近畿ジムカーナ開幕戦は新設BPNクラスで冬野紘彰選手が地区戦初参戦初優勝!!
2025年3月17日

2025シーズンも名阪スポーツランドを中心に開催されるJAF近畿ジムカーナ選手権。鈴鹿サーキット南コースでの第3戦以外は全て名阪スポーツランドが舞台となっている。Cコースで3戦、ABコースで2戦、そして最終第7戦はEコースでの開催だ。今季は西日本ジムカーナフェスティバルもCコースで開催されることから、後半戦は他地区からの参戦も予想される。
2025年JAF近畿ジムカーナ選手権 第1戦
2025年JMRC近畿ジムカーナ チャンピオンシリーズ第1戦
2025年JMRC全国オールスター選抜 第1戦
2025年JMRC近畿ジムカーナ ミドルシリーズ第1戦
DUNLOP CUPジムカーナ
開催日:2025年3月2日
開催地:名阪スポーツランドCコース(奈良県山添村)
主催:LAZY W.S、R-7
開幕第1戦を主催するのは、ここCコースでJAF全日本ジムカーナ選手権の主催も担うJAF加盟クラブ、大阪府の「モータリストクラブレイジィーダブリュエス(LAZY W.S)」と京都府の「チームアールセブン(R-7)」だ。今回の一戦は副競技長にR-7の古谷哲也会長、そして全日本チャンピオンに14回も輝いている茅野成樹氏を迎えるという豪華布陣。もちろん、スタートからポスト、ゴールまで気合の入った動きでスムーズな進行を行うオフィシャルに定評がある。
開幕戦のレイアウトについて、茅野氏に聞いてみた。「今日のコースはポイントをいくつか配置しています。360°ターンはもちろんなんですが、管制手前でUターンする渡りの部分で、いかにアンダー(ステア)を出さずに立ち上がれるかがポイントになると思っています。しっかりフロントに荷重をかけて、ボトムスピードを犠牲にしてでも立ち上がりを重視することが大切だと思います。ここで大きくタイム差がつくのではないでしょうか」と茅野氏は答えた。



開幕にあたり、JMRC近畿ジムカーナ部会の吉川寛志部会長は「去年まで14クラスあって、クラスが3台とか4台で推移していました。他地区に行くと競り負けてしまうことが多かったと思いますので、3~4年間のデータを見直し、決勝タイムが均衡しているクラスを統合しました。それによって競争力を高めてレベルも上げてもらいたいと思い、チャンピオンシリーズ(地区戦)は11クラスに変更し、逆にミドルシリーズは1クラス増やしました」と、新たなクラス編成の意図を語った。
続けて「その結果、(地区戦は)PNタイヤのAWDクラス(BPNクラス)が最多参加台数クラスになりました。もちろん、今年一年かけて様子を見ながらにはなりますが、より競争する楽しさのあるシリーズをつくっていきたいと思います」と語る、近畿ジムカーナの新たな試みも興味深い。
開幕戦は160台フルグリッド。前日からの不安定な天候を引きずり、名阪Cコースは早朝から小雨がパラついてしまった。しかし、この後は天候が好転するとの予報。ダンプコンディションとなってしまったが、路面の変化を味方につけて開幕ダッシュを決めるのは誰なのか?小雨程度ではその熱量は変わらない、アツいバトルの火蓋が切って落とされた。

