北海道オートテスト第3戦は初代王者の小野圭一選手が最激戦区EX-MTで凱旋V!

レポート オートテスト JAFWIM

2024年8月13日

2015年から日本に導入されているオートテストをJMRC北海道は先駆けて、シリーズで開催してきている。その中でも、AG.メンバーズスポーツスポーツクラブ北海道(AG.MSC北海道)は当初から主催クラブとして名乗りを挙げ、今もなお北海道でオートテストの定着に尽力している。そのAG.MSC北海道が主催する、2024年JMRC北海道トヨタカローラ札幌GRガレージ札幌厚別通オートテストシリーズ第3戦が2024年JAF北海道ジムカーナ選手権の第3戦と同日に、オートスポーツランドスナガワのジムカーナコースで開催。AG.MSC北海道が主催するオートテストは今回で18回目となった。

2024年JMRC北海道トヨタカローラ札幌GRガレージ札幌厚別通オートテストシリーズ第3戦
第18回オートテストチャレンジ2024 Rd.1

開催日:2024年6月9日
開催地:オートスポーツランドスナガワ ジムカーナコース(北海道砂川市)
主催:AG.MSC北海道

 2024シーズンの北海道オートテストは、EXクラスをマニュアル車両とオートマチックやCVTなどの車両、搭載するミッションで2クラスに区分。女性ドライバー限定のWOMENクラスも合わせた3クラスでシリーズを展開している。

 第3戦のレイアウトは長い距離をバックしてからのラインまたぎを組み入れながらも、シンプルなレイアウト。6・8番パイロンのラインをどのような角度でまたぎ、いかにスムーズに9・10番パイロンへバックするかが勝負どころとなった。

 午前中に開催されたジムカーナの地区戦を観戦したドライバーたちにとって、最後の10・11・12番パイロンの定常円はその地区戦でも組み入れられた、難易度が高いレイアウト。ここでいかにボトムスピードを落とさず小さく回るかでも、大きく差がつきそうだ。

2024年JMRC北海道トヨタカローラ札幌GRガレージ札幌厚別通オートテストシリーズ第3戦は、オートスポーツランドスナガワのジムカーナコースが舞台。直前まで開催されていた、2024年JAF北海道ジムカーナ選手権の第3戦では使われていた、写真奥のコース区間は使用されず、手前の広場のみを使ったレイアウトが組まれた。
今回のレイアウトはオートテスト定番の“車庫入れ”の代わりに、ふたつのラインまたぎが設定された。6・8番パイロンの間をまたいだ後、7番パイロンをかわしながら9・10番パイロンをまたぐまで、長い距離をバックする区間が攻略ポイントとなった。

 AG.MSC北海道が主催するオートテストでは、コースを熟知したクラブ員が同行しながら慣熟歩行を行う。オートテスト初体験のドライバーにも配慮がいき届いているサービスだ。

 今回のEX-MTクラスには、シリーズ初代王者の小野圭一選手が凱旋! さらにはEX-ATクラスに、各地で開催するオートテストを渡り歩く“オートテストの伝道師”ともいえる、日柴喜俊夫選手もエントリーした。シリーズに混沌をもたらす刺客の登場に、地元勢がいかに立ち向かうかも見どころとなった。

AG.メンバーズスポーツスポーツクラブ北海道(AG.MSC北海道)が主催するオートテストでは、慣熟歩行でクラブ員が同行することも特長のひとつ。今回はコース委員長と事務局長を務めた、小池治郎氏(手前左)が同行した。

EX-MTクラス

 北海道オートテストが設立された初年度のチャンピオンでありながら、現在はマツダ・ロードスターを駆ってJAF全日本ジムカーナ選手権のPN2クラスで活躍する、小野選手の参戦で活気づいたEX-MTクラス。

 ジムカーナとは異なり、2回走行した合算ポイントで争うこのシリーズにおいては、1回のパイロンペナルティが大きく順位を落とすきっかけになる。そのため、各選手ヒート1は様子を見ながらの走行になるのが通例だが、小野選手はひとり36ポイント台に突入! EP82型トヨタ・スターレットを駆る櫻庭遥希選手が37ポイント台、スズキ・アルトワークスを操る天間優貴選手とローバー・ミニをドライブする大貝進一選手が38ポイント台で小野選手を追いかける展開となった。

 ヒート2に入り、小野選手はさらに1ポイント以上削り取り、後続にプレッシャーをかける。すると、クラスラストゼッケンの櫻庭選手はパイロンペナルティを喫して6位に沈んでしまう。この結果、約4ポイントという圧倒的な差をつけた小野選手が凱旋優勝!久しぶりの北海道オートテスト参戦に華を添えた。

 走行後、小野選手は「5年くらい前に軽トラでオートテストに出ていて、その頃にマニュアル部門でチャンピオンを獲りました。現在は中部地区から全日本ジムカーナにエントリーしているんですが、久しぶりのオートテストに参戦しました。やっぱりオートテストは面白いと思います」とのこと。

