178台ものエントリーを集めた鈴鹿南での一戦は、各クラスで白熱の王座争い!!

レポート ジムカーナ JAFWIM

2023年8月1日

2023年JAF近畿ジムカーナ選手権は全7戦中6戦を、2023年JMRC近畿ジムカーナ ミドルシリーズは全6戦中5戦を奈良県に建つ名阪スポーツランドで開催する近畿地区。唯一の地区外での開催地、三重県に建つ鈴鹿サーキット南コースで、2023シーズンも佳境にさしかかる一戦を迎えた。両シリーズで王座を争う面々がしのぎを削る戦いになることが予想されたが、群雄割拠の様相を呈した。

2023年JAF近畿ジムカーナ選手権 第5戦
2023年JMRC近畿ジムカーナ チャンピオンシリーズ第5戦
2023年JMRC全国オールスター選抜 第5戦
2023年JMRC近畿ジムカーナ ミドルシリーズ第6戦
淀ハイスピードジムカーナ

開催日:2023年7月23日
開催地:鈴鹿サーキット南コース(三重県鈴鹿市)
主催:チーム淀

 2023シーズンはJAF全日本ジムカーナ選手権の第8戦が鈴鹿南で開催されることもあり、中部地区を筆頭に中国地区や関東地区からも参戦。また、この地が舞台の全日本自動車学生連盟の大会が8月に開催ということもあり、自動車部員の学生も参戦してきた。

 そして、集まった台数は今季の近畿では最多の178台! そんな一戦は梅雨明け宣言とともに快晴の下、スタートすることになった。当初、予想最高気温は33℃だったのが、鈴鹿南は路面の照り返しもあり35℃を超える酷暑。ここ特有の海風が涼しさを運んでくれるものの、路面温度はうなぎ登りで60℃を優に超えた。

猛者たちの車両で埋めつくされたパドック。この一戦は王座を争う近畿勢の他に、他地区や学生ドライバーの遠征組も参戦して178台がエントリー。夏本番到来の晴れた空の下、終始ドライコンディションで競技は行われた。

 本大会のコース制作は競技長を務め、全日本ではB・SC1クラスに参戦する安木美徳選手。「近畿だと名阪が主戦場となっているので、名阪では作れないハイスピードなコース設定としました。南コースなのでアレンジがあまりできないんですが、コース上にパイロンを置くことでレコードラインを潰したりしています」とのことだ。

 さらに「特に奥のヘアピンにひとつ置いたパイロンは、きちんとスピードを落として進入すればリズムを作りやすくなると思うんですが、しっかり回ってくれば速くかつスムーズに抜けられると思います。他にも中央のスペースに配置したパイロンはバンクの切り替わるところに置きました。サイドを引かなくても行けるかもしれないけど、サイドを引いた方が速いかもしれないという微妙な配置もポイントです」と制作の意図と罠について解説。

 また「昨年の春に全面舗装したこのコースですが、1年ちょっと経ってブレーキングポイントあたりの路面が随分荒れ始めています。そのためレコードラインと思われていたラインが正解とは限らなくなっているのもポイントですね」と路面の状況についても語ってくれた。

2023年JAF近畿ジムカーナ選手権、2023年JMRC近畿ジムカーナ ミドルシリーズともに王座争いが大詰めとなったこの一戦。『淀ハイスピードジムカーナ』の名に恥じない、ハイスピードかつ激しい荷重移動を求められるレイアウトで競われた。

2023年JAF近畿ジムカーナ選手権 第5戦

BR1クラス

 BR1クラスでは今季2勝を挙げている太田雅喜選手を、同じダイハツ・カプチーノを駆るよこ山弘之選手とトヨタ・ヴィッツを操る玉木航選手が1勝ずつ挙げて追いかけている。

 トライ1からトップタイムをマークしたのは、ランキング2番手のよこ山選手だった。最短距離を通るラインで着実にタイムを残す走りで、2番手の玉木選手を約0.6秒引き離す。最終ゼッケンの太田選手に注目が集まるが、ターンセクションでも車両を止めきれず、精彩を欠く走りで3番手。

 トライ2勝負になるかと思われたが、玉木選手をはじめ、タイムアップこそ果たすもののトップタイム更新はならず。よこ山選手は生タイムこそトップタイムを更新するものの、パイロンペナルティに沈み、トライ1でのタイムが決勝タイムとなった。