2025年JAF近畿ジムカーナ選手権 第1戦
2PDクラス
2PDクラスはオートマチック限定免許でも運転できる、2ペダルのP・PN・AE・B車両で競う。なお、近畿ジムカーナではLクラスとBC1~3クラス以外のクラスで使用できるタイヤは、JMRC近畿が規則を定めている。
王座争いはこのクラスを二連覇中の全日本ドライバー、段上泰之選手を中心に展開していくことが予想される。段上選手と同じくアルピーヌA110Sを駆るMOTOHIRO選手をはじめ、ライバルたちが挑む構図だ。
完全ウェット路面の中、2PDのTRY1がスタートした。スタンド前に用意された360°ターンが肝となるが、最初にターゲットタイムをマークしたのは樋口智哉選手だった。「思ったより路面が食わなかったです」と、樋口選手は慎重に入ってタイムを残した。
その慎重さが功を奏したか、後半ゼッケンに入っても樋口選手はトップタイムを守り続ける。そんな中、アタック中のMOTOHIRO選手の前でコース上に砂が飛び散るトラブルが起こり、再出走となった。真冬のような寒さの中、タイヤに熱を入れることができたMOTOHIRO選手にとっては千載一遇のチャンスが到来した。
しかも、段上選手はまさかの失速で2番手。ターゲットタイムは樋口選手が記録したタイムだ。しかし、MOTOHIRO選手は精彩さを欠く走りになってしまい、樋口選手に約0.4秒届かず2番手で折り返した。
そして運命のTRY2。路面コンディションが回復していたにも関わらず、慣熟歩行が始まると冷たい雨が再び路面を濡らしていく。このコンディションに喜んだのは樋口選手。路面状況はTRY1よりも悪化したからだ。そんな中、樋口選手はタイムを上げることができなかったが、TRY1での樋口選手のタイムを超えるスラローマーは誰ひとり現れない。MOTOHIRO選手もプレッシャーに負けてしまったのか、タイムダウンとなってしまう。
そして、最終ゼッケンの段上選手が気合の入ったダッシュでスタートラインを切る。細かいミスが散見するものの、全体的な車速は高い。ときおりフロントが怪しい動きをしながらも、ギリギリのコントロールでA110Sを前へ前へと進めると、トップタイムを約0.6秒更新。2024シーズンから続く連勝記録を8に伸ばした。
走行後、段上選手は「4カ月ぶりに走ったので、感触を掴むこともできず怖かったです(笑)。全体的にスピードレンジが遅かったのもありました。2本目は心臓もドキドキで、タイヤが少し揉まれてグリップ感も少し上がったおかげで勝てましたが、とにかく準備不足でしたね。追い詰められて『なんとかせにゃあかん』と思って走ったのも良かったですね」と自己分析した。
更に「今年は近畿をメインに近くの全日本をスポットで参戦しようと考えています。(地区戦は)パーフェクトウィンを目指して頑張ります」と今季の目標も語った。



BR1クラス
排気量1150cc未満で後輪駆動のB車両と、1500cc未満で前輪駆動及び4WDのB車両が対象のBR1クラスは、軽自動車とコンパクトカーたちがしのぎを削る。ディフェンディングチャンピオンの土手啓二朗選手はPN2クラスに転向、王者不在の開幕戦となった。
ダイハツ・カプチーノ勢が猛威を振るうBR1だが、今回の一戦は路面が阻んだ。後輪駆動で軽量かつ、ナローなタイヤでは持ち前のパワーを伝えきれないのだ。その隙に割って入ったのはスズキ・アルトワークスを駆る藤林伸吉選手だった。1分18秒台だったトップタイムを1分16秒898へと一気に押し上げ、ターゲットタイムをマークする。
TRY2に入っても、この状況は変わらないのではないかと思われた矢先、打破したのは能勢ケンヅ選手が操るダイハツ・ストーリアX4だった。2PDと同じく、路面コンディションはTRY1より悪化しているにも関わらず、トップタイムを0.244秒更新した能勢選手に名阪Cはザワついた。もちろん、後続は能勢選手のタイムを誰ひとり破ることはできなかった。
雨のBR1では無双状態といえるほどの素晴らしい走りを見せた能勢選手は、「1本目は路面温度も低くアンダーを出してしまいました。2本目は路面温度が高くなってくれた分、セットアップも変更せずに走り方を変えてアタックしたのが良かったです。低いギヤを選択して、タテにタテにタイヤを使って四駆の力を使って走りました。今年は全戦参戦できそうなので、1戦でも多く優勝してチャンピオンを獲りたいと思います」と振り返った。



BR2クラス
BR2クラスは、2WDのB車両で争われる。後輪駆動のB車両で競われていたBR3クラスと統合が図られて、エントリーは11選手と増加した。
このクラスでやはり強かったのはこのスラローマー!ディフェンディングチャンピオンでEK9型ホンダ・シビックを駆る寺谷正樹選手だ。昨季BR3を制した間瀬戸勇樹選手がホンダS2000のトラクション不足に苦しむ中、昨季の第3戦から5連勝中と波にのっている寺谷選手はTRY1からクラスでただひとり、1分14秒台を記録。
TRY2は序盤こそ路面状態が悪かったものの、後半ゼッケンになるに従いライン上は徐々に乾きだすダンプコンディションへと変わった。しかし、完全ドライにはならず寺谷選手のトップタイムを抜くスラローマーは本人含めて誰ひとり現れず、寺谷選手が逃げ切り優勝を果たした。
「1本目は大きなミスをしてしまいました、定常円のところで完全に失速してしまったんです。ただ、そこで吹っ切れたのか、その後の走りはまずまずで良いタイムを記録できました。2本目は路面がヌルヌルしててタイムは伸びませんでした」と、寺谷選手は勝利を決めたTRY1の走りでのミスを明かした。
そして「開幕戦を優勝できたのは嬉しいのですが、ドライならば昨年BR3クラスで上位を走った間瀬戸選手を筆頭に多くのライバルがいるので、簡単には勝てないと思っています。その中でもチャンピオン争いができれば嬉しいです」と、兜の緒を締めなおした。愛機シビックの持ち味を活かした走りで、ライバルたちといかに戦うかも注目したい。



