初ウィナー続出の中部ジムカーナ開幕戦、B・SC1鈴木教史選手は全体トップで初優勝!

レポート ジムカーナ

2025年3月27日

2025年JAF中部ジムカーナ選手権が3月16日に開幕を迎えた。第1戦の舞台はここ数シーズン恒例となっている、愛知県岡崎市に建つキョウセイドライバーランド。しかし、天気は生憎の雨模様となった。目まぐるしく変化するコンディションとグリップに、一早く対応できたスラローマーが勝ち名乗りを上げた!

2025年JAF中部ジムカーナ選手権 第1戦
JMRC中部ジムカーナ選手権 第1戦
JMRC全国オールスター選抜 第1戦
M-I協和整美CUP 2025

開催日:2025年3月16日
開催地:キョウセイドライバーランド(愛知県岡崎市)
主催:M-I

 今季もキョウセイを中心に全7戦が予定されている中部地区戦。この開幕戦と第4戦、そして第6戦がここキョウセイで開催されることもあり、チャンピオンを鑑みると今回の一戦の結果は王座争いに大きく影響を与えそうだ。

 しかし、美浜サーキットクニモトや鈴鹿サーキット南コースなどのハイスピードコースや、奥伊吹モーターパークやイオックスアローザスポーツランドといった、キョウセイよりパイロン処理が重要となるコースでの一戦も控える。得手不得手がはっきりと分かれるだけに、いかに得意なコースでポイントを重ねるかでも、王座を争う流れは大きく変わりそうだ。

2025年JAF中部ジムカーナ選手権の開幕第1戦には110ものスラローマーたちが集った。雨が降る中、早朝から車検担当のオフィシャルたちが安全面などの検査を行った。

 今回の一戦を主催するのはキョウセイでのジムカーナではおなじみ、静岡県のJAF加盟クラブのチームエムアイ(M-I)。前島孝光代表は、自身もマツダRX-7をドライブし、今季からB・SC3クラスに統合された旧SA3クラスのディフェンディングチャンピオンだ。

 現役地区戦王者の前島代表を慕う仲間たちが集まって結成された、M-Iだからこそできる主催を楽しみにしているスラローマーも多い。開幕戦のレイアウトを制作したのも、もちろん前島代表だ。「スピードが出ても、しっかり雨が降っても、安全を確保したコースをつくりました。キョウセイドライバーランドだからできる、セーフティーゾーンの確保しやすさを如何なく使っています。安全だから踏んでいって、1,000分の1秒の争いができるコースになっていると思いますよ」と、今回のレイアウトを解説した。

 実際にコース設定を見てみると、広いスペース部分に高速スラロームが配置され、最終セクションには方向が異なる定常円とターンの組み合わせ。ジムカーナの基本動作が要求される絶妙なレイアウトになっている。

開幕戦を主催する静岡県のJAF加盟クラブ、チームエムアイ(M-I)を率いる前島孝光代表。自身も2024シーズンのSA3クラスチャンピオンだが、今回の一戦は組織委員長と競技長を務めて主催に専念した。
ドライ用とウェット用、2通りのレイアウトが用意された中からウェット用が選ばれた。様々な速度域のコーナーやターンが待ち受ける、攻め応えのあるレイアウトだ。

 今回の一戦では参戦したスラローマーたちに向けて『技術豚汁』の無料配布も用意。これはM-I主催によりここキョウセイで開催された、2023年JMRC西日本ジムカーナフェスティバルin中部でモーニングなどとともに好評だった鳥野菜鍋に代わるサービス。技術オフィシャル秘伝のレシピで作られた豚汁を、2nd Try前の慣熟歩行中に無料で振る舞った。震えあがるほどの寒さとなったこの日にはうってつけとなり、朝からコントロールタワー2階で気合を入れて仕込む技術オフィシャルたちにも力が入った。

技術オフィシャル特製、根菜類たっぷりの『技術豚汁』は昼の慣熟歩行中に満を持して登場。寒空の下で働くオフィシャルたちにも人気で、おかわり希望者が続出するほど大好評だった。