 優勝したことで、太田選手に1ポイント差まで迫ったよこ山選手は「ここでの勝利は絶対に欲しかったのでとても嬉しいです。残り2戦、まだまだ腕が足りないのでひとつでも前にいけるように頑張りたいと思います」とコメントを残した。

BR1クラスで今季2勝目を挙げたよこ山弘之選手(YH木村自OSカプチーノTLB)は「仕事の前にミッションを下して仕上げる作業をしてきた甲斐がありました」と勝利のポイントになったメインテナンスを明かしてくれた。
軽自動車も活躍しているBR1の上位3選手。左から2位の玉木航選手(ADVAN来夢ヴィッツ)、優勝したよこ山選手、3位の太田雅喜選手(ADVAN☆ギッピーカプチーノ)。

BR2クラス

 すでにミドルシリーズのBR2Mクラスでチャンピオンを確定させて、地区戦との二冠を狙う張靖遠選手と、第1戦で優勝を飾った寺谷正樹選手の一騎討ちとなっているBR2クラス。第4戦までのランキングでは寺谷選手が13ポイント差で前をいくものの、第2戦と第3戦で優勝を飾っている張選手が有利に王座争いを展開している。

 そんなふたりだが、トライ1は張選手が先手をとった。鈴鹿南の経験が少ない張選手は手探りの走りで安全マージンをとったのが良かったのか、着実にトップタイムを残す。一方、寺谷選手は強いアンダーステアに苦みながら2番手タイムと、ふたりの差は1秒以上開いた。

 そして運命のトライ2。他の追従を許さない張選手はトライ1で攻め切れていないポイントを修正。特にS字セクションでは縁石を積極的に使い、最短距離をトレースする。路面温度が上昇する中、それでも自身のベストタイムを0.9秒近く更新。「後半のスラロームの飛び込みもしっかり突っ込めたし、Sタイヤみたいな動きができました」と自身の走りを振り返った。

 一方、トライ1で苦戦した寺谷選手はリアセクションの足回りのセットアップを変えて、トライ2をアタック。しかし、張選手のタイムはおろか、自身のタイムを更新することもできず撃沈。これで張選手が今季3勝目を挙げ、チャンピオンに王手をかけた。

 これで4戦連続2位となった寺谷選手は「あと残り2戦2勝しないといけないんですが、刺客を送り込みたいと思います(笑)! 2本目はフロントが入っていかなくて、どうにもなりませんでした。残り2戦、やれるだけやります」と次戦以降に目を向けた。一方、優勝した張選手は「3勝目でチャンピオンにしっかり近づいたと思います。あと残り2戦も頑張ります」と二冠に向けた最後の詰めに意気込んだ。

BR2クラスを制したのは「1本目はセーブしすぎてしまったところがあったんですが、2本目はしっかり詰めるところを詰めれたので良かったですね」とライバルが不調の中、トライ2でもタイムアップを果たした張靖遠選手(FA藤インテグラDLクスコWM)。チャンピオン確定への大きな1勝を挙げた。
BR2の上位3選手。左から2位の寺谷正樹選手(ADVAN速心μWZDシビック)、優勝でチャンピオンに王手をかけた張選手、3位の稲上佳彦選手(グルSミラージュ)。

BR3クラス

 クラスで唯一2勝を挙げ、単独首位を走るホンダS2000を駆る間瀬戸勇樹選手と、1勝ずつを挙げているNA型マツダ・ロードスターを操る朝原崇選手、トヨタMR2の佐藤英也選手が間瀬戸選手を追いかけるBR3クラス。

 パワーに劣るNA型ロードスターでは不利と思われた朝原選手だったが、トライ1で2番手以下を2秒以上突き放すターゲットタイムをマークする。しかし、最終ゼッケンの間瀬戸選手が朝原選手の独走を許さずトップタイムを更新。トライ2では、梅雨の明けた鈴鹿南の気温は上がる一方。路面温度もとうとう60℃を超えタイムアップが厳しくなってきた。

 このコンディションでは誰もトップタイムを塗り替えることはできず、「午後に気温が上がることは予想できていたので、1本目勝負になると思い1本目から攻めていきました。2本目はパワーダウンもあるんですが、前半区間良かったんですが後半タレてしまって……。残り2戦も全部勝てるように頑張ります」と、トライ1のタイムで間瀬戸選手が今季3勝目を獲得した。

 一方、「この大会、ロードスターで2位に入れるとは思ってもいませんでした」と、2位に入ったことで首の皮一枚、チャンピオン獲得の可能性を残した朝原選手。さらに「佐藤選手が慣れない車両で参加したのもあって、この順位に入れたと思っています。残り2戦、なんとか間瀬戸選手を焦らすことができるような走りをしたいですね」と次戦以降への意気込みを語った。