Lクラス
LはB・SC車両を駆る女性スラローマーたちがしのぎを削る。全国各地の女性スラローマー対象クラスの中でも、極めて高いレベルの争いが繰り広げられている。
このクラスを引っ張っているのは三菱・ランサーエボリューションⅨを駆る辰巳知佳選手。しかし、TRY1で辰巳知佳選手はターンセクションで大きなミスを犯してしまうが、それでもトップタイムを死守して折り返す。
TRY2に入り、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIをドライブする砂田光恵選手はアンダーを気にしてアクセルを抑えてしまったTRY1に対して、明らかにアクセル開度を変えてきた。「1本目、伊東工業(コーナー)を抜けるところが課題だったので、きちんと踏んでいきました」とそのとおり、ウェット路面でも加速していき、トップタイムを大きく更新して逆転!再逆転を狙った最終ゼッケン辰巳知佳選手はまさかのパイロンペナルティ。生タイムでは砂田選手を上回ったものの、涙をのむ結果となった。
開幕戦を制した砂田選手は「1本目ダメだったところを修正できたのが良かったです。私は2本目でも路面はあまり変わらなかったと思います。路面も徐々に乾いてきたので、一桁ゼッケンの選手たちよりは良くなっていました。できるだけ上位で入賞して、チャンピオンを目指して頑張ります」と勝利を喜んだ。



PN1クラス
近畿地区戦のPN1クラスは全日本や各地のシリーズでの同クラスとは異なり、ZN6型トヨタ86/ZC6型スバルBRZも参戦できる、近畿独自のクラス。2012~2016年にJAF登録された2WD、あるいは2017年以降にJAF登録された1500cc未満で前輪駆動のPN車両が対象となる。
同クラスで注目を集めるのは昨季のL王者、かつこ選手だ。特に今回の一戦は、ターンセクションで大きくタイムを失う可能性があるレイアウト。パイロンジムカーナが盛んな関東地区で磨いたテクニックでこのレイアウトをどう攻略するのか、スラローマーたちの視線が集まった。
まず、福尾成泰選手がトヨタ・ヤリスを駆ってターゲットタイムを記録した。濡れた路面ではパワーで勝る86/ZC6型BRZといえども、トラクションが逃げてしまう。福尾選手がトップタイムを守る中、ラストゼッケンのかつこ選手が86をスタート。だが、ターンセクションでまさかの失速を犯し、福尾選手に大きく水を開けられてしまった。
勝負のTRY2だが、路面は徐々に乾きはじめているとはいえどまだウェット状態から回復は見られない。所々ライン上は乾いてきてはいるものの、重要なターンセクションは完全なウェット路面だ。
TRY1でトップタイムを記録した福尾選手も、気負ってしまったこともあったかタイムダウン。続く菱田真也選手もベストタイムを更新できず。そして、かつこ選手が軽いホーイルスピンとともにスタートを切り、勢いよく伊東工業コーナーへと突っ込んでいく。しかし、所々で不安定な動きを見せるフロントタイヤに苦戦。ベストを更新するもトップタイムに届かず、福尾選手が優勝、かつこ選手は2位で終えた。
「1本目はコンディションが悪かったんですが先週、雪が降る中練習したのに比べれば良かったのかもしれません(笑)。2本目は路面温度が上がっているとは思うんですが、あまりいいグリップは得れませんでした。このコンディションならFFの方が有利だと思うので、前半セクターでとにかく稼いでいきました」と、福尾選手は勝因を語った。
今季については「全日本の西日本地区と近畿を中心に戦っていきたいです。昨年の近畿ではチューンドの軽自動車やロードスターと走っていたことを考えると、今年は車両のハンデがそんなにないと思っているので、成立してくれるならチャンピオンを獲りたいと思います」と語った福尾選手は、全日本に向けて勢いをつけた。


