群馬ラリー第3戦“あさま隠”の激戦区3クラスは細谷裕一ヴィッツが開幕2連勝!!

レポート ラリー JAFWIM

2024年8月14日

県戦ながら高い人気を誇る群馬ラリーシリーズ。2024シーズンは全5戦が予定されていたものの第2戦が中止となったために、7月27日から28日にかけて群馬県東吾妻町を中心に開催された第3戦「あさま隠山岳ラリー」が実質的に第2戦となった。

JMRC関東ラリーカップ
群馬ラリーシリーズ第3戦
あさま隠山岳ラリー2024

開催日:2024年7月27~28日
開催地:群馬県東吾妻町周辺
主催:ASCA

 今回のラリーもJAF全日本ラリー選手権並みの64台がエントリーし、あらためて人気の高さを実感できた群馬ラリー。サービスからほど近い群馬原町駅前では東吾妻町を代表する夏祭りである原町祇園祭が開催される中、クルーたちは27日にレッキを実施。2本の林道を使用して5SSが設定され、SS総距離は46.35kmと群馬ラリーらしく1デイラリーながら、たっぷりと走らせる設定だ。

 SS2、4のKazumaは道幅がやや狭いものの比較的スムーズな路面で、前半は上り、後半は下りとなる6.6kmのステージ。SS1、3、5のSakakura-Revは、11.05kmのロングステージで高低差は少ないものの、やや荒れた路面には苔むした部分もあり、勝敗を左右しそうなステージだ。2本の林道を使用するだけの構成ながらもキャラクターが違う林道を使用するために、走り応えはありそうだ。

 いずれのクラスも若手からベテランまで、様々な層の選手が集まるのが特徴とも言える群馬ラリー。若手vsベテランの争いはシリーズ全体のレベルアップにも功を奏しているように思える。ドライバー、コ・ドライバーともに、県戦ながらエントリー数が多いこのシリーズで腕を磨き、JAF東日本ラリー選手権などの地区戦を経て全日本へステップアップする選手も見られるようになり、かつては当たり前だった県戦~地区戦~全日本というピラミッドが、ここにきて再びできつつあるようだ。

 朝から暑さが厳しい28日午前8時30分に1号車が東吾妻町民体育館をスタートしたラリーは、心配された夕立ちもなく、一部でにわか雨が降ったものの、路面に影響するほどの雨量とはならなかった。

当日は、東吾妻町を代表する夏祭り、原町祇園祭の開催日と重なり、賑やかな一日となった(左)。ヘッドクォーターが設けられた東吾妻町民体育館の駐車場がサービスパークとなった(右)。

1クラス

 11台と少し寂しいエントリーとなった1クラスは、SS1で後藤英隆/菅野総一郎組が2番手の菅原英剛/宮川武志組に8秒もの大差をつけるベストタイムで幸先のいいスタートを切る。続くSS2と3は菅原/宮川組が巻き返すも、SS4は後藤/菅野組が再びベスト。

 優勝争いは最終SS5までもつれ込み、菅原/宮川組が後藤/菅野組に5.8秒の差をつけるベストを叩き出して猛追するもSS1でのタイム差が響き、後藤/菅野組がわずか0.2秒差で勝利した。ドライバーの後藤選手がオープニングステージからリードを稼ぎ、リピートステージでさらにタイムを上げていくあたりは「さすがベテラン」と、コ・ドラの菅野選手も感心しきりの走りを披露した。

0.2秒差という大接戦を制した1クラスの後藤英隆/菅野総一郎組(CMSC福島Sマジックランサー)。
1クラスで開幕2連勝を狙った菅原英剛/宮川武志組(Group4 MS YHランサー)は2位でフィニッシュ(左)。津田宗一郎/若月隆真組(コンペ★3939ランサー)が3位に入った(写真右)。
1クラスは左から、2位の菅原/宮川組、優勝した後藤/菅野組、3位の津田/若月組、4位の中村一朗/迫田雅子組(かちかち山ランサーV)が表彰された。

2クラス

 20台が出走した2クラスは、1位から7位までが1分以内という接戦となった。SS1から飛び出したのが田部井翔大/小坂典嵩組。2番手の石城健司/露木明浩組に4.3秒の差をつけ、全クラスを合わせた総合ベストタイムを叩き出す好スタートを見せる。田部井/小坂組は続くSS2でも総合ベストで2番手以下を引き離しにかかる。

 サービスを挟んだ2ループ目のSS3と4は多田稜平/松尾俊亮組に譲るも、最終のSS5をベストでフィニッシュし、田部井選手にとって嬉しいシリーズ初優勝となった。2位には多田/松尾組、3位には石城/露木組が入った。3位のドライバー、石城選手は2002シーズンに当時の全日本ラリー2輪駆動部門Aクラスでチャンピオンを獲得している。最近ではラリーを裏方から支えていたが、今季から群馬ラリーで復帰。ブランクを感じさせない走りを見せた。

