恒例のJAF-F4 & S-FJ日本一決定戦、2021年は鈴鹿で開催! 今シーズンもよもやの展開となる、白熱のレースを展開!!

レポート レース

2022年1月27日

レースシーズンの終わりを告げる、年末恒例の大一番「F4 & S-FJ日本一決定戦」が、2021年は12月11日〜12日に鈴鹿サーキットで開催され、両レースともに予想を超えるドラマチックな展開となった。2日間ともに天候に恵まれ、雨によって水が刺されずに済んだのは何よりだった。

F4 & S-FJ日本一決定戦
(2021鈴鹿クラブマンレース Final Round内)

開催日:2021年12月11日~12日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主 催:チーム淀、SMSC

 鈴鹿サーキットとツインリンクもてぎで隔年開催される「日本一決定戦」、2021年は鈴鹿が舞台。JAF-F4の一戦には20台がエントリーした。ポールポジション(PP)は出場した6戦すべてで優勝し、チャンピオンになったばかりの元嶋成弥選手が獲得。

「もうちょっといけそうな感触もありましたが、ちょっとギヤが落ちにくくなったので、やめました。トラブルが出なければ、この後も!」と語っていた、2020年のスーパーFJ日本一に輝いたドライバーはミッションに不調を抱えながらも、2番手のハンマー伊澤選手にコンマ8秒の差をつけていた。

 3番手は金井亮忠選手で、4番手は鈴木智之選手、そして5年ぶりのレース復帰となった加藤智選手が5番手を獲得、速さが健在であることを見せた。

 セミファイナルは8周での争い。スタートに元嶋選手が出遅れ、逆にロケットスタートを決めてトップに立ったのは加藤選手だった。だが、トップを奪い返したのも速攻。加藤選手のヘアピンでのミスを逃さず、スプーン進入で元嶋選手はトップに戻ると、そのまま逃げていくかと思われた。しかし、直後のバックストレートで2台が絡むアクシデントが。セーフティカーが導入され、2周先導した後、赤旗が出されてレースは中断。

 リスタートも問題なく決めて、元嶋選手はトップを快走。その後方ではシケインで加藤選手に金井選手が迫るが、並んだ直後にブレーキをロックしてしまい、逆にハンマー選手の先行を許していた。その3台が最後までテール・トゥ・ノーズでの戦いを繰り広げる中、元嶋選手は8秒差をつけてゴール。

「スタートは、ずっと空回りしていました、タイヤが(笑)。でも焦ることなく、タイム的にも出ていたので、どこかで抜こうと思って。ちょうどヘアピンで(加藤選手が)ミスしていたので、スプーンで仕掛けました。このままトラブルが出ないことを祈ります!」と元嶋選手。

チャンピオン獲得の好調そのままに、予選とセミファイナルを制した元嶋成弥選手(Kデンタルオフィス★MYST)だったが、日本一決定戦の女神はファイナルでチャンピオンに試練を課した。

 ファイナルは10周での争いとあって、一体どれだけの差をつけるか注目された元嶋選手は、今度はスタートも完璧に決め、1周目を終えた時点で、もう1秒4差。引き続き加藤選手とハンマー選手、金井選手が三つ巴の2番手争いを繰り広げる中、ぐんぐん引き離していく。6周目には、もはやリードは10秒を超える。

 そんな中、7周目のデグナーでハンマー選手が加藤選手を抜いて2番手に浮上したが、その後に失速。「2番手に上がった途端にギヤがおかしくなって、最後は6速にスティックしてしまって」ハンマー選手はピットに戻ってリタイアとなってしまった。

 そして8周目が終わると、なんと元嶋選手もピットに戻ってきたではないか!「ベルトが切れて水温上がったので、帰ってきました。こんなのありますか、普通。最悪です」と、恐れていたトラブルがファイナルの、まさか残り2周というところで出ようとは……。

 これでトップに加藤選手が浮上。最後は金井選手を振り切って、久々のレースで優勝を飾ることとなった。「ちょっとびっくりです!ただただ親孝行のために5年ぶりにレース出て、ええ、80過ぎた親父が『一度ぐらいお前のレース、見ておけばよかったな』って言うもんで出て、こんなに美味しい思いができるなんて、ちょっとびっくりです」と加藤選手。

