梅雨時の富士でのフォーミュラカーのJAF地方選手権は雨で波乱の展開に
2024年9月12日
6月21~23日に富士スピードウェイで、Fanatec GT World Challenge Asia Powered by AWS Round 5&6とJapan Cup第3・4戦も開催された「SRO GT Power Tour」。そのサポートレースとして、JAF地方選手権である2024年JAF Formula Beat地方選手権 第6・7戦と2024年JAF筑波・富士スーパーFJ選手権 第5戦が開催された。両シリーズともエントリーは20台を超え、まさに盛況! 23日、日曜日の空模様には翻弄されたものの、チェッカーフラッグが振られた時の感動は、天候に恵まれなかったからこそ大きかった、といっても過言ではない展開となった。
2024年JAF Formula Beat地方選手権 第6・7戦
2024年JAF筑波・富士スーパーFJ地方選手権 第5戦
(SRO GT Power Tour内)
開催日:2024年6月21~23日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ(株)、FISCO-C
2024年JAF Formula Beat地方選手権 第6・7戦
予選
1台が出走を取り消したが、それでも2024シーズン最多の19台で争われたFormula Beat(F-Be)は、第6戦と第7戦のダブルヘッダー開催となり、予選のみ22日、土曜日に行われた。上空は雲に覆われていたが、しっかりドライコンディションが保たれた中、序盤のトップは徳升広平選手ながら、折り返しのあたりからタイムが頭打ちになってしまう。「内圧を失敗しました。ちょっと高すぎましたね」とのことだったそうだ。
代わってトップに立ったのはハンマー伊澤選手で、終盤になって徐々にタイムを縮めていき、ベストタイムを叩き出す。しかし、「GTのラバーとの違和感は、練習走行の時から感じていて、グチャグチャとした感じで、カチッとした感じが少ないですね。しかも、これだけの温度ですから、もうちょっと(タイムが)出ても良かったんですけど、最後の方でようやく出たという……」と、どうやら納得の走りではなかったようだ。
実際、セカンドベストタイムにおいては金井亮忠選手がトップで、ポールポジション(PP)を分け合うことに。「路面の違和感は、2年ぶりの富士なので分からないんですが、クルマもいろいろ仕様を変えてきているので、一昨年より良かったのは間違いないですね。明日は雨みたいですから、どうなるんでしょうか」と金井選手は語っていたが、23日は果たしてどうなることか?
決勝
23日の朝はあいにくの雨模様。後述するスーパーFJ(S-FJ)の予選がキャンセルされたほどだったが、F-Be第6戦の決勝が間もなく行われようというタイミングではだいぶ弱くなって、しかも雲の切れ間からは日も差すようになっていた。しかし、下されたのはセーフティカー(SC)先導によるスタート、という判断だった。定刻どおりハンマー選手、金井選手、酒井翔太選手、宇髙希選手、徳升選手、そしてジェントルマンクラストップの植田正幸選手の順で、ゆっくりと周回が重ねられた。
傍目には、もうリスタートしても大丈夫なように見えたが、4周を終えた時点で赤旗が振られ、「無駄にタイヤ1セット使ってしまった」という声もあがるのも、無理はなかった。「ハーフポイントですけど、それがつくのは大きいんで……。やれたとは思いますけど、オーガナイザーの判断ですから。午後からはスッキリやりたいですね」とは、優勝を飾ったハンマー選手のコメントであるが、その表情は実に複雑だった。
その後、天気は回復し、レーススケジュールの最後となった13周で競う第7戦はダンプコンディションの中、車両がグリッドに並べられた。上位陣はドライタイヤを装着しているが、後方にはウェットタイヤを選んだドライバーも。上位陣では6番グリッドの植田選手だけが、グリッド上でウェットタイヤに交換した。
