北海道ラリー最終戦、元王者が意地を見せたRA-1はガレージセキネン勢がトップ3独占!
2024年10月28日

全6戦で行われる2024年JAF北海道ラリー選手権は、10月12・13日に開催された「とかち2024」で最終戦を迎えた。2024年JMRC北海道TEINラリーシリーズのジュニアクラスと、2024年XCRスプリントカップ北海道の最終第6戦も併催、有終の美で今季を締めくくるべく、クルーたちはグラベルロードに挑んだ。
2024年JAF北海道ラリー選手権 第6戦
2024年JMRC北海道TEINラリーシリーズ第6戦
2024年XCRスプリントカップ北海道 第6戦
とかち2024
開催日:2024年10月12~13日
開催地:北海道陸別町
主催:R.T.C
今季のとかちは、ともにこのラリー名物ステージとして知られる「New YAYOI」と「RIKUBETSU LONG」、2本のステージで競われた。ただし「New YAYOI」はスタート位置を変更し、序盤の約2kmが舗装区間、以降は高速グラベルが控える8.52kmのステージが用意された。
「RIKUBETSU LONG」はRALLY HOKKAIDOでもお馴染み、最後は陸別サーキットのダウンヒルを駆け抜けてゴールという設定が採られた。こちらは4.64kmで、2度30分のサービスを挟んでNew YAYOIを3回、RIKUBETSU LONGは4回走る計44.12kmと、地区戦としては走り甲斐ある設定となった。

2024年JAF北海道ラリー選手権 第6戦
RA-1クラス
17台と大量エントリーとなったRA-1クラス。この中には、JAF全日本ラリー選手権の一戦、「RALLY HOKKAIDO」の常連として知られる増村淳選手や岩下英一選手といった有力ドライバーも含まれていた。特に岩下選手は、オープンクラスで参戦した前戦の「RALLY EAST-IBURI」でエンジントラブルによりリタイアに終わったものの、SS4まで総合トップに立つ速さを見せていただけに、迎え撃つ地元・北海道勢とのバトルは必至と思われた。
SS1「New YAYOI1」でベストタイムを奪ったのは、2023シーズンのドライバーチャンピオンである和氣嵩暁選手と、コ・ドライバー高橋和多利選手。「RIKUBETSU LONGは皆、走り慣れているので、差をつけるとしたらNew YAYOIと思って最初からゼンカイでいきました」という和氣/高橋組は、2番手の笠原彰人/岩淵亜子組を3.2秒差で下し、すでにチャンピオンを確定済みの3番手、関根正人/松川萌子組には11秒差をつける快走を見せた。
SS2「RIKUBETSU LONG1」では関根/松川組が巻き返してベストを獲るが、2度目のNew YAYOIとなるSS3では和氣/高橋組が9.4秒差で関根/松川組を再び下してリードを拡大。関根/松川組は結果的には4本のRIKUBETSU LONG全てでベストをマークするが、New YAYOIでの遅れを取り戻すことは叶わず、和氣/高橋組が最終的に18.4秒のリードをつくって逃げ切った。
フィニッシュ後、実はラジエターのトラブルがあったことを明かした和氣選手は、「それもあってSS3からエンジンの回転を上げないような走りに変えたんですけど、New YAYOIでは高いギヤで走ったら意外とロスが減ってタイムアップできました。ただ、RIKUBETSU LONGではそういう走りができませんでした」と、苦戦を強いられた一面もあった様子。
「でもこのラリーは去年も勝ちましたが、関根さんが直前に怪我をされて本調子ではなかったので、今年は完全復調した関根さんに走り勝てたので嬉しさも違います」と笑顔で振り返った。
一方、またしても弟子に敗れた格好となった関根選手は、「先頭ゼッケンで砂利掻き役となったSS1でのロスを最後まで埋められなかったかたちになったけど、それにしても今日の和氣は速すぎた」とラリー後は素直に脱帽した。しかし、自ら率いるガレージセキネン勢は、3位にも大藤潤一/秋山美紗子組が入賞し、表彰台を独占する最高の一日となった。
遠征組の増村淳/北川紗衣組は、最終SSまで大藤/秋山組と3位争いを演じたが、「New YAYOI は昔、RALLY HOKKAIDOで一部を走ったかもしれないけど、全く記憶が甦らなかった」と4位でフィニッシュ。
岩下英一/尼子祥一組は、「RALLY EAST-IBURIとは道が違い過ぎて序盤は踏み切れなかった」とNew YAYOIで苦戦したことが響き、6位でラリーを終えた。しかし、「ラリーを凄く楽しめたので、また増村君達と“大人の運動会”を続けていきたいと思います(笑)」とも語り、このラリーへの再来を誓っていた。