 明け方から降り続いた雨のため、路面はウェットで1st Tryがスタート。しかし、天気予報では午前中に雨が上がり、2nd Tryはドライアップした路面での勝負と予想された。事実、1号車が1stのスタートラインにつく前に雨は上がり太陽こそ出なかったものの、風があるため路面の乾きは早そうに思えた。

 だが波乱の開幕戦は午後、更にもう1回降雨の予報もされていた。雨雲レーダーでは当初、2ndが終わる15時頃からの降雨が予想されていたが、徐々にその時間は早まり14時には降り出す予報へと変化。天を見上げ、雲の様子を伺いながら戦うことになった今回の一戦。天を味方につけ、運を手繰り寄せる実力を持ったスラローマーは誰か!? その雌雄をつける幕が開けた!

雨中の慣熟歩行では難易度が高い定常円などを、念入りにチェックするスラローマーたちも見られた。

PN1クラス

 PN1クラスは排気量1500㏄未満で前輪駆動、FIA/JAF公認発行年またはJAF登録年が2018年1月1日以降のPN車両で競われる。PN1~5クラスと、開幕戦では不成立だったATクラスで使用できるタイヤは、JMRC中部が定めた規則に準じる。

 中部地区戦のPN1はトヨタ・ヤリスのワンメイクで少数精鋭による争いとなっているが、JAF全日本ジムカーナ選手権でも徐々に台数が増え、各地の地区戦などでも増加傾向にあるクラスだ。

 2024シーズンはZC32S型スズキ・スイフトスポーツを駆り、PN2クラスで2勝を挙げた岡直輝選手が、2024年JAF九州ジムカーナ選手権PN1クラスを制した堂本直史選手が使っていた車両に乗り換えてクラス転向。1stから2番手以下を3秒以上突き放すトップタイムで折り返した。

 2ndを前に路面は所々ウォーターパッチが残るものの、高速区間はドライアップし始めた。河野拓也選手がトップタイムを1秒近く塗り替えるも、岡選手は更に上をいく走りで余裕の逆転。すでにヤリスを手の内にした感もある、貫禄ある走りを見せて優勝を手にした。

「ゆくゆくはスポットでも全日本に参戦したいということもあり、ヤリスを選びました。車速を落とすところと、しっかりGをのせていく場所が分かれているのでメリハリが難しかったです。リア(タイヤ)が新品だったこともあり、ちょっとナーバスな動きになってしまいましたが、2本目はしっかり走れました。今年は地区戦をメインに朝山(崇)選手や斉藤(邦夫)選手を目指して頑張りたいです」と、岡選手は今回の走りとともに目標も語った。

2024シーズンはPN2クラスでランキング5位だった岡直輝選手(M-I☆SUAC☆DLヤリス)がPN1クラス転向初戦で優勝し、幸先良いスタートを切った。
少数精鋭による勝負となったPN1は、トップ3が表彰された。左から2位の河野拓也選手(三共DLエナぺTヤリス)、優勝した岡選手、3位の八木陸斗選手(DL菅沼自工μTUACヤリス)。

PN2クラス

 PN2は1600cc以下で2WDのPN車両が対象で、若手からベテランまで、ツワモノたちがしのぎを削るクラスだ。シードゼッケンを背負うのは昨季のランキング上位を占めた島倉正利選手、前田清隆選手、深川敬也選手の3選手。

 1stこそ雨が上がったとはいえ、試走車までもスピンを喫してしまうほど低μの路面に多くのスラローマーたちが苦しむ中、1stでトップタイムをマークしたのはやはりこの人、ディフェンディングチャンピオンの島倉選手だった。

 しかし、路面が乾きほぼドライでのアタックとなった2ndで、島倉選手のタイムはクラスファーストゼッケンで近畿からやってきた、抱博高選手によって早々に塗り替えられた。ここからはターゲットタイムの塗り替え合戦! ベテラン前田忍選手が、1分16秒台で推移していたトップタイムを1分15秒台に押し上げ、ラスト3となるシードゼッケン勢が出走順を迎えた。