BR3クラスは「最初のパイロンターンが上りで回しきるのがとても難しかったので、そこを回せたのが良かったですね」とトライ1から勝負を賭けた、ランキングトップの間瀬戸勇樹選手(シューS+AZUR☆S2000)が制した。
BR3の上位3選手。左から2位の朝原崇選手(YH DXL e’Tロードスタ)、優勝した間瀬戸選手、3位の中村寛選手(ウィザードカートップRX-7)。

BR4クラス

  BR4クラスは第4戦まで2勝を分け合っている、日野良一選手と大田健太郎選手の一騎討ちとなっている。第5戦でもこのふたりが別次元の速さを見せた。前走の大田選手がトライ1の中間タイムから2番手以下を1.5秒以上突き放す快走を見せてトップに立つと、負けじと日野選手が大田選手のタイムを塗り替えた。

 トライ2では、大田選手が積極的に縁石に乗り上げて攻めるも日野選手のタイムを更新できず、日野選手が今季3勝目を先に手にした。「集中しすぎて自分の走りを覚えてないんですが、1本目縁石に乗りすぎてしまったのを修正しました」と、さらにタイムアップしたトライ2の走りを振り返った日野選手。最終戦まで予断を許さない接戦が続きそうだ。

BR4クラスでランキングトップを走る日野良一選手(FA猫ランサー8YH SSM)は、両トライともトップタイムをマーク。第2ヒートはタイムダウンを契して2位となった、王座を争う大田健太郎選手(DLチャレンジャーランサー)との差を広げた。
BR4の上位3選手。2位の大田選手、優勝した日野選手、3位の福本真隆選手(フジイEngインプレッサF)。

Lクラス

 開幕二連勝の後は優勝が遠ざかっている、三菱・ランサーエボリューションⅨを駆る辰巳知佳選手と、フォルクスワーゲン・ゴルフⅥ GTIを操る砂田光恵選手が2ポイント差で激戦を繰り広げているLクラス。鈴鹿南を得意とする辰巳選手が、トライ1から圧倒的な速さを見せつけた。

 2番手の砂田選手を3秒以上突き放してトップで折り返した辰巳選手だったが、トライ2はターンセクションでミスを犯すも、トライ1のタイムで圧勝。「淀さんのお陰で優勝できました。ここ2戦、雨が絡んでしまっていい成績が残せていなかったんですが、これでチャンピオンに王手をかけられたので、今年もチャンピオン目指して頑張ります」と辰巳選手は意気込んだ。

女性ドライバーがしのぎを削る、Lクラスの辰巳知佳選手(BS YOUオートSランサー)は「ここは好きなんで思いっきり走れて良かったです」と鈴鹿南で両トライともに制する快走を見せて2位以下を寄せつけず、三連覇に向けて大きな今季3勝目を挙げた。
Lクラスの上位3選手。左から2位の砂田光恵選手(ADVAN MOTULゴルフ)、優勝でチャンピオンに王手をかけた辰巳選手、3位に入った学生ドライバーの早川杏樹選手(慶応義塾女子試合車シビック)。右端はこの競技会を主催した、淀レーシングクラブ(チーム淀)の淀野泰弘代表。

PN1クラス

 21台のエントリーを集めたPN1クラスには、6月に鈴鹿南で開催された2023年JAF中部ジムカーナ選手権の第5戦が雨だったこともあり、全日本の第8戦を想定した中部勢や中国勢が参戦してきた。ここまで3勝を挙げ、王座争いをリードしているベテランの奥浩明選手だが、この他地区勢の参戦で王座争いが難しくなってしまった。

 トライ1勝負になる、と読んだエントラントがファーストアタックから果敢に攻めの姿勢を見せる。まずターゲットタイムを樹立したのは中部勢の全日本ドライバー、渡邉將選手だった。中間を50秒3で抜けると後続を1秒近く引き離した。しかし、このタイムに触発されたのか、後半ゼッケン勢が続々と渡邉選手の中間タイムを上回ってくる。しかし、フィニッシュタイムでは渡邉選手が上回り、ターゲットタイムは更新されない。

 その流れを打ち破ったのは渡邉選手と同じ中部全日本勢の鰐部光二選手だった。中間タイムで0.03秒渡邉選手を上回ると、後半セクションで無駄のない走りを見せて、0.171秒差でトップタイムを奪い取る。

