渡辺謙太郎/箕作裕子組ランエボIXが東日本ラリー最終戦BC-1の全SSを制覇!
2024年11月12日

2024年JAF東日本ラリー選手権の最後を飾る第7戦「第43回八子ヶ峰ラリー2024」が、10月26日に長野県で例年同様、ワンデーラリーとして開催された。早朝から各SSで2回ずつレッキを行った後に車検を受けたクルーたちは、今季もヘッドクォーターとサービスパークが置かれた八子ヶ峰ホテルから11時30分に移動を開始。SSにも程近い佐久市立望月小学校をスタートしてラリーに臨んだ。
2024年JAF東日本ラリー選手権 第7戦
JMRC関東ラリーカップ
JMRC長野県ラリーシリーズ第5戦
第43回八子ヶ峰ラリー2024
開催日:2024年10月26日
開催地:長野県佐久市周辺
主催:TR-8
望月小学校の生徒たちと関係者の方々は、八子ヶ峰ラリーが使用してきた林道の清掃を年一回、続けている。オーガナイザーで東京都のJAF加盟クラブ、チーム林道エイト(TR-8)は、今回のラリーで感謝の意味を込めて、この小学校をスタート会場に選んだ。表彰式では、同小学校の校庭に特設されたゲートからスタートしたラリー車両の写真が、参戦した全てのクルーに贈られた。
スタートすると、まず3.705kmの“牧場”を2回走行。その後、八子ヶ峰ラリーの名物SSである唐沢線を上る9.794kmの“唐沢上り長”を2回走り、サービスイン。セクション2では唐沢線の下りを2区間に分けて使用し、1.732km の“唐沢下り短”と6.003km の“唐沢下り長”を2回ずつ走行してフィニッシュ、という設定が採られた。
牧場は以前もラリールートとして使われたことはあるが、SSとしては初設定。道幅は広くないが速度がのる箇所もあり、最後まで気が抜けないステージだ。唐沢線はある程度の道幅が確保されているものの、高地で標高差もあるために場所によっては霧が発生しやすく、コンディションの変化に富む。
セクション2最初のSSであるSS5“唐沢下り短1”は17時35分スタート予定のため、SS全体の3割強は夜間に行われる、ナイトステージ比率の高いラリーとなった。

2024年JAF東日本ラリー選手権 第7戦
BC-1クラス
BC-1クラスはSS1“牧場1”で先頭ゼッケンの渡辺謙太郎/箕作裕子組が駆る三菱・ランサーエボリューションIXが宇野学/宇野平組が操るランエボVIIIを2秒差で下すベストタイムをマーク。SS1の再走となったSS2は、路面に土が出るなどコンディションが変化する中、各クルータイムダウンとなるが、宇野組は連続ベストの渡辺/箕作組に1秒差で食らいつく。
だが渡辺/箕作組は“唐沢上り長”のSS3、SS4でもベストを連取。宇野組に14.1秒のリードを築いてセクション1を終えた。ナイトステージに移ったセクション2でも渡辺/箕作組のペースは衰えず、再びベストを連発。宇野組は“唐沢下り短”のSS5、SS7では僅差に迫るもセカンドベストに留まり、その差を詰めることは叶わず。結果、全SSベストで上がった渡辺/箕作組が優勝を果たした。
シリーズ終盤2戦を連勝で締め括った渡辺選手は、「牧場線は2本目、路面が汚れて難しかったですけどそれほどタイムは落ちなかったので、いい走りはできたと思います。唐沢線はいつもの感じでしたね」と今回のラリーの印象を一言。
ただ、唐沢線の下り4本については今回、BC-2クラスにスポット参戦した全日本ドライバーの上原淳選手が駆るZD8型スバルBRZの後塵を拝するかたちとなったため、「まだまだ要修行ですね」と振り返った。
今季の渡辺選手はJAF中部・近畿ラリー選手権ではZC33S型スズキ・スイフトスポーツに乗り換えて遠征したが、「ランサーとスイフトを乗り分ける難しさを痛感した一年でした」とも。JAF全日本ラリー選手権では同型のスイフトを駆る高橋悟志選手のコ・ドライバーも務め、地区戦初チャンピオンを確定済の箕作選手からは、「今日はちょっとスイフトの走りになっていた所もありましたね」との指摘もあり、ラリー車両の“二刀流”に挑む渡辺選手には課題が見えた一年でもあったようだ。



