート6札幌Vitz)は6本のSSを走り切り、完走を果たした。
オープンクラスはベテランクルーの小西重幸/竹下紀子組(MOTUL Graduale GDB)が制した。しばらく間を空けてのラリー参戦だった小西選手だが、衰えていない速さを見せた。

2023年JMRC北海道TEINラリーシリーズ 第6戦

ジュニアRA-1クラス

 ジュニアRA-1クラスは、長尾綱也/坂井理崇組のランエボIXがSS1で総合でも4番手に入るタイムを叩き出して首位に立つ。長尾組はその後もジュニアとは思えないスピードを見せてベストタイムを連発。最終のSS4では地区戦でトップ争いを演じた2台のランサーに次ぐ総合3番手タイムでフィニッシュ。大差で優勝を飾った。

 3年振りにラリーに参戦したという長尾選手は、「Yayoiは初めて走りましたが、今まで経験したことのない車速域だったので1本目は探り探り走りましたが、2本目は踏めるようになりました」と一言。「ランサーのボディはクルマ屋をやっている自分が作り込んだので一度は乗ってみたかったのですが、もちろん効果はバッチリでした」と笑顔を見せていた。

ジュニアRA-1クラスは長尾綱也/坂井理崇組(NGOFactory・ランサー)が優勝。ドライバーの長尾選手は「ランサーはコ・ドライバーのクルマなので、“絶対に壊せない”という気持ちで走ったのが良かったと思います(笑)」と、久しぶりのラリーとは思えない速さの原因を分析した。

ジュニアRA-2クラス

 ジュニアRA2クラスは、前戦優勝の山崎隼/菊地祥吾組がSS1、SS2を連取して順調なスタートを切るが、SS3で山崎/菊池組をはじめとする3台がリタイアするという大波乱の展開に。この時点でただ一台、生き残った辻祥汰/渡邊雪斗組が、残るSS4を走り切って優勝した。

 辻選手はまだ大学4年生の若手ドライバー。「このラリーは3度目ですが、ダートラで高速グラベルに慣れている自分でもYayoiはまだなかなか攻められないステージでしたね」とラリー初優勝を飾ったメモリアルな一戦を振り返っていた。

完走は辻祥汰/渡邊雪斗組(北大Ahresty白セリカ)1台というサバイバルラリーとなってしまったジュニアRA-2クラス。ラリー初勝利を挙げた辻選手は「このラリーはコースが楽しくて、大会の雰囲気もいいので、またチャレンジしたいと思います」と、来季以降の参戦への意欲を見せた。

2023年XCRスプリントカップ北海道 第6戦

XC-2クラス、XC-3クラス

 今季は全6戦のシリーズが組まれたXCRスプリントカップ北海道も、今回のラリーで最終戦を迎えた。アイテナリーは同日開催の地区戦と同一で、6SS、約110kmのラリールートが勝負の舞台となった。

 XC-2クラスは番場彬/加勢直毅組のトヨタ・ハイラックスがSS1からライバルを圧倒するタイムを叩き出してリードを広げて全てのSSを制覇し、今季3勝目を獲得した。2番手争いは、橘礼太/渡邊雄矢組ハイラックスと揚村悠/笠井開生組の三菱・エクリプスクロスPHEVがSS2ではまったくの同タイムでフィニッシュするなど、序盤から接戦となった。しかし、SS3とSS5、Yayoiの2本で競り勝った橘/渡邊雄矢組が、揚村/笠井組を8.8秒差で振り切って今季の自己最上位をマークした。

 2位に終わった前戦のリベンジを果たしたかたちとなった番場/加勢組。「Rikubetsuは一カ月前より滑りやすくなっていたし、Yayoiも去年よりは走りやすくなりましたが、まったく違った路面になっていたので、とにかく今日は丁寧に走ることを心掛けました」と番場選手が最終戦の走りを振り返った。

 XC-3クラスは、「また北海道らしい、ハイスピードのステージを走れて楽しめました」と語った国際ラリーレイドドライバーの塙郁夫選手と、佐竹尚子選手のクル―が今回のラリーもトヨタ・ライズで会心の走りを見せて優勝。参戦したラリー全勝を達成し、有終の美を飾った。

XC-2クラスの番場彬/加勢直毅組(CUSCO YH HILUX Revo)はSS1から2番手以下を圧倒的に引き離す速さを見せて圧勝。番場選手は1ポイント差でチャンピオン防衛を果たした。
二戦連続のトップ3フィニッシュを狙った橘礼太/渡邊雄矢組(このHILUXをお貸しします)は揚村悠/笠井開生組(帯広三菱エクリプスクロスPHEV)に競り勝ち、2位を獲得した(左)。コ・ドライバーの笠井選手がチャンピオンに王手をかけて、揚村悠選手と臨んだ今回のラリーは3位に終わったが、笠井選手の戴冠が確定した(右)。
XC-2の上位2クルー。左から2位の橘/渡邊雄矢組と優勝した番場/加勢組。
XC-03クラスに参戦した塙郁夫/佐竹尚子組(岩手トヨタライズラリーコンセプト)は6本のSS全てで大差をつけて完勝。塙選手は5戦5勝、佐竹選手は4戦4勝でチャンピオンを確定させた。

フォト/田代康、小坂和生 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部

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