梅雨入り早々の富士を舞台にアジアの実力派ドライバーたちが激戦を展開!
2024年9月4日
年々、台数だけではなくレベルの上昇も著しい、「Fanatec GT World Challenge Asia Powered by AWS(GTWCA)」。その名称が示すとおり、アジア諸国を転戦するシリーズだ。従来は、その中に含まれて開催されていた、日本各地のサーキットを舞台とする「Japan Cup(ジャパンカップ)」が、2024シーズンから独立する格好となり、両シリーズが「SRO GT Power Tour」として同じレースウィークにも行われることとなった。ジャパンカップとしては、すでにスポーツランドSUGOでの第1・2戦を終えており、またGTWCAとしても、マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットとタイのチャーン・インターナショナル・サーキットでの4戦を経て、富士スピードウェイでRound 5とRound 6を迎えることとなった。折しも、このレースウィークに舞台となった富士スピードウェイが建つ東海地方は梅雨入りしたこともあり、天候はいたって不安定だったものの、レースは両シリーズともにエキサイティングな展開となった。
SRO GT Power Tour
2024 Fanatec GT World Challenge Asia Powered by AWS Round 5&6
Japan Cup第3・4戦
開催日:2024年6月21~23日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ(株)、FISCO-C
2024 Fanatec GT World Challenge Asia Round 5&6
GTWCAはひとつのレースウィークで2戦が開催され、決勝は60分+1周のタイムレース制を採っている。スタート後、25~35分のうちに1回のピットストップが義務づけられており、その停止時間は90秒。前戦で1~3位に入ったチームは、1位は15秒、2位が10秒、3位は5秒の停止時間が追加される。
予選は2回行われ、Q1を走行したドライバーは、レース1のスタートを務めなければならず、レース2はQ2を走行したドライバーがスタートを担当する。
全てGT3車両で争われる4クラスは参戦するドライバーたちのグレードによりPro-Ama、Silver、Silver-Ama、そしてAmaに分けられている。プロドライバー同士の組み合わせは認められておらず、また1名はアジア圏出身のドライバーでなくてはならない。今回の二連戦には33台がエントリーし、日本勢は7台が占めた。
スケジュールは6月20日木曜日から始まり、初日はドライコンディションが保たれたものの、21日金曜の路面は絶えず濡れたまま。そして22日土曜に行われた予選は、晴れ間が広がった中で行われた。
予選Q1・Q2
主にアマチュアのジェントルマンドライバーたちが挑んだ予選Q1は、P-Aに参戦するTriple Eight JMRの888号車メルセデスAMG GT3エボをドライブする、H.H.Prince Abu Bakar IBRAHIM選手がポールポジション(PP)を獲得した。日本勢のトップはS-Aに挑む、ポルシェセンター岡崎の18号車992型ポルシェ911GT3Rを駆る永井宏明選手で総合7番グリッド、クラス2番手だった。
プロドライバーを中心に争われたQ2はQ1の7分後に続けて行われ、PPはQ1と同じ888号車AMG GT3のLuca STOLZ選手。S-AでクラストップにつけたANR with VSRの563号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2を操る根本悠生選手が獲得した、総合8番グリッドが日本勢のトップタイムをマークした。
「練習は全然できないので、今では地の利というのはほとんどないです。ですから、持ち込みセットの正確さと、そこからいかに早く、速いスピードのクルマをつくれるかが勝負なんです」と、根本選手はポイントを語ってくれた。ランボルギーニ・ヤング・プロフェッショナルドライバーとしてヨーロッパでも戦ってきただけに、その言葉には重みが感じられた。
Round 5決勝