 さらに、「今回のコースはハイスピードなので、そこに目がいきがちですが、やっぱり勝負どころはバックですよね。一見するとハンドルを切ってバックをしなきゃいけなさそうに思うんですが、実は真っすぐバックできるラインが1本だけあるんです。バックに入る前に、その姿勢をしっかりつくれるかどうかがポイントだったと思います。久しぶりのオートテスト、楽しかったです!」と満面の笑みで答えてくれた。

JAFモータースポーツライセンスを所持し、マニュアル車両を操るドライバーが対象のEX-MTクラスではこのシリーズの卒業生で、JAF全日本ジムカーナ選手権のPN2クラスで活躍する小野圭一選手(軽市ロードスター)が今回の全クラス最少ポイントをマーク。初代王者の貫禄を見せた。
第1戦から2戦連続でEX-MTの3位を獲得していた天間優貴選手(5th Geneアルトワークス)は、ヒート2で37ポイント台の壁まで0.1ポイントに迫るポイントをマーク、2024シーズン最高位の2位を獲得した(左)。ディフェンディングチャンピオンの大貝進一選手(常勝ローバーミニ)は3位で今季初表彰台を獲得。調子を上向けるきっかけにしたいところだ(右)。
今回の最激戦クラスとなったEX-MTはトップ6が表彰を受けた。左から4位の山口あきら選手(すいすいスイフト)、2位の天間選手、優勝した小野選手、3位の大貝選手、5位の丸田敦士選手(嫁のヤリス)、6位の櫻庭遥希選手(ジビエ討伐戦車スターレット)。

EX-ATクラス

 EX-MTに続き、EX-ATクラスにも他地区から刺客がエントリー! オートテスト黎明期から全国にその名を轟かせている、日紫喜選手が第2戦に続き、中部地区から遠征してきたのだ。そんな日紫喜選手はヒート1からEX-MT勢に引けを取らない、38.3ポイントをマークして格の違いを見せつける。ヒート2に入ってもその勢いはとまることなく、自身のヒート1のポイントより0.6ポイント削り、優勝をさらった。

 そんな日紫喜選手は自身の走りを「1本目はパイロンにくっつきすぎてしまい、ブレーキ踏んだつもりがアクセルを踏んでしまってアッチコッチいってしまいました。2本目も気合を入れたんですがエコタイヤなのでちょっと厳しかったですね」と、辛口の評価を下した。さらに、「今年、開幕戦は出られませんでしたが、出られる限りこの後のオートテストも参加したいと思っています」と中部から遠征の疲れを見せずに語ってくれた。

EX-ATクラスはオートマチックやCVTなど、マニュアル以外のトランスミッションを搭載する車両を操るライセンス所持者が対象となる。日本でオートテストが始められた当初から全国各地のイベントに参加し、その名が知られている日紫喜俊夫選手(みんなのe-power)が両ヒートとも制し、実力を見せつけた。
EX-ATは左から2位の高田克己選手(のんびり走るラパン)と、優勝した日紫喜選手のトップ2が表彰を受けた。

WOMENクラス

 女性ドライバーが集うWOMENクラス。今回は開幕二連勝を飾っているディフェンディングチャンピオンの丸田よし乃選手と、2023シーズンはランキング2位だった荒典子選手による真っ向勝負になるかと思われた。しかし、丸田選手がヒート1で大きく出遅れてしまい、荒選手の独壇場に… 。そんな荒選手もヒート2でパイロンペナルティを喫したものの、それでも2位の石川睦選手に20ポイント以上の差をつけた。

 今季初参戦初優勝の荒選手は、「今日は2回ともミスはしてしまったんですが、師匠に横に乗ってもらいながら教えてもらって走れたので、随分良くなったと思います。師匠には瞬間的判断がちゃんとできればもっとタイムは上がる、と言われたので次回はそれを注意して走りたいと思います」とコメントを残してくれた。

WOMENクラスは昨季2位を3回獲得し、ランキング2位につけた荒典子選手(ミラフィオーリに参加したかった)が両ヒートとも最小ポイントを獲得して優勝。丸田よし乃選手(よちまるヤリス)の連勝にストップをかけた。
WOMENは左から、2位の石川睦選手(猫に小判な86)と優勝した荒選手、トップ2が表彰された。

STクラス

 シリーズ対象外ではあるものの、ライセンスの有無や車両が搭載するミッションを問わず参加できるSTクラスは、13台のエントリーを集めた。ヒート1で最小ポイントをマークしたのは、ZC32S型スズキ・スイフトスポーツを駆る吉井俊宏選手。そして、EP91型トヨタ・スターレットを操る松嶋颯汰選手が1.5ポイント差で追いかける。

 ヒート2に入り、GRB型スバル・インプレッサWRX STIをドライブする藤吉晃士朗選手が、38ポイント台をマークするが、ヒート1で喫したペナルティの影響でトップ争いには絡めず。松嶋選手もヒート1で得たポイントから0.2ポイント削るにとどまり、吉井選手がしっかりと逃げ切り勝利を果たした。

「バックを気合入れて決めました! 今日はバックが勝負のポイントでしたね。道路の継ぎ目を目印に、車体を合わせることができたのが良かったです。今日の走りは90点! この後も表彰台に立て続けるように頑張ります」と、吉井選手は喜びのコメントを残した。