 さらに、この中間タイムを更新したのは最終ゼッケン、近畿勢の奥選手。しかし、後半セクションで車両をコントロールしきれず、3番手にとどまった。

 他地区勢に勝利を持っていかれまいと、近畿勢は是が非でもタイムを上げたいトライ2。しかし、ここでタイムを上げたのは中国勢の全日本ドライバー、中田匠選手だった。鰐部選手には僅かに届かなかったものの、2番手のタイムをマークする。鰐部選手は最初のパイロンセクションでまさかのパイロンタッチ、後に控える近畿勢の走りを見守ることに。

 しかし、古田公保選手は5番手に終わり、近畿勢最後の望みを託された奥選手も、いきなりスタート直後のターンセクションでペナルティ。王座を争う大事な一戦は、他地区勢の表彰台独占という結果になった。

「中部地区の地方選手権が鈴鹿で行われたときが雨だったので、近畿の選手に胸を借りるつもりで全日本の練習がてらきたんですが、思い通りの走りができました。全日本で6位以内に入れるように頑張りたいと思います」と優勝した鰐部選手。

 一方、4位入賞でチャンピオンを確定させた奥選手だったが、「今度から僕は中部も中国も行きますよ!勉強させてもらいに行きます!!残り2戦も得意な名阪で頑張りたいと思います」と、さらなる奮起を誓っていた。

PN1クラスに参戦した全日本ドライバー、鰐部光二選手(DLエナペワコーズロードスター)のトライ2は「路面温度も60℃に迫って『これは攻めていかんとあかんぞぉ!』っと気合を入れていったら、パイロンに触ってしまいました」とタイムダウンを喫するも、トライ1のタイムで勝利を挙げた。
PN1二連覇に王手をかけて臨んだ奥浩明選手(DLエナぺDXLロードスターM)はトップ3には入れなかったものの、近畿勢最上位の4位を獲得してチャンピオンを確定させた。
PN1の上位6選手。左から4位でチャンピオンを確定させた奥選手、2位の中田匠選手(DLクスコWmJTロードスター)、優勝した鰐部選手、3位の渡邉將選手(AZURマキタDLロードスター)、5位の古田公保選手(505ロードスター)、6位の山村一真選手(FaμKCSロードスターDL)。

PN2クラス

 PN2クラスには、関東地区から大多和健人選手と鈴木勇一郎選手が参戦。毎戦、勝者が変わる超激戦クラスとなっており、誰が2勝目を挙げるかで王座争いの行方が大きく変わる。

 トライ1でターゲットタイムをマークしたのは、全日本での優勝経験を持つ大多和選手。トライ2勝負になることが予想されたが、細かいミスが目立つ選手が多く近畿勢は苦戦し、王座争いとは関係ない関東勢がのびのびとした走りを見せた。鈴木勇一郎選手が、大多和選手のトライ1でのタイムを1秒以上更新することに成功。大多和選手はターンセクションで躓いてしまい中間タイムで後れをとると、そのタイムを最後まで挽回することができずに2位でフィニッシュ。鈴木勇一郎選手がジャイアントキリングを成し遂げた。

「今日は先輩の大多和選手と直接対決をしにきました!1本目はちょっと攻め切れないところがあったんですが、2本目にタイヤがもってくれたのが良かったですね。次は全日本の会場でちょっとでも追いつけるように頑張ります」と、喜ぶ鈴木勇一郎選手。それを受けた大多和選手は「負けちゃいましたねぇ~。縁石乗れなかったのが敗因ですかね。とりあえず、地元に戻ったら同じクラブの鈴木君をコテンパンにしてやろうと思います」とコメントを返した。

PN2クラスでは「全体的に突っ込みすぎなのを改善したのが良かったです」と、トライ2で1秒以上タイムアップさせる走りを見せた鈴木勇一郎選手(熊王AZURマキタGR86DL)が逆転で制した。
PN2の上位4選手。左から2位の大多和健人選手(ワタナベ自動車カモネギGR86)、優勝した鈴木勇一郎選手、3位のたけだあきひと選手(チャレ・ITO・GR86)、4位の鎌尾邦彦選手(ATIKスイフト)。

PN3クラス

 PN3クラスの王座争いは、すでに3勝を挙げている福永隆一選手を、胸元貴大選手と第1戦で勝利を挙げている江島英哉選手が追いかけている。この一戦はトライ1から、そんな3人の激しい争いで始まった。