 まずは深川選手がスタート。「僕ができる限りのことはやりました! 後は天に祈るだけです」と走りをまとめ、前田忍選手を0.178秒上回る1分15秒318を記録してトップタイムを更新。続く前田清隆選手は序盤のスラロームの進入で大きくテールをスライドさせてしまう。「リアタイヤが温まる前で、トラクションがかかりませんでした」とのことだったが、それでも深川選手のタイムを0.293秒上回り、さらにターゲットタイムを塗り替える。

 そして、島倉選手のアタックにはPN2全スラローマーの熱い視線が集まった。前半セクションはスムーズでそつのない走り。しかし、後半セクションはパイロンの際を攻める攻撃的なマニューバを見せつける。前田清隆選手に0.487秒差をつけるクラスでただひとりの1分14秒台を叩き出すと、会場から自然と拍手が沸き上がった。昨季は開幕戦を落としてしまった島倉選手が、その雪辱を晴らす快勝を成し遂げた。

「1番良かったところはウェット(1st)でもしっかりトップタイムを残せたのが良かったです。ウェットでタイムが出ていれば、攻め方は間違っていないと思っていたので、それが良かったです。今回は曲げるキッカケが少なくて、減速しないでいかにボトムスピードを上げていくかを考えて走りました。特に短い直線でも全開区間をとりにいくようにしました。このまま全勝でシリーズチャンピオンを獲りたいですね」と、島倉選手は笑顔で勝因を語った。彼らシード組トップ3の牙城を誰が崩すのかにも、注目が集まりそうだ。

マツダ・ロードスターのワンメイクとなったPN2クラスは、島倉正利選手(DL菅沼VTμS+ロードスター)がディフェンディングチャンピオンの貫禄を見せて、2Tryともトップタイムで開幕戦を制した。
PN2の2nd Try終盤で白熱のタイムアップ合戦を繰り広げたシードゼッケン勢の一角、前田清隆選手(DLμNUTEC和ロードスター)が2位を獲得(左)。1st Tryでは6番手だった深川敬也選手(DLエナぺPFRロードスター)が2ndで巻き返して逆転、3位に入った(右)。
PN2は左から、4位の前田忍選手(SPMT2ロードスター)、2位の前田清隆選手、優勝した島倉選手、3位の深川選手、5位の鰐部光二選手(DLワコーズエナぺロードスター)が表彰された。

PN3クラス

 1600ccを超える2WDのPN車両が競うPN3は、開幕戦最多の26選手を集めた。1stは圧倒的に前輪駆動のZC33S型スズキ・スイフトスポーツ勢が優勢と思われるコンディションの中、スタートが切られた。その予想どおり、ZN8型GR86/ZD8型スバルBRZとマツダ・ロードスターRFの後輪駆動勢が1分18秒台以下で苦しむ中、スイフトを勇猛に加速させた田村直選手が2番手以下を1.5秒以上放すトップタイムをマークする。ダンプコンディションではあるものの、ライン上がまだ濡れている中で後輪駆動勢は田村選手のタイムを越えられなかった。

 だがしかし、2ndはコンディションが大きく改善する。GR86を駆って5番目に出走した春日井穣選手が田村選手のターゲットタイムを抜きさったと思えば、続く大多和健人選手が繊細な走りを披露して、更にトップタイムを更新。「基本的には連続ターンでいかに前に出せるかが勝負だったと思います。FF勢にはターンで勝つことはできないので、ストレートをいかに速く走らせるかに注力しました」と、大多和選手は走りを解説した。

 このまま大和田選手が逃げ切るかと思われたが、待ったをかけたのはやはり、田村選手だった。1stでの走りにも勝る大胆なブレーキングで攻めて、トップタイムを塗り替えることに成功。続く安仲慶祐選手は「1本目のウェットのイメージが残ってしまって、ブレーキで突っ込めませんでした」と無念さをにじませる3番手タイム。そして、ディフェンディングチャンピオン森嶋昭時選手もトップタイムを更新することはできず7位に留まり、田村選手が勝利を勝ち獲った。

「1本目も手応えはあったんですが、2本目は晴れると思って気持ちをリセットして走りました。特にFR(後輪駆動)勢に差をつけることができるターンセクションを、しっかりと回れたと思います。主催チームなんですが、選手として参加させてもらい前島さんには感謝しかありません」と、主催クラブM-I所属の田村選手は感謝しきり。第2戦以降も全勝を果たしての、満点チャンピオンを目標に掲げた。