BC-2クラス
BC-2は1週間前の全日本第8戦でJN3クラスを制したばかりの上原淳選手が、近畿地区の平山真理選手をコ・ドライバーに招いて参戦してきた。上原選手の東日本ラリー参戦は今季2度目。3週間前に行われた群馬ラリーシリーズ最終第5戦もスポット参戦で制した上原選手は、若手育成のための奨励賞を設けており、今回のラリーも自ら走ることで若手に刺激を与える存在となるべく姿を見せた。
SS2では前戦の羽州ラリーを制した期待の若手ドライバー、田部井翔大選手と小坂典嵩のクルーが1.6秒、上原/平山組を凌いでベストを奪い健闘するが、唐沢線では上りも下りも上原/平山組がぶっちぎりのタイムをマークして圧勝した。田部井/小坂組は、ナイトステージで速さを見せた田辺紘一/藤田勝正組に迫られるも、前半で築いたマージンを活かして11.8秒差で振り切って2位を守った。
「牧場線は特に2本目は路面が汚れてきたので慎重に走りました」と振り返った上原選手は、「唐沢線は初めて走ったけど、特に下りは楽しく走れました。ただ上りはダメで、苦手の低速コーナーではタイムロスしたと思う。この辺は来季の全日本に向けての課題ですね」と、来たる2025シーズンに向けて気を引き締めていた。



BC-3クラス
BC-3クラスも、全日本ドライバーの須藤浩志選手が「同じクラブの若手が出るので、どうせなら同じラリーを走ることで色々アドバイスできることがあると思って」と上原選手同様、育成を兼ねて借り物のZC32S型スイフトで参戦してきた。
この最終戦を前に三連勝中と、このクラスで絶対的な速さを見せるドライバーの細谷裕一選手とコ・ドライバー石垣晴恵選手のクルーが駆るNCP13型トヨタ・ヴィッツとの注目のバトルは、SS1で細谷/石垣組が須藤/槻島もも組を4.2秒差で下すが、SS2では須藤/槻島組が0.2秒差にまで迫り、唐沢線に舞台を移した。
しかし、須藤/槻島組はSS3でスローパンクチャーに見舞われて大きくタイムロス、勝負権を失うことに。一方、SS3とSS4で後続に大差のリードを築いた細谷/石垣組は、ナイトステージでもベストを連発してライバル達を最後まで寄せ付けず、快勝した。
「須藤さんが出るのでSS1からゼンカイでいきましたが、タイヤが新品でなかったこともあって落葉で滑りまくって大変なラリーでした。唐沢線は去年、下りでコースオフしたので今年は慎重にいきましたが、夜まで勝負がもつれていたら、どうなったか分からないですね」と、細谷選手は安堵の表情を見せていた。



BC-4クラス
BC-4クラスは今季、トヨタ・クラウンハイブリッドを持ち込んだ津田宗一郎/堀秀和組が、2戦2勝でランキングトップの室田仁/鎌田雅樹組が駆るCVT車両のNCP131型ヴィッツをSS1、SS2ともに大差で下して好スタートを切る。
津田/堀組はSS3、SS4も連取してナイトステージを前に室田/鎌田組に1分近いマージンを築いて独走態勢に入った。下りに転じたロングのSS6、SS8では室田/鎌田組が大差でベストを奪って盛り返すが、ショートのSS5、SS7では津田/堀組が競り勝ってリードをキープ。42.4秒の差をつけて逃げ切った。
クラウンでの初勝利を手にした津田選手は、「唐沢線は十数年ぶりに走りましたが、やっぱり楽しい道でしたね。重くて加速しないクルマなので、上りがネックになるかなと思ってましたが、SS4で堀さんがノートの、リーディングを改善してくれたお陰で、コーナリングの車速を上げることができて、(SS3より)8秒もタイムアップできました。このクルマを速く走らせるきっかけを、またひとつ見つけられました」と、納得の表情でラリーを振り返った。