 まずトップタイムをマークしたのは江島選手。ターンセクションでタイムを削り取り、中間タイムでもひとり50秒台をマークする。続くランキング2番手の胸元選手は、江島選手には1秒弱届かず3番手。

 最終ゼッケンの福永選手は、奥のヘアピンでテールスライド……。中間でも江島選手に0.3秒及ばなかった福永選手は、その差を詰めることができずにフィニッシュ。トップは江島選手、2番手に福永選手、女性ドライバーのかつこ選手が3番手に入り、胸元選手は4番手の順で折り返すことになる。

 そして勝負のトライ2。路面温度はこの日最高の60℃超えをマークすると、多くの選手がタイムダウンを余儀なくされる。しかし、この中で自身のタイムを更新したのは胸元選手だった。中間タイムでこそ後れをとったものの、後半で巻き返しを図る。しかし、前半セクションの遅れを取り戻せず、3位となった。

 結局、トライ1のタイムで江島選手が逃げ切りに成功。「なんとか福永選手に待ったをかけられました。でも、次は名阪なんで……。僕も浮き沈みが激しいんでなんとか勝負できればと思っています」とコメントした江島選手。今季2勝目を挙げ、残り2戦での逆転チャンピオンに賭ける。

PN3クラスの江島英哉選手(YHFIGURE86)はトライ1で叩き出したタイムで、第1戦以来となる優勝を達成。この一戦では2位に終わった福永隆一選手(ダンロップYOUロードスター犬)を、ランキング2番手で追う王座争いに踏みとどまった。
PN3の上位3選手。左から2位の福永選手、優勝した江島選手、3位の胸元貴大選手(DL来夢S+BRZ)。

PN4クラス

 PN4クラスでは、ここまで3勝を挙げて圧倒的な速さを見せつけている西川佳廣選手が、いち早くチャンピオンを確定させた。トライ1から西川選手がトップタイムをマークし、約1秒差がつくも暮部雄一郎選手が食らいつく。トライ2は路面温度が上がったが、タイムアップ合戦となった。ここでも西川選手が1分11秒49でトップタイムを更新し、怒涛の4連勝を飾った。

「2本目は児玉選手と暮部選手が追い上げてくるのは分かっていたので、とりあえず1本目タイムが出ていたのもあって、1本目ミスしたところを修正しました。あと2勝挙げて満点チャンピオン目指して頑張ります」と西川選手は残り2戦を見据えた。

「1本目からミスなく走ろうと思い、しっかり走れたのが良かったですね」と語ったPN4クラスの西川佳廣選手(DLFTチャレンジャーランサー)は2トライともトップタイムをマークする完勝で、初の近畿地区戦チャンピオン確定に華を添えた。
PN4の上位3選手。左から2位の小玉知司選手(アルファラックランサーDL)、優勝でチャンピオンを確定させた西川選手、3位の暮部雄一郎選手(DLCMSCランサー)。

SB1クラス

 ここまでランキングトップの藤林伸吉選手と、追いかける大原秀樹選手がそれぞれ2勝ずつ挙げているSB1クラスでは、まずは大原選手がスタートする。しかしこの暑さからか、後半に近づくほど走りが乱れていく大原選手は、パイロンペナルティを喫してしまう。一方、藤林選手は安定した走りを見せて着実にタイムを残し、1分14秒014をマークしてトップでトライ1を折り返す。

 タイムアップが厳しいトライ2だったが、大原選手は慎重な入りでパイロンをクリアしていく。トライ1とうって変わり、プレッシャーのかかる中でもタイムをしっかり残してトップタイムを0.108秒更新。最終ゼッケンの藤林選手は自身のタイムを更新できず、大原選手が先に3勝目を挙げた。

「3勝目がなんとか挙げれて良かったです。実は名阪は苦手なコース……。特に雨だと藤林選手がめちゃくちゃ速いので、あとは天気にお願い、という感じですね。」と語った大原選手は残り2戦、一戦も落とせない闘いが続く。

「開幕2戦は車両の修理が間に合わず欠場したんです」と今季は出遅れてしまったSB1クラスの大原秀樹選手(TLB軽協久與カプチーノ)。戦線復帰後は負け無しの三連勝を果たし、猛烈な追い上げを見せて王座争いを繰り広げている。
軽自動車による優勝争いとなったSB1の上位3選手。左から2位の藤林伸吉選手(TLBいのがにアルト@朋茶工房)、優勝した大原選手、3位の中島圭吾選手(WZD/CAD紅色カプチーノ)。