激戦区のPN3クラスでは、2024シーズンランキング3位でシードゼッケンを背負う田村直選手(DL M-Iスイフト)が2Tryとも果敢な走りを披露してトップタイムを譲らず。旧PN2でチャンピオンを獲った、2022シーズン第5戦以来となる中部地区戦優勝を果たした。
マツダ・ロードスターRFを駆って2024年JAF全日本ジムカーナ選手権PN3クラス王者に輝いた、大多和健人選手(AZURト・リプルS・GR86)がダブルエントリーのZN8型GR86でPN3の2位。車種を問わない速さを見せた(左)。1stでは下位に低迷していた安仲慶祐選手(モティーズDLプロードスターμ)だったが2ndでは3位まで挽回した(右)。
PN3の表彰。左から6位の季羽英史選手(DLプロμPRSロードスター)、4位の山田拓選手(DLΩ東海理化BRZ)、2位の大多和選手、優勝した田村選手、3位の安仲選手、5位の中川篤選手(アレンジITOスイフトDL)。

PN4クラス

 旧型となったZN6型トヨタ86/ZC6型BRZのPN車両が対象となる、中部独自のクラスがこのPN4だ。昨季の王座を争ったトップ2がPN3に転向したため、最終ゼッケンは昨季ランキング3位だった下河辺友貴選手が担う。

 このクラスも、もちろん2nd勝負となった。1stは則包壮大選手を筆頭に小林輝史選手、かつこ選手の順で1分20秒台を記録してしっかりと地盤を固めた。下河辺選手は生タイムこそトップタイムをマークしていたものの、パイロンペナルティで沈んでしまう。

 2ndに入ると空にはどんよりと重くのしかかるような雲が広がり始めた。いつ雨が降ってもおかしくない状況の中で、廣濱佳和選手がトップタイムを更新する。廣濱選手のタイムが後続にとって大きな壁となったが、ラスト3を前に「ウェットで1位だったので雨ごいしていたんですが、晴れてこれはダメだと思っていました。2本目はめちゃくちゃ攻めました。ミスもありましたが、開き直ったのが良かったです」と、好走を見せた則包選手が逆転!

 ラスト3はトップタイム更新を果たせず、則包選手が逃げ切りに成功。「凄く嬉しいです! このまま勝ち続けられるよう頑張ります!!」と、笑顔で地区戦初優勝を手にした。

2024シーズン、PN4クラスにステップアップして3位が最高位だった則包壮大選手(comeback*86)が地区戦初優勝を果たした。
PN4の下川辺友貴選手(DLスエマツダ86)は1stで犯したパイロンペナルティから挽回を果たして2位を奪取(左)。小林輝史選手(M-I☆DL☆Proμ☆BRZ)はZC6型スバルBRZ勢最上位となる3位を獲得した(右)。
PN4はトップ3、左から2位の下川辺選手と優勝した則包選手、3位の小林選手が表彰台に登壇した。

PN5クラス

 PN5はPN1~4の区分に該当しないPN車両が競う。今回の一戦にはJAFスピード競技ターマック部会の委員を務め、2025年JAF全日本ジムカーナ選手権PN4クラスに参戦している松本敏選手が、地方選手権の視察と全日本第2戦に向けての調整を兼ねて参戦してきた。

 大方の予想は松本選手が2位以下にどれだけの差をつけて勝利するか、に注目されたが松本選手はまさかの両Tryでパイロンペナルティを犯してしまい轟沈。この好機をしっかり活かし、勝利を手にしたのは昨季ランキング2位だった高木健司選手。ディフェンディングチャンピオンの杉本季優選手が2ndで犯したパイロンペナルティにも助けられた。

 二季連続で開幕戦を制した高木選手は、「今日は松本選手がパイロンを触ってくれたおかげです。2日前まで不動車だったので、なんとかギリギリ勝てました。1本目、グリップしないかと思ったんですが路面も良くなっていたので悪くはなかったんですが、やはり2本目はほぼほぼドライになったので勝負をかけました。最後の2本巻きをちょっと失敗してしまいましたが勝てて嬉しいです。昨シーズンはチャンピオンを逃してしまったので、取り返せるよう頑張ります」と、王座奪還を誓った。このクラスもチャンピオンを巡るアツい戦いが繰り広げられそうだ。