PN2クラス
1600cc未満で2WDのPN車両が対象のPN2クラスはND型マツダ・ロードスターが主役だ。15選手がエントリーしたが、開幕戦は昨季のランキングトップ2不在。そんな中、TRY1から貫禄を見せつけたのは、昨季の最終第8戦で勝利を挙げてランキング3位を獲得した、山本祐己選手だった。
「毎年、開幕戦はグリップが良くないんですが、伊東工業のあたりでアンダーが出てしまいました。気持ちを切り替えて走ったのが良かったですね」と走りを振り返った山本選手が、トップで折り返した。勝負のTRY2に入っても山本選手が記録した1分15秒083を誰も抜けないまま、後半ゼッケンへと進んだ。
このまま山本選手の逃げ切りかと思われたところで、トップタイムを更新したのは昨季1勝を挙げるも、最終戦で山本選手にランキング3位の座を奪われた川西努選手だった。ターンセクションはもとより、各セクションのつなぎの部分をスムーズに走り切った川西選手が1分14秒台788を叩き出してトップに踊り出た。
このタイムを聞いてスタートを切った山本選手だが、手痛いパイロンペナルティ。「パイロンを触った感覚はありませんでした」と語る山本選手の生タイムは川西選手を僅かに上回ったものの、TRY1のタイムで2位となった。
優勝した川西選手は「去年のタイヤだったんで全然食わなかったんですが、2本目に入ったら少しグリップしてくれるようになりました。本当は2速に入れたかったところを1速で走ってしまったので『これで速いんかな?』と不安だったんですが、結果的には良かったみたいですね。今日は(車両が)振られてもしっかりコントロールできたのが良かったです。僕はCコースが苦手なんですが、今年は全部出れると思ってきたので頑張りたいですね」と、鬼門のCコースを制して幸先良いスタートを切った。



PN3クラス
1600cc以上で2WDのPN車両が対象となるPN3クラスは、スズキ・スイフトスポーツとZN8型GR86、ロードスターRFの三つ巴という構図となっている。
昨季も熾烈な王座争いを繰り広げた、ディフェンディングチャンピオンでスイフトを駆る本山正悟選手とGR86を操る白尾泰選手の戦いは今季も続きそうだ。しかし、この日のコンディションでは後輪駆動のGR86では前輪駆動のスイフトの前に出ることは難しい。
TRY1から圧倒的なトップタイムをマークしたのは本山選手。上位勢が1分14秒台に留まる中、ひとり1分13秒台をマークした。TRY2に入っても、本山選手のタイムを更新するスラローマーは現れず、更に3位までをスイフト勢が独占した。
GR86勢は白尾選手が食い下がるが13秒台の壁を破ることはできず、4位止まり。そんな中、本山選手に次いで13秒台に飛び込んだのは赤沢雄太選手。「1本目、雨の路面に合わせきれず抑え過ぎてしまい、マシンの実力を出し切れませんでした。2本目、路面は大きく変わらなかったんですが、しっかりとアクセルを開けれたのが良かったです。前半、区間ベストが出せたのは驚きです」と、赤沢選手は2位を奪取した。
本山選手はTRY2でタイムアップを果たせなかったが逃げ切って優勝、昨季の開幕第1戦の雪辱を晴らすかたちとなった。



