2025シーズンJAFカップ開催で活気づく“サートラ”の魅力とは!~ 筑波サーキット編 ~
2025年3月4日

筑波サーキットで産声をあげたと言われ、その筑波コース2000をはじめスポーツランドSUGOと岡山国際サーキットでJAF地方選手権がかかったシリーズが開催されているなど、全国各地のJAF公認サーキットで開催されているカテゴリーが“サートラ”ことサーキットトライアルだ。筑波コース2000でのJAFカップオールジャパンサーキットトライアルの開催も迫り、注目が集まっているサートラの魅力とは? まずは2024年JAF筑波サーキットトライアル選手権でしのぎを削るドライバーたちに伺った。

サーキットトライアルについて、まずはおさらい!
サートラは、サーキットを舞台に争うカテゴリーだが、JAF国内Bライセンスを取得すれば参戦することができる、いわゆる「Bライモータースポーツ」のひとつ。日本サーキットトライアル選手権規定ではスピード車両のPからDまで幅広い車両を対象としていて、多種多様な車種が参戦できる規定となっている。
SUGO、筑波、岡山国際の3サーキットでの各地方選手権は共通の規則を採用し、クラスは排気量や駆動方式などによって9つに区分されている。保安基準に適合させた車両であれば、改造範囲が広いスピードB車両が主体となっているが、中には参戦可能なFIAやJAFの公認/登録年や改造範囲が制限されたスピードPN車両、電気自動車やハイブリッドカーなどの“電動車”が対象のスピードAE車両によるクラスもある。9クラスとも自動車登録番号標、すなわちナンバープレートが付いた車両を対象としていて、日常生活で使っている「マイカー」でサーキットに行き、参戦することができることも特長のひとつだ。

「JAF公認レーシングコースにおけるタイムトライアル競技」と定義されているサートラの競技は、レースの予選のようにサーキット1周のタイムを競う。3つの地方選手権では15分間のタイムアタックを2回行う2ヒート制が採用されており、両ヒート併せて30分間でマークしたベストタイムで順位を競う競技だ。
レースではJAF国内Aライセンスを所持していないと競技に参加できないJAF公認サーキットを、サートラならBライを持っていればマイカーでも攻められる。ドライバー同士がコース上で競うレースとは違ってサートラはベストを競うので、アクシデントの可能性も低い中でサーキット走行のマナーも身につけることもできる。サーキットデビュー、更にはレース参戦へのはじめの一歩としても、魅力的なカテゴリーなのだ!
このインタビューが行われた筑波サートラの第4戦では43選手が集い、2組に分けて争われた。CT1~4クラスまでのA組は24台がコースイン! その名のとおり、四輪レイアウトで全長2045mとコンパクトなコース2000でこの参戦台数は、クリアラップを確保することが難しい。15分間の中でいかにクリアを得て、数多くアタックすることができる集中力も問われる。
一時は参戦台数の減少が見られ、1組で開催されることもあった筑波サートラだが、首都圏内に建つ筑波の立地の良さ、そしてコロナ禍も第5類に移行し、以前のような状態に戻りつつあることも重なったのか、毎戦2組に分けて開催されるほどの盛況が戻ってきた。
そこに、2025シーズンは3月22日にJAFカップが開催されることになった。JAFカップとは、各地区の地方選手権で上位成績を収めたドライバーや、組織委員会の選考に基づいたドライバーに参戦資格が与えられる。これまで各サーキットだけで戦われてきたサートラで、「初の日本一」を決める一戦が開かれるのだ!
今、注目が集まり盛り上がりを見せつつあるサートラに、いち早く参戦しているドライバーたちはどこに惹かれてベスト更新に挑み続けているのか、聞いてみた。

溝口敦子選手 ママのおでかけGT-R(R35型日産GT-R)
参戦クラス:CT1 第4戦戦績:優勝(1’1.293)
2024シーズンチャンピオン
静岡県在住の溝口敦子選手がサートラを始めたのは、富士スピードウェイ。2024シーズンで丁度10季目になるそうだ。「GT-Rニスモが納車された時に、このクルマでどれくらいタイムが出るのか知りたくて参戦したんです。しっかりと規則がある環境で走って、どのくらいタイムが出るのかを知りたかったんです」と、経緯を語ってくれた。
人生初のスポーツカーと語る日産GT-Rを選んだ理由は、「お恥ずかしながら実は2ペダルだったのが選んだ理由です(笑)」とのこと。2ペダルだったからと、GT-Rを選べるのは豪勢で羨ましい限り。「ペーパードライバーだった自分でも急に参戦できたので、気軽さもあるのがサーキットトライアルの魅力のひとつかもしれません」と、魅力のひとつに参戦ハードルの低さを挙げてくれた。ディーラーのメカニックにきちんと車両をメインテナンスしてもらうことで、安心して参戦できている、とのことだ。
更に「サーキットトライアルはマナーの良い人たちが揃っているので安心して走れますし、何よりJAF規定の中で定められたルールの中で走るのは、走りやすいんですよ」と、競技の安全性の高さも魅力に挙げた溝口選手は、ふたりの子供のママでもある。
「出産してからサーキット走行を始めたんですが“子供がいてもサーキットを走れるんだ”という、女性たちの道しるべになれるような存在になりたいですね」と、目標を語る溝口選手。「子育てをしながらの参戦なので、あまり遠くへは遠征できないんですよね。JAFカップは筑波サーキットか富士スピードウェイなら参戦したいです!」と語ってくれた。