だが、その直後に富士を霧が覆うようになり、間もなくスタートディレイとなってしまった。そして定刻より15分遅れ、しかもSC先導のスタートとなる。これは第6戦の再現か…… と不安がよぎったが、再び雨が降り始めて視界が確保されるようになった。この変化に対応して、ウェットタイヤに交換する判断を下した金井選手だったが、なんとピットでタイヤが準備されておらず、復帰に時間を要することに。しかもSCの先導は2周で終わってしまったから、金井選手は大きな遅れをとってしまう。
リスタート後、明らかにペースに優っていたのが植田選手だ。1周回らずして、最終コーナーでトップに浮上。5周目には2番手に上げた酒井選手に対し、約4秒もの差をつける。作戦成功か…… と思われたものの、皮肉にも雨はあがってしまい、酒井選手が急接近。しかし、7周目のパナソニックコーナーで植田選手のインを刺したところで接触し、植田選手は3番手に後退した。酒井選手はトップに立つも、ハンマー選手が一気に差を詰めた。こうなったら、もうハンマー選手の勢いは止まらない。9周目のメインストレートでスリップストリームから抜け出し、待望のトップに奪取する。
10周目に入ると酒井選手に、先の植田選手との接触に対するペナルティとして、競技結果に5秒加算が告げられる。と、同時にSCが再び出動することに。ヘアピンで一台がストップしていたためだ。SC先導のままフィニッシュかと思われたが、残り1周で再開。この機会を逃さず、リスタートを完璧に決めた酒井選手がトップに立つも、上位陣の差が詰まっていたこともあり、5秒加算で5位に降格となった。
その結果、優勝はハンマー選手で、2位はファイナルラップの攻防を制したISHIKEN選手。予選9番手だったが、コツコツと追い上げることに成功した。3位は宇髙選手が獲得し、2023年JAFオートポリス スーパーFJ地方選手権のチャンピオンは、デビュー2戦目にしてシリーズ初表彰台に上がることとなった。
「一番最後のSC入らなければ、もっと気持ちよく終われたんですけどね。最終コーナーで合わせられちゃって、前に行かれてダメかと思ったんですが、振り返ってみると、あのペナルティが大きかったですね。無線は使えないので、でも、ぶつかったのは知っていましたから、なんらかのペナルティは出るだろうと」と、ハンマー選手は第7戦を振り返った。さらに「ともあれ、奇跡としか言いようがないんですが、これで5連勝になります。次も気を引き締めていきます」と、ランキングでもトップに上がり、初チャンピオンに向けて次戦に目を向けていた。
ジェントルマンクラスは植田選手が二連勝、総合では6位となった。「そのまま降り続けるかと思ったんですけどね、最後は結局ドライ! 最初のマージンがあったので、なんとか3位はキープできるかと思ったんですが、SCでやられちゃいました。でも、楽しく走れましたよ」とは少なからず本音のはずだ。
2024年JAF筑波・富士スーパーFJ地方選手権 第5戦
予戦
GT World Challenge AsiaとJapan Cupは20日の木曜日からスケジュールをスタートさせていたが、S-FJは23日の早朝に予選を、そして午後から決勝を行う、いわゆるワンデー開催となった。しかし、肝心の予選は前日の晩から降り出した雨が、さらに勢いを強めたことでキャンセルになってしまう。
問題はスターティンググリッドをどうやって決めるか。シリーズのランキング順に並べられたのは、ほぼ順当ではあったものの、この一戦はジャパンスカラシップシステムによる全国転戦の「ジャパンリーグ」との併催とあって、遠征ドライバーも多かったのだ。そこで苦肉の策として、ジャパンリーグのランキング順に筑波・富士勢の後に並べて、さらに両シリーズとも今季初参戦のドライバーは、エントリー受付順に並べることとなった。
ともあれPPについたのは、筑波・富士で目下二連勝中のポイントリーダー、角間光起選手で、フロントロウには伊藤駿選手。これに石井大雅選手、F-Beにも参戦する酒井選手、黒川史哉選手が続いた。遠征ドライバーはといえば、ジャパンリーグ2番手の松井啓人選手が12番手で、同リーグ3番手の小田優選手が13番手。そして、「急きょエントリーが決まったので」と語った渡会太一選手はどちらのシリーズにも今季は参戦しておらず、最後尾の21番手にまわされた。