BPNクラス
今季から新設されたBPNクラスは、BRとPN各クラスの車両基準に該当しないB車両及び2009年以降にJAF登録されたPN車両で争われる。昨季まではBR4クラスとPN4クラスに区分されていたが、統合されたことでPN2に並ぶ開幕戦最多の15選手を集めた。まさに吉川部会長が語った、競争力を磨くクラスとなりそうだ。
先手をとったのは昨季、JMRC近畿ジムカーナ ミドルシリーズのM-BR4クラスを制して昇格してきた冬野紘彰選手。スバル・インプレッサWRX STIを駆り、いきなり1分11秒774を叩き出した。昨季のPN4王者、大田健太郎選手がランエボⅨで迫るも1分12秒台で届かない。
TRY2も路面状況は変わらずセミウェットで構図も変わらなかった。冬野選手のタイムが頭ひとつ抜きん出てはいるものの、上位勢はコンマ秒差の戦い。北村健選手が1分12秒台を記録すると、続々とタイムアップするスラローマーが現れるが、1分11秒台には届かない。
その冬野選手も緊張からか、TRY2はタイムダウン。最終ゼッケン大田選手のアタックもタイムダウンと不発で2位に終わった。「1本目、前半トップだったんですが、後半路面が濡れていたのでちょっと落とし過ぎました。2本目は前半の路面が濡れていたので、これが精一杯でした」と、大田選手はTRY1の走りを悔やんだ。
続けて「地区戦三連覇を目指しているので、このままでは終われないと思っています。開幕は若い勢いに無難にいったオッサンが負けてしまったんで、次からはオッサンでも負けないところを見せたいですね」と、次戦からの巻き返しに大田選手は意欲を見せた。
逃げ切りに成功した冬野選手は、地区戦デビューウィンの快挙を成し遂げた。「1本目のサブロクが、自分で思っていたよりもずっと良い出来でした。2本目は、他でミスしたことを修正しようと思ったんですが、ターンが決まらずタイムダウンとなってしまいました」と2本の走りを振り返った。
そして「昨年、ミドルシリーズのチャンピオンを獲らせてもらったとはいえ、地区戦メンバーの実力も良く知っていたので、地区戦初参戦で初優勝はとても嬉しいですね。最初はシリーズ表彰で前に出れればいいと思っていたんですが、開幕戦優勝できたので安定した走りができるようになって、チャンピオンを目指したいと思います」と喜んだ。



BC1クラス
BC1は前輪駆動のB・SC車両が対象で、ベテラン勢を中心に争う。スイフトとホンダ・インテグラの対決に、ホンダCR-XとEK9型シビックが加わっている。昨季も毎戦のように勝者が入れ替わった激戦クラスだ。
TRY1はラスト3で大きく明暗が分かれた。まず、昨季ランキング3位だった中嶋敏博選手が、それまで北野智央選手が記録したターゲットタイムを1秒以上塗り替える。しかし、その後に続いた野田太一選手もディフェンディングチャンピオン中山務選手も、共にパイロンペナルティを犯してしまった。
路面コンディションが気になる中で始まったTRY2は、路面状況の変化に一喜一憂することになる。時折霧雨のような雨がちらつき、路面はダンプコンディション。風が強く体感温度は低いがTRY1より路面温度が高く、路面コンディションは車両が走るたびに更新されていく。
次々とベストを更新するスラローマーが現れ、喜多治人選手もタイムを上げて食い下がるが、中嶋選手のトップタイムには誰も及ばない。自ら更新を狙った中嶋選手も気負ってしまったのか、ターンセクションでまさかの失速でタイムダウンしてしまった。
注目の野田選手も中嶋選手に0.3秒差まで詰め寄るも、TRY1でのパイロンペナルティが響いてしまったのか攻め切れず。最終ゼッケンの中山選手にトップタイム更新の期待がかかるが、精彩を欠く走りで下位に沈んでしまった。
昨季に続き開幕戦を勝利で飾った中嶋選手は、「意外と上手くいきました!低温だったこともあり、タイヤのコンパウンドが非常に良かったです。他の人よりも早く2速入って、どんどんアクセルを開けていけました。伊東工業コーナーでちょっといきすぎましたが、そこまでの直線だけでもしっかり差をつけられたと思います」と勝因を分析した。
更に「グリップ感は1本目と2本目で大きく変わらない感じだったんですが、2本目スタートした瞬間、路面が乾いていた時は後続にやられると思いましたが、優勝できて良かったです。今年はシリーズチャンピオンしかないです。全勝優勝を目指します!」と意気込んだ。BC1も昨季同様、熾烈な争いが繰り広げられるだろう。



BC2クラス
後輪駆動のB・SC車両で競うBC2の昨季は、油圧ハンドブレーキを搭載したトヨタMR2を駆る岩崎玲生選手の一強だった。今季の注目は、岩崎選手を誰が止めるかだが、開幕戦の路面はセミウェット。後輪駆動の車両にあって、リアミッドシップで、リアのトラクションに絶対の自信を持つMR2が有利な状況だ。
もちろん、TRY1から岩崎選手が2番手以下を2秒以上突き放すタイムで折り返す。TRY2ではパイロンペナルティを犯してしまったが、誰もトップタイムを更新することはできなかった。まさに王者の貫禄を見せて、開幕戦を制した岩崎選手は「一昨年までのクラスだと、インテグラとスイフト相手のクラスだったんで、BC1クラスに勝ちたいと思っていたんですがFF勢には勝てませんでした」と反省から入った。
続けて「ただ、ヨコハマタイヤさんが再販してくれたコンパウンドがあってくれたおかげで勝てました。とにかく名阪の3月・4月は滅茶苦茶な天候になることがあるので、このタイヤのおかげです。ヨコハマタイヤさんには感謝です」と岩崎選手は語った。常に自らを律する姿勢には、王者の風格を感じた。