STクラスは吉井俊宏選手(スイフトスポーツ)が両ヒートを制し、2位の松嶋颯汰選手(特売快速スターレット)に2ポイント以上の差をつけてトップに立った。
STの2位は、両ヒートとも39ポイント台を並べる安定した走りを見せた松嶋選手が獲得した(左)。ヒート1はパイロンペナルティにより5番手だった藤吉晃士朗選手(重~いんぷ)はヒート2で挽回。2番手につける38ポイント台をマークして、3位に入った(右)。
STは上位4選手が表彰を受けた。左から4位の千葉元樹選手(ノーマルGR86)と2位の松嶋選手、1位の吉井選手と3位の藤吉選手。

CLクラス

 ライセンス所持していないドライバーが対象のCLクラスは、第2戦からガラッとメンバーを入れ替えての開催となった。

 コンパクトな車体を武器に、ヒート1からトップに立ったのは、スズキ・Keiワークスを駆る田中優介選手。続いてGT7型インプレッサスポーツを操る田中健太朗選手が、0.2ポイント差で追う展開となった。ヒート2に入ると、田中健太朗選手は自身がヒート1で得たポイントから2ポイント以上削る好走を見せる。しかし、そのポイントを田中優介選手がさらに上回ったことで勝負あ! 田中優介選手が見事表彰台の頂点に立った。

 そんな田中優介選手は走行後、「今回オートテスト4回目なんです。レースを見るのは好きなんですが、実際に自分で走るのは緊張してしまってダメだったんですが、1本目のタイムを見て、2位の人と近いタイムだったので2本目頑張りました。今日のコースはバックが長かったので2本目しっかり踏んで行ったのが良かったと思います」と、自身の走りを分析してくれた。

CLクラスはヒート2で4ポイント近くポイントを削り取った、田中優介選手(通勤快速ケイワークス)が両ヒートとも最小ポイントでトップを獲った。
田中健太朗選手(音だけ元気なインプレッサGT)は、両ヒートとも2番手の得点を並べて2位を獲得した(左)。ヒート1で3番手につけた川口誠選手(リサとガスパールとコペン)はヒート2ではヒート1より3ポイント以上減点するも、順位は変わらず3位となった(右)。
CLは左から2位の田中健太朗選手と1位の田中優介選手、3位の川口選手が表彰台に登壇した。

 最後に審査委員長を務めた石川和男氏が、「オートテストもエントラントが定着してもらっている部分もあり、大会も無事に開催できました。コースも問題なく、皆さんに楽しんでもらえたのではないかと思っています」と大会を振り返ってくれた。

イベント終了後はこの日の健闘を称えあいながら、集合写真を撮影!

会社の同僚と急遽、オートテスト初参戦!
CLクラス 川口誠選手[ダイハツ・コペン(L880K)]、田中健太朗選手[スバル・インプレッサスポーツ(GT7)]、熊谷侑哉選手[トヨタ・プリウス(ZVW55)]

同じ会社の同僚と札幌市内から参戦! 田中健太朗選手がインターネットで探してきたこのイベントに関心を持ち、周りの仲が良い同僚に声をかけて賛同してくれたのが川口誠選手と熊谷侑哉選手だったそうだ。もちろん、全員オートテスト初参戦! 「僕がこんなのありますよ、とみんなに話して、出たい! と釣れたのがこのメンバーです(笑)。数年前にアルトワークスに乗っていて、“出たい”と思っていたのですが、やっと出れました。走ってみて本当に面白かったです」と、語るのはキッカケをつくった田中健太朗選手。川口選手は「バックでこんな距離を全開で走ることはなかなかないので、 安全運転の意識も高まります」と、日常の運転への影響に期待をかけていた。そして熊谷選手は、「人に見られながら走る、という経験がないのでとても緊張しました。仮免のテストのときより緊張しました(笑)」と笑顔で話してくれた。

トヨタ86を駆る女性ドライバーの師匠は、ご子息の同級生!
WOMENクラス 石川睦選手[トヨタ86(ZN6)]

昨季からシーズンを通してシリーズを追うようになった石川選手は、今はオートテストからジムカーナに転向した高橋龍生氏を師匠に迎えて今季は参戦している。「モータースポーツをやりたい、とは思っていたんです。でも大変なことはできない、とあきらめていたんですが、地元のGRガレージでオートテストがあることを知り、始めました。オートテストは助手席に人を乗せて走れるので、今年は昨年までオートテストを走っていた高橋さんに教えてもらいながら参戦しています。ジムカーナはまだ怖いんでオートテストが丁度良いですね。それに私はキレイに運転したい、というのが目標なのでオートテストが好きです」と石川選手はオートテストの魅力を語ってくれた。そんな石川選手のご子息の同級生でもある高橋氏は、「オートテストの良いところは助手席に乗りながら、走りながら教えられることですよね。ジムカーナでこれはできませんから。運転が上達するにはとてもいいと思います」と、助手席にも乗れるメリットを教えてくれた。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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