予選の後に行われたRd.5の決勝は、意外なかたちでの幕開けとなった。PPからスタートを切るはずだった888号車AMG GT3のIBRAHIM選手は、フォーメーションラップ中にホイールが脱落してピットには戻れたものの、その場でリタイアを余儀なくされたのだ。これにより予選総合2番手、Sに参戦するFAW Audi Sport Asia Racing Teamの36号車アウディR8LMS GT3エボⅡを駆る、Franky Congfu CHENG選手が総合トップに立った。
しかし、Origine Motorsportの87号車992型911を操る、S-AのBob YUAN選手も遅れをとることなく続き、激しく総合トップが競われるものの、CHENG選手は少しも動じない。だが、それぞれのドライバー交代後は、立場が入れ替わる。YUAN選手から引き継いだLeo Hongli YE選手が総合トップに立ち、36号車R8のAdderly FONG選手は総合2番手に退いたばかりか、車両にトラブルが発生。スローダウンの後、リタイアとなってしまう。
これでともにP-Aでウラカンをドライブする6号車のEdoardo RIBERATI選手と63号車のMarco MAPELLI選手、VSRの2台が総合の2番手と3番手に浮上するが、チームメイト同士とあって争うことはない様子だった。
一方、Leo Hongli YE選手は大量のリードをすでに確保しているからか、ペースを抑えて走る余裕さえも見せた。難なく逃げ切りを果たしたYUAN/Leo Hongli YE組が総合トップでフィニッシュするとともに、S-Aも制することとなった。総合2番手はBian YE/LIBERATI組で、こちらはP-Aのトップに。SのトップはAbsolute Racingの911号車992型911をドライブする、Eshan PIERIS/Tanart SATHIENTHIRAKUL組で、総合では6番手で終えた。AはGarage75の75号車フェラーリ296GT3を操るDavid TJIPTOBIANTORO/Christian COLOMBO組が総合18番手で制した。
日本勢の最上位はポルシェセンター岡崎の25号車992型911を駆る内山清士/近藤翼組で総合では7番手、そしてS-Aの2番手に入った。また、AではThe Spirit of FFF Racingの19号車R8を駆る濱口弘/大蔵峰樹組が2番手、総合では21番手でフィニッシュした。
Round 6決勝
明けて23日の日曜に行われたRd.6決勝は、うっすらとした霧に覆われ、路面は濡れこそしていたが、セーフティカー(SC)スタートとなるまでには至らなかった。スタートを決めたのは総合2番グリッドでClimax Racingの22号車AMG GT3をドライブする、P-AのJules GOUNON選手で、888号車AMG GT3のSTOLZ選手を抜いて総合トップを奪取。
そして、その直後のコカコーラコーナーでは複数台によるアクシデントが発生し、その中にはD’station Racingの777号車アストンマーティン・ヴァンテージAMR GT3エボを駆るP-Aの藤井誠暢選手も含まれていたのが惜しまれる。
このアクシデントによりSCが出動して、先導は4周にも及んだ。そのため10周目には、もうピットストップ可能なタイミングになるが、大半がプロドライバーであるため、なかなかピットに戻ってこない。我慢比べは、スタートから35分を経過する直前まで続いた。
ドライバー交代後も22号車AMG GT3のZhongwei WANG選手が総合トップでコースに戻るが、最終コーナーでCraft-Bamboo Racingの30号車AMG GT3を操るP-AのMaro ENGEL選手がかわした。しかし、ほぼタイミングを同じくしてコースアウト車両を回収するために再びSCが出動したため、ENGEL選手が順位を戻したのは的確な判断だったと言えるだろう。
2周後にリスタートが切られると、ENGEL選手はTGRコーナーでのオーバーテイクこそ果たせなかったが、ADVANコーナーではしっかりWANG選手の前に出て総合トップを奪った。さらにWANG選手はAbslute Racingの1号車992型911をドライブする、P-AのAnthony LIU選手に抜かれた直後の20周目、グリーンファイト100Rでコースアウトしてしまった。
この時点でENGEL選手とAnthony LIU選手の差は2秒6ほどあったものの、濡れた路面に911の圧倒的に高いトラクションが大いな武器となって、間隔はどんどん縮まっていく。そして、フィニッシュまで残りわずかとなった23周目のGRスープラコーナーで、Anthony LIU選手は待望の総合トップを奪うとそのままフィニッシュ。Anthony LIU/Alessio PICARIELLO組が、ディフェンディングチャンピオンの貫禄を示した。