SB3クラス

 この一戦で最多、22台を集めたSB3クラス。このクラスも全日本を見据えた中部勢が躍進した。

 トライ1でターゲットタイムをマークしたのは、クラスの序盤で出走した隅田敏昭選手だった。「全然練習もできてなくて、ここまで走れたのは上出来ですよ!」と、現在は中部地区を中心に活動しているものの、近畿地区を走っていた経験もある御年62歳の隅田選手。しかし、同じ中部勢で昨季のJAFカップを制した最上佳樹選手がこのタイムを塗り替える。

 上位を中部勢が占める中、勝負のトライ2に突入すると、隅田選手が最上選手のタイムを僅か0.002秒更新する。このタイムを聞き、プレッシャーのかかる最上選手だったが、その重圧を跳ね除けトップタイムを0.5秒近く更新しターゲットタイムを塗り替える。

 ランキング上位陣はプレッシャーもあってかミスを連発。ランキングトップの中嶋敏博選手は8番手に、ランキング2番手の喜多治人選手は10位に沈み、最上選手が制した。

「勝てて非常に良かったです。2位の隅田さんが、自分よりユーズドのタイヤを履いていたのにもっとタイム上げて、いかなくちゃダメだなと思いました。タイヤも用意できそうだし、3位に入った中部出身の全日本ドライバーの牧田選手とも勝負できそうなので全日本の鈴鹿は参戦しようと思います」と最上選手。

 一方、近畿勢最上位の4位を獲得した仲健太郎選手は「2本目の最終セクションがもうちょっと上手くいけば、表彰台は見えたかもしれませんが実力不足です。シリーズは混戦で全然決まってなくて、最終戦出れるか微妙なんですがチャンピオン目指して頑張ります」と残り2戦に期待を寄せた。

SB3クラスを制した最上佳樹選手(YHエムアーツWMインテグラ)だが「やっぱり自分はコースジムカーナが苦手だと思いました。この間の(中部)地区戦が雨だったこともあり、探り探りになってしまったところもあり、S字も上手くいきませんでした」と全日本に向けての反省も忘れなかった。
三重県に建つ鈴鹿は“地元”となる中部勢がトップ3を占めたSB3の上位6選手。左から4位でランキングトップに立った仲健太郎選手(DL☆ITO☆S+☆S2000)、2位の隅田敏昭選手(YH三共ITO★WHインテグラ)、優勝した最上選手、3位の牧田祐輔選手(協和整美S+マキタ速心スイフト)、5位の宮里佳明選手(DL☆片山レーシング☆RX-7)、6位は学生ドライバーの山村亮輔選手(YH慶應義塾WMシビック)。

SB4クラス

 開幕4連勝でチャンピオンに王手をかけている石田忠義選手が、どこまで連勝記録を伸ばすのかに注目が集まったこのSB4クラス。だが、トライ1から波乱が起る。辰巳浩之選手がトップタイムをマークし、石田選手は硬さの残る走りでタイムを失ってしまい3番手で折り返す。

 しかし、トライ2になると他クラスの中部勢が、縁石の内側にある緑色の舗装面を積極的に使ってインカットしている走りに感化した石田選手が、トップタイムを奪い取り逆転優勝でチャンピオンを確定させた。「鈴鹿は正直、辰巳さんに勝てないかと思っていました。今シーズンは5戦5勝という信じられないほど出来すぎなシーズンでした。自分を褒めてあげたいですね」と今季のここまでを振り返ってくれた。

SB4クラスは「初めてインカットしました」とこの一戦で新たな走りを習得した石田忠義選手(DLアクアWM東発インプレッサ)が第1戦から続く連勝を5に伸ばし、2021シーズン以来のチャンピオンを確定させた。
SB4の上位3選手。左から2位の辰巳浩之選手(BS YOUオートSランサー)、優勝でチャンピオンを確定させた石田選手、3位の岡本尚史選手(AQUA乱人TYスター5WRX)。

2023年JMRC近畿ジムカーナ ミドルシリーズ第6戦

2PDMクラス

 地区戦の2PDクラスはこの一戦が不成立となって段上泰之選手のチャンピオンが確定したこともあり、エントラントが集中した2PDMクラス。ランキングトップで2勝を挙げている三矢悠暉選手を、今季3勝ながら2番手で追いかけるMOTOHIRO選手が王座を争う。

 しかし、段上泰之選手が地区戦チャンピオン確定の貫禄を見せて、クラス唯一の1分14秒台をマーク。「今年ミドル初優勝です!1本目リヤがでるシーンもあったり、2本目は渡りのところで失敗したところもありましたが、トップタイムをマークできて良かったです」と、他を寄せ付けない走りで優勝を奪った。

