フォーミュラリージョナルにスポット参戦の堀尾風允選手が二連勝でアピール!!

レポート レース サーキットトライアル

2024年6月5日

5月11~12日にスポーツランドSUGOを舞台に、「SUGOチャンピオンカップレースシリーズRound 2」が開催された中で、JAF地方選手権としてフォーミュラリージョナルとサーキットトライアルが行われた。陽気に恵まれ、5月のSUGOとは思えぬほど気温も高めだったことが、戦況に影響を及ぼした可能性もあった。

2024年JAFフォーミュラリージョナル地方選手権 第4・5戦
2024年JAF菅生サーキットトライアル選手権 第1戦
(2024 SUGOチャンピオンカップレースシリーズRound 2 内)

開催日:2024年5月11~12日
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県村田町)
主催:(株)SUGO、SRSC

2024年JAFフォーミュラリージョナル地方選手権 第4・5戦

予選

 1つのレースウィークで3レース開催となることもあるJAFフォーミュラリージョナル地方選手権(FRJ)だが、今回は2レース開催。予選はいつもどおり2回行われたが、Q1は第4戦、Q2で第5戦のスターティンググリッドを争った。

 Q1は各ドライバー計測3周目からのアタックとなり、最初にトップに立ったのはジェシー・レイシー選手だったが守り抜くことはできず。次の周にはアルフィー・ケネス・ブリッグス選手がトップを奪うも、さらにその次の周には堀尾風允選手がトップに立つという、目まぐるしい展開となった。

 堀尾選手はその後のベストタイム更新は果たせなかったが、トップは死守。スポットでのシリーズ初参戦ながら、いきなりポールポジション(PP)を獲得した。2番グリッドには鈴鹿サーキットでの第2戦と第3戦で連勝を果たし、ランキング2番手につけるミハエル・サウター選手がつけ、レイシー選手、ブリッグス選手の順で続いた。

 Q2ではQ1で5番手に甘んじていたセバスチャン・マンソン選手が躍進を遂げ、計測4周目で叩き出したタイムでトップを奪取。ニュージーランド出身の16歳がシリーズ初PPを獲得した。堀尾選手は2番手で、3番手がサウター選手。そして4番手に中村賢明選手が収まった。

「昨日までタイムが出ていなかったんですよ。ただ、比較的伸びしろのある状態で、クルマの動きは全然足りてないところが多かったし、タイヤの使い方も。なんとか予選に間に合って良かったです」と、第4戦PPの堀尾選手は現状を語った。さらに、今回の参戦について「ここまでダウンフォースのあるクルマは初めてで、しかも(FIA-)F4も去年のSUGOから出ていないんですよ。ほぼまるまる1年ぐらい出ていなかったんですが、これに人生賭けていて、ダメだったらレースやめようと、そのぐらいの気持ちで臨んでいます」と、決意も明かしてくれた。

「ひとまずPP獲れて良かったっていうのと、まだまだできることはあると思うので、決勝に向けて冷静に。Q2はコンディションも良くなったっていうのと、路面温度がバンと上がっちゃってタイヤのいいところがQ1に比べて、かなり半分ぐらいになっているんですよ。これ以上タイム出ないな、と判断して残り6分残っていたけど、戻ってきちゃいました。温存というよりも、これ以上走っても出ないので」と、2回の予選についても振り返った。

 そして第5戦のPP、マンソン選手は「Q2はいいセッションを過ごせたと思います。ペースも良かったし、きれいにまとめられました。Q1よりタイムが上がったのは(Q1で)ミステイクがあったのと、セットアップのチェンジもありましたが、コンディションの向上も大きかったですね。セットをどう変えたかはシークレット(笑)。もちろんスタートは決めたいですし、それができたらギャップを築いて、ポジションをキープしていけたらと思っています」と、語ってくれた。

2024年JAFフォーミュラリージョナル地方選手権の第4戦、予選はこれがシリーズデビューとなった堀尾風允選手(SUTEKINA RACING TEAM)がいきなりポールポジションを獲得。第5戦の予選は2番グリッドに収まり、好発進を見せた。
第4戦の予選は5番手だったセバスチャン・マンソン選手(BIRTH RACING PROJECT【BRP】)は、第5戦の予選では第4戦のベストタイムから1秒以上上げて、シリーズ初PPを奪取した。

第4戦決勝

 22周で競われた第4戦の決勝は、予選が行われた11日のうちにスタートし、引き続き高い気温の下での戦いとなった。スタートをそつなく決めてホールショットを奪ったのは、もちろん堀尾選手だ。スターティンググリッドから変動なくサウター選手が続いていくが、1周目を終えた段階で堀尾選手は早くも約1秒の差をつける。

 時に堀尾選手のタイムを上回り、ファステストラップも記録したサウター選手ながら、安定感は今ひとつ。「途中からペースが良くなくなったけど、トラブルではないです」とのことだ。対する堀尾選手は、まるで“我関せず”とばかりに、逆に安定のタイム刻みでサウター選手を徐々に引き離していった。