総合2番手はQi CAO/ENGEL組が獲得、彼らに続いた36号車R8のCHENG/FONG組との差は、わずか0.187秒。しかし、CHENG/FONG組はSの優勝はもぎ取った。
そして総合では11番手ながら、日本勢の最上位とS-Aのトップでフィニッシュしたのは、TEAM 5ZIGENの500号車 日産GT-R NISMO GT3を駆るHIROBON/金丸ユウ組だ。オープニングラップに大きく順位を落とす不運はあったものの、そこから着実に順位を上げてきた成果と言えるだろう。
「タイヤの温まりが悪くて、1周目にけっこうやられちゃったんですけど。雨が止んだらHIROBONさんが速いのは分かっていたので、とりあえず一個でも上の順位でバトンを繋いだらと、僕なりにレースさせてもらって」とスタートを担当した金丸選手は振り返る。
その言葉を受けるように、「いや、また雨が降ってきて、めっちゃ難しいコンディションのままでした。かなり気を使いました。まさか、ここまでこられると思っていなかったので、最高です!」とHIROBON選手は語った。
また、Aでは19号車R8の濱口/大蔵組が2戦連続の2番手でフィニッシュした。
Japan Cup第3・4戦
単独開催となったジャパンカップではあるが、レギュレーションやレースフォーマットは、全てGTWCAと共通。60分+1周のレースが2連戦で行われる。
クラス区分はGT3車両の4クラスはGTWCAと同じだが、GT4車両によるクラスと、カップカーが参戦できるGTCのクラスも設定される。GT4とGTCについて、富士ではGT4がS-AとAの2クラス、GTCはAにエントリーがあった。
SUGOで開催された開幕二連戦は、BINGO Racingの9号車シボレー・コルベットC7GT3-Rを駆るP-Aの武井真司/笹原右京組が総合二連勝。しかし、第3・4戦では笹原選手が同日にSUGOで開催された2024年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 第3戦に参戦するため、出場できず。代わって武井選手とはポルシェカレラカップ・ジャパンでライバルでもある、MOTOKI選手が起用され、クラスもAクラスに改めていた。
予選Q1・Q2
22日に行われた予選はコンディションに恵まれ、Q1ではK-tunes Racingで98号車296GT3を駆るP-Aの山脇大輔選手がPPを獲得。これに続いた7号車296GT3を操るComet Racingの辻子依且選手がAのトップタイムをマークした。そして、GT4では和歌山トヨタwith HOJUST RACINGの38号車GRスープラGT4エボをドライブするS-Aの樋口紀行選手がGT4総合のトップグリッド。GTCのAでGAMA83Racingの83号車ポルシェ911GT3Cup991を駆る芳賀誠選手が総合9番手につけた。
続いて行われたQ2でも98号車296GT3は高木真一選手によってPPとなり、チームメイトの96号車レクサスRC F GT3を駆る、P-Aの新田守男選手が続いた。総合3番手はAトップタイムの武井選手。そしてGT4は、38号車スープラを操るS-Aの末廣武士選手がGT4総合のトップグリッドにつけ、GTCの芳賀選手は再び総合9番手を得た。
Q1でPPを獲った山脇選手は、「あまり納得のいく予選ではなかったのが正直なところですが、一昨日、晴れで走った時はペースも良かったので手応えはあります。でも、ピットレーンでのロスとか、くだらないミスだけはしないようにしようと思っています」と語った。
コンビを組む高木選手も、「山脇さんが最終ラップに、もうタイヤも落ち込んでいたところでトップタイムを出してくれたので、クルマの状態は良かったんじゃないかと思います。僕自身はアジアの人も食えるぐらいのタイム出さなきゃいけなかったのかな、ってちょっと反省しています」と、ふたりとも走りには納得していない様子だった。
そしてGT4総合のトップグリッドを獲得した樋口選手は、「GT4に初めてチャレンジして、練習からまずまずの感触を得ていたんですが課題もたくさんあって、末広選手にいろいろアドバイス頂きながら、それを今日の予選でまとめられたらと思って。『う~ん』っていうのもあるんですけど、1番はいいですね、最高です」とコメントを残した。