 混戦を制した田部井/小坂組は何と総合トップも獲得。これには周囲のクルーたちだけではなく、ドライバーの田部井選手も驚きを隠せない。「これまでよりもコーナーへの進入を抑え目にして、早めのアクセルオンを意識しました。勝てない戦いが続いてきたけど、これからはハードルが上がって、さらに厳しい戦いになると思います」と語る田部井選手は、CUSCOとWinmaX、DUNLOPが共同企画する「Bライセンス競技若手育成支援プログラム」に選ばれていることもあり、周囲からの期待も大きい若手ドライバーだ。

2クラスだけに留まらず、総合トップで群馬ラリー初優勝を達成したドライバーの田部井翔大選手と、コ・ドライバーの小坂典嵩選手(クスコWM DL千明自動車 暁家B)。
2クラスの多田稜平/松尾俊亮組(BBRC & IFニシオ86)はSS3・4で連続ベストを奪うも2位でフィニッシュ(左)。元全日本チャンプのドライバー、石城健司選手とコ・ドラの露木明浩組(BRIGシャフトDL86)が3位で表彰台の一角をゲット(右)。
2クラスのトップ3表彰。左から2位の多田/松尾組、優勝した田部井/小坂組、3位の石城/露木組。
2クラスの4位~6位は、左から4位の山田一雄/大泉和幸組(ラッシュDLウェッズKYBスイフト)、5位の明治慎太郎/栗林寿莉亜組(Moty’sガレージO.K.U.86)、6位の濱井義郎/本橋貴司組(Rasch BRZ)が表彰を受けた。

3クラス

 今回のラリー最多の25台が参戦した3クラスはベテランから若手まで、幅広い層のクルーと多彩な車種が挑んだ。SS1でベストを記録したのは、開幕第1戦「ネコステ山岳ラリー2024」で優勝した、ドライバーの細谷裕一選手。今回はいつもクルーを組む、コ・ドラの蔭山恵選手が4クラスにエントリーのため、石垣晴恵選手とのコンビでエントリーとなった。

 前週に北海道石狩市で開催された、「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge 2024 Cup in 石狩」のE-3クラスでも蔭山選手とともに優勝した細谷選手は2週連続のラリーとなるが、石狩で優勝した勢いそのままに群馬でも好調な走りを見せる。「Sakakuraリバースの方がいかにも群馬っぽくて好みの道」と語る細谷選手は、今季は2023シーズンまでのラリータイヤからハイグリップラジアルタイヤに変更。新たな武器に慣れたこともあって、ラリーを通して全く危なげない安定した走りでリードを広げる。

 終わってみれば全SSでベストを独占し、2位の岩見涼平/石丸勝一組に50.5秒差をつけて群馬ラリー2連勝を飾った。そして、京都から各地のラリーに積極的に遠征している学生クルーの浅野翔己/渡邉純音組が3位に入った。

3クラスで開幕2連勝と今回のラリーでも速さを見せたドライバーの細谷裕一選手と、コ・ドラの石垣晴恵選手(メープルYHDXLMotys毒苺ヴィッツ)。
千葉の若手クルー、3クラスの岩見涼平選手/石丸勝一組(YHコマツ銀ヴィッツ)が2位を獲得(左)。京都から遠征の浅野翔己/渡邉純音組(カヤバDLヤリス)が3位に入賞した(右)。
3クラスのトップ3表彰は左から、2位の岩見/石丸組、優勝した細谷/石垣組、3位の浅野/渡邉組が受けた。
3クラス4~6位の表彰を受けたのは、左から4位の田井勇次/山川雅英組(DBP-DXL-YHストーリア)、5位の佐藤慧/福村幸則組(G4 MS ADVANヤリス)、6位の阪口知洋/後藤祥之組(FORVIA日産自動車大学校マーチDL)。

4クラス

 5台が出走した4クラスは谷口いずみ/石川恭啓組が1ループ目からリードを築き、終始安定した走りを見せ全SSでベストを獲得。嬉しい今季シリーズ初優勝を飾り、谷口選手は「楽しく走れました」と笑顔を見せた。一方、前戦ネコステ山岳ラリーではベテランらしくナイトステージで速さを見せ優勝した森田昭彦/森田宏子組は、悔しい2位となった。

4クラスは全SSベストの快走を見せた谷口いづみ/石川恭啓組(ネッツ群馬ジースパイスCVTヤリス)が優勝。
4クラスの表彰。左から、2位の森田昭彦/森田宏子組(日本新車センター・YH・G4ヤリスCVT)と優勝した谷口/石川組。

チャレンジクラス

 2台が参加したチャレンジクラスは後藤芳生/橋本敏久組がSS1で鈴木功/浅井恵二組を16.3秒の差で下して好スタート。続くSS2でも4.3秒リードするも、サービスを挟んだ2ループ目の1本目のSS3で、鈴木/浅井組がSS1の自らのタイムを40秒近くも上回るタイムをマーク。最終のSS5では何とSS1より1分以上もタイムを上げて制した。後藤/橋本組は序盤のリードを活かせずに2位となった。

チャレンジクラスは後半のペースアップが奏功した鈴木功/浅井恵二組(ラリーチームif'S 86)が制した。

フォト/山本佳吾 レポート/山本佳吾、JAFスポーツ編集部

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