 一方、2位に入ったMOTOHIRO選手は有効ポイントの差でこのクラスのチャンピオンを確定することができた。「コロナ明けて全戦できたのが良かったです。近畿は2ペダルクラスが盛んなので、みなさんぜひ参加してください」とクラスの宣伝も忘れなかった。

2PDMクラスは地区戦2PDクラスでチャンピオンを確定させた段上泰之選手(YHケイマン)が、両トライともトップタイムをマークする貫禄を見せて、今季のシリーズを締めくくった。
この一戦で今季4勝目を挙げて逆転チャンピオン確定を狙ったMOTOHIRO選手(DL☆FA☆A110S)だったが、2トライとも2番手タイムで2位を獲得。それでも逆転チャンピオンを確定させた。
2PDMの上位2選手。左から2位でチャンピオンを確定させたMOTOHIRO選手と優勝した段上選手。

BR1Mクラス

 BR1Mクラスで今季初優勝を決めたのは、岩井雅勝選手。「1本目は急にABSが効かなくなる症状が現れてしまいタイムがしっかり残せませんでしたが、2本目にブレーキのタッチを修正して臨んだことと皆さんのミスに助けられて勝てました」とコメントしてくれた。

 本山泰久選手と大高直郁選手の一騎討ちとなっていた王座争いは、優勝が逆転チャンピオンへの絶対条件だった大高選手が3位を獲得。本山選手は5位にとどまったが、チャンピオンを確定させた。

岩井雅勝選手(岩井保険ATIK★FIT)は両トライともにBR1Mクラスのトップタイムをマーク。今季初めての勝利とともに、ランキングを3番手に上げて今季を締めた。
二連勝でのチャンピオン確定に挑んだランキングトップの本山泰久選手(Proμ・DL・ヴィッツRS)だが、ヒート1は6番手。ヒート2でタイムアップを果たすも5位と不調に終わったが、チャンピオンを確定させた。
BR1Mの上位3選手。左から2位は2022シーズンチャンピオンの阿波俊之選手(DL松島自動車ZZプロμデミオ)、優勝した岩井選手、3位の大高直郁選手(DMSC☆ポリバケツカプチーノ)。

BR2Mクラス

 地区戦のBR2との二冠に王手をかける張選手が、チャンピオンを確定させているBR2M。有効ポイントでも同ポイントで並ぶ、松村直人選手と山田和斗選手のランキング2番手争いに注目が集まった。しかし、トライ1でトップに立ったのは全学連の大会に向けて参戦した、慶應義塾大学の後藤正太郎選手だった。

 トライ2では松村選手、山田選手ともに気負いが生じたのかペナルティを受けてしまい、タイムを残せない。後藤選手もタイム更新はならなかったものの、トライ1のタイムで逃げ切り優勝。「始めてテクニカルのある鈴鹿でどうなるか分からなかったんですが、攻めきれたと思いました。全日本ではしっかり部車に乗って、他の大学をぶっちぎりたいですね」と8月の大一番に向けての想いを語ってくれた。

 一方、ランキング2番手争いはこの一戦で6位を獲得した山田選手に軍配が上がった。

BR2Mクラスを制したのは、学生ドライバーの後藤正太郎選手(慶應義塾初心者インテグラ)。「ブラインドコーナーも多かったんですが、そこでもきちんと踏んでいけたのが良かったですね」と、本番の全日本自動車学生連盟の大会への収穫もあったようだ。
BR2Mの上位6選手。左から4位の西井夏輝選手(借り物インテグラ)、2位の木村優介選手(グルS牧速ATIKスイフト)、優勝した後藤選手、3位の廣田賢興選手(MAX INTEGRA)、5位の藤井孝輔選手(KGAC☆カリ物インテグラ)、6位の山田和斗選手(FABS中山商会インテグラ)。

BR3Mクラス

 BR3Mクラスでも中部勢が活躍した。塩澤広充選手がトライ1でトップタイムをマークすると、トライ2でもしっかりタイムアップして優勝を決めた。「去年は(JMRC中部)東海シリーズを走っていて、今年から中部地区(戦)を走っているんですが、2本目はS字もしっかり攻めれて良かったです」と塩沢選手は勝利のポイントを語った。

 一方、2位でチャンピオンを確定させた松川周平選手は「5戦目で優勝できたのは本当に嬉しかったです。シリーズチャンピオンを獲れたのは始めてなので、表彰式を楽しみにしています」と嬉しさを露わにした。