 終わってみれば、堀尾選手は2位以下に12秒以上の差をつける圧勝。「スタートは苦手ですが、それなりに。練習で距離のいったタイヤを履いていたので、どこで行って良くて、どこで行っちゃダメか、ニュー(タイヤ)の違いは理解していたのでそこだけ抑えて、という感じでした」とのことで、「とりあえず首の皮一枚つながったのかな、と。僕の人生賭けたレースなので勝てて良かったです」と、正直な胸の内を語っていた。

 サウター選手に続く3位は、レイシー選手。また、マスタークラスで孤軍奮闘のYUGO選手は、2周遅れながら総合7位で完走を果たした。

第4戦は苦手と語るスタートを堅実に決めてトップの座を守り、ルーキーとは思えない安定したレース運びを見せた堀尾選手が、シリーズデビューウィンを果たした。
鈴鹿サーキットでの第2戦と第3戦に続く三連勝を狙ったミハエル・サウター選手(BIRTH RACING PROJECT【BRP】)はファステストラップをマークするも、2位で連勝が止まった(左)。オーストラリアから参戦しているジェシー・レイシー選手(Bionic Jack Racing)は、シリーズデビュー戦の第1戦以来となる3位で表彰台に上がった(右)。
FRJ第4戦の表彰台には、左から2位のサウター選手、優勝した堀尾選手、3位のレイシー選手が上がった。
JAF地方選手権対象外だが満40歳以上のドライバー、あるいは女性ドライバーが参戦できるマスタークラスはYUGO選手(N-SPEED)がエントリー。総合順位では7位で完走した。

第5戦決勝

 マンソン選手がPP、堀尾選手が2番グリッドから22周に臨む12日の第5戦決勝。ここでも、堀尾選手が苦手なはずのスタートをしっかり決めて1コーナーにトップで飛び込み、マンソン選手を従えていく。再び安定のタイム刻みを見せる堀尾選手に対し、マンソン選手はサウター選手の応戦一方に。

 さらにその後方では、ブリッグス選手と中村選手、レイシー選手による4番手争いが激しく繰り広げられる。やがてブリッグス選手と中村選手の一騎討ちに転じ、何度も揺さぶりをかける中村選手だが、なかなかブリッグス選手は動じてくれず。

 15周目の1コーナーでついに仕留めたかと思われた中村選手だが、前に出かけた直後にリアが流れる不運が。これでレイシー選手が再接近するも、やがてまた引き離すことに。ラスト5周は、中村選手がいったん離されたブリッグス選手の背後につけたが、やはり逆転は許されず。ブリッグス選手、中村選手、レイシー選手の順でフィニッシュとなった。

 その間にも堀尾選手は難なくトップを守り抜いて二連勝。マンソン選手もサウター選手を抑え切って、シリーズ2回目の表彰台登壇となった。そして4戦連続で表彰台に上がったサウター選手は、これでランキングのトップに立った。またマスタークラスでは、引き続き孤軍奮闘のYUGO選手が完走を果たした。

 二連勝を決めた堀尾選手は「ここにはいないんですが昨日、野尻智紀さんにスタートを教えてもらって。でも、『いきなりやるのは危ないから、やめた方がいいよ』って言われたんですが、いざ試してみたら、うまくいっちゃいました(笑)。昨日のレース全員のラップを比較して、落ち着いて淡々と走れば勝手に離れていってくれるのかなって。彼らが必死に走っているところを、僕は8割、9割ぐらいというのを意識して走っていました」と、第5戦のレース運びを振り返った。

 そして「人生、変えたいです。変わってくれることを願います。今回だけの予定ですが、何かご縁があれば出させてもらえたらな、と思っています」と切実に語った堀尾選手。果たして再びチャンスをつかみ取れるのか、期待したいところだ。

堀尾選手は今回の2戦のみのスポット参戦とのことだが、その貴重で重要なチャンスで見事に二連勝を果たした。再びFRJや他のシリーズで、その速さを見せてほしいところだ。
第4戦はスターティンググリッドと同じ5位だったマンソン選手。PPから発進した第5戦はトップの座を堀尾選手に奪われるも、シリーズでは自身最上位の2位を獲得した(左)。3位はサウター選手が獲得。リタイアに終わった第1戦以降は、二連勝と2位と3位が一回ずつと安定した成績を残し、ランキングトップに立っている(右)。
左から2位のマンソン選手と優勝した堀尾選手、3位のサウター選手がFRJ第5戦の表彰台に登壇した。
マスタークラスのYUGO選手は総合8位でフィニッシュ。第1戦から完走を続けている。

2024年JAF菅生サーキットトライアル選手権 第1戦

CT1クラス

 これが2024シーズン初戦となる、2024年JAF菅生サーキットトライアル選手権。2023シーズンは3クラスが地方選手権として成立し、CT1クラスの芦名英樹選手とCT4クラスの松橋豊悦選手、CT6クラスの吉崎久善選手と、各クラスのチャンピオンが揃って継続参戦を決め、それぞれ王座防衛を目標とする一方で、彼らを打ち破る強力なライバルの登場も期待された。