相棒の末廣選手は「差がないですからね、本当に。決勝に向けてドキドキしています(笑)。とりあえず予選は一安心かな、という感じです。ふたりともトップというのは、すごく気持ちいいですね」と、予選後に語っていた。
第3戦 決勝
予選後にスタートが切られた第3戦で、順当にTGRコーナーへのホールショットを決めたのは98号車296GT3を駆る山脇選手。その後方では早くも9号車コルベットC7GT3-RをドライブするMOTOKI選手が総合2番手を奪取して早々に一騎討ちへと持ち込むと、5周目のTGRコーナーで総合トップに立つも、山脇選手も遅れることなく続いた。
ピットインが可能になった14周目には、さっそく山脇選手は高木選手に交代。これに対し、A勢のMOTOKI選手とTeam MACCHINAで55号車マクラーレン720S GT3を操る植松忠雄選手、そして7号車296GT3の辻子選手は揃って16周目にピットに戻ってきた。
それぞれコースに復帰すると、高木選手が総合トップを守り、7号車296GT3を駆る山崎裕介選手、植松選手、そして9号車コルベットC7GT3-Rを操る武井選手という順に改まった。そして96号車RC Fを、末長一範選手から託された段階での新田選手は総合6番手につけた。
着実に逃げる高木選手の後方では、総合2番手争いが激しく、20周目には植松選手が前に。そして新田選手がじわりじわりと順位を上げて、26周目には総合3番手に浮上。30周目のダンロップコーナーでは総合2番手に躍り出る。しかし、高木選手にプレッシャーをかけるまでには至らなかった。
総合トップでフィニッシュした山脇選手は「いったん抜かれはしましたが、5秒のピットストップの差があるので、あまり無理せずついていけばいいかな、と僕的にはリスクを冒すより、とにかくついていくことを目標にしていました。向こうの方がストレートが速くて抜けないのもありましたけど」と、自分のスティントを振り返った。
後半スティントを担った高木選手は、「ハンデもあったので、(山脇選手が)あの位置にいてくれれば大丈夫だと。しっかり走ってくれました。実際、ピットストップもジャストな感じで、クルマも順調でしたし、良かったです」と、盤石のレース運びだったことを語った。
総合2番手は末長/新田組が獲得し、「K-tunesとしては1-2フィニッシュで、第一の目標を達成できて良かったです」と末長選手は安堵の表情で語っていた。
総合3番手で、これで開幕からAのトップフィニッシュを続けたのは植松選手だ。「木曜日に走れなかったので、ドライで走るのは予選からで、決勝のセットが今イチ決まりきれなかったのでオーバーステアに悩まされて、最後ヘロヘロだったんですけど、みんな、すごくフェアな戦いをしてくれました」と、レース後に語ってくれた。
一方、GT4では、38号車スープラを駆る樋口選手がGT4総合トップでスタートを決めるも、5周目にTOYOTA GAZOO RACING INDONESIAの39号車スープラを操るS-AのHaridarma MANOPPO選手に先行を許してしまう。
だが、MANOPPO選手はそのまま逃げることは許されず、YZ RACINGで50号車BMW M4GT4G82をドライブするS-Aの藤井優樹選手が急接近。コース上での逆転こそ許さなかったものの、39号車スープラは第2戦での優勝で15秒のピット停止が加えられており、卜部和久選手がコースに戻った時には、50号車M4GT4の加納政樹選手にトップを奪われていた。
順調にトップを快走していたかのように見えた加納選手。実はその裏では、アンセーフリリース(安全性に欠けるピット行為)の審議から、競技結果に10秒加算のペナルティが下されていたのだ。決して逃すまいという卜部選手の執念が勝り、MANOPPO/卜部組がGT4の総合2番手でフィニッシュするも、繰り上がってトップに立った。
「ピットアウトして数周したら、無線入ってきて『トップのBMWにペナルティ。トップだよ~、頑張って』って。ペースはそんなに良くなくて、楽なレースではなかったんですが、勝てて良かったです」と卜部選手は自身が担当したスティントを語った。
藤井/加納組はGT4総合とS-Aの4番手に降格となり、2番手はSUNRISE BLVD .で82号車ポルシェ718ケイマンGT4 RSクラブスポーツを駆るS-Aの牧野善知/藤原大暉組が獲得。GTCで83号車911GT3Cupを操るAの芳賀選手は総合13番手でフィニッシュした。
第4戦 決勝