RA-2クラス
RA-2クラスは室田彰仁/川村朋有組がSS1を制すが、東北は青森県から遠征の小舘優貴/福田智治組がSS2から4連続ベストを奪い一気に首位に立つ。地元勢は室田/川村組と泉祐悟/小池征寛組が激しい2番手争いを展開した。
小舘/福田組はSS6でミスを犯して泉/小池組に12秒の遅れをとるが、最終のSS7ではしっかりと今回のラリー5度目のベストで上がって、19.8秒差で逃げ切った。小舘/福田組がスピンで遅れたSS6でベストを奪った泉/小池組が室田/川村組に競り勝って2位を獲得、今季初となる表彰台をゲットした。
得意とするRIKUBETSU LONGでは4本ともライバルを圧倒するタイムをマークして、とかち4連覇を果たした小舘選手は「スピンで失ったタイムを考えると、RIKUBETSU LONGが2本だったらダメだったかもしれない。今回はRIKUBETSU LONGに助けられましたね」と安堵の表情で振り返った。



RA-3クラス
RA-3クラスは今季5戦4勝と絶好調のドライバー、三木晴夫選手とコ・ドライバー河村幸子選手のクルーがSS1をベストで上がって幸先の良いスタートを切るが、SS2でまさかのコースアウトを喫してリタイアに終わった。
これで優勝争いは三苫和義/遠藤彰組と原口真/春日美知子組、九州勢2台のバトルに代わった。原口/春日組は、SS1で三苫/遠藤組に10.7秒の遅れをとったことが最後まで響くことに。後半3本のRIKUBETSU LONGの内、2本でベストを奪った原口/春日組だったが、三苫/遠藤組も1本は譲らず、11秒差で原口/春日組を振り切った。
RIKUBETSU LONGでは、今季のRALLY HOKKAIDOでのJN5クラスのベストタイムを意識して、走り方を毎回変えて試したと語った三苫選手は、「全日本で一番速く走ったドライバーは3分55秒台だったけど、自分は今日も4分を切れなかったので、まだまだ。でも見えてきたモノがあったので、次回に活かしたいですね」と、RIKUBETSU LONGでのリベンジを誓っていた。



RA-4クラス、オープンクラス
RA-4クラスは、室田仁/鎌田雅樹組が操るCVT車両のトヨタ・ヴィッツ1台のみの参戦となったが見事、完走を果たした。また、3台が参戦したオープンクラスでは三菱・ミラージュを駆った鈴木吉信/佐野信行組が、参戦した2WD全体でも4位となる好走でフィニッシュして優勝を果たした。


2024年JMRC北海道TEINラリーシリーズ第6戦ジュニアクラス
Jr-2クラス、Jr-1クラス
併催の2024年JMRC北海道TEINラリーシリーズ第6戦ジュニアクラスはSS4までの26.32kmで競われた。Jr-2クラスはトヨタ・セリカを駆る辻祥汰/堀切利純組が、SS1でコースオフしかけてホイールを損傷しながらも、スズキ・スイフトスポーツを操る2番手の小野寺浩史/小野寺由起子組に20.1秒の大差をつけて序盤から大きくリードする。
辻/堀切組はその後も、「足回りも傷めてしまったので無理できなくなった」とのことだったが、手負いのセリカで首位を堅守。最終のSS4では小野寺組にベストを譲るも、SS1で築いた大量のリードを最後まで守り切って優勝した。二季連続でこのラリーを制した辻選手は、「昨年は自分だけ一台生き残っての優勝だったので、ライバルと競って勝てた今回の勝利が実質的には初優勝だと思っています」と苦笑しながら振り返った。
Jr-1クラスは、北倉裕介/宗片さおり組1台のみのエントリーとなったが、こちらも完走を果たした。北倉選手はシリーズ6戦全てに参戦し、全戦トップフィニッシュで今季を締め括った。