フロントローからスタートした加藤智選手(FEEL・TAKEFIRST)は久しぶりのレースでも衰えていない速さを見せつけて、バトルを繰り広げながらのJAF-F4初優勝と、最高のかたちで親孝行を成し遂げた。

 2位は金井選手で、3位は鈴木選手。そして、早坂公希選手に続いて5位でゴールしたのは、TCRジャパンで二冠、FIA-F4のインディペンデントカップ、そして ダブルタイトルのもてぎ・菅生ツーリングカー地方選手権 も制しているHIROBON選手。セミファイナルのアクシデントでリタイアを喫し、最後尾スタートから15台抜きに成功。後方でのバトルが続いたとはいえ、元嶋選手に匹敵するほどの規格外のレース運びは「流石!」の一言だった。

JAF-F4日本一決定戦ファイナルの表彰台には左から2位の金井亮忠選手、優勝した加藤選手、3位の鈴木智之選手が登壇した。
ジェントルマンクラスの表彰台には右から、このクラスからエントリーし、ダブル優勝となった加藤選手、2位には総合でも4位に入った早坂公希選手が登った。
2021年も数多くのレースで優勝争いを繰り広げて、複数のシリーズでチャンピオンを獲得しているHIROBON選手(Rnsports制動屋KKZS)。最後尾スタートから総合5位、ジェントルマンクラス3位まで挽回した。

 もてぎで開催された2020年は新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響もあり、37台のエントリーに留まったスーパーFJだったが、今年は48台のエントリーがあり、サーキットはようやく活気を取り戻した感もあった。

 例年どおり予選と第1レグは2グループに分けられ、Aグループでは鈴鹿選手権と岡山国際選手権の二冠王、岡本大地選手が鈴鹿選手権3位の上野大哲選手を抑えて予選トップ。そしてBグループでは鈴鹿選手権2位の佐藤巧望選手が予選トップで、髙口大将選手が続くという、鈴鹿選手権を主戦場にしているドライバーたちが上位を占めた。

 6周で争われる第1レグ、Aグループでは予選で僅差だった、岡本選手と上野選手が早々と後続を引き離して、激しくトップを争い合う。一時は1秒近く差を広げた岡本選手だったが、後半のペースは上野選手が上回り、岡本選手がペースを合わせる余裕を見せていたかと思われた。

 しかし、実際には「いや、ずっと全開でした。レースペースは上野くんの方が速そうなので、スリップ着かれたら厳しいかも」と正直な胸の内を打ち明けた。3位は森山冬星選手が獲得した。

第1レグ、Aグループは予選トップの岡本大地選手(FTK・レヴレーシングガレージ)が予選からトップの座を譲らずフィニッシュ。レースペースに不安を抱えながらも先ずは第1レグを制して、念願の日本一に前進した。
第1レグ、Aグループのトップ3は右から3位の森山冬星選手、2位の上野大哲選手、1位の岡本選手はファイナルのPPも獲得した。

 Bグループでは、佐藤選手が終始独走。髙口選手はスタートに出遅れ、1周目を終えた時点では4番手だったが、3周目に八巻渉選手を、そしてファイナルラップで高木悠帆選手を抜いて、2番手に返り咲いた。佐藤選手は「後ろとの差を広げられはしたんですが、Aグループの方が全体的に速かったので、改善の余地はあるかなと思っています」とあらためて気を引き締めていた。

Bグループの第1レグもAグループと同じく、予選トップの佐藤巧望選手(MYST.KKS-II.制動屋.佐藤歯科)がフィニッシュまでその座を譲らずに制した。
Bグループの第2レグは右から2位の髙口大将選手、1位でファイナルのフロントローを獲得した佐藤巧望選手のトップ2となった。

 第1レグの合計タイムに優ったことから、10周で争われるファイナルでアウト側グリッドにAグループ勢が並び、PPを奪ったのは岡本選手。その脇にBグループ勢が並んで、フロントローは佐藤選手だ。シーズンの締めくくりとなるレースとあって、緊張感が漂う中、岡本選手は好スタートを切って1コーナーへのホールショットを決める。佐藤選手、上野選手の順で続くも、スプーンで2番手が入れ替わる。