23日に開催された第4戦は、セミウェットというべきコンディションでのスタートとなった。やがて路面が乾いていくのは明らかなだけに、タイヤ選択は微妙なところではあったものの、ドライタイヤを選んでいたのはポールシッターの98号車296GT3を駆る高木選手だけだった。スタートから間もなく96号車RC Fを操る新田選手に抜かれてしまった高木選手は、オープニングの1周だけで総合7番手に後退し、新田選手から約9秒の遅れをとってしまう。
一方、3周目のTGRコーナーで9号車コルベットC7GT3-Rをドライブする武井選手を抜いて2番手に浮上したのが、Team DAISHIN with GTNETの81号車GT-Rを駆るAの大八木龍一郎選手だ。予選こそ総合6番グリッドだったがスタートダッシュ鋭く、2周目にはもう総合3番手まで上げていた。そして同じ周、新田選手と高木選手の間は、すでに約16秒差にも達していた。
ところが、5周目に入って潮目が変わった。高木選手がファステストラップを連発し、あれよあれよと前を行くライバルたちを捕らえて、10周目には総合3番手に、さらに11周目には大八木龍一郎選手をADVANコーナーで、パナソニックコーナーでは新田選手をもかわして総合トップを奪還したのだ。逆に抜かれた後の新田選手のペースが、明らかに遅い。「タイヤをヒートさせないように心がけていたけど、内圧が上がりすぎちゃった」のが、その理由だった。
やがてピットイン可能な時間となり、本来ならば自身の走行を伸ばしたい新田選手ながら、堪らず13周目に末長選手に交代。もちろん、装着されたのはドライタイヤだ。これに対して、高木選手は16周目まで山脇選手への交代を遅らせたばかりか、熱の入ったタイヤのまま渡せたから、アウトラップは誰よりも速い!
大量のマージンを築いた山脇選手のはるか後方では、17周目のパナソニックコーナーで55号車720Sを駆る植松選手が7号車296GT3を操る辻子選手をかわして、総合2番手に浮上していた。
最後は2番手以下に1分以上もの差をつけ、山脇/高木組が連続で総合トップフィニッシュを果たした。「最初はちょっといじめられていて(笑)。確かに自分でいくって決めたんですが、みんなもそうだと思っていたら、裏切られた! 『ドライ、高木さんだけです』って、え~、マジで~、そんな~って。でも、なんとか降らずにすんだので運がよかったです、助かりました」と、高木選手は序盤で出遅れた裏側を明かしてくれた。
高木選手が自ら挽回した後を継いだ山脇選手は、「タイヤが温まっていたので、特に苦労せず(苦笑)。ウェットパッチだけ注意して、あとは周りのペースも聞きながら走っていたので、そんなに疲れませんでした。ギャップもあるので、最後は無理もしませんでした」と、涼しい顔だった。
そして総合2番手でフィニッシュした植松選手は、これでAでの無敗記録を更に伸ばした。「雨には自信があったので雨の方が良かったんですが、あがっちゃったじゃないですか、途中から。そもそもストレートが遅いので、富士はマクラーレンが最も得意としないコースなんですよ。そこで両方とも勝てたので、今までで最高のかたちになっています」と笑顔で語った。
GT4では、トップ発進のはずの38号車スープラが、いきなりトラブルを抱えて失速してしまった。まずは82号車ケイマンを駆る藤原選手がトップに立つが、3周目には39号車スープラを操る卜部選手に逆転されてしまう。
そのまま逃げ続けた卜部選手は、14周目の交代でウェットのニュータイヤをMANOPPO選手に託すが、これが裏目に出てしまった。30秒近くあったリードは瞬く間に失われていき、レースも最終盤に差し掛かる直前に後続との差は2秒を切られ、60分が経過したあたりで82号車ケイマンを操る牧野選手が前に出た。
「最後まで何があるか分からないので、最後の最後までプッシュしました。スープラが見えた瞬間、力入りましたね、アクセル踏む右足に! 『もう1周、残っていてくれ!』って感じでしたね。勝ちにきていましたけど、実際に勝てるとは正直思っていませんでした。大暉くんも頑張ってくれました」と、牧野選手は終盤の逆転劇を振り返った。
藤原選手は「自分は本当に苦しくて、なかなかペース上げられなかったんですが、牧野選手が怒涛の追い上げでチーム初優勝。途中苦しそうでしたが、見事な巻き返しでした」と、チームメイトの激走を大いに喜んでいた。GTCでAに参戦の芳賀選手は総合13番手、第3戦と同じ順位で終えた。
フォト/髙橋学 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部