2024年XCRスプリントカップ北海道第6戦
XC-2クラス
3シーズン目を迎えたXCRスプリントカップ北海道は今季、地区戦との併催としては4戦目となる第6戦が今季最終戦として開催された。
5台が参戦したXC-2クラスは、グラベルシーズンの訪れを待って第3戦から登場したドライバーの番場彬選手が駆るトヨタ・ハイラックスが、三連勝中の勢いをそのまま持ち込んで、SS1からベストを獲得し、好調さをアピールする。
今回のラリーは加勢直毅選手をコ・ドライバーに迎えた番場ハイラックスは、「新型になって高速でのパフォーマンスが向上しました」とのコメントを裏付けるように、特にNew YAYOIで後続に大差をつけるタイムをマーク。2本のステージともに、走る度に前走の自らのタイムを上回る走りを見せて全SSを制覇して快勝した。
2番手には、浅井明幸/笠井開生組が操る三菱・エクリプスクロスPHEVが入賞。今季初参戦となった前田良書/藤田めぐみ組のハイラックスが3位に入った。番場選手同様、第3戦からの参戦となった羽根田琴/鈴木博組のハイラックスはSS4、SS6と7では前田/藤田組を上回る走りを見せたが、前半の遅れが響いて16.1秒及ばず、4位でフィニッシュした。



XC-3クラス、XC-1クラス
XC-3クラスは今季、4勝をマークしているドライバーの塙郁夫選手とコ・ドライバーの石丸侑加選手が駆るトヨタ・ライズがSS1でベストを奪って好発進するも、SS2でコースオフを喫してリタイアという波乱の展開に。代わって首位に立ったHA RU/槻島もも組が操るスズキ・ジムニーが、その後も堅実な走りを見せて優勝を飾った。
第3戦からレギュラードライバーを務めてきた小玉絵里加選手が、並行して参戦している二輪の全日本モトクロス選手権と重なったため欠場。代役としてこのシリーズ初参戦となったHA RU選手は19歳のドライバー。TOYOTA GAZOO Racing Rally ChallengeでグラベルSSを走った経験はあるが、本格的なグラベルのスプリントラリーは今回が初めてだった。
「ジムニーは昨日初めて乗ったので最初は不安でしたが、今回のラリーの前にエビスサーキットのグラベルコースをヴィヴィオで練習走行できたのが活かせました。今回も深いワダチでハンドルを取られたりしましたが、クルマが跳ねた時の対処法をエビスである程度学べたので、最後は怖さもなくなって楽しく走れました」とHA RU選手はラリーを振り返った。
今季、小玉選手と組んできた槻島選手は、「コーナーでジムニーがどういう挙動をするのかというのは私の方が経験で知っているので、終わってみるとコーナーの進入時に“抑えて!”とHA RU選手に言う場面も結構、多かったです(笑)」とHA RU選手との初めてのコンビネーションを語った。
HA RU選手は人生初のラリー優勝を飾り、槻島選手も久しぶりとなる勝利の美酒に酔った。そしてXCRでは当然ながら、ともに初優勝達成という大きな1勝を手にした。
XC-1クラスはグラベルシーズンから参戦を開始した惣田政樹/猿川仁組のトヨタ・ランドクルーザーが1台のみの参戦ではあったが完走を果たし、第4戦からの3連続トップフィニッシュを飾ってシリーズを終えた。


フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部