両トライともトップタイムでBR3Mクラスを制したのは、「(中部)地区戦の鈴鹿が雨だったので、ドライで走りたくて参戦しました」とエントリーした中部勢の塩澤広充選手(PRS匠S2000)。
「今年は3戦目、4戦目でトラブってしまったのが痛かったです」と振り返ったBR3Mクラスの松川周平選手だったが、その2戦でも3位と2位を獲得。今季は全戦で表彰台に上がり、チャンピオンを確定させた。
BR3Mの上位2選手。左から優勝した塩澤選手、2位でチャンピオンを確定させた松川選手。

BR4Mクラス

 ランキングトップの西川選手が地区戦にエントリーしたことで、大倉拓真選手のチャンピオンが確定したBR4Mクラス。そんな大倉選手の走りに注目が集まったが、優勝をさらったのは今季初勝利となった鈴木敏之選手だった。

「いろいろな方からアドバイスをもらうんですが、『自分が楽しめる走りをした方がいいよ』と言われて、思いっきり走ったら結果につながりました」と鈴木敏之選手は感謝とともに勝利の喜びをかみしめた。戦前にチャンピオンを確定させた大倉選手はトライ1で鈴木敏之選手に次ぐ2番手につけたものの、トライ2ではタイムアップを果たしたがひとつ順位を落とし、3番手を獲得した。

BR4Mクラスの鈴木敏之選手(ファインアートcatランサー)は「アクセルを踏んで、踏んでいったのが良かったですね」という走りをトライ1から披露。トライ2ではタイムダウンを喫したものの、逃げ切って勝利を掴みとった。
今季は2勝を挙げた他、3戦で2位を獲得してチャンピオンを確定させてこの1戦に臨んだ大倉拓真選手(DLDXLMoty'sランサー)。今季最終戦の勝利で有終の美を飾りたかったが、3位にとどまった。
BR4Mの上位3選手。左から2位の冬野紘彰選手(HAPチャレンジャインプレッサ)、優勝した鈴木敏之選手、3位に入ったチャンピオン確定の大倉選手。

PN2Mクラス

 ミドルシリーズ第6戦で最多となる17台を集めたPN2Mクラス。ランキング4番手ながら、唯一2勝を挙げている赤沢雄太選手の成績如何で王座争いの結末が大きく変わる。

 大きなプレッシャーがかかる中、トライ1で赤沢選手はまさかのパイロンタッチ。ランキング首位の白尾泰選手がトップタイムで折り返す。しかし、トライ2に赤沢選手が0.2秒トップタイムを更新すると、白尾選手はプレッシャーからか脱輪判定でタイムアップならず。これで赤沢選手が今季3勝目を挙げ、逆転チャンピオンを確定させた。

 赤沢選手は「いつもの名阪と同じように合わせきれずにダメでしたが、2本目なんとか合わせこみができて良かったです。昨年までは立命館大学の自動車部で走っていたんですが、公認競技にステップアップした年にチャンピオンが獲れて本当に嬉しいです」と笑顔で振り返った。

PN2Mクラスを制し、チャンピオンも確定させた赤沢雄太選手(DLμ222Tアシスイフト)。「リズムよりも勢いを重視したのが良かったのかもしれません」と、トライ1でのパイロンタッチからトライ2で立て直し、劇的な逆転を演じた。
PN2Mの上位6選手。左から4位の小林雅幸選手(DL☆TDFモノノフBRZ)、2位の白尾泰選手(HUAC☆FA☆DL☆GR86)、優勝でチャンピオンを確定させた赤沢選手、3位の山本祐己選手(DLレソルテ無鉄砲ロードスター)、5位の畑茂選手(☆ユニコーン ロードスター)、6位の三崎康選手(ライム86号)。

 鈴鹿南での一戦を終えて、主催した淀レーシングクラブ(チーム淀)の淀野泰弘代表は「この暑い中、オフィシャルも大変だったと思いますが、最後までしっかり働いてくれて感謝しています。178台という台数でしたがしっかり予定した時間通りに終えることができたのも良かったですね。まだまだ、僕らも進化していかないといけないと思っています。次のステップへ踏み出せるようこれからも頑張ります」と総括してくれた。

178台ものエントリーを集め、さらに灼熱の暑さで過酷な環境となった鈴鹿南での一戦となったが、熟練の技術と経験とチームワークで見事、スケジュールどおりに進行させたチーム淀のみなさん。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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