 後続のバトルもあって、1周を終えた段階で早くも1秒6もの差をつけ、「逃げ切れる」と思ったという岡本選手。だが、土曜日からの路面変化が持ち前の旋回速度の高さを鈍らせ、徐々に上野選手が差を詰めていく。折り返しとなる6周目、1コーナーで上野選手が横に並ぶも、岡本選手はクロスラインをかけて逆転を許さず。

 その後もピタリと背後に着け、チャンスを待ち続けた上野選手。その時は9周目の1コーナーで訪れた。再び岡本選手に並んで、しっかりガードを固めて、今度は完全に前に出る。

 その周は後続にも大きな順位変動があった。3番手を争い合っていたのは佐藤選手と髙口選手。が、その激しさゆえに八巻選手、ファステストラップを記録した直後の居附明利選手も近づけていた。そして髙口選手が前に出た直後のシケインで3台が並んで飛び込んで、接触。八巻選手が先に立ち上がり、続いたのは佐藤選手。居附選手は姿勢を乱して、大きく順位を落としてしまった。

 ファイナルラップでは動きはなく、上野選手がトップでチェッカーを受け、5回目の日本一決定戦に挑んだ岡本選手はまたも勝てず2位。そして髙口選手が表彰台の一角を掴んだ。「岡本選手がクリーンなバトルをしてくれたので、僕も安心して抜きにいけました。この2年間、苦しい戦いも続いていましたが、日本一で勝つことができて本当に嬉しいです!」と目に涙を浮かべながら上野選手は語ってくれた。

 4位は八巻選手で、5位は佐藤選手、そして6位は森山選手が獲得し、予選に続いて鈴鹿勢が上位を独占した日本一決定戦となった。2022年は久しぶりに富士スピードウェイが舞台になることを、ジャパンスカラシップシステムの畑川治理事が明かし、楽しみが増えそうだ。

2021年の鈴鹿選手権では第3戦のレース1で優勝も挙げた 上野大哲選手(SACCESS RACING ES)。4度目のスーパーFJ日本一への挑戦は見事なオーバーテイクも見せて、ついに頂点に輝いた。
スーパーFJ日本一決定戦ファイナルでトップ10を獲得し、表彰された選手のみなさん。優勝 上野選手、2位 岡本選手、3位 髙口選手、4位 八巻渉選手、5位 佐藤選手、6位 森山選手、7位 高木悠帆選手(欠席)、8位 大木一輝選手(欠席)、9位 佐藤樹選手、10位 三島優輝選手。
ファイナルで最も順位を上げた選手が受賞するジャンプアップ賞は、最後尾46番手スタートから30位、16位も順位アップを果たした池内比悠選手(アルビMAKEWINNERGIAED)が獲得した。
36歳以上のドライバーが対象の、ジェントルマン賞を獲得したみなさん。右からジェントルマン3位の碓氷ツヨシ選手、ジェントルマン2位の太田浩選手、そして2020年に続きジェントルマン1位を獲得した吉田宣弘選手は、2010年と2013年のオートポリス選手権王者だ。
日本一決定戦の表彰と同時に、2021年シーズンの表彰も行われた。5つの地方選手権チャンピオンのみなさん。右からオートポリス選手権王者の益田富雄選手、鈴鹿選手権と岡山国際選手権を制した岡本選手、筑波 / 富士選手権王者の野島遼葵選手(代理)、もてぎ・菅生選手権王者の佐藤選手。
全国のS-FJでのレースが対象となる、S-FJジャパンチャレンジのトップ3を獲得したみなさん。右から3位の伊藤慎之典選手、2位の髙口選手、最優秀賞の岡本選手は鈴鹿と岡山国際も合わせて三冠王となった。
ジェントルマン賞の3位を受賞した太田選手には、長年に渡るスーパーFJへの挑戦と貢献を称えて、特別賞も贈られた。

フォト/遠藤樹弥 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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