BC3クラス
4WDのB・SC車両を駆るスラローマーたちがしのぎを削るBC3で、辰巳浩之選手が会心の走りを披露した。細かいミスはあったものの、ランエボⅨを前へ前へと進める走りで2番手以下に1秒以上の差をつけてTRY1を折り返す。路面状況から考えても、TRY2勝負になることが大方の予想だった。
しかしTRY2が始まると、軒並みベストを更新できないスラローマーが続出する。辰巳浩之選手はタイムアップを果たしたかに見えたが、パイロンペナルティでラスト2に逆転の機会が到来。岡本尚史選手は「2本目やれるだけやりましたが、ブレーキを踏めばアンダー、アクセルを踏めばオーバー(ステア)……どうにもならんでした」とトップタイム更新ならず。最終ゼッケンの石田忠義選手もベスト更新に留まり、TRY2では誰もベストな走りができず。天も味方した辰巳浩之選手が逃げ切った。
昨季、鈴鹿サーキット南コースでの第5戦以来の勝利を飾った辰巳浩之選手は、「去年の最終戦から全く走ってなくて目が追いついていかなくて、操作が後手後手になってしまったんですが、それでもタイムが残ってくれました。2本目になってグリップが上がってくるとは思ったんですが、グリップ感は変わりませんでした。去年が良くなかったんで、今年は良いシーズンにしたいですね。とにかく楽しく走って、結果勝てれば嬉しいです」と、最後はベテランらしく貫禄あるコメントを残してくれた。



2025年JMRC近畿ジムカーナ ミドルシリーズ第1戦
M-2PDクラス
ゼッケン100番台からは、ミドルシリーズに参戦するスラローマーたちの出番となる。M-2PDクラスはオートマチック限定免許でも運転できる、2ペダルのB車両が対象で、ハイブリッドカーやBEV(バッテリーEV)も含まれる。このシリーズで使用できるタイヤも、地区戦と同じ規則に則る。
M-PD2もTRY2は路面が好転したにも関わらず、トップ3のベストはTRY1のタイムと、珍しい結果となった。逃げ切ってシリーズ初優勝を挙げたのは、参戦3季目の平田吉久選手。「タイヤ下ろしたてなので、いつもは突っ込みすぎるところを丁寧にいけたのが良かったですね。逆に2本目は焦って突っ込みすぎてしまったのでタイムを落としてしまいました」と、平田選手は勝因を明かすとともに、TRY2での反省も忘れなかった。



M-BR1クラス
1150cc未満で後輪駆動、あるいは1500cc未満で前輪駆動及び4WDのB車両によって競うM-BR1クラス。トヨタ・ヴィッツ、ダイハツ・コペン、マツダ・デミオなど、軽自動車とコンパクトカーが入り混じる。
GE8型ホンダ・フィットを駆る竹本駿佑選手が、TRY1から地区戦BR1をも上回る1分15秒台の圧倒的なタイムをマーク。TRY2でも竹本選手本人含めて、このタイムを誰も更新することができなかった。
開幕戦を制した竹本選手は、「昨年2勝できたので、これで3勝目になります。久しぶりのジムカーナだったので、落ち着いて走ろうと心掛けました」と、勝因を分析。更に「せっかく開幕戦優勝したので、このクルマでチャンピオンを獲るという夢に向けて、今後も頑張っていきたいです」と決意を明かした。



M-BR2クラス
前輪駆動のB車両によって争うM-BR2クラスでは四国出身のアバルト595使い、津田耕市選手が躍進した。TRY1は1分15秒台を中心に争う中、ひとり1分14秒台を記録してトップで折り返す。TRY2では、古川雅崇選手が日産・マーチスーパーターボを駆って一気にタイムを伸ばすが惜しくも及ばず。津田選手はトップタイム更新ならずもシリーズ初優勝を飾った。
「難しいコースでした。2本目は気合が入りすぎてダメでした。アバルト595はタイヤがあまりなくて、初めてのタイヤを入れてみたんですがオーバーでコントロールが難しかったですね。次ミドル出て、地区戦にステップアップしようとも考えています」と、津田選手は先も睨んだ。