当然、遠征組で成績を残している実力派ドライバーの中には不満があったかもしれないが、まさかこのスターティンググリッドがドラマティックな展開を演出する要因にもなろうとは、この時まだ誰も気づく由もない。
決勝
12周で争う決勝の直前に富士を覆った薄い霧が晴れて、「まともにレースはできないかも」という不安は解消されたが、路面はまだ濡れたまま。全車ウェットタイヤでの戦いとなった。ポールシッターの角間選手がTGRコーナーへのホールショットを決めたかと思われたが、そこにアウトから捲って一気にトップへと躍り出たのが石井選手だった。「ウォータースクリーンがなくて楽でした」とトップを走るのは初めての石井選手はレース後に語った。
しかし、角間選手ら筑波・富士のライバルたちが石井選手を逃してはくれず、酒井選手と伊藤選手、黒川選手もぴたりと背後から隙を伺う。そこから少し離れて続く集団には、小田選手が8番手、渡会選手がもう11番手で、1周目を終えた段階でつけていた。
2周目に酒井選手に抜かれた角間選手は、次の周のTGRコーナーで再逆転を狙うも接触。無念のリタイアを喫するとともに、SC出動の要因をつくってしまう。しかし、6周目からのレース再開で一気に動く。上位陣の差が詰まったことで、リスタート後のTGRコーナーでは小田選手が3番手を、磐上隼斗選手が5番手、そして渡会選手が7番手を奪取。さらに7周目には小田選手がTGRコーナーで伊藤選手を、そしてダンロップコーナーの進入で石井選手をもかわし、13番グリッドからトップに立った。
そして8周目を終えた時点で、小田選手、磐上選手、石井選手、伊藤選手、渡会選手の順となった直後に、またしてもレースが動く。TGRコーナーでのブレーキング競争で磐上選手が前に出るも、止まりきれずにハーフスピン。さらに小田選手もオーバーシュートしてしまう。これで再びトップに立ったのは石井選手ながら、2番手に躍り出ていた渡会選手が逃してはくれず。10周目のTGRコーナーでトップを奪い、最後尾から20台抜きに成功!
「スタートだけで何台か抜けたし、上の方にはいけると思っていましたが、まさか勝てるとは!めっちゃしんどかったです。1(TGR)コーナーで抜くっていうのは、だいぶ厳しかったですけど、セクター3でうまく合わせて抜いてくることができて、トップに立てて良かったです。めちゃくちゃ嬉しいです」と、渡会選手は激動の決勝を振り返った。
2位にはチームメイトの松井選手がファイナルラップに上がって、ワン・ツーフィニッシュも達成。「ホームの鈴鹿では苦しいレースが続いていたので、違ったところに来て、こうやって結果出せて良かったです」と語る松井選手は、ジャパンリーグでは2回目の表彰台に上がり、ランキングトップにも躍り出た。
そして3位は石井選手。筑波・富士シリーズでは3戦連続の表彰台登壇となった。4位が小田選手で「あの周、耐えられたら逃げきれたと思うんですが、仕方ないですね」と悔しそうな表情だった。一方、酒井選手に続いて6位でゴールの伊藤選手は、リタイアの角間選手、そして不参加だったセンドラ船戸アレックス翔太選手を抜いて、筑波・富士のランキングトップに浮上。しかし、シリーズはまだ3戦も残されており、最後まで壮絶な戦いが繰り広げられそうだ。
一方、4台が参加したジェントルマンクラスは、総合でも13位に入った秋山健也選手の圧勝。「前回の富士では古いクルマだったんですが、今は新しいクルマなので直線がかなり楽になりました。ただ、総合でもっと上の順位でゴールしたかったですね」と、正直な胸のうちを語った。
フォト/髙橋学 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部
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