勝田貴元選手がWRC第9戦フィンランドでデイリタイアもパワーステージ初制覇!
2024年8月23日
2024年FIA世界ラリー選手権(WRC)第9戦、シリーズ屈指の超高速グラベルラリーである「ラリー・フィンランド」が8月1~4日に開催。フィンランドの首都ヘルシンキから北へ約270kmの距離に位置する、ユバスキュラ周辺が舞台となった。日本人ドライバーの勝田貴元選手はマニュファクチャラーズポイントの登録外ながら、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のドライバーとしてコ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手と組んでGR YARIS Rally1 HYBRIDに乗り込み、参戦した。
2024年FIA世界ラリー選手権 第9戦
ラリー・フィンランド
開催日:2024年8月1~4日
開催地:フィンランド・ユバスキュラ周辺
8月1日・シェイクダウン、デイ1
フィンランドは第7戦「ラリー・ポーランド」、第8戦「ラリー・ラトビア」に続く高速グラベルラリー三連戦を締めくくるラリーで、今季のグラベルラリーでは最も平均速度が高いが、フィンランドを拠点にキャリアを積み重ねてきた勝田貴元選手にとっては“第2のホームラリー”と呼べる得意なラリー。
事実、勝田貴元選手は2023シーズンのこのラリーでも総合3位表彰台を獲得しており、「ターゲットは昨年以上で、表彰台はもちろん優勝争いをしていく、というところを目標に置いていました」と語る。
テストから勝田貴元選手は好感触で、「クルマのフィーリングはテスト段階から良くて自信を持ってラリー・フィンランドに挑みました」とのこと。更に1日のシェイクダウンも好調で3番手タイムをマークし、「1回目の走行では、今回初めて導入されたバーチャルシケインを確認していましたが、本格的に走行した2本目はトップとコンマ数秒差でタイムも悪くなかったです。セッティングを含めてフィーリングは良かったです」と好感触を掴んでいたようだ。
その勢いは夜に行われたSS1でも健在で、「昨年以上の結果を求めるためには、序盤からプッシュしていかないといけません」との言葉を実践するように勝田貴元選手は、ユバスキュラ市街地を舞台に争われたこのステージで、2番手タイムをマークしてデイ1を終え、好スタートを切ったかに見えた。
8月2日・デイ2 / 3日・デイ3
しかし、勝田貴元選手は「事前のテストではドライだったんですけど、金曜日は雨が降ったり止んだりで天候の読めないコンディション。セッティングも含めて難しい状況でした」と、語るように2日のデイ2で苦戦を強いられた。
それでも、勝田貴元選手はSS2で4番手タイムをマークすると、SS3は5番手タイム、SS4で6番手タイムをマークし、総合順位でもトップから6.8秒差の総合4番手で4つのSSを消化。「フィーリングはあまり良くなったんですけど、タイム的にはそんなにトップから離されていなかったので、大きく外している感じはありませんでした。微調整をして詰めていけばまだまだ戦えるな、という感覚でした」と手応えを語っていたのだが、次のSS5で予想外のハプニングが発生した。
「ステージ序盤の左コーナーのところで、泥が混じったような路面がありまして、そこにアンダーステアで入ってしまって。立ち木に右のリアをぶつけて、サスペンションを破損してしまいました」と、勝田貴元選手は車両を破損。三輪状態でこのSSを走り切り、応急処置を施してサービスへと戻っていった。
しかし、「持っている全ての物を使って、右のリアを固定していたんですけど、サービスまであと7kmぐらいのところで、完全にサスペンションがもげ落ちた状態になって。WRCのレギュレーションで4つのタイヤが設置して回転している状況でないとロードセクションを走れないので、そこでマシンを止めました」と語るように、勝田貴元選手はデイリタイアを決断することになったのである。
「トップに食らいついていく場面の中、小さなミスでチャンスを失ったので、残念なデイリタイアとなりました」と語るように、勝田貴元選手にとっては悔しい序盤となった。それでも「雨が降り続いていて土曜日以降も不安定なコンディションとなりそうだったし、日曜日はスーパーサンデーでポイントを獲得できるので、気持ちを切り替えました」とのことで、2日のデイ3で再出走を果たした。
「チームのおかげでクルマは完璧に直っていました。僕たちはデイリタイアしているので、色々なセッティングを試していたんですけど、先頭スタートでラインがなくて、あまり良い感覚ではありませんでした」と、勝田貴元選手の苦戦が予想された。それでもSS12・13で連続3番手タイムをマークした他、「土曜日にいろいろと試したことで、日曜日に向けて自分がいくべき方向性が見つかりました」とのことで、翌日のスーパーサンデーへの手応えを掴んだ様子だった。
8月4日・デイ4
事実、勝田貴元選手は「今回はマニュファクチャラーズポイントの対象ではなんですけど、自分がポジションを得ることでライバルチームのスコアを減らせることから、自分の順位を見ながらプッシュしていくようなアプローチで戦っていました」との言葉を実践するように、4日のデイ4で素晴らしい走りを披露した。
SS19でベストタイムをマークすると、パワーステージとして行われた最終のSS20でも続けてベストをマーク。「最初のステージで(エサペッカ)ラッピ選手より遅いタイムだったのでスーパーサンデーは2番手という扱いになりましたが、パワーステージはフルポイントが取れました」とのことで、勝田貴元選手は貴重な11ポイントを重ねてフィニッシュした。
勝田貴元選手は序盤で総合優勝争いから脱落しながらも、再出走後には安定した走りを披露し、最終日には好タイムを連発した。しかし「長い目で週末を戦えるようにしないと、いい結果を得られません。最終日の自分が持っていたペースには自信が持てるものだったので、そのスピードを結果に繋げられるように、状況を見ながら組み立てていけるようにしたい。視野を広く、長い目で戦っているようにしたいですね」と、自身の課題を語る。
更に「テクニカルトラブルで落としたラリーもありますが、自分のミスで落としたりと、今年はスピードを結果に繋げられない状況が課題としてあります。ペースをマネジメントしながら走ってなんとかできるカテゴリーではないので、戦う時はプッシュしないといけません。週末は長いので、それを小出しにしながら、ムラなく週末を通して発揮できれば結果につながると思うので、残りの4戦はそれを実践したいです」と、続けた。
そして「過去に2回出場していますが得意意識のあるラリーではないので、テストを行なって自信を持って挑めるようにしたい。まだグラベル戦が2戦続くので、今年最後の2戦のターマックに繋げられるように、最初のギリシャは表彰台で終われるように頑張っていきたいです」と、勝田貴元選手は次戦への意気込みを語った。9月5~8日にギリシャで開催される第10戦「アクロポリス・ラリー・ギリシャ」での彼の活躍に期待したい。
なお、フィンランドを制したのは勝田貴元選手のチームメイト、セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組で、今季3勝目を獲得した。同じTGR-WRT勢のカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組が今季4勝目、念願のホームラリー初制覇に向けて首位を快走していたが、フィニッシュ目前のSS19でコースアウトから無念のリタイアとなってしまった。
逆転で勝利を挙げたオジエ/ランデ組はドライバー及びコ・ドライバーランキングでトップから27ポイント差の2番手に急上昇し、王座争いに名乗りを挙げることに。マニュファクチャラーランキングではTGR-WRCの2番手は変わらなかったが、トップからは20ポイント差に離された。
フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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