1stはPN5クラス3番手で折り返した高木健司選手(DL速心PRSコーワヤリス)だったが、2ndで4秒近くタイムを上げてクラス唯一の1分15秒台に突入して逆転優勝を挙げた。
PN5もトップ3、左から2位の田中真澄選手(DL・PTAプレスコGRヤリス)と優勝した高木選手、3位の大前尚史選手(DLエナぺモンテURGヤリス)が表彰台に上がった。

B・SC1クラス

 昨季まではB・SCは2クラスだったが、今季からはB・SCがSAの4クラスを統合、2WDのクラスが細分化された。新たなB・SC1クラスは1600cc以下で2WDのB/SC車両で競う。なお、B・SC1~4クラスで履けるタイヤは、JMRC中部が定めた規則に準じる。

 Sタイヤを装着できるB・SC各クラスの1stが始まる頃には、ウォーターパッチの水しぶきも随分小さくなり、ドライ路面が目につくようになってきた。そんな中をトップタイムで折り返した稲岡凌平選手は、2番手以下を1秒以上置き去りにする走りを見せた。

 そして勝負の2ndを迎えたが、とうとう空から雨が落ち始めた。予報よりも1時間近く速い降雨に、スラローマーたちは戸惑いを隠せなかった。しかし、その状況にもかかわらず鈴木教史選手が驚異のスーパーラップ、開幕戦での総合トップタイムとなる1分11秒979を叩き出した。まだ路面に影響がなかったとはいえ、フロントガラスに雨粒がつき始めたプレッシャーの中でこのタイムは賞賛に値する。

「1本目はタイヤ(の寿命)がなくなってしまったこともあり、トラクションがかからずアクセル踏んでも加速しない感じでした。2本目はタイヤを変えて、晴れたら勝てると信じて切り替えました。僕がスタートした段階で雨粒がガラスにつき始めたので、“僕の後ろはダメだ!”と思いながら走りました。EKシビックが有利な高速コーナーで差をつけられたんだと思います。3年目での初優勝、とにかく嬉しいです。今年はクルマのセットも良い感じなので、あわよくばシリーズチャンピオンを獲れたら嬉しいです」と鈴木選手は喜んだ。地区戦初優勝を果たして、一皮むけた走りにも注目したい。

1stではB・SC1クラスの2番手タイムにつけた鈴木教史選手(TOLAP'プロμYHシビック)が2ndでは開幕戦唯一1分11秒台に突入する見事な走りを見せて、地区戦初優勝を達成した。
1stをB・SC1のトップで折り返した稲岡凌平選手(DL名神タイヤCRX)は2ndで1秒以上タイムアップを果たすも鈴木選手のスーパーラップには敵わず、2位になった(左)。1stでは3番手だった小木曽浩之選手(エナペタルMア陶プロμシビック)は2ndでタイムを上げたが順位は変わらず3位を得た(右)。
B・SC1は左から、2位の稲岡選手と優勝した鈴木選手、3位の小木曽選手が表彰台に登壇した。

B・SC2クラス

 今季から1600ccを超える前輪駆動のB/SC車両が集うことになったB・SC2は、 B・SC1に続き2ndもセミウェット状態での接戦となった。ここまでのクラスは2ndで大きくタイムが上がっていたが、B・SC2からはタイムの上がり幅に陰りが見え始めた。

 1stをトップで折り返したのは、ドライアップする路面をいち早く捕らえた深谷天翔選手だった。ひとり1分12秒台を記録し、2番手以下を大きく引き離して2ndを迎える。しかし、2ndは前述のとおり、再びの雨で路面のグリップは徐々に失われていくのが目に見えている状況だった。

