勝田貴元選手、WRC第12戦でスーパーサンデーとパワーステージを制し総合4位!
2024年11月19日
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2024年FIA世界ラリー選手権(WRC)は第12戦となる「セントラル・ヨーロピアン・ラリー」が、10月17~20日に開催された。ドイツとチェコ、オーストリアの3カ国にまたがり開催される過酷なターマックラリーに勝田貴元選手も、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のマニュファクチャラーズポイント対象ドライバーとしてコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手と組み、GR YARIS Rally1 HYBRIDで参戦した。
2024年FIA世界ラリー選手権 第12戦
セントラル・ヨーロピアン・ラリー
開催日:2024年10月17~20日
開催地:ドイツ、チェコ、オーストリア
第11戦「ラリー・チリ・ビオビオ」を欠場した勝田貴元選手は、「スキップしたことが良かったのか、悪かったのかは今後の結果次第だと思いますが、良かったと思えるように時間を使うことが僕の仕事だと思っていました」と第12戦までの時間を語った。「もちろん、自分が不貞腐れることもありせんでしたし、エンジニアやドライバーたちからいろんなアドバイスを与えてくれました。チリの経験が足りなくなりますが、いろんなことを考えるいい機会になったと思いますし、有意義に時間が使えました」とのことだ。
その一方で、「スキップした後にラリーに戻ってくることは初めての経験だったので、思った以上にプレッシャーがありました」とも語った。とはいえ、「第4戦クロアチア以来のターマックラリーになるので、テストでは最終戦のラリージャパンに向けてターマックの感覚を取り戻すとことからスタートしたんですけど、フィーリングが良かったです」と、事前テストについても触れた。
更に、「クルマの挙動の方向性もいいかたちで見えてきたし、ドライビングもクロアチアの時より改善することができたので、自信を持って挑むことができました」と語るように勝田貴元選手は久しぶりのターマックラリーを前に確かな手応えを掴んでいたようだ。
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10月17日・シェイクダウン、デイ1 / 18日・デイ2 / 19日・デイ3
「今大会はセバスチャン・オジエ選手とエルフィン・エバンス選手がヒョンデのティエリー・ヌービル選手、オィット・タナック選手と争う構図になることが予想されていたので、自分はバックアップチームとして近くで見ながら、トップ5をキープ。そのためにリスクを負わないように走ることがプランになっていました」と、今回のラリーでの作戦を語った勝田貴元選手。
それでも17日にチェコで行われたシェイクダウンで3番手タイムをマークすると、首都プラハでのセレモニアルスタート後のSS1で2番手タイムをマークし、デイ1は総合4番手につけた。
翌18日、デイ1に続きチェコが舞台となったデイ2でも勝田貴元選手は好調で、「クルマのフィーイングが良かったので気持ちよく走れていて、リスクを負えるセクションでプッシュできたので、タイムを稼ぐことができました」とのことでSS3での2番手タイムのほか、SS6でベストタイムをマークした。
「チェコのステージはインカットが多く、霧も多くて午前中はウェット。午後はドライになったのですが、森の中はまだ濡れているといったコンディションだったので、リスクを避けて気をつけながら走りました」と、勝田貴元選手は安定した走りを披露して、デイ2はトップから38.6秒差の総合5番手で終えた。
19日のデイ3はオーストリアとドイツが舞台となった。「霧が出るようなところもあったし、濡れていたのでアンパイに走っていました」と語った勝田貴元選手はSS9・10で連続4番手タイムを出した。しかし、「午前中の最後のステージで1カ所、グラベルクルーのインフォメーションが抜けていて、タイトなヘアピンのブレーキングでオーバーシュートしました。そこで20秒前後はロスしたと思います」と語るように、勝田貴元選手はSS11で7番手タイムと失速。
それでも、「ミスというミスはそれぐらいで、非常にいい感触を掴みながらペースコントロールができていました」と、勝田貴元選手はセカンドループでも安定した走りを続け、デイ3は総合5番手をキープした。
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10月20日・デイ4
「最終日に関してはチームからプッシュしていいよ、という指示を受けていましたが確実にクルマを持ち帰らないといけないので、周りの状況を見ながら、ライバルチームより前にいるペースで走りました」と語る勝田貴元選手は、20日のデイ4でもコンスタントな走りを継続。SS15で3番手タイムを残すと、SS16で今回のラリー2度目のベストを叩き出した。