JMRC長野県ラリーシリーズ第5戦
1クラス
併催したJMRC長野県ラリーシリーズ第5戦の1クラスは、宮崎克己/石澤裕子組が駆るランエボVIIIがSS1を獲るが、SS2では中村一朗/迫田雅子組がランエボVで宮崎/石澤組を1.1秒差で下して僅差ながらも首位に立つ。しかし唐沢線に移ったSS3では宮崎/石澤組が7.5秒競り勝って逆転。続くSS4でも15.5秒という大差で中村/迫田組を下してさらにリードを広げた。
陽が暮れて最初のSS5は中村/迫田組が今回のラリー2度目のベストを獲るが、宮崎/石澤組はSS6から3連続ベストで再び中村/迫田組を突き離し、新旧ランエボ対決を制して優勝。「過去2戦トラブルを抱えたまま走ったランサーが、ようやく本調子に戻ったお陰で勝てました」と、宮崎選手は最終戦で手にした今季初優勝に笑顔を見せていた。



2クラス
2クラスは、SS1で山下秀/HARU組のトヨタ86がベストを奪取。SS2では佐藤史彦/伊東美紀組のトヨタ・セリカがベストであがり、2クルーがまずは頭ひとつ抜け出すかたちとなる。SS3、SS4では山下/HARU組が連取し、10.6秒のリードをつくってサービスに戻ってきた。
しかしナイトステージに入ると、「排気量で劣るセリカは上りが厳しいので、下りで稼ぐしかないと思っていた」と、佐藤/伊東組が反撃を開始。SS5でベストを獲るとSS6では総合でも5番手タイムを叩き出して、一気に山下/HARU組を抜き去って首位に立つ。続くSS7でも総合2番手タイムであがった佐藤/伊東組はリードをさらに拡大。
最終のSS8も総合4番手タイムと速さを見せて、山下/HARU組を振り切った。「夜、実はロストもあって有視界で走った所もありました」とゴール後に明かしたドライバーの佐藤選手は、改造車で2WDのスバル・インプレッサで全日本ダートトライアル選手権のSC1クラスに参戦するダートトライアラ―としても知られている。
「若い頃は夜に有視界で走るのが当たり前だったので、今日はナイトステージと下りに助けられました(笑)。全然違うクルマに見えるけど、インプレッサとセリカはクルマの動きが似通っているので、違和感なく乗り換えることができるんです」と、その相乗効果が速さにつながっていることも明かした。



3クラス
今回のラリー最大の激戦区となった3クラスは、千葉県から遠征の岩見涼平/原田晃一組が駆るNCP13型ヴィッツRSがSS3以外の7SSでベストを奪う快走を見せて、開幕第1戦に続く今季2勝目を獲得した。グラベルで行われた開幕戦でも2WD総合トップの走りを見せた27歳の若手ドライバーは、今回の優勝で硬軟選ばぬ速さを証明した。
このラリーは昨季に続いての参戦となった岩見選手は、「唐沢線の上りは、昨年はグリップを余らせた走りをしてしまいましたが、今年はしっかり使い切る走りができたと思います。ただし下りはあまり進化できませんでしたね」とフィニッシュ後、苦笑交じりで振り返った。
目標にしているという同じヴィッツ乗りの細谷選手には23.9秒及ばなかったが、SS7では0.7秒凌ぐ速さも見せた。ラリーを始めて2季目ながら、このシリーズに並ぶ激戦区で知られる群馬ラリーの3クラスでも最終戦でシリーズ初優勝を飾ってチャンピオンを獲得しているだけに、来季以降の活躍も期待されるドライバーだ。




チャレンジ1クラス、チャレンジ2クラス
なおチャンレンジ1クラスとチャレンジ2クラスはそれぞれ1台のみの参戦となったが、チャレンジ1は後藤芳生/大野千明組が駆るGRヤリスが、チャレンジ2ではプジョー106を操る後藤祥之/水野保孝組がそれぞれ完走を果たした。



フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部