 深谷選手はベストタイムを0.1秒以上押し上げることに成功はするが、それでも大きなタイムアップとはならず。これは僅差の勝負になると思われた矢先、1分12秒478でターゲットタイムを更新したダークホースは水谷琢志選手だった。「路面はあまり気にせず、自分が1本目失敗した部分を修正できれば勝てると信じていきました」と、タイヤの空気圧を上げて挙動をクイックにし、立ち上がりのトラクションを活かした走りを披露して強豪がひしめくB・SC2を制した。

 チームメイトのB・SC1鈴木選手とともに、地区戦初勝利に歓喜した水谷選手は、「凄く嬉しいです! 地区戦出始めて2年、苦労し続けてきて、やっとクルマのセットアップも見えてきました。できるならこのまま勝ち続けていきたいです」と笑顔で語った。水谷選手をはじめ若手の台頭が著しいこのクラスだが、ベテラン勢の逆襲にも期待だ。

B・SC2クラスは2ndで自らの走りに徹した水谷琢志選手(K1YHプロμインテグラ紫NU)が2秒近くタイムアップを果たして逆転、地区戦初優勝を成し遂げた。
ホンダ・インテグラ勢による上位争いとなったB・SC2。1stから1分12秒台を出してトップに立った深谷天翔選手(YH大曽根製氷KRPインテグラ)だったが、2ndではわずかなタイムアップに留まり、2位となった(左)。1stで2番手につけた加藤秀彰選手(プレジャーADVANインテグラ)は2ndではタイムアップできなかったが、3位に入った(左)。
B・SC2の表彰台には左から、2位の深谷選手、優勝した水谷選手、3位の加藤選手が登壇した。

B・SC3クラス

 1600ccを超える後輪駆動のB/SC車両が競うB・SC3。昨季はSA3で勝利数が最多だったものの、チャンピオンは今回の一戦を主催する前島代表に譲ることとなった、トミーアルパカ選手。今季の開幕戦は塩澤広充選手とのダブルエントリーで参戦、ふたりでこのクラスの制圧にかかった。

 しかし、手練手管に長けたベテランがひしめくB・SC3では、そう簡単に思いは達成できない。しかし、塩澤選手は1stを1分14秒台のトップで折り返すことに成功。トミー選手は後走のアドバンテージを活かせず、1分16秒台で4番手と低迷してしまう。

 そして、小雨が路面を濡らす中スタートを切った2ndだったが、塩澤選手は更に1分13秒台に突入。クラス最終ゼッケンのトミー選手が1分14秒285をマークした平野聡選手を抜きさえすれば、ふたりの描いたWエントリーでの1-2フィニッシュが叶う。

 プレッシャーがかかる中、トミー選手は前半で絶妙なターンを見せてタイムを稼いでいく。塩澤選手が温めたタイヤで蹴り出しはやや有利だが、後半に入るとタイヤがタレる不安も大きい。そんな中でも塩澤選手には約0.2秒差届かなかったが、1分13秒台に入れてみせた。優勝は塩澤選手、トミー選手が2位をもぎ取り、念願の1-2を決めた。

 地区戦初優勝を果たした塩澤選手は、「1本目はウェットながら上手く走れたんですが、2本目勝負となってミスをした部分もあったんですが、それでもなんとかトップタイムで帰って来れました。トミー選手が無事2位に入ってくれたんで、目標を成し遂げました。オーナーとしての面目躍如も保てました(笑)。“黄色いS2000といえばアルパカ”というイメージを今年払拭できるように頑張ります」と、喜びと今季の目標を語った。

 一方、トミー選手は「クルマにアルパカがついていなかったので“2アルパカ力”足りなくて負けちゃいましたね。マシンとのシンクロ率が足りませんでした。エンジンがオーバーホールからあがってきたら自分のマシンで参戦しようと思っているので、負けないで頑張ります」と自らのホンダS2000での逆襲を誓った。今季は“黄色いS2000旋風”が中部に巻き起こるのかにも注目したい。