そのため、勝田貴元選手は「いい状態できていたので、パワーステージでトップを狙えるんじゃないか、と思っていました」と自信を覗かせていたのだが、総合トップだったチームメイト、セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組がこの日のオープニングステージとなるSS15でコースアウトで総合2番手に後退すると、SS17でもコースアウトを喫してリタイアしてしまった。
このSSで3番手タイムをマークし、総合4番手に浮上した勝田貴元選手は、「セブ(オジエ選手)がリタイアしてポイント的には厳しい状況となりました。当初は何かあった時のために、僕は残ることを前提にプッシュすることが日曜日のプランだったんですけど、僕とエルフィン(エバンス選手)だけになったので、プランを切り替えてパワーステージはフルアタックでポイントを稼ぐことになりました」と、最終SS18のパワーステージで全開アタックすることになったのである。
こうしてパワーステージに挑んだ勝田貴元選手は見事、今回のラリー3度目のベストをマークしてパワーステージを制覇。その結果、総合4位に入賞してパワーステージでの最大ポイント、5ポイントを獲得した。更に日曜日の合計ステージタイムで争われるスーパーサンデーも制した勝田貴元選手は、7ポイントも加算したことで合計22ポイントを獲得。チームのマニュファクチャラーズチャンピオン争いにも貢献したのだ。
勝田貴元選手は、「週末を通してクルマのフィーリングが非常に良かったので、スーパーサンデーもトップで終わることができました。チームに対して最大限の仕事ができたのでいいラリーになったと思います」と、好調だった今回のラリーを振り返った。
その一方で「1kmあたりコンマ1秒を上げていきたい、という部分においてはパワーステージでもポイントを獲得できるようになったので、思うように出せるようになってきました。絶対的なスピードに関しては大きな改善ができていますが、そのスピードを結果に繋げられない状況が続いています」と、課題もあるようだ。
更に「クルマの限界値が上がったことで、小さなミスが大きなクラッシュに繋がるんですけど、その半歩先を行かないっていうところの見極めがうまくいかなかったことが、安定感に欠けていた要因だと思います」とのことだ。そして、「自信をもった上でラリーを組み立てる。プッシュするところはプッシュして、見るべきところは見る…といった部分を探している状況です」と、勝田貴元選手は付け加えた。
そのうえで次戦、ホームラリーとなる「ラリージャパン」について、「チャンピオンシップという部分ではトヨタ勢としては勝利しかないので、とにかく全てを出し切って最高のかたちで終われるようにしたいです。自分たちには守るものがないし、追われるより追う方が楽しめると思うので、そのマインドで戦いたいですね」と、意気込む。
加えて、「今回のセントラル・ヨーロピアン・ラリーとジャパンのステージのキャラクターはかなり違うのでアジャストが必要になってくるんですけど、昨年のジャパンで晴れも雨も経験しています。ペース的に足りない部分を分析して、ジャパンに適応できるようなセットアップを突き詰めて日本に入りたいですね」と語った。
「チームとしてはもちろんですけど、個人としてもホームラリーなのでいい結果を持ち帰りたい。日本人が優勝するところを多くのファンが期待されていると思うので、それを達成できるように最高の準備をして臨みます」と語っているだけに、11月21~24日に愛知県と岐阜県で開催される第13戦「ラリージャパン」での勝田貴元選手の活躍に期待したい。
第12戦はヒョンデi20 N Rally1 HYBRIDを駆る、HYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM(ヒョンデ)のタナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組が2024シーズン2勝目を獲得。総合3位に入ったドライバーおよびコ・ドライバーランキングトップのチームメイト、ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組に迫った。TGR-WRTのエバンス/スコット・マーティン組が総合2位入賞を果たした。
ドライバーおよびコ・ドライバーチャンピオンは25ポイント差でヌービル/ヴィーデガ組とタナック/ヤルヴェオヤ組のチームメイト対決、マニュファクチャラーズチャンピオンはトップのヒョンデと15ポイント差で追うTGR-WRTの勝負。ラリージャパンでは、王座争いの行方にも注目だ。
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フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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