森田正穂選手 寝不足☆ましゅ~GT4(ポルシェ718ケイマンGT4)
参戦クラス:CT2 第4戦戦績:優勝(1’1.558)
2024シーズチャンピオン
筑波サートラに参戦するドライバーなら、知らぬ者はいないであろう森田正穂選手は、このシリーズが始まった当初から参戦を続ける、東京都在住48歳のベテラン。サートラでは“レジェンド”とも呼べるドライバーのひとりだ。そんな森田選手にサートラ参戦の経緯を伺った。
「B-Sportsさんのマツダファン・サーキットトライアルから始めたんですが、愛車のRX-7で出られる競技があると聞いて、走行会中心だったのがサーキットトライアルに出るようになったのが、参戦するようになったきっかけです」とのことだ。
森田選手といえばFD3S型のマツダRX-7、という印象なのだが「やっぱりRX-7のルックスが好きで、最初はブレーキとサスペンションを変えたくらいで楽しんでいました。今は溶接剥がれが多くなってきて、前回からポルシェに乗り換えました」と今季の第3戦でポルシェ718ケイマンGT4に乗り換えて見事にデビューウィン、更に2連勝を果たした。
サートラの魅力については、「走行会だと自分の走りの良し悪しが分かりにくいんですが、サーキットトライアルは仲の良いエントラントの人たちと同じ条件で走って相対評価ができるので、自分のスキルアップが分かりますよね。雨の日でも、今日みたいに暑い日でもタイムアタックをしなきゃいけないのも、いろんな環境で相対比較ができるのはいいですよね」と、まず運転技術向上の面を挙げてくれた。
「あと、サーキットトライアルはお互いをリスペクトし合って走っているので、道を譲り合ったりしているのもマナーがあっていいですよね。走行前は安全装備のチェックくらいで気楽に参加できるのも、この競技の良いところです」とも語ってくれた。更に、日常の運転ではより安全運転になったそうだ。
JAFカップについては、「あるなら岡山でも十勝(インターナショナルスピードウェイ)でも行きます。もらえるものはもらいたいですからね!」と、初代王者獲得に意欲的。「サーキットトライアルは車種多様で、改造範囲も決まっていて気軽に参加できるので、多くの人に参加してもらいたいですね」と、サートラから新たにモータースポーツの門を叩くドライバーの参戦は大歓迎のようだ。

大橋悠貴選手 AX BRZ Cup(ZD8型スバルBRZ)
参戦クラス:CT4 第4戦戦績:11位(1’10.993)
2024シーズンランキング:20位
神奈川県から参戦の大橋悠貴選手は第4戦がサートラデビューという、25歳の若武者だ。「ライセンス取得のためにサーキットを走ることはありましたが、JAF公認競技に参戦したのは今回が初めてです。ジムカーナに参戦しようかとも思ったんですが、道を覚えるのがとても苦手なので……」と、参戦の経緯を語る。
「サーキット走行会も茂原(ツインサーキット)を2回くらい走ったくらいで、走行会のノリで参加できるのもサーキットトライアルの良いところだと思います。準備するモノも少なく、難燃性の作業着があれば参戦できるのもいいところで、ブレーキパッドを交換したり、油脂類の交換をするくらいで、ほぼ街乗り仕様で参加しました」と、敷居と費用の低さを魅力として挙げてくれた。
普段から滑らかな運転を心掛けるようになったり、日常的な運転も変わってきそう、とも語る大橋選手は「GR86とスバルBRZ勢の中で最速で走れるようになりたい」との目標を定めている。「将来的にはレーシングスーツなど、ギアを揃えてクラブマンレース(GR86/BRZ Cup)に参戦してみたいと思いますが、今はこのカテゴリーをしっかり走りたいと思っています」とのことで、レース参戦も視野に入れている様子だ。
JAFカップについては、「選ばれた人だけが出場できる大会だと思うので、自分にとってはまだピンときませんが、出場できるなら出場してみたいですね」とのこと。「自分にとってジムカーナよりは参戦しやすいと思ったんで、“ちょっとルールが厳しい走行会”と思って参戦してもいいと思います。僕はアセットコルサ(ドライビング・シュミレーターゲーム)でシミュレーションしてきて準備はしてきたんですが、シフトダウンのときに思いどおりにいかなかったり、現実との違いもあり面白かったですよ」と、勧めてくれた。

フォト/大野洋介 レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部
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