B・SC3クラスは2Tryともにトップタイムを残した塩澤広充選手(HRC瀬戸自魂ノ槍投S二千YH)が完全制圧で地区戦初勝利。塩澤選手のホンダS2000でダブルエントリーしたトミーアルパカ選手(K1アルパカS二千プロμYHス)と拳をぶつけて喜んだ。
塩澤選手とWエントリーでB・SC3の1-2フィニッシュを目論んだトミー選手は1stの4番手から逆転で2番手に飛び込み、目標を成し遂げた(左)。1stで3番手につけた平野聡選手(プロμYHコサ犬RX-7)はタイムアップした2ndでトミー選手に逆転されたものの、順位は変わらず3位に入った(右)。
B・SC3は左から、2位のトミー選手、優勝した塩澤選手、3位の平野選手が表彰台に上がった。

B・SC4クラス

 B・SC4クラスは旧B・SC2と同じく4WDのB/SC車両がしのぎを削り、全日本スラローマーから親子でのWエントリーまで、ベテラン勢がひしめいている。

 ディフェンディングチャンピオンの鳥居孝成選手がまさかのタイムダウンで下位に沈んだ2ndで、表彰台の頂点に立ったのは1stでミスコースを犯した松尾勝規選手だった。雨の中、桃井守選手や岡部隆市選手といったSC車両勢を相手に、B車両の三菱・ランサーエボリューションⅨを駆って見事、ジャイアントキリングを達成した!

「1本目ミスコースをしてしまい、これで2本目もやらかしたらと思い、必死でコースを走りました(笑)。先月あたりにACDの調整などをしたのも功を奏してターンセクションも満足です。今年もできる限り参戦したいですね」と、松尾選手は背水の陣での大逆転劇に喜びを露わにした。

B・SC4クラスの松尾勝規選手(URGフォルテDL國盛ランサー)は1stでのミスコースで崖っぷちに立たされるも、2ndは懸命な走りで一気に大逆転勝利を引き寄せた。
1stをB・SC4のトップで折り返した桃井守選手(スオBSジールももクリランサー)は2ndでタイムアップを果たしたものの、松尾選手に逆転されて2位となった(左)。昨季ランキング2位の岡部隆市選手(BSコサリックワンランサーⅩ)は1stの2番手タイムからタイムアップは果たせず、それでも3位を確保した(右)。
B・SC4の表彰台には左から、2位の桃井選手と優勝した松尾選手、3位の岡部選手が登壇した。

Dクラス

 クラス区分なしのDクラスは、絶対王者・佐藤宗嗣選手が長年君臨しているが、今季の開幕戦もやはり佐藤選手の独壇場となった。車両を押さえつける重量が足りないフォーミュラカーは、アクセルを踏めばすぐにリアタイヤが空転してしまう。その中でも繊細なアクセルワークで車両をコントロールしきった佐藤選手が1stのタイムで逃げ切った。

「去年の最終戦から大きなエンジンになったんですが、そのセットアップで苦しんでいる感じです。特に低回転のターンで息継ぎが治らなくて困っています。今年はWエントリーした岸(正隆)選手のサポートをしながらチャンピオンを獲れたらいいですね(笑)」と、今季の展望も語った。

少数精鋭による争いとなったDクラスは佐藤宗嗣選手(丸久クジメモータース☆TG47)が2ndでタイムアップならずも、逃げ切り優勝を果たした。
Dはトップ3が表彰台に立った。左から2位の岸正隆選手(丸久クジメモータース☆TG47)、優勝した佐藤選手、3位の五十嵐豊光選手(塩岡SP丸久YHオスカー)。

 前島代表は「今日一日ありがとうございました。主催が立て込んでいますが、スタッフのみんながこの雨の中頑張ってくれたことに感謝しています。エントラントの皆さんとともに、中部のジムカーナを盛り上げていきたいと思っています。ここ数年、台数は徐々に増えてきているのですが、開幕戦は10台ほど少なくて寂しいところはありましたが、良い大会を主催することで必ずエントラントは増えてくれると思っています。わがままでどうしようもなかった僕をJAFの競技会がまともな人間に育ててくれたように、これからもJAFの規則に則って主催をすることで、ひとりでも多くの人に僕がしてもらった体験を提供できたらいいな、と思っています」と開幕戦を締めくくった。

オフィシャルを務めた“前島一家”ことM-Iのみなさんは、不安定な天候の中にもかかわらずしっかりと開幕戦の主催を務めあげた。

フォト/鈴木あつし レポート/鈴木あつし、JAFスポーツ編集部

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