M-BR3クラス
後輪駆動のB車両が競うM-BR3クラスも、TRY1のタイムで上位勢の順位が決まる展開となった。トップタイムを記録したのはND型ロードスターを駆る柴谷匡彦選手。S2000をドライブする最終ゼッケンの焼野悠太選手も4番手と及ばない。
TRY2では路面が乾いたにも関わらず上位4選手がベストを更新できず、柴谷選手が優勝した。「1本目はアンダーステアを出してしまってダメかと思ったんですが、クルマから降りたら皆がエラい褒めてくれたんで驚きました。逆に2本目は慎重になりすぎてダメでした。グリップ足りない感じもありましたね」と自己評価した。
優勝については「2014年で優勝して以来、11年ぶりの優勝です。今年はスマートにいきたいですね」と明かした柴谷選手は今季ミドルを追いかけ、2026シーズンに地区戦へのステップアップを狙うそうだ。



M-PN2クラス
1600cc未満で2WDのPN車両が対象のM-PN2クラスは紅一点、みさき選手が素晴らしい走りで競り勝った。このクラスは全員TRY1のタイムがベストとなったが、みさき選手は2位の谷智仁選手を0.016秒差で抑えた。
開幕ダッシュを決めた、昨季ランキング3位のみさき選手は「1本目、父が先にチャンピオンシリーズで走っていたところを見て勉強できました。父との勝負にも勝てて満足です。シリーズチャンピオン目指してがんばります」との言葉どおり、ダブルエントリーで地区戦PN2に挑んだ父・土手啓二朗選手のタイムを上回る、うれしい一勝を挙げた。



M-PN3クラス
1600cc以上で2WDのPN車両が集う、新設されたM-PN3クラスでは、TRY1でスムーズな走りに徹した岩井雅勝選手が1分11秒台と、圧倒的なトップタイムをマーク。TRY2に入っても本人を含めて誰一人トップタイム更新は果たせず、岩井選手が逃げ切って初ウィナーとなった。
「1本目はラッキーで路面が一番良い状態で、条件の良い中で走れたのが良かったです。2本目は1本目に比べて少しウェットが残っていたので、1本目の方が路面は良かったですね」と岩井選手は路面について語った。続けて「去年の11月にクルマを乗り換えることになって、皆のおかげで無事、開幕戦に間に合いました。今シーズンは地区戦へのステップアップも見据えながら走りたいと思っています」と周囲への感謝と、今季の展望を語った。



M-BPNクラス
M-BPNクラスは昨季までのM-BR4に代わる新クラス。車両区分は地区戦BPNと同じだ。
TRY1はインプレッサWRX STIを駆る齊藤大選手が記録した、1分14秒499がトップタイムで折り返し。TRY2でランエボⅨを操る西野英樹選手が0.31秒差まで追い詰めるが、TRY1でのパイロンペナルティの影響か、難攻不落のコースを攻め切ることができなかった。
優勝した齊藤選手は「1本目は自分が走るときだけ雨が止んで、運が良かったです。パイロンターンは大回りになってしまいましたが、他のセクションはそこそこ良く走れたのではないかと思っています。2本目は路面が濡れていた部分があり、限界を超えてしまいました」と振り返った。スポット参戦ながら勝利を収めたそうで、今季の予定は未定とのこと。継続参戦して新クラスを盛りあげてほしいところだ。



競技長も務めたLAZY W.Sの西山純一氏は、「開幕戦からこれだけ多くのエントラントの皆さんに集まっていただきありがたく思います。また、オフィシャルのみなさんもいつもどおりキビキビと動いてくれて無事に終わることができました。そのひと言に尽きます」と、開幕戦を振り返った。
そして「全日本でも地区戦でも皆でつくるイベントだと思っています。とにかく精一杯やらせてもらうのがポリシーです。オフィシャルの皆さんがそれについてきてくれていることに感謝です」と感謝の言葉を続けた。
また、大会終了後には恒例のジャンケン大会を開催。景品は全日本第2戦の招待券やタイヤ1セットなど垂涎の内容が並んだ。



フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部