 通常はヒート1が早朝に、ヒート2が正午頃に行われることが多いが、今回の一戦はヒート1が正午頃に、ヒート2がタイムテーブルの最後に行われた。加えて夏場のような暑さということもあって、コースレコード更新は至難の業と思われた。

 実際、CT1王者の芦名選手はヒート1の計測1周目から攻め立てるも、レコードには約3秒及ばず。計測3周目に約0.2秒詰めるのがやっとだった。ヒート2になって気温も下がったものの、芦名選手のトップタイム更新は果たされずに終わる。それでも優勝を果たした芦名選手は「ヒート1から0.07秒足りなかったですね、ヒート2では。いけると思って、空気圧とか調整したんですが、気持ちが早っちゃったんですかね。それでも、この時期にしてはまずまず、実力が出せたんじゃないですか」と、今季初戦の感想を語った。

CT1クラスは二連覇中の芦名英樹選手(ロードアンドスカイ再び丸投げ)が優勝。コースレコード更新はならなかったが、2位以下に8秒以上の差をつける圧倒的なタイムで王者の貫禄を見せつけた。
CT1は総合トップタイムをマークした芦名選手が表彰を受けた。表彰式のアシスタントはSUGOオフィシャルナビゲーターの柿崎佑奈さん(左)と春霞さん(右)が務めた。

CT4クラス

 CT4クラスでは、ヒート1で王者・松橋選手にピンチが訪れる。「エンジンチェックが点いちゃって、まともに走れなくて。いったんピット入ってエンジン切ってから、また最終コーナーで出てしまって。センサー系の故障で、ブーストが上がらなかったんです」とのことだ。その間にトップを奪ったのは、2024年JAF筑波サーキットトライアル選手権のCT4クラスにも参戦、第1戦でデビューウィンを飾って目下二連勝中の宮崎邦紘選手だ。

 しかし、流石だったのは、松橋選手がセンサーのスペアを用意していたこと!ヒート2までに交換すると、いつもの調子を取り戻して逆転に成功。しかも自身の持つレコードさえ、0.138秒の短縮を果たした。「午前中は顔、青ざめていました(苦笑)。なんとか逆転できて良かったです」と語る松橋選手。昨季はSUGOと筑波だけでなく、JAF岡山国際サーキットトライアル選手権にも参戦していたが、今季はSUGOのみに専念するそうで、「ここでは連覇を狙います」と力強く宣言していた。

 一方、敗れた宮崎選手は「松橋選手がヒート2でブーストかかるように修理していたので、やられちゃうかと思っていたら、予想どおり(笑)。僕も精進します。言い訳ですけど、SUGOは2回目なんです。回数重ねれば、あとコンマ5秒、さらにコンマ5秒削れるイメージがなかったので、良き先生が見つかった感じです」と松橋選手の勝利を心から讃えていた。

CT4クラスは松橋豊悦選手(N-TEC BSスイフト)がヒート1でのセンサートラブルを克服、レコード更新を果たして逆転優勝。CT1と同じく、チャンピオンがその実力を見せた。
ヒート1でCT4のトップタイムをマークした宮崎邦紘選手(Tiレーシング お上品GR86)はヒート2でもタイムアップを果たすが松橋選手には届かず、2位となった(左)。田中洋一選手(wanwan86)はヒート1で2番手につけるもヒート2ではベストタイム更新ならず、3位にとどまった(右)。
CT4はトップ3選手が表彰を受けた。左から2位の宮崎選手、優勝した松橋選手、3位の田中選手。

CT6クラス、CT5クラス

 CT6クラスでは、昨季ドライコンディションでは無敗だった吉崎選手の前に、ついに立ちはだかるドライバーが現れた。堀知海選手がヒート1からトップに立ち、ヒート2ではさらにタイム短縮も果たして優勝を飾った。「ヒート2の方が涼しくなって車速も伸びている感じだったので、その分タイムに反映されたのかと思います。吉崎選手とは筑波でも一緒なので、勝てて良かったです。SUGOは2回目で、(競技に)出たのは初めて。SUGOではデビューウィンになりますね!」と、堀選手は勝利を喜んだ。

 一方、2位に甘んじたダイハツ・カプチーノを駆る吉崎選手は、「筑波でも今年から出てきたので、まぁ、かなわないだろうなと。やっぱりND(型マツダ・ロードスター)が速いですよ、ちゃんとつくれば。次は頑張ります」と逆襲を誓っていた。

 なお、CT5にひとり参加した佐藤覚選手は、クラス不成立ながら総合では9位のタイムを出した。

CT6クラスでは2024年JAF筑波サーキットトライアル選手権の同クラスにも参戦している、堀知海選手(OKAYUロードスターND)が2ヒートともトップタイムをマークして優勝を果たした。
CT6もCT1と同じく、優勝した堀選手が表彰を受けた。
CT5クラスは佐藤覚選手(アクロス・ロードスター)が孤軍奮闘。クラスは成立できなかったが、総合9位に入るタイムを残した。

フォト/髙橋学 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

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